Sat 191123 福岡ダブルヘッダーの大盛況/業者の身の丈/追及すべき様々のこと 3887回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 191123 福岡ダブルヘッダーの大盛況/業者の身の丈/追及すべき様々のこと 3887回

 11月4日というのだから、もう20日も前のことになる。朝から福岡でダブルヘッダーの仕事があって、前日の午後には福岡に入っていた。朝10時から北九州市で90分、そのあと一気に福岡市香椎まで南下して、15時から午後の部を90分。まさに充実の1日を過ごした。

 

 思えば、20日前にはまだ「民間試験を導入するか否か」のすったもんだが続いていた。この数年、私の立場はそれなりに難しいものであったが、公開授業でも保護者会でも高校の先生方の会合でも、一貫して「慌てなさんな」「右往左往しなさんな」「どうせそんなに大きく変わることはありませんから」だった。

 

 これは諸君、ほとんど「古老の知恵」に近い。私はまだまだ「古老」などという有難い称号を自称することはできない。言わばまだ「青臭い洟ったれ」に属している。しかし話が大学入試ということになれば、自らが受験生だった遥かな遥かな昔から、その変遷の歴史をギュッと見つめ続けてきた。

 

 20世紀後半にあった東京大学「一次試験」から、昭和の終わりの「共通一次」へ。20世紀末に始まったセンター試験から、今度の新共通テストへ。毎度毎度「大きく変わります」「今までの試験対策では太刀打ちできません」と新聞やテレビが大騒ぎするわりに、実際に始まってみれば、前のテストとちっとも変わっていない。

    (11月4日、北九州・折尾、460名の大盛況 1)

 

 冷静に歴史を見れば、「大きく変わります」の報道で慌ててふためくのが最も愚かしいのだ。しかし2017年の冬あたりから人々はまさにその「右往左往」を始め、「どの民間試験が一番有利か」などという下らない話題が予備校の進路指導の一環にさえなった。

 

 その最たるものが「オックスフォード英検オシ」である。薦めたのは、Pretty塾とA新聞。この2社は何故か昔から驚くほど仲が良くて、何かと言えばタッグを組んで新聞紙上に特集記事を掲載する。民間テスト導入延期の決定以来、A新聞には超オススメだった「オックスフォード英検」の「オ」の字も出てこないが、いったいどうしたんだろう。

 

 ついでに、「民間テスト対策をやって損した」「我々は被害者だ」「責任者、出てこい」みたいな反応も、新聞紙上に珍しくない。いやはや、「役に立たない民間テスト対策を懸命にやって、いきなり中止になったんじゃ、今までの努力をどうしてくれるんだ」「マジメな高校生が可哀そう」「カネかえせ」みたいな反応さえ、メディアを賑わせている。

 

 私は、決してそうは思わないのだ。まず、15歳・16歳・17歳の段階で、「4技能を身につけよう」「話せるように努力しよう」「読めるだけじゃ物足りない」と考え、懸命に努力した諸君は、「ちっとも損なんかしていない」「培った英語力は、そのまま実社会で100%役立つのだ」と胸を張るべきである。

 

「損した」という発言は、その生徒、その教師、その予備校が、今の受験勉強を「大学受験だけのもの」「点数を稼ぐためだけのもの」「その先の人生とは別に何の関係もないもの」と考えている証拠なのである。

 

 A新聞でもM新聞でも、もしも若い世代の英語力を本当に心配しているのなら、直ちに社説なりコラムなりで、「やってきた4技能対策は、決して無駄じゃない」「君たちはちっとも損なんかしていない」「前を向きたまえ」と、熱い激励を飛ばすべきなんじゃないか。

    (11月4日、北九州・折尾、460名の大盛況 2)

 

 新聞各社にも、野党の諸君にも、「桜を見る会」の追及なんか後にして、ぜひとも青年の教育問題に集中してほしい。桜問題は、ヌカミソの中の漬物みたいにじっくり寝かしておいて、もっともっと時間をかけて発酵させればいい。ムンムン臭い匂いを放って、醜い桜漬けは自然に腐蝕していく。腐るまで、じっくり&ネチネチやるほうが得策なんじゃないか。

