Mon 210426 その数学、大学入学後にやれば?/医も経済も仁術/たんきり飴 4038回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 210426 その数学、大学入学後にやれば?/医も経済も仁術/たんきり飴 4038回

 ジャーナリストやマスコミ関係者の理系コンプレックスには、正直言って目に余るものがあって、よほど受験生時代に数学で苦労なさったのか、「理系はエライ」「文系はオロカ」と、まるで呪文のように唱えつづけるオカタが多い。

 

 こういう論調があんまり長く継続すると、日本の若者の間に理系コンプレックスが定着してしまい、文学や哲学や法学を志す人財が根こそぎゴッソリ消えてなくなりそうで恐ろしい。文系学部を卒業してジャーナリストになった諸君、もう少し自らの専門にキョージをもちたまえ。

 

 特に問題なのは、経済学部の扱いだ。2021年、早稲田大学政経学部は、共通テスト「数学ⅠA」の受験を必須条件とした。すると諸君、食いつくは&食いつくは、日本中のジャーナリストの皆さんが、「これは快挙だ」と盛り上がった。釣りで言えばまさに「入れ食い」の状況だ。

 

 長く英・国・社の3教科入試と相場が決まっていた私大文系入試に、早稲田の英断でついに数学が加わった。「今や経済学も政治学も論理的思考力が必須、数学&統計学の素養なくして、政治も経済もありえない。早稲田♡万歳、入試への数学の導入は大英断だ」。そういう大合唱が起こりつつある。

  (京都西陣で120年、「たんきり飴本舗」を訪問 1)

 

 しかし諸君、その程度のこと、別に今さら馬鹿げた大声で言われなくたって、誰でもみんな承知の助。20世紀序盤ローザンヌ派の「限界革命」以来、とっくに世界の常識だ。100年も以前の常識を、21世紀のジャーナリストが今さらのように喚きたて、自らの理系コンプレックスを慰めているにすぎない。

 

 何もいま大慌てで、私大文系入試に数学を必須とする必要なんかないんじゃないか? 要するにこれは、「ウチは数学を重視していますよ」という早稲田大学経営陣のパフォーマンスに過ぎないんじゃないか? チャンとしたジャーナリストなら、そのあたりをキチンと詳細に分析すべきだと考える。

 

 そもそも諸君、まず受験生はみんな高校の卒業が前提だ。数学ⅠAなら、高1の時に中間テストも期末テストもちゃんとクリアしている。高校入試でも数学の努力はたっぷり経験済み、高校3年間、数学と無縁だった人なんか1人もいないはずだ。

 

 しかも、もし「数学重視」と言うんなら、どうして「数学ⅠA」だけなんだ? 数学ⅡBをなぜ課さない? いや、ホントに数学を重視するなら、ちゃんと微分積分を含む数学ⅢCとか、確率・統計分野だってギュッと入試範囲に入れて当然なんじゃないか。

 

 なぜ「数ⅠAだけ」なのか、なぜ微分も積分も統計も課さないのか。その辺の事情を考えれば、「要するにポーズだけ」「ウチは理系脳も大切にしていますよ」というパフォーマンスに過ぎないのは明らか。マスメディア全体の理系コンプレックスを、ものの見事に見透かされているとしか思えない。

  (京都西陣で120年、「たんきり飴本舗」を訪問 2)

 

 むかしから「そろばんずく」という言葉があって、仁義も礼も智も信もない利潤優先の腹黒いアキンドや経済官僚をなじるのに盛んに使われた。江戸から昭和は「そろばん」、平成以降は電卓、そして21世紀は数学的思考や論理的思考がとってかわった。

 

 サブプライムローンも、悪名高きさまざまな金融工学も、リーマンブラザーズやエンロンの破綻も、もとはと言えばみんな「そろばんずく」の破綻なのである。「そろばんずくでっか?」とは、「血も涙もありまへんな」という涙の叫びだった。

 

 20世紀序盤、経済学に「そろばん」が闖入して、以後100年にわたって延々と「そろばんずく」のfiasco(取り返しのつかない大失敗)が続いているのに、まだ「そろばんずく」の政治経済学をもてはやそうというのか。

 

 医学が仁術と言われるのと同様に、経済も政治も本来は仁術でなければならない。入試に数学を要求して「ウチはそろばんずくですよ」と大見得を切る大学の方針に、今井君は大反対である。

 

 ついでに、2021年に大きく変更された英語&国語の問題形式にも、ワタクシは嫌悪感しか湧いてこない。何故もっと哲学的な文章を出さない? なぜもっと人間の深さや優しさや思いやりを問うような倫理的文章を出題しない?

