Tue 181218 蹴上が常宿/圓徳院/石塀小路/ゑびすと猪(京都すみずみ3)3772回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 181218 蹴上が常宿/圓徳院/石塀小路/ゑびすと猪(京都すみずみ3)3772回

 常宿と書いて「じょうやど」と読む。「定宿」と書くこともある。京都の常宿は、東山のウェスティンホテル。東山というか、正式には「蹴上」であって、これで「けあげ」と読む。下駄か草履で鞠をポンと蹴飛ばして、その鞠が東山の麓の坂道をコロコロ可愛く転がっていった、そんな場所である。

 

「もっと贅沢なホテルが京都にはたくさんありますよ」と今井君を焚きつけるヒトは少なくない。確かに、リッツカールトンもあればフォーシーズンズもある。しかし諸君、リッツカールトンなんか、1泊で15万円もする。その異様な贅沢、ちょっと趣味がよろしくないんじゃないか。

(17世紀初期創建、京都「圓徳院」にて。京都散策は、このシュールな竹と筍の襖絵から開始する)

 

 洛中のど真ん中、町家風の旅館にも風情があるんだろうけれども、洛中ど真ん中には、いつでも修学旅行生がワンサといらっしゃる。かく言う今井君だって、数百年前には秋田高校の2年生として、11月下旬の京都にやってきた。ホテルの名前は忘れたが、烏丸御池あたりの中堅ホテルだった。

 

 修学旅行生を悪く言うわけではないが、彼ら彼女らに見つかるとそれなりにひと騒ぎ起こる可能性も否定できない。「今井だ!!」「ホントだ!!」「ウソだろ」「あのー、今井先生ですか?」「握手してください」「サインください」などという事態になれば、京都の風情も何もあったものではない。

(高台寺の目の前、圓徳院の石庭。、紅葉もいいが、雪の朝の風情も風情たっぷりらしい)

 

 むかしむかしは京都駅前というか京都駅直結の「グランヴィア」が常宿だった。14年前、今の予備校に移籍してきた頃は、まだ京都での経験も少なかったから、「駅直結がいいじゃないか」と軽く考えていたのである。

 

 しかしグランヴィアはマコトに騒がしい。朝早くから夜遅くまで、駅を発着する電車の音や、絶えずホームに渦巻く大音量アナウンスの声まで部屋に聞こえてくる。ロビーもレストランもカフェも人が溢れて、ゆっくり落ち着いて過ごすことなんかとてもできない。

 

 その点、蹴とばした鞠がコロコロ、坂の上のウェスティンなら、すぐ目と鼻の先は南禅寺だ。哲学の道をたどれば銀閣寺まで散策もOK。真如堂や永観堂も近いし、南禅寺と平安神宮の間には、東山を借景にした超豪華♡ホンモノのオカネモチのスーパー大邸宅が並んでいる。

(高台寺の庭。その向こうに巨大なニュー観音様が立っている)

 

 ついでに言うと、ワタクシは東山の向こう側も大好きなのだ。蹴上から地下鉄に乗って東に抜ければ山科である。山科の向こうには琵琶湖があり、琵琶湖と比叡山に挟まれて、浜大津・坂本・堅田といった珠玉の町が並ぶ。

 

 というわけで、今井君の常宿はこの10年ずっとウェスティン。ただし正式名称はウェスティン『都』ホテルといい、もともとは近鉄資本の「都ホテル」だった。

 

 近鉄といえば、押しも押されもしない関西の巨大資本であるが、電鉄系の大資本と言ふものは、その多くが昭和のままの頑固な経営方針を続けている。蹴上のウェスティンも、いまだに「チェックアウト11時」「チェックイン15時」を変えようとしない。

 

 しかし今や外資系ホテルの常識は、チェックアウト12時、チェックインはお部屋の準備ができていれば「いつでもどうぞ」というぐらい融通が利く。メンバーのステイタスが高くなれば、チェックアウト16時もOKという時代なのだ。

