Wed 211006 ファーストネームの変遷・女子編/ジェンダー融合/将来の展望 4103回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 211006 ファーストネームの変遷・女子編/ジェンダー融合/将来の展望 4103回

【1】女子マーカー・ジェンダー接尾辞の変遷

 女子マーカーの代表といえば、もちろん「子」であって(すみません、前回の続きです)、ワタクシの小学生時代にはクラスの女子20数名のほぼ全員が「子」。律子に明子に和子、克子に京子に妙子、「子」がつかない女子は、滅多なことでは見つからなかった。

 

 アキコが人気だったのはおそらく漢字が豊富だからで、晶子・彰子・章子・昭子・秋子・暁子・晃子・顕子あたりの2文字系から、亜希子・亜紀子・亜樹子・阿紀子・安喜子、諸君、アキコ洪水に魘されてもおかしくないぐらいだった。魘されると書いて「うなされる」と読んでくれたまえ。

 

 しかしそれでも、どうしても「子」以外にしようという親は存在したので、ワタクシの父方の従姉にも「市代」がいる。

 

 昭和の女子ジェンダー接尾辞として「子」以外に存在感があったのは、「よ」「み」「え」の3者。クラス名簿の中に1人か2人、それなりの勢いを保持していた。コカコーラの全盛期に、ペプシも立派に存在するのと同じことである。

 

「よ」は「代」または「世」の2字ぐらいだが、「え」のほうは江・栄・恵・衣・枝・絵、子どもが名前を書くのに苦労することを覚悟の上で、旧字体の「繪」を選択する親だっていた。

 

「み」については、もちろん「美」「実」の2文字が先行するが、昭和中期から後期にかけて、この「み」を中心に男子と女子のジェンダーマーカー融合が始まってくる。

 

 1970年代後半、当時の「歌謡曲」の世界に3人の「ひろみ」が存在した。郷ひろみ・太田裕美・岩崎宏美であるが「ファーストネームを聞いても男なのか女のか分からない」という状況が、ジェンダー接尾辞「み」あたりから始まったんじゃないか。

(10月2日、広島「電光石火」でキムチ入りのお好み焼きを貪る。いやはやネギまみれだ)

 

【2】マーカーの融合、ネームジェンダーの融合

 21世紀も中盤に入ろうとしている2021年の段階で、クラスの女子の名簿を眺めてみると、今やジェンダー接尾辞は「な」「か」「ま」「ほ」の全盛である。

 

「か」については、すでに20世紀後半からブームが始まっていたので、百合華・由美香・優嘉・春架・遥花・江里夏・枝里佳・絵里加・英美歌・澄美菓、華・可・香・嘉・花・夏・夏・加・佳・架・歌・菓、ここでも多彩な漢字を使用できたことが有利に働いた。

(10月3日、広島からの帰りに駅弁「しゃもじかきめし」を貪る 1)

 

 「ほ」は、比較的あてる漢字の選択肢が少なくて、帆・穂・步・保の4つぐらいしか思いつかないが、「みほ」「なほ」「しほ」「まほ」「かほ」「ちほ」「りほ」「さほ」など、2文字名前の人気は衰えない。

 

 今井君が高2の時の担任が倫理社会担当・伊東俊穂(としお)センセという立派なオジサマであったが、「ほ」の発音はもちろん「お」に通じるので、勝穂・松帆・和誉・昭歩などを考えれば、ここでもまたジェンダーの壁は容易に破れることになる。

 

 今の女子で一番勢いがあると思われるのが「な」。欧米女子のお名前でMariaAmandaSamanthaJuliaAlexaなど、母音「a」で終わる名前が圧倒的に流行したのは20世紀終盤であるが、思えば「な」も「か」も「ま」も、それに遅れるかほぼ同時期の大流行だったと思われる。

 

 まず「奈」「菜」「那」があり、それに「凪」「波」が加わり、その後から「南」や「成」が加わった。すると、先ほど触れた「み」と同様に「凪」と「南」と「成」あたりからジェンダー融合が始まり、「な」は男子のジェンダー接尾辞としても使用される例が増えた。

 

