Fri 211126 なぜか鳥取の旅/北国の砂丘と「砂の女」/蟹取県でカニを貪る 4130回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 211126 なぜか鳥取の旅/北国の砂丘と「砂の女」/蟹取県でカニを貪る 4130回

 何というネーミングだったか忘れたが、「10000円払えばJR西日本の列車のほとんど全てに乗れるチケット」というシロモノをネットで発見した。新幹線も特急も、もれなく指定席に乗れる。日本海側は鳥取と敦賀まで、瀬戸内海も岡山まで、とにかく10000円以上は払う必要はない。

 

 そういうことなら諸君、「乗らなきゃソン&ソン」である。早速その10000円を払い、「大枚10000円も払ったんだから、こっちはワガママ言い放題だ」と、この世で最も迷惑なオッサンになりきって、11月の鳥取に岡山、とにかく元を取ることだけを目標に、ほぼ意味のない旅を続けることになった。

  (11月14日、いきなり鳥取への旅を思い立った 1)

 

 まず選んだのは鳥取である。大阪から鳥取まで「スーパーはくと」の指定席で往復すれば、それだけで「大枚10000円」のモトは取れる。チケットの有効期間は2日間。鳥取の旅の翌日に岡山か敦賀か南紀白浜に出かければ、元の2倍近い旅費がタダになる。

 

 ならばワタクシは、まず着実にモトをとりにいく。モトさえ取れば、あとは気軽なもの、テキトーなところに好き放題の旅を続けられるじゃないか。

 

 それと同時に、「まだ鳥取の旅は経験がないな♡」という思いもあった。何しろこんな人気がモトデの商売だ。「今井が行けば受講生がシコタマ集まる」という都道府県からは、公開授業の依頼がナンボでもあって、大阪・京都・兵庫・広島・福岡・沖縄、そういう都道府県に旅するチャンスは尽きない。

 

 11月から12月にかけては、なぜか北海道や東北からたくさんの声がかかって、例えばホンの2〜3日前、札幌での公開授業はダブルヘッダーで参加者1000人を突破した。

 

 1000人超え、ありがたいかぎりであるし、昨日25日も千葉県の海浜幕張は会場定員を軽く超えてしまい、ホントに久しぶりに「イスが足りなくなりました」「開会が15分も遅れる大盛況でした」を経験した。

  (11月14日、いきなり鳥取への旅を思い立った 2)

 

 しかし諸君、話が山陰地方になると、いやはやさすがにそんなにカンタンに人は集まらない。鳥取県・島根県、山口県や兵庫県の日本海側、そのあたりになると、受講生数の「0」が一つ少なくなってしまう。

 

 もちろん兵庫県豊岡みたいな嬉しい例外はある。豊岡の担当のセンセたちが目いっぱい頑張ってくださって、コロナのせいで状況が極めて厳しくなってからも、必ず150名の受講生がギュッと集まってくれる。豊岡に行き始めてすでに5年、夏でも冬でも豊岡の仕事はいつでも楽しみにしている。

 

 しかし鳥取&島根となると、話はもっと厳しくなる。鳥取・米子・倉吉・松江・浜田・益田・津和野、山口県に入っては萩や長門となると、観光旅行で訪ねたことはあっても、仕事での訪問は非常に稀な機会になる。

 

 津和野は、新山口から蒸気機関車「やまぐち号」に乗って訪れたことがある。萩は、今年の夏にどうしても萩焼の湯呑と徳利と盃とコーヒーカップが欲しくなって、たった1泊の小旅行を企てた。しかし松江や米子や鳥取での講演会や公開授業となると、東進移籍以来17年、一度も経験がないのである。

  (11月14日、いきなり鳥取への旅を思い立った 3)

 

 では今井君が山陰ギライかというに、何しろワタクシは同じ日本海側の出身。鳥取は鳥取砂丘で有名だが、秋田にも「秋田砂丘」という無名の砂丘が存在し、砂丘の続く県どうし、熱いシンパシーを感じるのである。

 

「秋田砂丘」は、男鹿半島のもっと北、「バスケの能代工高」で有名な能代市よりさらに北から始まる長大な砂丘である。世界自然遺産の白神山地が尽きるあたりから砂の丘が南に向かって続き、秋田市の西海岸はほとんどが砂丘、そのまま山形県の酒田・鶴岡を通って新潟県に至る。

 (鳥取「かにっこ館」に隣接、「海陽亭」でカニを貪る 1)

 

 その長大な砂丘の砂が内陸の水田に被害を及ぼすのを防ぐために、日本海北部の海岸線はどこまでも松林が続く。これを「砂防林」ないし「防砂林」と呼ぶ。

 

 何しろ日本海側の冬の季節風は強烈だ。シベリアと日本海を渡ってくる北西の季節風は風速30メートルに及び、日本海の海水と砂を巻き上げて、吹雪とともの内陸部を砂と塩で覆い尽くそうとする。それを防ぐのが松の防砂林である。

 

 江戸時代、秋田藩士の栗田定之丞と言ふ人がこれを思いついた。塩害&砂害の解決策が見つからずに思い悩んでいたある日、脱ぎ捨てられたワラジの下から松の木の芽が元気に伸びているのを発見、「これじゃ!!」と膝をハッシと打ったサダノジョーどん、海岸線に延々とムシロの覆いを作り、ムシロの陰で大量の松の苗を育てた。

