Thu 210520 今井富士の大相撲解説/朝乃山&夜乃山/ダメ押しはダメよ 4055回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 210520 今井富士の大相撲解説/朝乃山&夜乃山/ダメ押しはダメよ 4055回

 むかしむかしの大昔から「男をヒマにしておくと何かやらかす」、または「やらかしちまう」ものと相場が決まっていて、それを昔の中国「四書五経」では「小人閑居して不善をなす」と言った。辞書には「つまらん人間は、ヒマにしておくとロクなことをしない」と説明してある。

 

 今井君は生まれて以来ずっと男子であるから、女子のことはよく分からないが、ヒマな男子がロクなことをしない実例は山ほど眺めて「他山の石」にしてきた。

 

 予備校講師なんかでも、人気に翳りが出てヒマになってくると、だいたいにおいてロクなことをしない。ロクでもないことをさせないためには、そもそもの初めからヒマにさせないのが一番なのであるが、そうとは言っても、人気のなくなった講師は当然のようにヒマになるから、「不善をなす」可能性もアップする。

(昨年同時期のワタクシ。1年たっても、何の進歩もない 1)

 

 大関♡朝乃山が、実は「むしろ夜乃山だった」というニュースを耳にして、「いやはや相撲界も予備校界と似たり寄ったりだったのだ」と溜め息をついた。朝乃山、5月場所の初日からテレビ画面でもハッキリ分かるほど集中力を欠き、目はウツロ、勝っても負けてもボーゼン、というよりモーローというありさまだった。

 

 若い読者諸君は、お相撲にはあまり興味はないかもしれないが、「とても相撲どころではない」という大関の風情を、ぜひ一度スマホ「nhksumo」の映像で目撃してくれたまえ。集中力を保つには、何よりもまず「不善をなさないこと」が重要なのだ。大学受験にも、その後の人生にも、きわめて大事な教訓になる。

 

「緊急事態宣言の真っただ中に、東京・神楽坂の闇営業の店で接待を受けていた」「そのまま午前3時まで六本木あたりをウロウロしていた」というんだから、まあ弁解の余地はない。ヒマだったので不善をなした。このまま大関から陥落して、幕下あたりに落ちるまで出場停止になるかもしれない。

(昨年同時期のワタクシ。1年たっても、何の進歩もない 2)

 

 もちろんワタクシも男子だから、彼についてある程度の理解はできるのだ。諸君、「相撲部屋」というものをちょっと想像してみたまえ。ほぼ全員が20歳代の男子。ほぼ全員が体重150kg以上。来る日も来る日も濃厚ちゃんこ鍋。稽古も私生活も全て濃厚男子の吐息の渦の中だ。

 

 20歳代後半で業界トップまで出世すれば、思わず「男子の渦から逃れたい」「こっそり一晩だけ、神楽坂や六本木の女子たちとガハガハ笑って過ごしたい」と溜め息をつく気持ちは、分かってあげられないこともない。

 

 だって諸君、まもなく70歳に手が届く医師会のお偉方だって、ほぼ同じことをやってたのだ。あんなに「自粛は当然」とおっかない顔で言ってたのに、ご自身は100人規模のパーティーに出席、ついでに「40歳代のショートヘア美女と寿司デート」なんかも楽しんでいらっしゃった。

 

 するとワタクシなんかは、朝乃山こと「実は夜乃山」の息抜きの一夜が、今をときめく文春砲ともあろうものに、あんなにデカデカと報道されたことを、ホンのわずかだけれども「可哀想だな」と思ってしまう。だって文春砲、今や日本の政治の中心的存在じゃないか。

 

 おそらく「当分の間出場停止」であって、大関どころか十両陥落、さらに幕下陥落、三段目や序二段まで陥落という運命になるかもしれない。ほんの一夜の歓楽を満喫した夜乃山のせいで、かつて「横綱に一番近い男」と言われた朝乃山の輝かしい未来が、先の見えない闇の中に閉ざされてしまうのだ。

(昨年同時期のワタクシ。1年たっても、何の進歩もない 3)

 

 変異コロナ軍は今もなお優勢。一方の対コロナ籠城サイドでは小人閑居して不善をなし、ワクチンを求めて我先に、コネのない平民を躊躇なく踏みにじって「オレが先だ」「アタシが先よ」と、コネあり小悪党たちが無分別に駆け回る。

 

 市長・町長・会長・社長、その妻・親戚・一族郎党に一家眷属、「オレだ」「アタシだ」と注射針に健康そうな腕を突き出している様子。大関は夜のクラブ活動、医師会長は寿司デート、小人みんな閑居して不善に余念がない。やっぱり前回書いた通り、日本の黄昏はマコトに容赦なく迫ってきている。

 

 こういう状況で、昨日の大相撲5月場所11日目を観戦していたワタクシ今井富士は、マコトに素晴らしい場面を目撃した。審判長:伊勢ヶ濱親方、元63代横綱:旭富士、彼の素晴らしい指導者ぶりに感激したのである。

 

 奇跡の復活を遂げた大関:照ノ富士の師匠だ。4年前、大関から序二段まで陥落していった照ノ富士が「もう辞めたい」と告白するのを、「辞めるな」「最後まで頑張ってみろ」と説得に成功した師匠である。

 

