Mon 190610 アルファベットスープの愚/字数制限の残酷(南仏カーニバル紀行5)3845回
東京は梅雨に入ったばかりだが、北東のオホーツク海のほうからマコトに冷たい風が吹き込んで、気温はさっぱり上がらない。最高気温18℃だなんて、そりゃ4月の上旬の話じゃないか。4月上旬ってアンタ、入学式に入社式、花見の頃の気温じゃないか。
だから今朝から東京はヒジョーに寒い。思わず暖房が欲しくなり、チャンチャンコが懐かしい。今井君は「真冬でも夏掛けのオフトン1枚で通す」という猛者であって、秋田で育ったツキノワグマには、羽毛布団だの毛布2枚だの、そういう世界では真冬でも汗びっしょりになっちゃう。
その「汗びっしょり」がクセモノなので、夏掛け1枚なら雄々しくたくましく一冬まったく風邪も引かずに過ごせるのに、あまりの寒さに思わず厚着して汗びっしょりになった直後、ギュッと厳しい風邪をひく。
(近所のオウチの猫が失踪して捜索願いが出ていた。見つかったらしい。猫と飼い主の熱い安堵を思うと、もう涙が止まらない)
だからたいてい今井君の風邪は、全国行脚・東奔西走のある寒い夜に、ホテルでぬくぬくオフトンをかぶって寝た翌日に発症する。一昨年の3月、ワタクシは突如インフルエンザで超厳しい事態に陥ったが、あれも山口県での公開授業の後、福岡のホテルでの出来事。高熱に気を失いかけた。
だから厚着や分厚いオフトンは大キライ。「真冬でも夏掛け1枚」というのはホントのホントであって、今井君が大ベテラン講師としてこの世界に君臨し続けている♡のも、この薄着 & 薄オフトンでのヤセ我慢のおかげと考えってもらってかまわない。
というわけで諸君、もしも「今井、憎し」と憎しみに震えている予備校講師がいらっしゃったら、地球温暖化をぐいぐい推し進めるしかない。ボンボン火を焚いて二酸化炭素を放出し、ついでにその火で東京や日本やアジアをどこまでも暑くすれば、今井はほうほうのていでヨーロッパに逃げ出すはずだ。
(15年にわたって愛用したチャンチャンコ。ボロボロになって断捨離を決意した)
2月21日、今井君はフランスのイタリア国境・マントンの町にいた。3日前には広島で公開授業、2日前には東京新宿で講演会。しかし24時間前にモナコに到着して、この日はマントンへ。青い波が打ち寄せ、レモン祭の柑橘のカホリが街を満たして、マコトに爽やかである。
南フランスは、ミモザの花の真っ盛り。穏やかな波の寄せる青い海岸にも、すっかり氷が溶けてしまって営業を諦めたアイススケートのリンクにも、黄色いミモザが山と飾られていた。
どうだい諸君、あっちを向いても業者テスト、こっちを向いても業者テスト、テスト&テストで脂汗がじっとり滲み出す暑苦しい日本の状況から考えれば(スミマセン、前回の続きでございます)、やっぱりコートダジュールの早春は別世界の爽快さに満ちている。
(2月下旬の南フランス、マントンの風景 1)
GとTとEとC、TとOとEとIとC、TとEとAとP、TとOとEとFとL、こういうアルファベットの組み合わせで作った略称を、英語では皮肉って「アルファベットスープ」と呼ぶ。「揶揄」という表現がぴったりだ。
TPPもそうだしNAFTAもそう。そのほか例えば2国間でのFTAが雨後のタケノコのように誕生すると、アルファベットだらけの略称がナンボでも生まれて新聞は訳の分からない状況になる。英米マスメディアの論評の中に「アルファベットスープの乱発に嘆息の思い」の一言が登場するのである。
(2月下旬の南フランス、マントンの風景 2)
今や日本の人々は、アルファベットスープそのものの、英語テスト三昧の中で生きている。スープのお風呂、まさに暑苦しい限りであって、蒸し暑いのと汗まみれが大キライなサトイモとしては、こうして蒸し暑さと無縁の南フランスに逃げてきて本当に幸福だ。
30年前の日本は、これほどひどい状況じゃなかった。「TとOとEとIとC」は、若き日の今井君も入社式の翌日に社内研修の一環として強制的に受験させられたし、「TとOとEとFとL」のスープも、海外留学するには必須のスープとして味わわなきゃいけなった。
しかし「GとTとEとC」だとか、「TとEとAとP」だとかは、誕生してまだ間もないスープのお風呂である。ホントに霊験あらたかかどうかも、まだ一向に不明。このお風呂に入っても、何か効果があるかどうかにはちっとも保証がない。
(マントンのカフェ。15年前、ここでマント・ア・ローを飲んだ。健在がうれしいじゃないか)
ならば、いやはや、入りたくないでござるよ。ましてや暑苦しいテスト責めで熱中症になりかけている可愛い生徒諸君に、さらにプラスしてこんなスープ風呂を強制することはしたくない。
民間企業が新しいプロジェクトを始める理由は、もちろん「参入すれば利潤を稼げるから」であって、利潤にもならず株価上昇にも繋がらない事業に参入するのは、株主に対する背信である。