 (鳥取「かにっこ館」に隣接、「海陽亭」でカニを貪る 2)

 

 今井君がコドモの頃に遊んだ海岸は、ほとんどそういう松林の向こう側。男鹿半島の付け根の「出戸浜」、秋田平野を貫く大河・雄物川の河口付近の「下浜」、「離岸流が危険だから絶対に海に入ってはいけません」と言われ続けた「大浜」、みんな秋田砂丘のド真ん中。ハマナスやハマヒルガオの天下だった。

 

 安部公房の名作「砂の女」は、秋田砂丘よりもずっと南側、山形県酒田と鶴岡の間の大砂丘を舞台にしているらしい。勅使河原宏監督による映画版もある。昭和の名優・岸田今日子と岡田英次の息詰まる熱演が収録されたのは静岡県の海岸だが、原作の舞台は間違いなく庄内砂丘だ。

 (鳥取「かにっこ館」に隣接、「海陽亭」でカニを貪る 3)

 

 ま、以上のような事情があって、今もなおワタクシは鳥取県へのシンパシーでいっぱい。チャンスさえあれば早く鳥取を訪ねてみたいと熱望し続けていた。そこへ降って湧いたのが上記「10000円で乗り放題」のJR西日本キップである。

 

 宿泊していたのは、大阪梅田の駅近く。京都からやってくるディーゼル特急「スーパーはくと」のマコトに石油くさい排気ガスにまみれつつ、大阪・三宮・姫路と西進したワタクシは、姫路から一気に中国山地に分け入って北上を開始、ちょうどお昼頃の鳥取駅に無事到着したのである。

 (鳥取「かにっこ館」に隣接、「海陽亭」でカニを貪る 4)

 

 この文脈からして、ホントならここから鳥取砂丘の詳細な描写に入らなければならないはずだ。どんなに砂丘と日本海の風景が雄大であったか、砂の一粒一粒がどれほど微細で美しかったか、ラクダのとぼけた長い顔と首がどんなに可愛らしかったか。しかし諸君、その部分は次回の記事に譲ることとさせていただきたい。

 

 ついでに言えば、何しろ今井君は1026日に右目網膜付近の顕微鏡下手術を受けたばかり。鳥取砂丘なんかを暢気に歩き回って、万が一お目目の中に砂粒でも紛れ込んだら、すぐにでも緊急手術の危機に陥る。

 (鳥取「かにっこ館」に隣接、「海陽亭」でカニを貪る 5)

 

 そこで諸君、ワタクシは何と鳥取砂丘よりもカニを優先することにしたのである。今や鳥取県は、「鳥を取る県」の鳥モチ的イメージを脱し、「カニ取り県」宣言を行なっている。

 

 漢字で書けば「蟹取県」。香川県が「うどん県」を宣言して快調に突っ走っている、その二番煎じを狙っているらしい。しかし我が友Mac君はその路線に反対のご様子。「かにとりけん」と入力して「カニと利権」と変換を返すようでは、Mac君の強硬な反対は明らかである。

(ディーゼル特急「スーパーはくと」で大阪 ⇆ 鳥取間を往復する 1)

 

 そもそも香川県の「うどん県」だって、快調のように見えて実際にはそうでもないはずだ。香川は、瀬戸内海の新鮮な海産物もスゲーおいしい県。「凱陣」をはじめとする日本酒も、瀬戸内の塩もオリーブもみんな絶品なのに、「うどん県」のネーミングのせいで、何となくみんな目立たなくなっちゃった。

 

「蟹取県」なんてのも、「よせばよかったカニ?」という結末になりそうでコワい。浦島太郎だって「帰ってみればコワいカニ」という結末(詳細は Sat 190105 クレラップから浦島へ/蚕ノ社/クレハトリ姉妹(京都すみずみ10)3782回参照)。行動はあくまで慎重にしたほうがいい。

(ディーゼル特急「スーパーはくと」で大阪 ⇆ 鳥取間を往復する 2)

 

 というわけで、1114日の今井君が鳥取で選択したウマいカニの店は「海陽亭」。海岸の水族館施設「とっとり賀露かにっこ館」、通称「かにっこ館」隣接の高級和食店である。

 

 いやはやカニさんたち、油断しているとオサイフの中身を激しく攻撃する。この日も鳥取市内の高級カニ料理店を検索してみたら、ランチで「一人 → 80000円」と、恐るべき数字が当たり前のように踊っていた。カニを貪るにもあくまで恐る恐る、その強烈なハサミでオカネをむしりとられない用心が必要なのだ。

 

 というわけで、臆病きわまりない屁っぴり腰で入店した今井君は、しかしまず熱燗で2合のお酒を注文。グイッと胃袋が温まると気持ちも落ち着いた。

 

 マコトに贅沢な焼きガニ2種類に、カニたっぷりの味噌汁を1つ。従業員の優しいオバサマ2人に助けられ、オサイフを大事に守りながら、鳥取のカニを思う存分に賞味したのだった。いやはや、おいしゅーございました。

 

1E(Cd) Goldberg & LupuSCHUBERTMUSIC FOR VIOLIN & PIANO 1/2

2E(Cd) Goldberg & LupuSCHUBERTMUSIC FOR VIOLIN & PIANO 2/2

3E(Cd) LET’S GROOVE 

4E(Cd) Wand & BerlinerSCHUBERTSYMPHONY No.8 & No.9 1/2

total m90 y1053  dd26893