 かつて甲子園で前橋育英を優勝に導いた高橋光成は「こうな」。幸成・江南・好凪・高稔と続けば、「な」は「ほ」に負けず劣らず男子マーカーとして選択される可能性も高い。ジェンダーの壁は、こうしてファーストネームの面からどんどん侵食されつつある。

 (10月2日、広島国際会議場で公開授業。出席者、170名)

 

 すでに前回の記事で指摘しておいた「ま」は、21世紀の男子マーカーとして極めて有力であった。前回のおさらいをすれば、「ま」は「馬」「真」「舞」「麻」「磨」「摩」「蒔」。和真・斗真・晶馬・亮磨・龍麻、2021年のクラス男子名簿にはこういう極めてかっけーファーストネームがズラリと並ぶ。

 

 しかしもともとは「ま」は女子マーカーとして20世紀後期に颯爽と登場した接尾辞。さすがに「くま」「しま」「はま」は明治大正のかなたに去ったし、「たま」じゃネコしか寄ってこないが、「えま」「ゆま」「みま」あたりは、今も保育園や幼稚園を席巻しているんじゃないか。

(10月3日、広島からの帰りに駅弁「しゃもじかきめし」を貪る 2)

 

「ま」への男子の進出は、かつての「み」への進出を彷彿とさせる勢いがある。「浩美」「克巳」「郁実」「睦未」「隆見」あたりですでに男女マーカーとしては機能しないが、21世紀以降これに「海」「生」の2文字が加わって、ジェンダー接尾辞で男女を判断する目論見はほぼ不可能になった。

 

「七海」「仁海」「拓海」「聡生」、それぞれ「ななみ」「ひとみ」「たくみ」「さとみ」であるが、同様にかつては男子マーカーと機能していた「き」についても、「姫」「喜」「綺」「輝」が増えてその機能は一気に減退した。

 

 もちろん、これは素晴らしいことである。かつてラテン語系語学の最初歩の授業で、「o」で終わる名詞は男性名詞、「a」で終わる名詞は女性名詞というたいへん単純な見分け方を習ったものだが、今や多様性が最も重視される世界。ジェンダー接尾辞の存在なんか、サッサとなくなってしまった方がいいのだ。

(10月3日、広島からの帰りに駅弁「しゃもじかきめし」を貪る 3)

 

【3】近未来のファーストネーム

 しかし諸君、それではこれから日本人のお名前がどんな流行を迎えるのか、予想するのはマコトに無責任で面白い。「パピプペポ」で終わるお名前というのは、なかなか流行しそうにないが、例えばアメリカでは立派にPenelopeがたくさんいらっしゃる。

 

 英語式の発音は「ペネロペ」ではなくて「ペネロピ」であるが、スペイン語でも英語でもやっぱりパピプペポ。日本で突然この辺が浮上してくることだって考えられなくはない。「げ」「ぶ」「ぼ」みたいな濁音にしても、21世紀前半の日本を「が」が席捲したように、いつトップに躍り出てくるか予断を許さない。

 

 ワタクシの予想なんかもちろんどうでもいいのだが、ダークホースとしてワタクシが楽しみにしている接尾辞が「じゃ」「じゅ」「じょ」である。「じゃ」には「者」「惹」「紗」「射」があり、「じゅ」には「樹」「寿」「珠」があって、旧字体の「壽」だって、暗いカバンの中で出番を待っている。

 

 中学生の頃から今井君が大好きだった名優がいて、彼の名は「小林桂樹」。桂樹と書いて「けいじゅ」であるが、慶寿・啓樹・京樹があり、ならば龍寿で「りゅうじゅ」、泰樹で「たいじゅ」、杏樹でも安寿でも安珠でも「あんじゅ」。「じゃ」のほうも、勇者・優者・悠車・剛射、流行の兆しを早くも感じないかね。

 

1E(Cd) JandóMOZARTCOMPLETE PIANO CONCERTOS vol.3

2E(Cd) JandóMOZARTCOMPLETE PIANO CONCERTOS vol.4

3E(Cd) Quincy JonesSOUNDS … AND STUFF LIKE THAT!!

4E(Cd) Courtney PineBACK IN THE DAY

7D(DMv) THE TOWERING INFERNO

10D(DPl) 能:観世流 井筒(観世寿夫 宝生閑)

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