Fri 210528 昔の講師室風景/個室状態へ/ナマか映像か7(ウィーン滞在記22)4062回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 210528 昔の講師室風景/個室状態へ/ナマか映像か7(ウィーン滞在記22)4062回

 こういうふうだから(スミマセン、まだまだシリーズ物が続きます)、大予備校の講師室も大きく様変わりした。豪華な大会議室仕様から、ほぼ個室タイプへの変容である。今やスタジオ収録授業が圧倒的に優勢、朝の講師室に大勢のスター講師が勢ぞろいする必要はなくなった。

 

 1990年代の駿台なら、何しろ「浪人生の授業は朝8時20分にスタート」という早起き鳥スタイルだったから、8時前にはすでに本部校舎1階の豪華講師室に錚々たるメンバーが顔を揃えた。

 

 ここはさすがに昔の超有名人ばかり、しかも30年近い昔のことだ。(仮名)にする必要はないだろう。英語の伊藤和夫・奥井潔。数学の長岡亮介。化学の三国、物理の坂間、日本史の安藤、古文の関谷、世界史の関(敬称すべて略)。ほぼ全員、ワタクシ自身が駿台の生徒だった頃に、生徒として授業を受けた先生方だ。

(相変わらず、写真払底中。今日もまた、シェーンブルン動物園の草食動物たちで我慢してくれたまえ 1) 

 

 その長テーブルの端っこに、まだ3年目の今井がしょんぼり座っていた。大学の教壇にも立っている先生がほとんど。「大学の方が本職だ」という意味で、その大学を「本務校」と呼んだ。

 

「本務校」があるなら、要するに予備校はカネヅルなのであるが、もちろんみんな60歳がらみの高級紳士だから、その手の下卑たことは誰も口にしない。万が一今井なんかがそういうことを口にすれば、「今井君はこの場にふさわしくないね」と厳しく叱られる。

 

 先生方の服装も、地味というか大人しいというか、まさに高級オジサマが揃った静謐の世界。奥井師は常に高級スーツ、しかも上着は決して脱がない。「人前で上着を脱ぐのは、相手に対して極めて失礼なので、ある!!」という静かな風情だった。

 

 他の先生はほぼポロシャツ系。ただし、「長く連れ添った奥方に無理やり着せられた」感が強い。「日曜日に、家内に新宿の伊勢丹に連れて行かれましてね」「こういう派手な色は恥ずかしいんだけど、家内がどうしてもって言ってきかないんですよ」「そうですか、ははは」「はははは」「はははは」。何とも和やかで静かな高級オジサマ集団だった。

(相変わらず、写真払底中。今日もまた、シェーンブルン動物園の草食動物たちで我慢してくれたまえ 2)

  

 休み時間に生徒諸君が質問に訪れると、あまりにすごいメンバーがズラリと並んでいるので、東大スーパーコースの優秀な生徒でも、思わず「びびっちゃうよな」とささやき合う。顔を輝かせて「この錚々たるメンバーの誰に質問してもいいんだぜ♡」と、感動の面持ちで友人どうし勇んで質問の列に並ぶ。

 

 そういう高級紳士の中に混じって、3年目の新人イマイも嬉しかった。英語の勉強法について質問されて、テキストの徹底した音読を勧めていたら、向かいの席に座っていた長岡亮介師が「それはいいね、それは素晴らしい勉強法だ♡」と声をかけてくれた。

 

 質問していた生徒は、今井の言葉よりその長岡師の一言に感激して、「わかりました」「頑張ります」と嬉しそうに帰っていった。ワタクシも、感激した。長岡師が大学院生だった時代に、浪人生として授業を受けた経験があって、まさかあの長岡亮介師に1メートルの至近距離で絶賛されるなんて、それほどの光栄は思いもしなかった。

 (相変わらず、写真払底中。今日もまた、シェーンブルン動物園の草食動物たちで我慢してくれたまえ 3)

 

 駿台本部校舎の講師室が、高級オジサマたちの静謐空間だったとすれば、その後移籍した代ゼミの講師室は「ジャニーズ系スター軍団の豪華控え室」という雰囲気。革ジャンに革パン男もいれば、紫スーツにピンクスーツ、オレンジスーツに黄緑スーツ、グッチのバッグに「1000万の靴」、地味なサトイモ男に闖入の余地はなかった。

 

 そういうジャニーズ男子が毎朝20人も30人も、ムンムン暑苦しく集結して冗談を飛ばし合う。「錚々たるメンバー」であることは駿台本部校舎の朝と同じでも、あの高級オジサマたちの静謐感は一切ナシ。「ド派手なわいわい&がやがや」を絵に描くなら、まさにあの空間しかありえない。

