Sat 190727 ホコよりもタテが大事/京都で山鉾巡行/近江八幡350名の大盛況 3861回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 190727 ホコよりもタテが大事/京都で山鉾巡行/近江八幡350名の大盛況 3861回

「九仞の功を一簣に虧く」というコトバがあって、「九仞」は「きゅうじん」、「一簣に虧く」は「いっきにかく」と発音する。「求人の功を一気に書く」みたいなフザけた変換は、我が同志Mac君ですらしないのである。

 

 こんな難しい漢字、さすがに現代文の漢字テストでも出るわけないし、何しろ今や猫も杓子も「論理的思考力」「知識偏重じゃダメなんだ」の一点張りであるから、漢字テストなどという古色蒼然としたシロモノも、近い将来「過去の遺物」と呼ばれているに違いない。

(滋賀県近江八幡、予定を100名上回る350名の大盛況 1)

 

 だが(朝日新聞的な表現を用いるとすれば)ちょっと待ってほしい。何でもかんでも論理、猫も杓子も論理、論理以外は全て排除して、大学教育から文系科目を削除する、そういう方針はマコトに危険である。

 

 論理的思考はあくまで直線的なものであって、曲線的論理だの楕円形の論理だのというのは、もともと概念矛盾である。しかし直線的なものは、常に暴走しやすい本質を持ち、その暴走を食い止めなければ、マコトに好ましくない結果を瞬時に招くことになる。

 

 論理の暴走を阻止する城壁となるのが倫理的思考であって、以前も一度書いたことがあるけれども、ゴンベンをニンベンに入れ替えただけで、その性質はほぼ180°切り替わる。

 

 言わばゴンベンの論理君は「矛」であり、ほぼ直線的に他者を攻撃する。ホコには「諸刃のヤイバ」もあって、その攻撃性は他者ばかりか自らに向かうこともある。シャープな切れ味は、他者も自らも容赦することはないので、多くの場合それは悲劇を暗示する。

     (サトイモ入道、近江八幡での勇姿 1)

 

 一方、ニンベンの倫理君は「盾」であって、直線的なホコ君の攻撃を巧みにかわすことがその本性である。かわす、漢字で書けば「躱す」であるが、これもまた難しすぎて漢字テストに出題されることはなさそうだ。

 

 要するに「矛盾」の故事に示されるホコとタテの対比なのであるが、今井君はマコトに臆病な生き物なので、常に盾の支持者である。ホコ君、何もそんなに不機嫌に他者や自らを攻撃してばかりいないで、守り続けるタテの側の楽しみも味わってみないかね?

 

 ま、明らかにホコの方がカッコいいのである。アニメキャラクター的に言ってみれば、18歳のスリムなイケメン青年剣士であって、お目目もあくまで大きく、瞳は美しく輝き、肉体の動きは指先まであくまでシャープ。その魅惑的な笑顔を一瞥すれば、男子も女子もみんな矛田矛之介に夢中の体たらくである。

     (サトイモ入道、近江八幡での勇姿 2)

 

 いやはや、一方の盾山盾兵衛は、守ってばかりの臆病者にしか見えない。何しろ躱すことがその身上なのだから、シャープさはほぼ不要である。相手の攻撃を跳ね返すには、直線より曲線、平面より曲面が好ましいのは言ふまでもなくて、楕円球状のお城がもっとも攻撃しにくい。

 

 その表面も、ぬるぬる&ぬめぬめ、得体の知れない盾や城壁がいいじゃないか。アニメキャラクターとしては、ヒーローから最も遠い不定形の中年男。盾の理想はそれである。いわば「マユ型のジュンサイ」がいい。

 

 だから当たり前のことだが、コドモはもちろんのこと、コドモたちを正しい方向に導かなければならないオトナたちまでが、アンチ盾山盾兵衛になりがちだ。そんな不定形の得体の知れない怪物は排除して、「ホコになりなさい」「シャープに生きなさい」と言い聞かせるわけだ。

 

 21世紀初頭の日本の教育は、まさにそれであった。数学や理科など論理的なホコ教育に夢中になるあまり、文系科目でさえ倫理的なタテ教育を疎かにした。「AIに負けないためには論理的思考が大事」などと言う人まで現れた。

 

 しかし諸君、繰り返すようだがAIこそまさに倫理なき論理の究極の姿であって、ニンベンさえ排除すればゴンベンがどれほど激しく跋扈するかを示すのに、これほど優れた具体例は考えられない。囲碁や将棋に限らず、人間の論理的思考力でAIに対抗するのは、今やほぼ不可能である。

    (京都・新町通りをいく長刀鉾の勇姿 1)

 

 だから諸君、せめて中等教育においてはニンベンを大切にしたいじゃないか。文系科目にも、もちろんゴンベン君は不可欠。しかし今この段階で、楕円で曲線で曲面なニンベン君の力をもっともっと確固たるものにしてあげないと、矛之介の暴走は止まらない。

 

 だが(再び朝日新聞的な言い回しであるが)ちょっと待ってほしい。どうして今日の今井君は「九仞の功を一簣に虧く」の話から始めたのだろうか。ゴンベン矛之介は、きっとその辺りを攻撃してくるのである。

 

「サトイモ君、君の書く文章には論理が欠けている。書き出しと全くカンケーネーことを書きまくって悦に言っているだけだ」とおっしゃるのだ。確かにそうかも知れない。

 

「九仞の功」とは営々と築き上げてきた努力のこと。「一簣」とはモッコ1杯分の土をさし、せっかく努力して山を築いてきても、最後の一山の土を盛るのを怠ったために、仕事が台無しになってしまうことを言う。

 

