Thu 191003 金ピカ先生&室井光弘師/金沢の大盛況/みんなのうた/盛京亭(387 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 191003 金ピカ先生&室井光弘師/金沢の大盛況/みんなのうた/盛京亭(387

 このごろのワタクシは、朝から晩まで泣いてばかりいる。シクシク泣くこともあれば、熱く号泣することもある。1日に4回も5回も泣いている中年男なんか、滅多に存在しない。これは恐るべき珍事と言っていい。

 

 朝は5時に起きる。5時に起きてすぐお風呂を沸かし、5時15分から6時30分ごろまで、驚くべき長湯を楽しむ。お風呂の前に炭酸水を約400mlも飲むから、100分近い長湯をしても、それで熱中症になっちゃう危険はほとんどない。

 

 ただし、それは「汗をかくだけなら」という前提条件でのことである。人間が体内から排出する水分とは、①に汗、②に吐息、③に(尾篭な話で申し訳ないが)トイレでの「what nature provides」である。

 

「自然が与えてくれるもの以外は流さないでください」と、南イタリア・ブリンディシの考古学博物館のトイレに大きな貼り紙があった。さすがイタリア、例のブツについても、英語でマコトにユーモアたっぷりの表現をなさるのである。

 

 しかし諸君、朝のお風呂で今井君は毎日、①でも②でも③でもない熱い液体をお目目から大量に放出するのである。それが1日で最初の「涙」であって、まあ笑ってくれたまえ、お風呂で世界文学全集を熟読しながらドクドク涙を流す中年サトイモなんてのも、この世には存在するのである。

 

「何を読んでるの?」であるが、諸君、驚くなかれ、今ドクドク涙を流して読んでいるのは、リルケの「ドゥイノの悲歌」。同じリルケの「マルテの手記」「神さまの話」でもドクドク涙は止まらなかったが、「ドゥイノの悲歌」となると、あんまり涙を流しすぎ、「涙のせいで熱中症」という事態を招きかねない。

     (9月30日、再び金沢の大盛況 1)

 

 お風呂から出て、午前6時半。流れた涙の分だけ「十分な水分補給」を心がける。仕事のない日曜&祝日なら、この段階ですでに「美しい黄金色に輝くアルコール入り炭酸飲料」なんてのもアリじゃないか。冷凍庫でキンキンに凍らせたビアジョッキにコイツを注げば、涙の分の水分ぐらいは簡単に補給できる。

 

 しかし炭酸飲料を飲み終え、続いて熱いコーヒーを2杯飲みながら新聞をめくれば、いやはや今井君はその日2度目の熱い涙を止められない。これまでの一生をかけて愛してきた予備校文化が、どうも終焉に近づいている気がしてならない。

 

 2人の予備校講師が天国に旅立った。1人は、もちろん金ピカ先生、もう1人は(おそらく知っている人は少ないだろうが)室井光弘師である。水と油ほどに対極に位置するお2人が、ほんの3〜4日の間に相次いで亡くなった。

     (9月30日、再び金沢の大盛況 2)

 

 金ピカ先生については、申し上げることはほとんどない。代ゼミから東進で大活躍なさった方である。予備校講師のテレビ出演のサキガケであって、ホンモノの日本刀を抜いて「ズバリ」のポーズが、写真週刊誌や20世紀末のブラウン管を飾り続けた。

 

 かくいう今井君も、予備校講師になりたての頃、超人気講師のパフォーマンスを学ぼうと考えて、彼の参考書を1冊だけ買ってみた。「文法中心の授業は『ダメになる英語』。オレ流の直読直解は『タメになる英語』。英文にスラッシュを入れて頭からグイグイ読むんだ」。マコトに威勢がよかった。

 

 思えば、四半世紀も昔の話である。東進の各校舎には金ピカ先生専用の「金ピカ♡ルーム」なんてのもあったらしい。「東進ドリームチーム」「ハッキリ言って、講師陣が自慢です」みたいなド派手広告が、連日のように新聞紙面を飾った。

 

