Thu 190404 3大化/ロンドンのパブ事情/ここでも3大化(冬ロンドン再訪記6)3822回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 190404 3大化/ロンドンのパブ事情/ここでも3大化(冬ロンドン再訪記6)3822回

 いま思い出してみると、むかしの日本の銀行業界はマコトに多様性に富んでいた。都市銀行だけで13行もあって、大学に入学して上京した時に、まず最初に悩んだのは「どこの銀行に口座を開こうかな?」という選択であった。

 

 センター試験の「選択肢が4つ」でも悩むのに、選択肢がワンサと13もズラズラ並んだら、若き今井君の悩みはもうバイカル湖やマリアナ海溝よりも深かった。

 

 最終的には第一勧業銀行を選択したのだが、それは「むかしむかしのそのむかし、ワタクシの母上が第一勧業銀行で働いていたから」というツマラン理由であった。まさかライバルの富士銀行や興銀と合併して「みずほ銀行」を名乗るようになるとは予想もしなかった。

(ロンドン。マリオットホテルのエレベーターホールにて。ペンギンブックスの表紙を壁紙がわりに貼りめぐらしていた)

 

 都市銀行にはそのほかに住友・三井・太陽神戸・三菱・三和・東海・東京・協和・大和・埼玉・北海道拓殖があって、やがて組んず&ほぐれつの入り乱れた合併劇を繰り広げることになる。

 

「みずほ銀」の他に「さくら銀行」なんてのもあったし、「あさひ銀行」もあって、新幹線のネーミングとそっくりであるが(上越新幹線のエースはむかし「あさひ」という名を名乗っていた)、いやはや選択肢はいつの間にか3つに絞られちゃった。寂しい限りである。

(10年前に気に入って通ったロンドンのパブ・シルバークロス)

 

 この春の新入生も新入社員も、そろそろ銀行口座を作り終えた頃だろうが、若き新入社員だった今井君は、「クライアントに頼まれてんだ、口座を作ってくれよ」と会社の先輩にせがまれ、いろんな銀行にしぶしぶ口座を作らされた。

 

 そういうわけで、「なんでこんなに?」と首をかしげる暇もなく、住友にも三井にも三菱にも、三和にも埼玉にも富士にも口座ができた。それだけじゃすまなくて、千葉銀行や常陽銀行など地方銀行の通帳も持つことになった。

 

 ついでに「JCBカードを作ってくれ」「VISAカードを作ってくれ」「マスターカードを作ってくれ」と頼んでくる先輩もいて、いやはやいつの間にか口座だらけの春、クレジットカードだらけの初夏になった。

 

 しかし諸君、当時それぞれの口座には5万円程度しか入っていなかったにせよ、たくさんの通帳を持っているだけで「オレも裕福になったもんだ」とニヤニヤしていた時代が懐かしい。こうして3大メガバンクしかなくなってみると、やっぱり寂しいじゃないか。

       (パブ・シルバークロス店内)

 

 何の業界でも、淘汰や統合が進みすぎて「3大」を名乗る巨大な者しか残らなくなるのは、あまり好ましいことではない。我が予備校業界だって、21世紀初頭までに「佐々木ゼミ」「どうすんだい?」「Pretty塾」(すべて仮名といたします)への3大化が進み、そのせいで業界の勢いが衰えた。

 

 3大のうちの「佐々木」の没落は、業界の勢いの衰えをそのまま象徴する事件であった。まあ、我々「あずま・すすむ」(仮名)の出現と急激な台頭で、この頃は業界全体の勢いが復活しているとはいえ、結局は3大の主役が1つ、佐々木君からあずますすむ君に入れ替わっただけのことである。

         (ロンドンのパブ 1)

 

 平成に入る前の予備校業界は、全国にそれこそ群雄割拠、関西だって近畿予備校・夕陽丘予備校・コロンビア学院が十分な戦力を誇っていたし、福岡でも「予備校」といえば九州英数学館と水城学園を指すほど、割拠した群雄に勢いがあった。

 

 新潟なら新潟予備校。仙台なら文理予備校。札幌や広島みたいな中核都市には必ず「群雄」の1つが存在し、20世紀の3大の支店の進出なんか、決して許さないという気概に満ちていた。

 

 どんな業界でも、そのぐらいの多様性が常に溢れているべきなのだ。生物の多様性と同じことで、カラフルな多様性が失われれば、やがては業界の衰退が始まる。13の都市銀行がたった3つになっちゃったなんてのは、自ら求めて縮小を招いたようなものである。

         (ロンドンのパブ 2)

 

