Thu 210415 名大関・大麒麟のこと/ウィーン初日(ウィーン滞在記4)4029回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 210415 名大関・大麒麟のこと/ウィーン初日(ウィーン滞在記4)4029回

 お相撲の話でマコトに申し訳ないが、元関脇・麒麟児が死去した。享年67。ご冥福をお祈りする。

 

 麒麟児の活躍の頃は、今以上に「押し相撲」が全盛をきわめていた時代で、押しだけで大関まで昇りつめた「大受(だいじゅ)」をはじめ、富士桜・黒姫山・そして麒麟児と、激しくひたむきなツッパリと押しは、国技館の大観衆を連日沸かせ続けた。

 

 麒麟児 vs 富士桜の押し相撲対決は、今も語り草。どちらもマジメさ&ひたむきさには引けを取らないから、対戦はしばしば流血をともない、ようやく完全に普及したカラーテレビに映る真っ赤な血液の色は、プロレスの画面以上にショッキングなものだった。21世紀のお相撲なら、ちょうど「北勝富士」に該当する。

 

 しかし諸君、ワタクシの記憶の中で「麒麟児」というと、そのまた先代にあたる麒麟児が登場する。麒麟児のシコ名でスタートし、将来を嘱望されながらケガで幕下まで陥落。しかしそこから再び努力を重ねて、大関にまで出世した。麒麟児アラタメ → 大麒麟。「麒麟がくる」の麒麟は、麒麟児から大麒麟に成長したのである。

 

 しかし当時の大相撲は大スター揃い。大鵬&柏戸をはじめ、横綱&大関陣には佐田の山・・豊山・北の富士・玉の海・琴桜・清国・前の山・輪島など、ズラリと名力士が揃う。「横綱に最も近い男」と言われながら、なかなか昇進できない苦しい日々が続いた。

  (2019年12月22日、ウィーン・ヴォティーフ教会にて)

 

 しかも、人気も評判もあまり芳しくない。才能に頼りすぎて、ひたむきさが感じられないのだ。「つり」と「より」の正攻法より、土俵際の鮮やかなウッチャリばかりが目立った。

 

 当時テレビの人気解説者は「神風さん」「玉ノ海さん」のお2人。21世紀の北の富士さん&舞の海さんに該当するお2人だが、この2人に「大麒麟は4ツに組むともうウッチャリのことばかり考えている」と批判がとんだ。

 

 ついこの間、NHKで「ウッチャリ特集」をやっていた、今ではほとんど見られなくなった土俵際の鮮やかなウッチャリであるが、ワタクシはてっきり大麒麟のウッチャリを見られるものと期待していた。しかし、大麒麟の映像は1つもなし。同時期の小結・若浪のウッチャリを見られたのは嬉しかったが、大関・大麒麟は完全にスルーされてしまった。

 

 まあそれでも我々にはYouTubeという素晴らしい味方があって、今もなお大麒麟のあまりにも鮮やかなウッチャリを眺めることができる。21世紀の青年諸君、昭和の名大関・大麒麟のウッチャリを今すぐに眼前にして、その素晴らしい肉体の柔らかさを後世に語り継いでくれたまえ。

(ウィーン地下鉄、2019年。15年前は「地下鉄車内で写真を撮る」という行動さえ危険に思えたが、ウィーンの治安はすっかり改善した)

 

 肉体が柔らかいのは素晴らしいことだが、過ぎたるはナホ及ばざるがごとし。やがてテレビ解説者の方々が、「柔らかすぎてフニャフニャしとる」とおっしゃるようになった。「土俵上の態度に、何だか真剣さが感じられない」というわけである。

 

 この辺は、今井君なんかも自省せざるを得ない。若かった頃の今井君の場合、あんまり頭脳が柔軟すぎて♡ どんなに真剣に授業に取り組んでいても、「マジメさが足りない」という批判をしばしば甘受せざるを得なかった。

 

 お相撲でも英語の授業でも、「少し不器用に見えるぐらいヒタムキなほうが好き」という人が多いのである。才能の赴くままに、あっちへひらり、こっちへひらり、「目を疑うほど鮮やかな解法」「おや話題はいきなりそっちへ飛びましたか」なんてのは、フマジメとしかとってもらえない可能性が高い。

 

 かくして、我が愛する大関・大麒麟は、お馴染み「品格に欠ける」みたいな理由で、結局は横綱になれずに引退へ。つり出しもウッチャリもあんなに見事だったのに、相撲界では高い評価を得られず、今や「うっちゃり特集」でさえ鼻も引っ掛けてもらえない。

 

 まあその辺には、名門・二所ノ関部屋の相続をめぐるイザコザやら独立騒動やら、いろいろな問題がつきまとったのであるが、少なくともお相撲に関する限り、名大関・大麒麟の名誉回復がはかられてもいいような気がする。

 