 当時のワタクシは、真面目な真面目な♡駿台予備校講師。まだ代ゼミに移籍する前だから、そういう予備校文化に対しては甚だ否定的だった。駿台の御茶ノ水を中心に、「代ゼミ的な予備校文化には意地でも組したくない」というツマラン矜持をもって生きていた。

(伝説の駿台テキスト「CHOICE」。2学期12回分で、たった40ページしかない)

 

 何しろ当時の今井は駿台の伝説的テキスト「CHOICE」を担当させてもらっていたのである。駿台予備校が昭和中期から使い続けている名物テキストであった。

 

 19世紀から20世紀中盤にかけての英米の作家・哲学者・エッセイストの名文を集めて、これを和訳するだけ。まあ当時の代ゼミ文化から見たら退屈きわまりない授業であって、「ズバリ!! 佐藤忠志の直読直解」に夢中の代ゼミ生なら、10分も持たずに濃密な睡眠の世界に直行、そういう性質の授業であった。

 

 1回の授業で進むのは、せいぜい10行程度。50分もかけてたった10行じゃ、そりゃ生徒は退屈もいいところだろう。しかし名物テキスト「CHOICE」を担当する講師は、当時の駿台を代表するツワモノばかりだった。

 

 総帥の奥井潔師は、東洋大学の元・文学部長。他の講師陣も、「千葉大学で倫理学の講座を担当しています」とか、「さっき芥川賞を受賞したばかりです」とか、「間もなく某国立大学の教授に就任して現代哲学を教えます」とか、予備校に通う生徒諸君が思わずウットリしてしまうような知的な人々ばかりなのであった。

(金沢片町の老舗お寿司屋さんにて。キュウリのカエルがキュートである)

 

 そういう知的猛者の真っただ中に、当時はまだ新人だった今井君も加えてもらった。「CHOICEを担当してください」と告げられた時には、若き今井君は信じがたい心地がした。だって自分が18歳の時、亡き鈴木長十師のCHOICEに感激したのが、予備校講師になった何よりのきっかけだったのである。

 

 CHOICEこそ、20世紀予備校文化の精華だった。和訳しなきゃいけないのはホンの10数行。そんなの15分もかからずに終わっちゃうから、残りの30分あまりは、本文に即して徹底的に知的な話で生徒諸君を鼓舞していかなきゃいけない。

 

 カントにヘーゲル、ウィトゲンシュタインにウェーバー。ホメロスやシェイクスピアに逃げてもいいが、マルクスももちろん必須。今井君はあえてヌーヴォ・ロマンだの泉鏡花だの、人形浄瑠璃だのギリシャ悲劇だの、他のスーパー知的なセンセ方に負けないようにグイグイ意表をついた。

(金沢片町の老舗お寿司屋さんにて。子持ち鮎と土瓶蒸しの風景)

 

 おかげさまで、1993年から1997年に駿台をやめるまで、一度も負けることはなかった。泉鏡花で大喝采を浴びるなんてのは、英語講師としてなかなかの出来バエだったと信じる。だって諸君、大学教授や芥川賞作家と競い合って、一歩たりともヒケを取らなかったのだ。

 

 その「芥川賞作家」が、先日亡くなった室井光弘師。福島の会津高校から慶応文学部を卒業1994年、「おどるでく」で芥川賞受賞。1988年には「零の力 J.L.ボルヘスをめぐる断章」で群像新人文学賞・評論部門で当選。今井君なんか足元にも及ばない真面目な秀才でいらっしゃった。

 

 こうして、予備校講師として完全な対極にいらっしゃったお二人が相次いで亡くなられると、やっぱりワタクシにはそれが予備校文化への弔鐘のように思えるのである。

 

 今や世の中は、何が何でも4技能。英語はどこまでも「役に立つか、立たないか」という功利的視点でのみ論じられ、「知的か否か」「楽しいか楽しくないか」なんかどうでもいいらしい。「道案内ができるか」が先で、文章を読んで痺れるほどの知的快感に酔うことなんか、2の次3の次になっちゃった。

(金沢片町の老舗お寿司屋さんにて。ツボを押さえたお寿司が絶品だ)

 

