Mon 211101 昭和の選挙速報/報道とオピニオン/不偏不党を旨とすべし 4116回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 211101 昭和の選挙速報/報道とオピニオン/不偏不党を旨とすべし 4116回

 さすがにワタクシだって政治学科出身だ、衆議院選挙に参議院選挙、話が国政選挙ともなれば、血も沸き、肉も踊って、夕暮れかから日付が変わるまで、夢中でテレビの選挙速報に目を凝らす。

 

 確か大学2年の秋に衆議院選挙があって、あの時はクラスのみんなが授業をサボり、誰かが持ってきたラジオで選挙結果に耳を傾けた。今では信じがたいけれども、当時の国政選挙は「即日開票」ではなくて「翌日開票」。日曜日に投票があって、都市部の開票は翌日の朝から始まった。

 

 だから政治学科の我々は、午前中2時間目の授業の教室で顔をあわせると、「午後の授業なんか全部サボって選挙速報を聞こうぜ」と衆議一決した。昼頃から少しずつ当選確実の報が入って、大勢が判明するのは夕暮れから深夜にかけて。現代とは丸1日のズレがあった。

(点眼薬を3種類、毎日4回、規則正しくつかって大人しくしています)

 

 こういう場合、クラスの2人か3人が「トランジスタ・ラジオ」という恐るべきものを持参していて、最初は学食でみんなそのトランジスタ・ラジオに耳を傾ける。クラスやゼミから朝日・毎日・読売・日経・赤旗など全国紙各社にバリバリ就職、テレビのほうもずいぶん多くが進んだ。そういう連中である。

 

 しかし学食でラジオに聞き入っているうちに、やっぱり「音声だけ」という速報にムカつき始める。画面があったほうがいいに決まっていて、だから蕎麦屋なりコーヒー店なり、日がな一日テレビ中継を垂れ流しているお店になだれ込む。さすが、スマホはおろかネットの影も形もない時代だ。

 

 お蕎麦がなくなれば、コーヒー店に移動する。コーヒーがなくなっても、スペース・インベーダーをキュンキュンやりながら選挙速報を眺めつづた。もちろん「授業に出ます」という超マジメな人々もいたが、さすがに彼らは中央官庁のお偉方に出世を果たした。

(点眼薬を使いながら、NHK出版のDVDで昭和の古い文楽をみて過ごしております 1)

 

 当時は「保革逆転」「保革伯仲」が合言葉だった時代。「保守」とは自民のこと、「革新」とは社会党と共産党のこと。「中道」「是々非々」という今の維新みたいな存在もあって、「民社党」という名がついていた。

 

 21世紀になってみると、どっちが保守でどっちが革新か、主義主張を聞いてみるに、むしろ「リベラル勢力のほうが圧倒的に保守ではないか」と思うほどだが、当時はどの労働組合がバックについているかで、マコトにわかりやすく主義主張の見分けがついた。

 

 ま、蕎麦屋からコーヒー店、さらにコーヒー店2軒目 → 3軒目とハシゴするうちに、夕暮れが迫る。夕暮れが迫れば、もちろん「酒でも飲みにいくか」と話がまとまる。それでも友人たちはラジオを耳にくっつけて、選挙速報に夢中になっていた。

 

「どうやらまた革新はダメそうだ」「けっきょくまた自民の大勝だ」「でも、自民の大物が何人か落選しそうだ」。今思い出してみると、ワタクシが学部生だった頃から現代に至るまで、選挙の経過も結果も報道の仕方も、ちっとも変わっていないように思われる。

   (11月1日、代表的全国紙の第1面を比較する 1)

 

 あえていえば、緊迫した「得票数の読み上げ」がなくなったことぐらいか。緊張したアナウンサーの声で、「◯野▽三郎、自民新、当選確実、134526票」、全国各地の選挙区について、泡沫候補を除くほぼ全ての候補者の得票数が、そういう緊張した早口で読み上げられるのが好きだった。

 

 もちろん我々の飲み会は、駅前で午前4時までやっている深夜喫茶に移動し、終電で帰る者、始発電車まで残る者、始発でもまだ足りずに、そのまま「今井の下宿まで行って寝ようぜ」と奇声をあげ、とうとう汚い今井の下宿まで朝の大行進を決行する4人か5人の猛者、まあ学生のころの選挙はマコトに激しい思い出だ。

   (11月1日、代表的全国紙の第1面を比較する 2)

 

 しかし諸君、今回の選挙については、報道各社にぜひ真剣な反省をお願いしたい。

 

