Thu 210603 器量を秘す/発散と収束/ナマか映像か10(ウィーン滞在記25)4066回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 210603 器量を秘す/発散と収束/ナマか映像か10(ウィーン滞在記25)4066回

 昨日はずいぶん謙遜して、「イケメンからは最も遠いところで転がっている」「焦げたキウィ」「エリート集団の中の一般参加選手」みたいな言辞を連ねたが、勘の鋭いオカタはとっくに分かっていらっしゃる通り、ワタクシ自身はちっともそんなふうには考えてはいないのである♡

 

 だってサトイモ君、夜の新幹線の窓に映してみると、それなりに魅力たっぷりのお顔じゃないか♡。いかにも広く深く濃密な思索の実践者♡っぽいし、マコトにシャープな切れ味鋭い頭脳の持ち主っぽい。

 

 実際、好きなように喋らせてみると、このサトイモ男はまさに縦横無尽、滅多な人間に負けたりはしない。あまりに鋭く、あまりに激しく、向かうところ敵ナシ、雪解けの大河の激流のようである♡

 

 まだ若かった1997年から2004年、まさに若気の至りというか何というか、そのシャープさ&その激烈さを代ゼミ生の前にたたきつけてみた。ハチャトゥリアン「剣の舞」を教壇で演じてみせたようなものである。

 

 結果は、もちろん大失策。いくら講師が強くたくましく危険なほど切れ味が鋭くても、それをナマのままビュンビュン振り回せば、生徒の頭脳は傷だらけになるだけで、肝腎の学力はちっともつかない。

 

「今井の授業に出ると、洗脳されるぞ」というのが、悲しいことに当時の定評。こちらは洗脳する気なんかサラサラなくても、何だか異様に知的で鋭いヤイバが目の前できらめき続ければ、生徒諸君は本能的に身をかわす。氷のヤイバの生み出す危険な風がようやく止んだ休憩時間に「ふう、危なかったな」と、安堵の表情で呟きあうのである。

     (ウィーン夜景 2019年12月26日 1)

 

 そんな日々をいつまでも続けることには、何の意味もない。ワタクシは、あくまで全国の生徒諸君の学力を飛躍的に向上させるために、この場所に居続けるのであって、「オレは天才だ」「神だ」「近づくと傷つくぞ」とか、その種のバカげた発言は、そういう趣味を持つオカタたちに任せた方がいい。

 

 2005年春に東進に移籍した時、我が危険な妖剣ムラサメを鞘に収めることにした。そこからはひたすら地味に地味に、「オノレの器量を秘し、あくまで陰に徹し、いかにしてもオノレの使命を達すべし」、まるで昭和の時代劇「大江戸捜査網」の隠密同心みたいに、生徒諸君の学力向上だけを考えて生きてきた。

 

 ということになると、自らのシャープさだの、話術の巧みさだの、イケメンぶり♡だの、学識の広大さや深遠さ♡だの、そんなものを表沙汰にして大見得を切るようなバカなことは決してできない。

 

「ひたすら音読」「ひたすら基礎基本」、そういう嫌になるほどマトモな方針に徹して、幸いなことに長く全国から絶賛をいただき、伝説の「C組」「B組」のおかげもあって、先頭集団を真ん中で引っ張るレース展開も実践できた。それもこれも、2004年までの愚かな自分への反省のおかげである。

     (ウィーン夜景 2019年12月26日 2)

 

 一般に「講師」という人種は、話したいことを話し、語りたいことを語り尽くす誘惑にはどうしても勝てない。昔の河合塾の講師マニュアルにも「テキスト『を』教えるのではなく、テキスト『で』教えていただく」とあり、さらに「脱線も大いに結構です」とあって、テキストを半分しか終えられない講師の背中を後押しするのである。

 

「テキストを教える」のなら、最後まで終わらなきゃダメだが、「オレはテキスト『で』教えているんだ」と胸を張れる。でも、やっぱり不安と不満が残る。「時間さえ許せば、もっともっと語りたい。1週間でたった190分、わずかそれだけの時間では、オレの魅力と能力を生徒に伝えきれないじゃないか」というわけだ。

 

 こんなふうにして、センセの中での欲求不満も募るが、生徒諸君の不満も、次第に大きな雪だるまになっていく。「いい授業なんだけど...」「わかりやすいんだけど...」「充実しているんだけど...」。そういう「けど」「けど」「けど」の蓄積は決してバカにならない。

     (ウィーン夜景 2019年12月26日 3)

 

 100人や200人のナマ授業なら、ファンや取り巻きの生徒の意見が強く通るから、それほど大問題には発展しない。テキストのやり残しには、学期末に大量の補助プリントを配布して、「だから別に最後までやらなくていいだろ」「残りはもともと自習用なんだ」と言い切ってしまう。

 