 

 一方の英語教育問題は、1分1秒を争う問題なのだ。4技能試験については、何とこれから5年も塩漬けにしておくことになっちゃった。その間に、毎年50万人以上の若者が、5年で250万から300万もの青年たちが、大切な4技能について放置され、民間テスト関連の努力を「ムダ」とせせら笑われて終わるのだ。

 

 そうこうするうちに、日本の教育を牛耳ろうとしたBNS社はナンボでも巧みな逃げ口上を持ち出すだろうし、「東大を指導してください」という恐るべき旧態依然の発言を平気でする元大臣閣下も、どんどん勢力を盛り返す。諸君、教育問題を真剣に論じあうのは、今しかないのだ。

    (11月4日、北九州・折尾、460名の大盛況 3)

 

 特に「民間テスト」であるが、まずその運営の杜撰さをもう一度キチンと見直すこと。あえて書いてしまえば、例えば11月24日の「TEAP」については、ホンの3日前まで「試験監督、急募」をやっていた。アルバイト募集サイトを見れば明らかな事実である。

 

 これはもう「臆面もなく」という態度である。誰でも見られる求人サイトで「3日後の試験監督を急募」などというのは、これはほぼ「業者の開き直り」と呼ぶしかない。受験者の心を思いやるなら、これほど目前に迫ったテストの監督者募集は、せめてコッソリと、恥ずかしそうにヒッソリと、見つからないようにやるべきなんじゃないか。

 

 試験監督者がこういう状況だとすれば、同じ業者テストの採点者だって、やっぱり「急募」のバイトばかりということである。いやいや、それどころじゃない、採点者どころか、問題制作者だって、解答解説の執筆者だって、みんな急募のバイトである可能性も見えてくる。

 

「短期でサクッと稼げるバイト」というBNSの恥ずべきセリフは、すでに有名になっちゃった。共通テストの国語の記述式問題は、その「サクッと稼げるバイト」に50万の青年の未来を丸投げして恥じない、まさにオトナの怠惰の象徴である。

 

 これほど杜撰な試験を、この国は青年たちにほぼ強制しようとしていたのだ。ならば採点も面接もいっしょ。単なるテスト業者に教育を委ねるのは、以前も書いたけれども、徴税や警察の仕事を民間に委託するのと同じ、中世の悪代官の所業と大して変わらない。

    (11月4日、福岡市・香椎、250名の大盛況 1)

 

「身の丈」発言は、実は民間テスト導入中止のヒーロー♡萩生田どんばかりの問題ではない。まずはBNSやらTEAPやら、テスト業者の皆様が大いに自らの身の丈を省みるべきである。

 

 若者の身の丈を論ずるほどの能力があるのかどうか、まずは鏡をよく見て自らの身の丈を熟知してから、「我々がやります」という傲慢なその手をあげるべきだった。これは要するに「テスト業者の身のほど知らず」が招いた国の恥の記録なのである。

 

 次にどうしても責任を痛感しなければならないのは、テスト業者の身の丈を誤って判断した行政サイドの人々である。試験監督もバイト、採点もバイト、ということは、問題作成者も面接者も解説執筆者もおそらく臨時の間に合わせ、そういう世界を、まさか知らなかったとは言わせない。

 

 一寸法師を巨人と見間違い、枯れススキやら影法師やらを恐るべきバケモノと見誤って青年世代を怯えさせた罪は、決して放置すべきではない。4技能の養成は、青年たちを熱く勇気づけてこそ達成できるものであって、枯れススキやら影法師やらの黒い影で脅かし、ムチで怯え上がらせて強制するものではなかったはずだ。

    (11月4日、福岡市・香椎、250名の大盛況 2)

 

 そもそも21世紀の日本は、試験&試験で試験がありすぎなのだ。試験監督が足りなくなるほどの試験ラッシュ、採点にも作問にもバイトやらAIが主役をしめるほどの暑苦しい試験オンパレード。全てはテスト業者の横暴から始まっている。

 