 うぉ、確かに、間違いなくカンケーねー。非論理的、非ゴンベン的であって、そこいら中の偉いセンセーたちに冷笑的に叱られる。「だから予備校講師にしかなれねえんだよ」の世界である。

    (京都・新町通りをいく長刀鉾の勇姿 2)

 

 そもそもワタクシが「九仞の功を一簣に虧く」に言及したのは、東京ステーションホテルで使用していると思われる酢酸系の洗剤について、一言述べたかったからなのであった。客室の中やリネン類には使っていないが、廊下のジュータンからは間違いなく酢酸系の洗剤のニオイが立ちのぼっていた。

 

 東京ステーションホテルは、数々の近代日本文学に登場する伝統ある超一流ホテルである。大改修完成ののち、ホントに久しぶりに館内に足を踏み入れてみると、確かに素晴らしい伝統のカホリがした。今回は足を踏み入れなかったが、久しぶりにバー「オーク」のカウンターにも座ってみたいのである。

 

 しかし諸君、その「九仞の功」を、酢酸系洗剤の鼻をつくニオイで「一簣に虧く」。これはマコトに残念なことだ。酢酸系の洗剤の方が確かに安価であって、コスパを考えるならこれもやむを得ない。しかし諸君、そのコスパ、「一簣に虧く」の無念さを思えば、むしろ無視していいコスパじゃないか。

    (京都・新町通りをいく函谷鉾の勇姿 1)

 

 実はワタクシ、その辺のことをサラッと書いて、すぐに舞台を7月17日の京都に移そうと考えていたのだ。717日、祇園祭のクライマックス「山鉾巡行」の朝に、今井は京都の街にその楕円形の姿を現した。あえて東京駅に宿泊したのも、実はそのためなのであった。

 

 ここまで来て、読者諸君は「ヤマボコ」の響きにハッとさせられたのではないか。「非論理的だなあ」「ゴンベン欠如のサトイモだなあ」と冷笑的に読んでいた人も、ここで再び別の形で「ホコ」が登場したことで、楕円の盾の老獪さを知り、ゴンベン型の攻撃ばかりが能じゃないことに気づいて、ふと身構えたのではなかったか。

 

 今井君はすでに10年以上も、祇園祭の最終日、山鉾巡行に通い続けている。大好きな長刀鉾・函谷鉾・菊水鉾・月鉾・放下鉾をはじめ、やっぱりワタクシも派手なホコのファン。地味に地道に鉾の後をついていく数々の「山」については、あまり興味を引かれずにここまで来た。

    (京都・新町通りをいく函谷鉾の勇姿 2)

 

 しかし諸君、ここでもやっぱり「ホコばかりじゃございませんよ」なのである。「蟷螂山」「芦刈山」「郭巨山」「孟宗山」など、「盾」ならぬ「山」の存在こそ、山鉾巡行の華やかさを支えているのだ。

 

 かつての今井君は四条河原町とか河原町御池とか、派手な辻回しを見ようと、そういう場所で毎夏のように暑苦しい熱中症の危機に見舞われた。しかし今やワタクシもベテランだ。山鉾巡行の最終盤、最後の辻回しを終えた狭い「新町通り」で、ごく間近から山と鉾の勇姿を堪能する。

    (京都・新町通りをいく函谷鉾の勇姿 3)

 

 宿泊したのは、リッツカールトン京都。しかも祇園祭の真っただ中であって、その宿泊費はただごとではないが、さすがにここまで高価格帯になれば「九仞の功を一簣に虧く」の類いの酢酸系洗剤に悩まされることはない。

 

 午後2時、御池通りのお蕎麦屋で盛り蕎麦を満喫。いやはやうまい蕎麦だったが、どういうわけかお茶が紙コップで出されるのである。「祇園祭の最中は忙しいからお茶も紙コップで」「ご理解とご協力を」ということかもしれないが、ここでもまた「九仞の功を一簣に虧く」の典型を見ることになった。

    (京都・新町通りをいく函谷鉾の勇姿 3)

 

 しかし諸君、今井君は夕暮れから滋賀県近江八幡でお仕事がある。いつまでもウツツを抜かしているわけにはいかないから、午後5時のJR快速電車で40分、はるばる近江八幡の街に向かった。電車内でも「おっ、今井だ」「今井先生だ」の声やら視線やらが飛んでくる。ここはキリッとしていなきゃいかん。

 

 18時、近江八幡に到着。京都からずっと快晴だったが、近江八幡に到着する1分前から激しい豪雨に襲われた。「通り雨」というヤツである。うーん、この通り雨1つで受講生の集まりにも大きな影響が出る。マコトに残念な通り雨である。

(滋賀県近江八幡、予定を100名上回る350名の大盛況 1)

 

 しかし諸君、「普段のおこないの良さ」はこういう時にも現れる♡ 近江八幡の駅からクルマで10分、田園地帯の真ん中のハコモノ会場に集結した受講生は、なんと350名。事前の予定は250名であったのだから、この通り雨の中、ななんと&なんと予定を100名も上回ったのであった。

 

 こういう状況になれば、会場の盛り上がりにはもう疑問の余地もない。元気なオジサマばかり8名の祝勝会場もまた激しく燃え上がり、仕上げには何故かオジサマみんなでスッポンラーメンをすすっていたのであった。めでたし&めでたし。そのまま京都までタクシーで帰った今井君なのだった。

 

1E(Cd) RichterBACHWELL-TEMPERED CLAVIER 1/4

2E(Cd) RichterBACHWELL-TEMPERED CLAVIER 2/4

3E(Cd) RichterBACHWELL-TEMPERED CLAVIER 3/4

4E(Cd) RichterBACHWELL-TEMPERED CLAVIER 4/4

5E(Cd) Glenn GouldBACHGOLDBERG VARIATION

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