Sat 200321  まだ速読/白鵬/烈車戦隊トッキュウジャー(デンマーク紀行2)3920回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 200321  まだ速読/白鵬/烈車戦隊トッキュウジャー(デンマーク紀行2)3920回

 

「速い」ということには、おそらく誰でも憧れる。だから大学受験の世界では「速読」は常にアイドル扱いだし、「現代文の速読」は、やがて高校入試の世界にも広がって、今では中学生がメインの塾の前にも「速読コース」のノボリが翻っていたりする。

 

 その「速読」の正体について、ワタクシのブログでもこの5〜6回、ほとんど身もフタもないほど遠慮なく暴いてきたのであるが、こんなに言われてもまだ「でもやっぱり速読が必要なんじゃないか」とムクれてみせる生徒は多い。

 

「だって、ボクの参考書にもそう書いてあります」

「ワタシの通っている塾のセンセが速読の達人です」

「難関大の赤本にも『速読を鍛える必要があります』と書いてあります」

いやはや、いったんコンプレックスのトリコになると、速読のワナから抜け出すことはなかなか出来そうにない。

 

 この数回の「速読の正体① ② ③」で述べて来たことをカンタンに要約すれば、以下の4点になる。

「ゆっくりでも分からないが、大急ぎで読めば分かる」→ ご冗談ですか?

②「母国語でできないことも、外国語ならできる」→ タワゴトですか?

③「目を素速く動かせ!!」「視野を広げて1ページを一瞬で把握するんだ!!」→ 滑稽すぎませんか?

④「1問60行を15分で読めば合格。その現実を見たまえ」→ 60行/15分=「1分4行」「1行15秒」の超スローペースでも十分なのだ。

(そろそろ2019年夏の「デンマーク紀行」を始めたい。まずは人魚姫の像)

 

 しかしそれでも、やっぱり速読への憧れは消滅しない。お相撲は横綱♡白鵬なみにスピーディーに決着をつけた方がカッケーし、日曜朝のテレビの「戦隊モノ」だって、悪者や怪獣はとっとと退治した方がカッケー。21世紀の若者たちの精神は、どこまでもスピード重視。「じっくり落ち着いて完璧な勝利を」なんてのは、時代遅れに映るらしいのである。

 

 そこで諸君、ちょっと話が脱線するが、あんまり「スピード&スピード」と連呼されるから、これまで43回も優勝しているスーパー大横綱♡白鵬どんでさえ、春場所の後半にきて調子が若干おかしくなった。「危なげ」というものの一切感じられない、いつもの万全の相撲が乱れている。

 

 中でも厳しい批判の対象になっているのが、「張り手」と「カチ上げ」。1敗で迎えた12日目、関脇♨正代を相手にお見舞いした5発の乱暴&乱雑な張り手には、新聞各社もテレビ解説者もこぞって批判の火の手をあげた。

 

「力が衰えたことを自覚して焦ってるんでしょうかねえ?」であり、「ならばサッサと引退した方がいい」「喝!!」という意味の発言も少なくなかった。しかし諸君、あの張り手について、長老イマイは別の解釈をしている。

 (デンマークの通貨はクローネ。まだユーロではない 1)

 

「白鵬には、本場所の土俵上でさえ、後輩に気合を入れる豪胆さがある」と感じたことはないだろうか。「才能のある有望力士なのに、稽古でも本場所の取り組みでも、どうも覇気が感じられない」とファンが歯ぎしりして溜め息をついているような力士に対し、「おそらく自らへの批判を覚悟の上で」強烈な張り手やカチ上げを見舞うのだ。

 

 2年か3年前の逸ノ城がそうだった。ファンの期待を一身に集めていながら、実力に見合った成績があげられない。その彼に、白鵬は勝負がついた後に強烈なダメ押しをしてみせた。

 

 もちろんマスメディアは「横綱の品格に傷をつけた」と批判したのであるが、あれは諸君、張本氏の「喝!!」みたいな穏やかなものではなくて、格闘技の世界だからこそ許される熱い熱い「喝!!」だったのである。

 

 この2場所か3場所で話題になったのは、3場所前に遠藤関が顔面を血に染めることになったカチ上げと、春場所12日目、正代関に5発も連発した張り手である。ワタクシは、この2力士に対する白鵬どんの熱い熱い期待感と苛立ちを見た。

 

 2人とも、その才能においてはとっくに大関候補になっていてしかるべき実力派。ところが三役に上がってきては中途半端な勝ち星で平幕との往復を繰り返し、後からやってきた後輩に追い抜かれていく。

 

「おい、おまえたち、何をグズグズやってんだ?」。大先輩としては、数年前の逸ノ城と同じように、土俵の上で厳しい試練を与えたくなるのである。

 (デンマークの通貨はクローネ。まだユーロではない 2)

 