 これはあくまで自戒をこめながらの発言であるが、専門の模試制作部署が存在して最後の最後まで模試に責任を持つのでなければ、これ以上の模擬試験なんかで高温多湿な日本をサウナ並みにムシムシ暑苦しくしてはならないのだ。

 

「テストマニア」になるのは構わない。それは個人の自由である。しかしテストマニアだらけの日本を、私はあんまり好きではない。青年諸君には、テストの点数を自慢するより、たっぷり我々の授業を受けて、良質な授業の力でズンズン力強く前進を続けてほしいのだ。

 

「試験制度そのものが、最も教育上悪い」。私が新聞の解説委員なら、明日の社説の表題にこの1行を掲げたい。オトナの怠惰、行政の無責任。野党議員諸君も、今ここで急いで議論すべき問題が何なのかの識別もできないらしい。

 

 教育制度そのものが、オトナの怠惰と無責任を青年に見せつけている惨状を、サクラ問題なんかで覆い隠すのは愚かである。というか、今この問題を論じないマスメディア自体が、マコトに教育上よろしくないんじゃないか。

     (11月7日、京都駅前、370名の大盛況)

 

 だからせめて私は、目の前にギュギュッと集まってくれた諸君に、ホントのことを熱く語りかけたいのだ。北九州(正確には「折尾」という町)、460名。福岡市香椎、250名。たった1日で700名を超える諸君に語りかけられる素晴らしい機会に、私が強調したのは以下の点であった。

 

「慌てなさんな」

「落ち着きたまえ」

「どの民間試験が有利かを論じているようなズルいオトナには、決してついていってはならない」

「どんなに制度が変わっても、基礎基本が諸君を裏切ることは絶対にない」

「単語・文法・音読の徹底で、基礎力をムンムンつけるのが全て」

「日本人どうしがチャラチャラ英語でじゃれあうようなオママゴトじゃなくて、もっと質実剛健に、徹底した音読に励むべきじゃないのか」

 

 これほどの気迫は、そんじょそこらの予備校講師には滅多に見られない。だから、北九州460名も、福岡250名も、15秒に1度の大爆笑を繰り返しながら、もう完璧に夢中になってくれた。保護者の皆様まで熱中して大喝采を繰りかえす。「慌てなさんな」「落ち着いて」「とにかく基礎力」と言い続けた信頼感は、やっぱり別格なのである。

(11月6日、福岡からの帰途に大阪で文楽。超長編「忠臣蔵」を通しで見たご褒美に、忠臣蔵の手ぬぐいをもらった)

 

 というわけで諸君、11月4日の私は、全身全霊を込めた90分授業のダブルヘッダーで疲労困憊。それでも「今井先生のC組とB組で、推薦の第1志望に合格できました」という高3女子の報告で、一気に元気を取り戻した。

 

 こうなれば、もうやる気満々で懇親会に突入。主催者は、北九州・折尾で抜群の合格実績を誇る老舗塾である。綾瀬はるか主演の映画「おっぱいバレー」の舞台は「戸畑三中」という設定であるが、そのタイトルの是非はともかく、まさに今日の舞台は小倉・若松・戸畑・門司・八幡、若戸大橋のたもとで近代日本経済を支えた製鉄業のメッカなのであった。

 

 その老舗塾の社長自らが運転するクルマで、福岡・中洲のこれまた老舗の寿司屋に乗りつけた。寿司屋の皆様も一心不乱に熱く対応してくださる。日本の青年たちを混乱の泥沼に導いたテスト業者なんかとは、まさに天と地の違いを感じる1日であった。

 

1E(Cd) Barenboim & ChicagoSCHUMANN/4 SYMPHONIEN 1/2

2E(Cd) Barenboim & ChicagoSCHUMANN/4 SYMPHONIEN 2/2

3E(Cd) Holliger & BrendelSCHUMANNWORKS FOR OBOE AND PIANO

6D(Pl) 大阪・国立文楽劇場:

通し狂言 仮名手本忠臣蔵(八段目より十一段目まで)

八段目 道行旅路の嫁入
九段目 雪転しの段・山科閑居の段
十段目 天河屋の段
十一段目 花水橋引揚より光明寺焼香の段

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