 ま、世の中が世の中だ、そんなことをいつまで嘆いていても致し方ないのである。嬉しい涙だってある。ラグビーW杯における日本の観客への海外からの絶賛である。

 

 前回の記事でも書いたとおり、鳴り物やブーイングについてワタクシはホントに心配していたのだ。しかし実際には、スタジアムの強烈な湿気への不満、レフェリーの判定への不満、開催国に有利な日程への不満、そういう不可避なものを除いて、日本での開催についての不満はほぼ皆無なのだ。そりゃ感激の熱い涙が止まらなくて当然だ。

   (10月1日、東京渋谷・南平台のウナギ屋にて 1)

 

 9月30日の今井は、いろんな涙がドクドク止まらない状況の中で、またまた金沢に出張した。「なんだか金沢にばかり来ているな」であって、9月16日には仕事で金沢、9月24日には富山から徳島に向かう途中で金沢、こうして2週間に3回も金沢を訪れれば、「何かワケでもあるんじゃないか」と言うオカタもいるかもしれない。

 

 しかし諸君、すべてお仕事の一環だ。30日金沢のお仕事は、金沢の南側に接する野々市市の大ホールにて。19時半から21時、出席者は250名を超えた。お馴染み90分間の大爆笑の連続はとどまるところを知らず、しかも90分ぴったりで終了の離れワザを演じた。

 

 終了後は、金沢片町のお寿司屋さんで豪華な祝勝会。カエルの形の可愛いキュウリに感激した後は、片町界隈を深夜までハシゴして、最後はカラオケスナックへ。午前3時まで激烈に歌いまくって、いやはや相変わらずサトイモ君の活力には「限度」と言ふものが見つからない。

   (10月1日、東京渋谷・南平台のウナギ屋にて 2)

 

 そんな日々を過ごしつつ、10月1日、朝10時、二日酔いの目をこすりながらNHK「みんなのうた」に久しぶりに感激した。タイトルは「かむかむしかもにどもかも」。作詞作曲:玉置周啓、うた:MONO NO AWARE

 

「みんなのうた」は、最近なんだかずいぶんメッセージ性が高くてコムズカシい傾向。「こんなに面倒な歌ばっかじゃ、NHKから子供の歌を救わなきゃな」と感じていたが、「かむかむしかもにどかも」は秀逸だ。諸君もぜひ聞いてくれたまえ。

 

 NHK総合の放送予定によれば、明日10月4日、午前1055分から11時が直近だ。諸君、「みんなのうた」をバカにしてはいけない。20世紀の昔から「山口さんちのツトム君」「およげ!!タイヤキくん」「だんご三兄弟」、歴史に残る大ヒットを続けざまに飛ばしてきたのである。

 

 ワタクシは今、様々な熱い涙にくれながら「かむかむしかもにどかも」 の大ヒットを夢見ている。ただし、すでにYouTubeにアップされている実写版のヤツじゃダメだ。必ずNHKで放送される完成品を目撃すること。「ロバとラバの区別」のあたりで、諸君も大ヒットを予感するはずだ。

 (こんな日本酒をいただいた。おいしゅーございました)

 

 ついでだから書いておけば、10月3日の今井君は昼メシを貪りながらNHK「サラメシ」を眺めていた。すると驚くじゃないか、昨年のちょうど今頃ワタクシがチャーハンを貪りまくっていた京都祇園の名店「盛京亭」が、女優・赤木春恵の馴染みの店として紹介されている。

 

 今やワタクシは、それだけのことで感涙が止まらないのである。昨年の今井がチャーハンをたっぷりオカワリしたことを絶賛してくれた店の優しいオジチャンが、故・赤木春恵サンの人生をも同じトーンで絶賛していた。

 

 それだけのことで涙が溢れすぎ、またまた熱中症になりかける愚かなサトイモ君なのであったが、「盛京亭」については、以下の記事をクリックして読んでみてくれたまえ。

Fri 190125 新宿でしょんぼり/盛京亭/おかず焼き「壹越」(京都すみずみ18)3791回

 

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2E(Cd) HarnoncourtBEETHOVENOVERTURES

3E(Cd) Solti & ChicagoBEETHOVENSYMPHONIES 1/6

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