 すでに驚くべき実績を残して、メディアによる若干の批判なんか気にしない。それより、本来なら自分の後継ぎになるべきなのに、中途半端な成績を繰り返している力士たちに「そろそろホンキになったらどうだ?」と、洗礼の意味での張り手やカチ上げを見舞う。そういうことなんじゃないか。

 

 例えば正代は、先場所の終盤も優勝候補の1番手に上がりながら、最も大事な一番で幕尻・徳勝龍に呆気なく敗れて優勝を逃した。しかも「いつも午前2時まで起きてます」などと平気で発言。ここでスーパー大先輩が彼にしてやれることの1つが、本番の土俵上での熱血指導。実は11日目の5連発を、白鵬は場所が始まる前から決めていたんじゃないか。

 

 翌日からのあまりに強く&あまりにスピーディー、子供を相手にするような圧倒的な彼の取り口を見るに、彼は決して「力の衰えに焦りを感じている」などという弱っちい状況ではない。「張り手に頼らなきゃ勝てない」としか考えられないなら、新聞のスポーツ記者なんか早めにヤメにした方がいいんじゃないか。

 (デンマークの通貨はクローネ。まだユーロではない 3)

 

 もう1つ、「みんな速いのに憧れてんだな♡」と実感したものに、2015年ごろテレビ朝日でやっていた戦隊モノ「烈車戦隊トッキュウジャー」がある。

 

 若者が男女数人グループをつくって、怪獣なり悪の軍団なりと戦うのが「戦隊モノ」の基本。今井が覚えている戦隊モノは1970年代の「ゴレンジャー」ぐらいであるから、「トッキュウジャー」はさすがに衝撃が大きかった。

 

 その「ゴレンジャー」について、イマイは確か「C組」か「D組」で意見を述べている。「1人で戦う姿を見せた方がよくないか」「すぐに徒党を組んで『合体だ』なんてのはダメなんじゃないか」「どんなところにも1人で走って駆けつける『8マン』を見習うべきじゃないか」という趣旨である。

 

 その戦隊モノも、長い歴史を経て「ジュウレンジャー」から「ターボレンジャー」へ、「メガレンジャー」「ハリケンジャー」「タイムレンジャー」へと発展し、「アバレンジャー」あたりから調子を崩し、「マジレンジャー」「シンケンジャー」「ゴウカイジャー」で完全にオモシロ世界に突入、ついに「ニンニンジャー」「トッキュウジャー」に至った。

 (デンマークの通貨はクローネ。まだユーロではない 4)

 

 ニンニンジャーはもちろん忍者たちであって、まだ何とかバランスを保っているが、「烈車戦隊トッキュウジャー」となると、登場人物が「トッキュウ1号」「トッキュウ2号」「トッキュウ3号」みたいに統一され、変身してからも乗り換えに当たる「トッキュウチェンジ」もある。

 

 トッキュウ1号から順番に「レッドレッシャー」「ブルーレッシャー」「イェローレッシャー」「グリーンレッシャー」「ピンクレッシャー」と続き、「ディーゼルレッシャー」まで登場したかと思えば、「合体」ではなくて「連結」だったりする。

 

 いやはや、これ以上は実際に見ていただくしかないが、やっぱりこういうところにも日本人の速読信仰がヌッと姿を現す。やっぱりどうしても「トッキュウ」がお好きなのだ。

 

「のんびり戦隊ジュンキュウジャー」とか「弱虫戦隊カクエキテイシャー」などということには決してならない。意地でも速読がよくて、たった15分の距離でも快速急行がいい。「こだま」なんかもってのほか、何が何でも「のぞみ」に乗りたいのだ。

(デンマークの列車は、このタイプに統一されている。前も後ろも「黒ゴムぼぼん」な感じ。「黒ゴムぼぼんジャー」と呼ぼうじゃないか)

 

 だから今井がこれほど真面目になって「速読なんて、弱虫のやることですよ」と彼ら彼女らの手を握ってあげても、「すみません、急いでるんで」と、その手を振りほどいて滑稽なタワゴトの世界に突き進む。

 

 以前も書いたことだが、「速読」というコトバに嫌悪感を抱くのは、「速」「速」「速」と繰り返す割りに、繰り返しているその人物が「どのぐらいの速さか」を明示しないからである。

 

 自転車の速さか、クルマの速さか、新幹線の速さか、ヒコーキの速さか。馬の速さなのか、音の速さなのか、光の速さなのか。もし「速」というコトバで人を惹きつけようとするなら、目標をどこに設定するか明示するのが最低の礼儀だろう。

 

 そこで2020年にリニューアルした今井「A組」では、「音速」を目標にしましょう」と繰り返した。音の速さは、秒速300メートル+α。21世紀の科学から見て、何ともアナログな存在であり、東大京大志望の秀才諸君には「その程度の速さでいいんですか?」と苦笑されるかもしれない。

 