 辞めなかった奇跡の照ノ富士にも、もちろん大喝采。前にも書いたが、例えば大臣経験者が市議会議員選挙に立候補し、それでも落選しそうな状況でチャレンジを続けたとすれば、その精神の強靱さは凄まじい。奥方も素晴らしい。落ちるところまで落ちたその段階で入籍したと聞けば、熱い涙&涙をこらえることができない。

 

 しかし師匠の伊勢ケ浜親方、さすがに優勝4回の苦節の元横綱、その優れた指導力には頭が下がる。「辞めるな」「もう一度やってみろ」と、窮地の彼を説得した冷静で熱い炎は、今もなおビシッと土俵下で燃え続けている。

(昨年同時期のワタクシ。1年たっても、何の進歩もない 4)

 

 ワタクシ今井富士は、昨日の照ノ富士 vs 妙義龍の一番を、令和1番の好取組に推薦したいのだ。取り組み自体というより、その後の「物言い」の1分間と、土俵上の伊勢ケ浜親方の表情、土俵下で判定を待つ照ノ富士との視線のやりとり、いやはやマコトにドラマチックであった。

 

 そこまでnhksumoの画面で記録してくれるかどうかは、分からない。おそらくナマ中継で見ていた視聴者だけの特権だ。もしも「審判長」という立場を利用して、可愛い愛弟子・照ノ富士に全勝優勝の栄誉を味わわせてやりたいと思えば、伊勢ケ浜サンにはそれが出来たのだ。

 

 しかし諸君、その辺が「夜乃山」や「寿司デートのお偉いさん」とは違う。彼は青森県木造町出身。ワタクシの親友だった菊地君と同郷だ。菊地君の命日は5月26日。亡くなってすでに数十年が経過したが、弘前から五能線に乗って1時間、左の車窓には岩木山と広大なリンゴ畑、あの爽やかな風景は忘れられない。

 

 おそらく伊勢ケ浜サン、5月場所が始まって以来、弟子の強引な「ダメ押し」について、再三の注意を続けていたのである。ぜひともnhksumoで初日から10日目まで、照ノ富士の相撲を確認してくれたまえ。ほぼ全ての取り組みで、最後に「どうだ!?」と言わんばかりの強烈なダメ押しを決めている。

 

 横綱に昇進すれば、品と格が問われる。かつて朝青龍はヤンチャすぎて品格を疑問視され、白鵬はきついダメ押しを続けてやっぱり品格を問われた。落ちるところまで落ちてここまで復活した照ノ富士が、もしも同じようにダメ押しで品格を問われ、ヒール役をやらされるようなことがあってはならない。

 

 圧倒的な強さで勝負が決まった後に、無駄なダメ押しを続けてヒール役が回ってくるような悲劇を、師匠としてはどうしても避けてやりたい。NHKの実況アナは、初日からずっと「強い」「力強い」と絶賛していたが、あんなダメ押しを連日見せていれば、メディアは確実に「強引すぎる」というマイナスイメージを伝え始める。

 

 師匠としては、おそらく毎日のように「ダメ押しはやめたまえ」「力量の差が圧倒的なら、それを不必要に見せつけるのはやめたまえ」の類いの助言を続けていたのだ。

(昨年同時期のワタクシ。1年たっても、何の進歩もない 5)

 

 そこへ昨日・11日目、小手投げで完全に勝負が決まった後に、相手の頭を力任せに押さえつけるシーンが発生。もう何にもせずに放置すれば、黙って相手は土俵に叩きつけられるという状況で、それでも頭を押さえつけてダメを押した。

 

「マゲをつかんだ」という物言いがどの審判からついたのか、分からない。正確に言えば、「マゲをつかんだ」ではなく「マゲに手が絡んじゃった」という程度。しかし照ノ富士の師匠である伊勢ケ浜サンは、見ている限りマコトに冷静に、伏し目がちで一言も言わず、他の審判員の意見を聞いていた。

 

 マイクを握って「反則負け」のコールをしたのも、もちろん伊勢ケ浜サン。愛弟子・照ノ富士は済まなそうに何度も師匠と目を合わせようとしたが、師匠はもちろん知らんぷりで、そっけなく反則負けの場内放送をした。いやはやなんとも感動的なシーンだった。

 

 200年も300年も続くお相撲の世界で、全く例を見ない大復活劇。ワタクシはこのスーパー美談を、このまま見続けたいのである。ヒール役になんか、絶対にさせたくない。諸君、ヒール役ほどツラく悲しく寂しいものはない。

 

 復活した照ノ富士が、キツいダメ押しばかりのヒール役として横綱になるのではなく、ケガと病気と「小人閑居して」のコワさを知り抜いた横綱として、人々の記憶に残るように。師匠の冷静な判断には、そういう思いやりが込められていたんじゃないか。昨日の妙義龍戦が、そういう名一番として語り継がれてほしいのである。

 

追伸:というわけで諸君、本日12日目のお相撲も見てくれたまえ。昨日までと一転、激しく力強い取り口ではあるが、土俵際でのダメ押しは全く見られなかった。さすが師匠と弟子、そのへんはまさにツーカーだったのだと確信する。

 

1E(Cd) Pešek & CzechSCRIABINLE POÈME DE L’EXTASE  +  PIANO CONCERTO

2E(Cd) Ashkenazy(p) Maazel & LondonSCRIABINPROMETHEUS + PIANO CONCERTO

3E(Cd) TOSHIYUKI KAMIOKA&WUPPERTALSCHUMANNSINFONIE Nr.4

4E(Cd) Walton, MarrinerRICHARD 

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