 だってまず、いくら何でも「予想がハズレすぎ」だ。自民の予想は各社平均で225、実際は260超。立民の予想は各社平均で115、実際は96、こぞって20人も30人も予想をハズしておいて、天気予報の雨予想がハズれた程度にも反省の弁がないとは、どこにプライドなりキョージなりがあると言うんだ。ハズレて謝罪しないなら、そもそも予想をすべきでない。

 

「政権交代の可能性は、イチロー選手の打率ぐらい」と言った野党党首の無責任発言もひどいが、新聞各社もテレビ各局も、前日まではまるで政権交代が間近に迫った半現実であるかのような、浮き足立った報道を続けていなかったか。

 

 報道と言いながら、実際は予想屋・予測屋みたいな態度。事実の報道より、自社の主義主張を並べ立てる紙面と番組構成。これでキチンとキョージを持って「自分たちは報道を仕事としています」と胸を張れるのか。

 

 偉そうなことを言うようで申し訳ないが、今井君は講師であり教師であって予想屋ではない。だから英語の基礎や読解法や文法は教えるが、入試問題の予想はしない。「予想が当たった」「◯◯大入試に的中!!」みたいな下卑たことばかりやっていると、むかし代々木にあった巨大予備校みたいな生徒激減のハメにいたる。

(11月1日、代表的全国紙の社会面を比較する。上半分がY、下半分がA)

 

 朝の新聞(仮名)の、今朝の第1面を、Y売新聞と比較してみよう。Y売のほうは、まあ報道の名に値する正直な見出しで、「自民、単独過半数」「立民惨敗」としている。一方の朝の新聞は「自民伸びず」「立民後退」。主義主張が思い切りハミ出してきていないか。

 

 社会面も比較してみよう。Y売のほうは、京王線の惨劇とパニックを伝える記事の真横に4コマ漫画「コボちゃん」まで平然と掲載されていて、その正直さをさらけ出しているが、一方の朝の新聞は「自民重鎮に逆風」「共闘、岩盤に一矢」。こりゃまたグイッと主義主張のお出ましだ。

 

 報道とは、事実を淡々と伝えるべきものであって、主義主張が思い切り前面に出てくれば、それは報道ではなくオピニオン紙でありオピニオン誌だ。新聞を名乗る資格はない。この際「朝のオピニオン」にしっかり改名しないと、羊頭狗肉のそしりを免れない。

(点眼薬を使いながら、NHK出版のDVDで昭和の古い文楽をみて過ごしております 2)

 

 今回の選挙で「Y岸さん」という立民の優秀なセンセが東京某区から当選なさっている。2019年まで、彼は朝の新聞政治部で敏腕記者を務め、「国民民主党に残るのはリスク」「支持率1%、『国民民主は倒産危惧企業』」など、他党を攻撃する署名記事を、連日のように書き続けていらっしゃった。2018年の頃である。

 

 不偏不党&公正中立を旨とすべき全国紙の記者の中に、こういう人物が他にもゾロゾロ存在するんじゃないか。ワタクシが新聞をあまり読まなくなり、テレビの報道番組が始まるとすぐに人形浄瑠璃のDVDを眺めるようになったのも、この種の疑念があまりにも強烈になったからである。報道と称してオピニオンを押し付けるのは、ほとんど洗脳と言っていい。

(文楽「勘助住家の段」の山本勘助。自ら右眼をえぐり取ったシーン。NHK出版のDVDより)

 

 さて、おかげさまで、手術した右目の経過はマコトに順調。選挙特番も不偏不党&公正中立がある程度以上は担保されているNHKに限って視聴したおかげか、今朝の視力検査も結果は上々だった。

 

 しかしそうやって時間を作って人形浄瑠璃ばかり見ていると、こちらの心臓にグサリと突き刺さる場面にしばしば遭遇する。手術前、目の病気に悩んでいたワタクシにとって、「摂州合邦辻」、なかなか厳しい場面が続出する。毒薬を飲まされて盲目になった男子が主な登場人物の1人として活躍するのである。

 

 そうかと思えば、もっともっとキビシイ場面もある。「本朝廿四孝」のうち「勘助住家の段」であるが、主人公の横蔵(実は山本勘助)は、無理やり切腹を迫られ、その危機を脱するために、いきなり刀で自らの右目をえぐり取る。

 

 今井君が眼球の奥の奥、網膜のあたりから付着物を除去してもらったのも右目。メスは間違いなく眼球の奥の奥まで届いた。同様に横蔵(実は山本勘助)が、刀でグリグリえぐっちゃったのも右のお目目。同病相憐むと言うか、ギョッとして思わず右目を抑え、昨日は午前1時、気を失うように睡魔に身を任せた。

 

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