 コンビニは言わずもがな、チェーンの飲食店にしても、飲み屋も3大、牛丼も3大、ファミレスもほぼ3大じゃないか。和民系と魚民系とコロワイド系、吉野家系と松屋系とすき家系、デニーズ系とガスト系とロイホ系。こういうのはホントに危ないのだ。

 

 だって、つまらない。ちっとも面白くない。どこへ行ってもみんなおんなじだ。金子みすゞどんに言われるまでもなく、「みんな違って、みんないい」でなきゃ、銀行にも飲み屋にも牛丼屋にも、ちっとも魅力を感じない。

         (ロンドンのパブ 3)

 

 なぜ「冬ロンドン再訪記」のサブタイトルでこんなことを書いているかというに、どうやらロンドンのパブ業界にも「3大」の波が押し寄せているらしいからである。

 

 かつてロンドンのパブといえば、強烈な多様性のモデルのようなものであり、大通りでも広場でも路地裏でも、地元のオジサマやオニーサマが、それぞれの生き方や趣味や交友関係に合わせ、腹の減り具合やノドの渇き具合に合わせて、ほとんど無限の選択肢の中から店を選ぶことができた。

 

 かく言うワタクシも10年前のロンドンで、ヴィクトリア駅前なら「シェイクスピア」、トラファルガー広場なら「シルバークロス」、それどころかロンドンを離れても「ケンブリッジなら」「オックスフォードなら」「カンタベリーなら」と、なんぼでも選択肢があった。

         (ロンドンのパブ 4)

 

 ドリンクメニューはさすがにそれほどの特徴はない。ビアだって、ベルギーほどの選択肢はないし、ジンでもスコッチでも、よほど高級な店でない限り、揃えている酒のブランドには限りがある。赤ワインでも「ボルドーか? それともブルゴーニュか?」ぐらいしか尋ねられない。

 

 しかしフードのほうは、その店その店で味わいも盛りつけも大きく変わる。まさに店の経営者なり料理人なりの腕の見せ所であって、同じ「フィッシュ&チップス」だって、油の匂いも、魚やコロモの味も、付け合わせのポテトの塩胡椒加減も、みんな丸っきり違ったのである。

 

 客の方でも、少なくとも地元の老練なオジサマたちはみんなそれを熟知していて、暑い日はこの店、寒い日はあの店、雨の日はここ、雪の日はあそこ、天気や寒暖や気分の微妙な違いで、多種多様なお店からその時の1軒を選んでいたはずだ。

(ホテル・リッツ。5年前に宿泊した3階の部屋を見上げて感激する)

 

 しかし数年ぶりにロンドンを訪れてみると、容赦のない業界再編の波が押し寄せているのを痛感した。というか、さすが今井君も老練なオジサマの1人であるから、その波の訪れをあっという間に見抜いてしまった。

 

 今やイングランドのパブでも「3大化」が進行中。だってメニューがおんなじなのだ。どうやら親会社が印刷して、店に配布したもののようである。お酒の種類も一緒。赤ワインも白ワインも、同じ3種類の中から選ばなきゃならない。

 

 フードの塩加減も胡椒加減も同じ。こりゃどうやらお馴染みの「チェーンストア・オペレーション」というヤツであって、誰でもマニュアル通りにすぐに料理できるタイプ。というか、すでに料理済のヤツを配送業者に委託して、店の厨房は縮小、ほぼ「チーン」で出せるようになっているんじゃないか。

(シルバークロスにて。チキンの残骸を眺めて溜め息をつく)

 

 確かに、フードが出てくるまでに時間がかからない。10年前ならカウンターで注文して、ビールを飲みながら10分も待たなければならなかったのが、今では「おやおや早いですな」と溜め息をつくほどの早ワザだ。

 

 もちろん全ての店がそうだと言うのではないが、たった1週間の滞在で、その種の店に何度も遭遇した。あまりのことに呆れてしまい、旅の終盤はパブでの食事をやめ、2日連続してチャイナタウンの中華料理を貪ることにしたほどだ。

 

 1225日の晩メシは、10年前にすっかり気に入ったトラファルガー・スクエアの「シルバークロス」。店構えも店の中の雰囲気もちっとも変わっていなかった。ここのチキンは、どうやらまだチェーンストアのオペレーションにはなっていなかったようである。

 

1E(Cd) THE BEST OF ERIC CLAPTON

2E(Cd) Michael McDonaldSWEET FREEDOM

3E(Cd) THE BEST OF JAMES INGRAM

4E(Cd) Peabo BrysonUNCONDITIONAL LOVE

5E(Cd) Four PlayFOUR PLAY

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