 

 資料とグラフを多用し、論理的な思考力を求めるようなパフォーマンスで、要するに受験ジャーナリズムの歓心を買おうとしているだけじゃないか。優秀な文系学部を有する大学で、せめて早稲田ぐらい、人間の深く熱く優しい感受性や、弱者の幸福を優先する高い徳性を求める姿勢を見せてもいいんじゃないか。

 

「ウチは、数学を必須にしました。国語や英語でもデータを短時間で読み解く論理的思考力を優先します。カカカ。志望者が減っても、理系脳のある優秀な学生に集まって欲しいんですよ、ケケケ」。

 

 おお、まさにそろばんずくそのもの。そんなそろばんずくに乗せられて大喝采するようじゃ、ジャーナリスト諸君の分析力、情けないにもほどがある。

  (京都西陣で120年、「たんきり飴本舗」を訪問 3)

 

 共通テストの数ⅠA、一度でいいから解いてごらんなさい。こりゃカンタンだ。あまりにカンタンだ。昭和中期なら「中3の段階で解けて当たり前」の問題がズラリ。中3までガチガチの医系志望だった今井君なら、下手をすれば高1の夏休みで満点が取れたかもしれない。

 

 別に、自慢しているのであるが、この程度の数学を課すことで「ウチは数学を重視しています」などとは、ハッキリ言って噴飯もの。このレベルなら、大学入学から半年ぐらい数学の教員が奮闘すれば、カンタンにマスターさせられる。

 

 別に「ドラゴン桜」みたいな型破りの授業でなくたって(ついでにドラゴン桜程度の型破りを型破りと呼ぶこと自体また噴飯ものであるが)、普通のマジメな高校のセンセがマジメに授業を行えば、優秀な早稲田の学生なら、夏休みが終わるまでには数ⅠAぐらいマスターしている。

 

 1週間に90分授業が4コマか5コマあれば、学部1年で数ⅡBどころか数Ⅲまで、キチンと理解できるんじゃないか。そのまま「経済数学」「統計学」に移行し、学部2年でも3年でも必須科目として週4コマ。それでいいじゃないか。

 

 無理して入試科目に数学を入れることで、受験生の負担をいやが上にも増加させ、河合塾やら駿台での退屈な浪人生活を強要するより、圧倒的に生産性が高いと愚考する。

 

 ついでに英語や国語も、21世紀初期の普通の形式に戻したまえ。入試制度の変更による無意味な受験生の負担増には、ワタクシは心の底から反対する。

  (赤入道こと山名宗全の本陣はこのあたりにあった)

 

 さて、「医は仁術」「政治経済も仁術」を信ずるワタクシは、風邪にもコロナにも必要なのはやっぱり仁、そろばんずくの薬より、昔ながらの「たんきり飴」と考える。4月上旬、「どうしても観なければならない演劇」を見るために関西を訪れ、ついでだから京都・仁和寺桜を満喫した後は、スッポン鍋を味わおうとディープな西陣に向かった。

 

 西陣は、マコトにディープである。最近は日本史関連の旅番組が多過ぎて、「西陣って、なぜ西陣?」という問いに対する正解もほぼ常識になりつつある。「応仁の乱の西軍が陣を敷いたから西陣」、昭和の時代にはトリビアだったけれども、今や日本人の常識になっちゃった。

 

 では「東軍が陣を敷いたあたりは『東陣』というんですか?」であるが、「東陣」については今、まさにその東陣にあたる地域の京都人を中心に「東陣という名称を広めましょう」という啓蒙活動が始まっているらしい。西陣のスッポン屋のご主人が愉快そうに教えてくれた。

(4月上旬、京都西陣・妙蓮寺の藤はもう花を開き始めていた)

 

 スッポン屋に入る前に、小雨混じりの夕暮れの西陣を歩いた。「たんきり飴本舗」という創業100年以上のお菓子屋さんがあって、「元祖たんきり飴」の話に花が咲いた。

 

 西陣の織物職人は、繊維が喉に絡まって咳き込むことが多い。そこで生姜のたっぷり入った喉にいい飴が売れた。元祖たんきり飴、正確には痰切り飴である。

 

 店のオネーサマが元気な京都コトバで説明してくれた。「ワタシは普段はすごい美声なんですけど、昨日からちょっと喉が痛くて、残念ながら今日は美声が披露できません」とおっしゃる。

 

 いやはや、それならまさに売り物の「たんきり飴」の出番だと思うのであるが、たんきり飴はどうやら作り手や売り手には、その効能を信用してもらっていないらしい。

 

 周辺には、ガイドブックに掲載されていない由緒と風情にあふれた寺院が並んでいる。「妙蓮寺」もその1つ。諸君、来年の今頃コロナが収束していたら、ぜひ京都観光のプランに加えてみたまえ。しだれ桜、八重桜、春と夏を分ける藤の花房、すべて一見の価値があると信じる。

 

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