ということはこの種のアルファベット風呂、テスト業者が第一に追い求めるのはどこまでも利潤であって、「試験の公平性の確保」なんかではない。言わば「知ったことか?」であって、不公平性の暑苦しい湯気がモウモウと充満しているのは当然なのだ。こりゃもうスープのサウナと言っていい。
(マントン、レモン祭にて。ヒツジの親子が可愛いじゃないか)
だからテストの出題者が対策本を書き、「本の効果を保証するためには、出題者と攻略本の著者が一緒なのは当たり前」と、厚かましく開き直る。こんなの許しちゃいけないと思って、怒り狂ったサトイモがいろいろ書きまくっても、完全に「どこ吹く風?」。野党は国会で教育問題を扱う気配すらない。
こんなにたくさん野党があるんだから、せっかくNHK日曜討論なんかに出席させてもらえたなら、各党まったく同じスキャンダル追及や、じーちゃん大臣の言いマツガエを云々していないで、堂々と教育問題を論じてくれませんかね。
(2月下旬、南フランスはミモザの花が満開だ)
今井が受験生を愛する熱さは、「記述論述試験の字数制限」にさえ疑問をいだくレベルなのである。100年も昔から存在する「50字以内で書け」「100字以内で書け」「200字で論じよ」の類いは、なくなるどころか、どうやら「新・共通テストへの採用」で話題になっているぐらいだ。
その場合、「制限字数をもしもオーバーしちゃったら?」の問題が、昭和の昔からよく論じられてきた。先生方のご意見は「そんなの、0点に決まってるだろ」であり、おそらく新・共通テストなるものでも、情け容赦なく「0点に決まってるだろ!!」という扱いなのである。
(マントンにて「サルデーニャ料理」の看板を出したL'Uliboを発見。さっそく試してみることにした)
しかし、考えてもみたまえ。センター試験でも共通テストでも、その本質は時間との戦いだ。時間ギリギリで記述問題に取り組んで、ホンの3文字か4文字オーバーしてしまい、「ヤベ!!」と心で絶叫した瞬間に、試験監督の「ヤメ!!」のお言葉。その時、全く1字も書かなかった受験生と同じ、問答無用の「0点」の扱いでいいんですかね。
今井君なら、そういう答案もキチンと採点してあげたいのだ。例えば10点満点で採点してあげて、その上で「1文字オーバーにつきマイナス1点」、残念ながら3文字オーバーしちゃったなら、その問題の得点から3点マイナス、そういう優しい採点をしなきゃ、最初から解く姿勢すらなかったヤツと区別がつかないじゃないか。
しかし今の状況では、おそらく1文字オーバーでも0点にされちゃいそうだ。採点が間に合わないから、採点業者に委託。採点業者は、採点員がいないから大学生アルバイトに委託。アルバイトはそういう裁量の力がないから、字数オーバーは一律0点の扱い。いやはや、あまりにひどいじゃないか。
(コルクの厚板に載った豚肉ステーキ。写真ではわからないが、たいへんなボリュームだった)
ワタクシは、今回の入試制度改革に明らかな制度設計上の不備を感じる。野党議員諸君、なぜ黙っているんだ? 今この問題について声を上げさえすれば、驚くほどの注目を浴びるはずだ。
メディアの諸君もおんなじだ。じーちゃん大臣が「石巻」を「いしまき」「いしまき」「いしまき」と3連発したシーンをおちょくっているなんて、愚の骨頂というより、公共の電波の無駄遣い。醤油やワサビを舐めて「甘い!!」と絶叫するグルメ番組を垂れ流している暇があったら、教育を熱く論じたまえ。
(南フランスに来たら、やっぱりロゼワインを飲まなきゃ)
というわけで、2月21日のマントンでレモン祭を満喫した今井は、サルデーニャ島の料理で有名な「L’Ulibo」で豚肉料理を貪ることにした。分厚いコルクの板に載せられた豚の巨大ステーキを見て、お隣の老夫婦が歓声を上げるほどだった。
これを、南フランスのロゼワインを飲みながら、悠々と平らげるのである。こんな幸福な早春の午後が、他に存在するだろうか。どうして諸君、アルファベットスープみたいな英語の業者テストなんかで、チマチマ一喜一憂してなきゃいけないんだ?
(2月下旬の南フランス、マントンの風景 3)
そんなのより、どんどん海外を闊歩しようじゃないか。L’Ulibo、明るい清潔な店内だった。ウェイターの応対も素晴らしかったし、手頃なロゼワインも、もちろん名物の豚肉ステーキも皮までパリパリ、お値段ももちろん手頃だった。こういう人生の方が圧倒的に楽しいんじゃないかね。
1E(Cd) Kenny Dorham:QUIET KENNY
2E(Cd) Shelly Manne & His Friends:MY FAIR LADY
3E(Cd) Sarah Vaughan:SARAH VAUGHAN
4E(Cd) JoséJames:BLACKMAGIC
5E(Cd) Radka Toneff/Steve Dobrogosz:FAIRYTALES
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