 この間、東京・根津で「ちゃんこ大麒麟」という店を発見。もしかしたら元大関・大麒麟が経営するお店なのかもしれない。春と夏が過ぎてちゃんこが恋しい季節になったら、一度出かけてみようと思う。

(今井君、2020年6月。おお、マコトに落ち着いた山賊である。すっかり品格も身についた♡)

 

「品格に欠ける」というコトバがキライになったのは、ワタクシが大麒麟ファンだったからかもしれない。そのコトバの裏に、今井君はいつもダブルスタンダードの卑しいニオイを感じ取るのである。

 

 キライな力士には「品格がない」というフシギな悪態をついて、意地でもその才能を評価しようとしない。昔の朝青龍、今の白鵬、むかしむかしは北の湖と大麒麟。否定しようのない才能を理不尽に否定するために、人々は「品格がない」を伝家の宝刀のように振りかざす。

 

 最近は「仕切り」「立ち合いの手つき」を滅多やたらにうるさく言って、それを品格評価の切り札に使う。行司も土俵下の審判も、仕切りの時に両手をつかない力士を叱りつけ、「しょうもないヤツだ」と言わんばかりに睨みつける。「待った」なんかしようものなら、審判室に呼びつけられて大目玉を食うらしい。

 

 しかし諸君、昭和の時代のお相撲には、そんな話は全く存在しなかった。大横綱も、名大関も、両手どころか片手もつかずに、中腰からいきなり組み合った。証拠が欲しければ、当時の取り組みを動画でナンボでも確認できる。大鵬も、北の富士も、初代若乃花も、みんな中腰からいきなり組み合ってマワシを取りに行く。

 

「待った」も同じこと。昔は相手が「待った」をすれば、「お返しの待った」といって、自分も1度待ったをする。それが当然の権利というか、むしろ礼儀のようになっていた。

 

 その辺のことに全て知らんぷりをして、21世紀の力士の礼儀を論じ、白目をむいて叱りつけ、ましてや横綱&大関の品格なんか論じるのは、昔を知る相撲ファンにとっては、正直言って噴飯モノなのである。いやはや「ふにゃふにゃしていてダラシない」「気力が感じられない」と言われた大麒麟、今井君はその才能ゆえに心から愛した。

(12月22日のウィーンにて。ようやくランチにありついた。フィレステーキは小さく見えるが、これでも200グラムである)

 

 ところで諸君、外国旅行の際の今井君は、まさにその「品格に欠ける」オジサマと化している。頭にあるのは常に食うことと寝ることであって、せっかく早朝のウィーンで王宮のミサに出席しても、頭の中は「いつ食うか」「どこで食うか」「何を食うか」でパンパンに腫れ上がっている。

 

 そもそも朝6時のウィーンに到着して、他にどうしろと言うんだ?  空港からタクシーに乗って、予約したホテル「ル・メリディアン」に着いたのが午前7時。いちおう「チェックインできますか?」と尋ねてみたが、当然のように「まだお部屋の準備ができていません」とニンマリされてオシマイになった。

 

 荷物をフロントに預けて、朝7時のウィーン旧市街をあてもなく彷徨することになる。深夜も危険、早朝も危険、むしろ危険であるぐらいのほうが心も身体も引き締まるが、午前7時のウィーンじゃ、そういう甘いカホリの「危険」の要素さえない。むしろ「座る所すらない」という絶望しかないのである。

  (フィレステーキ後のデザート。オイシューございました)

 

 オペラ座の裏から散策をはじめ、10年前にお世話になったホテル・ザッハーを眺め、15年前に宿泊したホテル・アストリアの健在に感動し、シュテファン寺院の勇姿を見上げ、しかしそれだけでは全く時間が経過しない。

 

 それでも何とか午前9時、王宮のミサが始まった。カトリック教徒以外は2階席から眺めるだけであるが、さすがにクリスマス直前だ。ミサはマコトに盛大であって、少なくとも12月の朝の寒さはしのげる。

 

 終了、11時。おお、時は熟した。いよいよランチの店に駆けこめる。それでも品格あふれる今井君は、王宮からまずヴォティーフ教会を訪れた。「何が何でもメシ」と言うんじゃ、まさにオジサマの品格を疑われる。

 

 王宮を左に、美術史美術館を右に見て、大きく旧市街を迂回し、シュテファン寺院の裏のあたりに発見したのが、いかにもウィーンらしい重く古びたレストラン。4人がけのテーブルが窓際に6つか7つ並んで、店のダンナの応対も気さくである。

 

 おお、助かった。何しろ「ウィーンとの相性がイマイチ」と自覚する今井君だ。なかなか気分にピッタリくるレストランには遭遇しないのである。最後に胃袋に詰め込んだのは、羽田空港ダイアモンドラウンジのチキンカレー。あれから18時間ぶり、すっかり冷えきった胃袋に、たっぷりのヒレステーキと赤ワインを流し込んで、チェックインまでの人心地がついた。

 

1E(Cd) Kubelik & BerlinerDVOŘÁKTHE 9 SYMPHONIES 3/6

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