「量より質だ」と居直るか、場合によっては「やり残しなんか、なかったことにしろ」とか「残りは破いて捨てちゃえばいい」とまで言い切って、まあそれで終わりにならないことはない。

 

 しかし全国同時ナマ中継タイプの授業では、そういうウルトラ技は使えない。こっそり補助プリントなんか配布すれば、配布の様子が全国の校舎に中継されて、「あのプリントは何なんだ」「どうして東京本校の生徒しかもらえないんだ」「ください」「ください」「よこせ」「よこせ」の渦が広がり、事務方の煩雑さは半端なものではなくなる。

     (ウィーン夜景 2019年12月26日 4)

 

 こうして、ついに「でも」「けど」の不満が、センセ本人にも全国の生徒諸君にも重たく蓄積すると、「どこか他の予備校に移籍するしかない」という仕儀に至る。

 

 タイムマネージメントなしに「喋りたいだけ喋り尽くす」のスタイルだと、こういう結果は明白、大切なのは「何をどう語らないで済ませるか」という管理意識なのである。

 

 別に自慢するわけであるが、一般参加の無名選手イマイは、この「何を語らないか」というマネージメントがマコトに得意。その場で語りたくて&語りたくてたまらないことでも、もしも授業のメインストリートから外れる可能性があれば、ギュッと我慢して語らずに通過する。いつか語れる日を期して、キチッとメモを残しておけばいい。

 

 だから、まだ駆け出しのヒヨッコだった頃を除けば、ワタクシは「テキストをやり残した」という経験がない。少なくとも1999年以降はそうなので、チャイムとともにその日のテキストは全て完結。12レッスンあるテキストは、12回目の授業の最後のチャイムと同時に、確実に最後のページが終わる。

     (ウィーン夜景 2019年12月26日 5)

 

 これもまた自慢するわけであるが、タイムキーパー能力はすでに天才的と言ってよくて、時計を見ることなしに「いま何時か」をほぼ正確に言い当てる。「いま何時?」と尋ねられて、時計も見ずに「◯時△分」と答えると、相手は確実に冗談かと思い、しかし時計を見ると△分のヒト桁台まで正確に合っている。

 

「さては時計を見ましたね」と、その場のみんなが破顔一笑、冗談&冗談で済んでしまうが、自分でも気味が悪いほど「いま何時か」が正確に分かるのである。ボクサーの多くが「1ラウンド3分」を肉体で感知し、あと何秒でゴングが鳴るか、本能的に知っているようなものである。

 

 ワタクシの肉体と頭脳には、「90分」のうち今どの辺にいるか、本能的に感知する。「今90分のあたりだから、この辺を確実に通過しておかなきゃならない」と、常に時間と相談しながら授業が進むわけである。

      (ウィーン夜景 2019年12月26日 6)

 

 だから授業前のワタクシは、まず90分のストーリーを組み立てる。授業のストーリー展開には、「発散タイプ」と「収束タイプ」があって、ワタクシは圧倒的に「収束タイプ」が好きである。

 

「発散」「収束」と言っても、もちろん高等数学でいう収束と発散に該当する難しい話ではない。先に根本を語って徐々に枝葉に展開すれば「発散タイプ」、先に枝葉を論じて最終的に根本の幹の部分に言及すれば「収束タイプ」、仮にそう呼んでいるだけである。

 

 誰もが予想できるように、「発散タイプ」の方が講師としては論じやすい。生徒の集中力が高いうちに根本を理解させ、疲労が高まって集中力がそがれた頃に枝葉に移れば、「大切なところを聞き逃した」なんてことにはならない。

 

 しかしそれでは、根本の説明に時間をかけすぎる恐れが大きい。何しろ根本だ。話せば話すほど力が入って、もっともっと語りたくなるのが当たり前。「枝葉なんかどうでもいいや」「時間が足りなくなったら、枝葉の部分は省略でいいじゃないか」と、まあマコトに投げやりなストーリー展開になる。

 

 その点、枝葉を先にして最後に幹に流れ込む「収束タイプ」のストーリーを採用すれば、何しろ前半は枝葉なんだから「枝葉に埋没しちゃダメだ」「枝葉は手っ取りばやく通過しなきゃ」というマネージメント意識がストッパーになってくれる。

 

 そのぶん、後半から終盤にかけて「いよいよ根本に向かって一気呵成」となった時、聞き手の側にも語り手の側にも若干の疲労が蓄積している。

 

 しかし大河に例えれば、まさに今にも海に注ぎ込もうと滔々と流れる最下流の部分。お互いの疲労も、ここまで来ればあまり気にかからない。疲労もまた逆に、集中力の手助けになることが少なくないのである(もちろんまだまだ続きます)。

 

1E(Cd) T.BeechamBERLIOZLES TROYENS 1/3

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4E(Cd) Bobby CaldwellCARRY ON

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