Tue 210629 子ども時代の外食/南禅寺菊水の昼下がり/ホタルの記憶を語り合う 4079回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 210629 子ども時代の外食/南禅寺菊水の昼下がり/ホタルの記憶を語り合う 4079回

 何しろ今井君は生粋の田舎育ちであって、子どもの頃は「外食」と言ふ贅沢をほとんど経験していない。秋田市の中心部から列車で10分も離れた「土崎港」という港町で、来る日も来る日もマコトに質素で昭和な食卓を家族で囲んだ。

 

 だって、ファミレスなんか都会にもほとんどなかった時代なのだ。あえて子ども時代の外食の記憶を辿れば、昭和の秋田市内にあった2つの百貨店「木内(きのうち)」「本金(ほんきん)」のどちらも3階、「デパート内大食堂」でのランチしかない。

 

 その場合、両親は1つ300円の中華そば、4つ年上の姉上は180円のミックスサンドイッチとオレンジジュース、幼い今井君はホットドッグ150円とソフトクリーム50円で合計200円。4人合わせて1000円ちょいで、豪華な外食のつもりでいた。いやはや、値段までビシッと記憶している。

(南禅寺「菊水」、通された個室から庭を眺める。一昨年夏のホタルは、真ん中の木の根元で煌々と輝いていた)

 

 そもそも当時の田舎町では、青少年が外食なんかするのはもう立派な不良気分であって、「だれそれが◯◯食堂で外食していた」という情報はいち早く町のオバサマ連に拡散し、もしそれが男子と女子であれば、「あんら、たいへんだんべ!!」とみんなでニヤニヤ、「間違いなく何かあったんだ」と町内みんなが色めき立った。

 

 万が一それが中学生なら、すぐにセンセたちが動き出し、3年B組金八先生ならまだ理解があるとしても、2年B組仙八先生とか、1年B組新八先生あたりになれば、「まだ低学年なのになんたること?」であって、さとう宗幸どんや岸田智史どんが、デート情報に哮りくるう父兄を相手にやたらにペコペコする羽目になった。

 

 今井君が在籍した秋田県立秋田高校の場合、その点はかなり進歩的だったので、あの頃の秋田高校に入学してしまえば、もう十分に大学生気取りで街をのし歩いた。

 

 何しろ先輩たちが1970年代の学生運動で盛り上がってくれたせいで、すでに制服は廃止。男子も女子も17歳を過ぎて私服に身を包んでしまえば、「秋田大学の学生です」で十分に通用した。

 

 男子はみんな当時お馴染みの肩まで届く長髪であって、もし我々の高校生時代の外見を知りたければ、ぜひ「ステージ101」ないし「ヤング101」をYouTubeで検索してくれたまえ。いやはや、男子も女子もほぼあんなカッコで秋田駅前を闊歩、喫茶店「トップス」だの「それいゆ」だので時間を無駄にしていた。

   (南禅寺「菊水」。今でもさすがに敷居が高い)

 

 そういう世代の田舎者だから、今になっても京都の老舗や高級店はどうも敷居が高い。もちろん京都通の大ベテランの方々は「ほお、菊水さんですか」とニヤニヤ、それこそ「いちげんさんお断り」の超高級&ウルトラ老舗以外は眼中にないのかもしれない。しかしコガネモチ今井としては、ランチに菊水でもまだまだビクビクものなのだ。

 

 それだって、菊水やら平八茶屋やら、若女将や本女将やらが挨拶に出ていらっしゃるお店にアンヨを運べるようになったのは、やっとこの4〜5年のことである。

 

 南禅寺の界隈でも、ついこの間までは「順正」「八千代」ぐらいのお店でもそれなりにビクビク、靴の脱ぎ方で笑われないか、箸の上げ下ろしについて陰でいろいろ言われていないか、コワくてコワくて、湯豆腐の味さえ分からなかった。

(南禅寺「菊水」ランチ。どうも写真が下手でスミマセン 1)

 

 それでも逆に、このサトイモ君がお店のヒトビトの熱い話題になっていたりもする。「エッセイストとか、小説家の先生じゃないか」というウワサもあったし、「画廊経営とか、画商とか骨董店経営とか、その類いの人じゃないか」とヒソヒソ囁かれていたりする。

 

 確かに諸君、このサトイモの不思議な態度は、それなりに印象に残るらしい。意地悪に言えば「ワル目立ちする」のであるが、中居さんやウェイトレスや若女将と交わす一言一言に、必ず何らかの香辛料をふりかける。

 

 そういう香辛料の不思議なピリカラを、もちろん「田舎くさい」「どんくさい」と突き放すこともできるだろうが、よくよく噛みしめれば「マコトに味わい深い」「小粒の山椒なみにピリリ」と思ってくださる方も少なくない。このブログの長年の読者なら、頷いてくれる人だってたくさんいらっしゃるだろう。

(南禅寺「菊水」ランチ。どうも写真が下手でスミマセン 2)

 

 6月24日の「南禅寺菊水」でも、十分にその味わい深さを発揮してきたつもりである。話題は、もちろんホタル。一昨年のホタルは、この個室の正面の木の根元に3匹も4匹も煌々と輝いていました。昨年のホタルはもっとずっと右側の草むらの根元で、薄明るく遠慮がちに光っていました。そういう思い出を語るのである。

 

 途中、料理の皿に添えられていた木の葉っぱがあんまり可愛らしかったので、「いただいていっていいですか?」と尋ねてみた。押し花にして、文庫本の栞に使いたいじゃないか。若い中居さんも大賛成で、「それはいいですね」「ぜひ菊水の思い出になさってください」と頷いてくれた。

(南禅寺「菊水」ランチ。どうも写真が下手でスミマセン 3)

 

 ま、そういうランチであった。もちろん今はコロナ軍との激闘中だ。まだまだ料理を思うぞんぶん楽しむことはできないが、控えめな一皿ごとに、会話は温かく弾むのである。

 

 ワタクシには、このぐらいがちょうどいい。あんまり高級すぎて、貴族階級やら「高祖父の時代からのお馴染みさん」みたいなウルトラ京都通しか入れないお店で、たかがコガネモチの懐を奥深く探られるなんてのは、くすぐったくて耐えられない。

 

 去年や一昨年のホタルの思い出を語り合いながら、「菊水」の夏の午後は深まっていく。この後ちょっと清水坂の焼き物店を訪ね、できれば素朴なコーヒーカップを1つ手に入れたい。それから大阪のホテルに帰り、夕暮れからは奈良・橿原神宮での仕事が待っている。京都のランチは、まあこのぐらいで切り上げるとしよう。

 

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