 

 そういう男たちの中を、講師室係のオネーサマたちがお盆を抱えてヒラヒラ、「ランチは何になさいますか?」「お飲み物は何になさいますか?」と尋ねてまわる。「ナマ!!」みたいな冗談がとび、講師全員で爆笑する。

 

 オネーサマと言っても、ついこの間まで生徒だったヒトが多く混じっていて、かつて憧れていた有名講師にお茶を出す手が震えていたりする。

 

 昼休みには、こういう空間でランチになる。すべて出前であって、寿司・うなぎ・ステーキ、なかなか派手なランチシーンだが、ランチのスタートが1225分ごろ、1240分になると、質問の生徒諸君がなだれ込んでくる。メシを楽しむ時間は15分弱しかない。

 

 1240分になれば、まだ寿司が5貫残っていようが、うな重を半分しか飲み込んでいなかろうが、容赦なく「素朴な質問なんですけど」「さっきの授業でちょっと気になったことがあるんですが」という生徒の長い列で超3密、メシを飲み込むことも、キレイな空気を吸うことも、ほぼ絶望的である。 

 (相変わらず、写真払底中。今日もまた、シェーンブルン動物園の草食動物たちで我慢してくれたまえ 4) 

 

 当時から今井君は「質問に来るのが困難なほど分かりやすい授業」がモットー。「ワタクシの授業を受けた後で、それでも質問に来られるんだったら来てみなさい」「これはワタクシからの一種の挑戦状です」とまで言っていたから、「長い質問の列」なんてのはあり得ない。

 

 しかし他の先生は違う。「長い質問の列こそ人気のバロメーター」と思っているセンセがほとんどだったし、教務課の人も、予備校上層部も、同じように考えていた。

 

 講師室担当のオネーサマや、今井の授業を受けていない生徒諸君も、やっぱり同じ。質問の列が長ければ長いほど憧れと尊敬の目を向け、列が短いと「人気ねえヤツだな」とニヤニヤ、冷笑やら嘲笑やらの目を向けた。

 

 だから昼休み、他の先生には質問の列ができても、ワタクシにはまだ蕎麦やうな重を飲み込む時間が残っている。ホントはうな重より1000円安い「うま玉重」であって、うなぎの細切れをタマゴでとじたお重なのだが、まあ見かけは十分にうな重である。

 

 その真後ろに別の先生の質問の列ができ、諸君、驚くなかれ、ワタクシの至近距離でいろんなセンセの授業のワルグチを声高に言いあっていたりする。

 

 そのワルグチの対象が自分だったりすると、冷めたうな玉重もうまく喉を通らないが、場合によってはそれが原因でAセンセとBセンセの激しい怒鳴り合いに発展したりした。おー、コワかった。

(相変わらず、写真払底中。今日もまた、シェーンブルン動物園の草食動物たちで我慢してくれたまえ 5)  

 

 そういう真夏の昼の3密の中を、またまた講師室係の元生徒がヒラヒラし、ばっちりメイクにタンクトップの浪人生女子なんかもたくさんヒラヒラするから、運ばれてきたお茶にはたっぷりホコリが浮いている。

 

 ホコリだらけのお茶をすすり終える頃には、午後の授業のチャイムが近づき、次が空き時間の講師を、気だるく甘い睡魔が襲う。各種ヒラヒラ系と有名講師の間に、さまざまな妖しい雰囲気が漂い始めたりするのも、こういう昼下がりであった。

 

 こういう世界でワタクシは、1997年から2005年まで延々8年、ムッとした楕円形の渋面で過ごした。だから2005年春、ようやく東進に移籍を決めた時は、講師室の静謐を何より望んだ。

 

 しかし別に「ワタクシが望んだから」というわけでは全くなくて、世の中の趨勢はとっくに「個室系の講師室」への転換に向かっていた。高級オジサマ集団であろうが、ジャニーズ系ムンムン軍団であろうが、「錚々たる有名講師が一堂に集結」なんてのは、もう完全に時代遅れになっていたのである。

 

 2005年に移籍した東進では、騒がしい講師室で他の講師たちと顔を合わせることは、もうなくなりつつあった。何しろすでに完全スタジオ収録が原則になりつつある時代。ならば別に、朝の同じ時間にライバル講師どうしが顔を合わせて、おかしな言い合いなんかになる必要は皆無じゃないか。

 

1E(Cd) John ColtraneJUPITER VARIATION

2E(Cd) John ColtraneAFRICABRASS

3E(Cd) Bill EvansGETTING SENTIMENTAL

4E(Cd) George DukeCOOL

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