 しかし諸君、現実の受験生の平均読解速度は、60行に対して20分程度。同じ60行をネイティブのナレーターが朗読すれば、たった5分で済む。いま公開授業で扱っている長文問題は82行の「超長文」だが、これもネイティブに朗読してもらうと6分30秒だ。

 

 だから、音読ないし朗読のスピードで長文問題を理解する力があれば、他者が15分から20分かかってやっと読み終わる英文を、その3分の1の時間で理解できることになる。

 

 目指すべきスピードは、それだと思わないか。ネイティブが朗読するスピードで、英文の大意を把握する能力があれば、長文読解とリスニングを同時に征服できるじゃないか。

(デンマークの電車はみんなタッチ式。丸い青センサーにタッチする 1)

 

 ベッタリ全文訳して1時間半もかかっている予習ではなくて、ネイティブの朗読を集中して聞き取る予習に変えるべき時が来ているんじゃないか?

 

 そして実際、最近の公開授業では、東京大学の長文問題をリスニング問題の形式に変更して扱い、しかも設問解説を終えた時、誰も疑問を差しはさめない明快な解説を行なっている。

 

 長文戦隊カイセツジャーの得意技は、いまやリスニング。悪役として「全訳ベットーリ」だの「妖怪そくどくじゃ」だのが登場するが、長老サトイモの前には合体も連結も必要なしに脆くも退散する。快速特急サトイモ号は、今日もまた驀進、無敵の快進撃を続けているのだ。

(デンマークの電車はみんなタッチ式。丸い青センサーにタッチする 2)

 

 さて、いろんな「コロナ自粛」が影響して、まだまだ掲載する写真が手に入らない。日々のゴハンの写真を載せて切り抜けてもいいが、何しろイマイは粗食の王。お茶漬けとかオムズビとか、蕎麦とかうどんとか、そんなの載っけても面白くも何ともないだろうから、昨年夏の「デンマーク紀行」から、とりあえず写真だけでも掲載していくことにした。

 

 2019年7月27日、夏の公開授業を全てスーパー大爆笑の連続の中で完了した今井は、羽田空港からの深夜便に搭乗、ウィーン経由でコペンハーゲンに向かった。

 

 コペンハーゲンは、懐かしい町である。2005年2月8日に代々木ゼミナールで最後の授業を終えた翌日、若き今井はスカンジナビア航空のヒコーキでコペンハーゲンに到着、すぐに小型ヒコーキに乗り換えて吹雪のベルリンに降り立った。「ヨーロッパ40日の旅」の始まりだった。

(7月なのに、冷たい曇天が毎日続いた。駅も閑散。ワタクシはまもなく高熱が出て、寒さに震える日々が続いた)

 

 今回は逆に、ウィーン経由で目的地がコペンハーゲン。ウィーンからはオーストリア航空を利用し、滞在は8月5日まで。10日間しか休暇が取れなかったので、「デンマークみたいな小さな国だったら10日あれば何とかなるだろう」と考えたのだった。

 

 ウィーンの空港で買ったブレッツェルがなかなかの美味だったことを除けば、旅の途中にあまり面白い話はない。到着したコペンハーゲンは、小雨。8月に入ったばかりというのに、おそらく気温は15℃前後しかない。

 

 何しろ北欧だ。2年前の夏のオスロの旅から推して、このぐらいの低温は織り込み済。覚悟して毛糸のベストを着てきたが、それでもやっぱり足りなかった。実はこの2日後から高熱が出て、旅のほとんどを眩暈に耐えながら過ごすことになるのだが、こんなに寒いんじゃ、それもやっぱりやむを得ない。

       (コペンハーゲン中央駅風景)

 

 宿泊は、クラウンプラザ・コペンハーゲン。「いかにもクラウンプラザ」を実感する「何かが足りないお部屋」であって、最上階のジュニアスイートからの眺めは悪くないが、何しろ水回りが悪い。お風呂の水がなかなか流れていかないイライラに苦しむ日々になった。

 

 空港からバスでホテル到着、午前11時。しかし「お部屋の準備がまだできていません」「おそらく午後3時までかかります」と言われてチェックインを諦め、荷物を預けてコペンハーゲンの散策に出かけることにした。

 

 ホテルからコペンハーゲンの市街地には、無人運転の地下鉄またはデンマーク国鉄を利用して15分ほど。改修工事中のビルが多くて、散策にも工事中の地下道を長い間さまよわなければならない。やがて雨はやんで重い曇天になったが、マコトに地味な旅のスタートになってしまった。

 

1E(Rc) Rozhdestvensky & Moscow RadioBARTOKDER WUNDERBARE MANDARIN  & TWO RHAPSODIES FOR VIOLIN & ORCHESTRA

2E(Rc) Darati & DetroitSTRAVINSKYTHE RITE OF SPRING

3E(Cd) Akiko SuwanaiDVOŘÁK, JANÁĈEK, and BRAHMS

13G(β塩野七生:十字軍物語1:新潮社

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