 

 それなのにフロントで「チェックインは午後3時となっております」と木で鼻をくくったような応答をされると、さすがに「このままでいいのか、いけないのか」「それが問題だ」と、小田島雄志訳のハムレットみたいな、中途半端な躊躇を感じるのである。

   (高台寺、傘亭。桃山時代真っ盛りの茶室である)

 

 ま、競争がこれからも果てしなく激化していけば、電鉄系もたまらず変化するだろう。そう期待しながら鞠をポンと坂に蹴上げてウェスティンに入る。南禅寺から比叡山方面の眺めは、やっぱりボクチンの第1志望。「第1志望はゆずれない」のキャッチフレーズは、今井君が駿台の生徒だった大昔から変わらない。

 

 ウェスティンからの京都散策は、南禅寺に背を向けて南を目指してもいいのである。粟田神社を左に見て、骨董屋さんがいくつか軒を並べているあたりで左折すれば、青蓮院 → 知恩院 → 円山公園と続いて、清水寺への道に入る。

   (高台寺、時雨亭。この茶室もまた桃山時代のもの)

 

 ただし今や清水寺はレンタル着物の中国人大集団に占拠された状況だから、短い滞在の散策は、その前の高台寺周辺でとどめておくほうが得策かもしれない。

 

 高台寺のほぼ真向かい、「圓徳院」の石庭もいい。紅葉もキレイだし、1月から3月初旬、厳しい冬型の気圧配置の朝なら、雪の石庭を満喫できる可能性だってある。

 

 圓徳院を出たあとは、散策の定番「石塀小路」に向かうのである。静かな高級料理旅館が数軒ノキを並べていて、「ウェスティンじゃなくて、こういうところに宿泊してみたいな」とも思うのであるが、今井君はマコトに臆病な生き物であって、こんな年齢になってもまだ旅館の敷居が限りなく高い城の石垣のように感じる。

 

 ホンモノの京都人の友人がワンサといて、イチゲンさんお断りの会員制のお店なんかでも徹底的にチヤホヤされるステイタスになったら、石塀小路の料理旅館にも出入りを始めるだろう。それまでは「ウェスティンで蹴鞠をポン!!」がいいじゃないか。

(建仁寺そば、「京都ゑびす」は日本3大ゑびすの1つ。おやおや、やたらに高島屋でござる)

 

 そんな高級そうなところにビクビクしながら出入りするより、今のところは石塀小路「デュ・ラン」で生ビールのほうがいい。石塀小路の一番東の端っこ、店の前の見本に出ているポテトサラダのサンドイッチが何とも旨そうである。

 

 この店で早めのランチを楽しむのもいい。ポテトサラダやウィンナを挟んだバターロールがサイコーだ。これを2個注文して、「あと、生ビールもお願いします」、そう言って一瞬ニヤリとする瞬間は、人生最良の一瞬の1つに数えてもいいぐらいだ。

 

 ただし、散策が午後4時ぐらいの中途半端な時間だと、「デュ・ラン」もちょうど休憩中。ちょっと疲れたところであれば、高台寺の脇の店でソフティスでもペロペロやって疲れを癒すしかない。

 

 なお「ソフティス」とは、ノルウェーの言葉でソフトクリームのことである。ソフトとアイスを組み合わせたわけであるが、2017年8月にノルウェーのフィヨルドを旅して以来、ワタクシの頭の中であのクルクル巻きの冷たいヤツは、何が何でも「ソフティス」なのである。

(京都ゑびすにて。ゑびす様の肩をトントン優しくたたいてお詣りする)

 

 そのままひたすら散策を続ければ、どうしても清水寺に着いてしまう。まさに予想通り、中国人のレンタル着物大集団の嵐であって、二年坂も三年坂も前進することに困難を感じる。それでもここにやってきたのは、「清水焼のゴハン茶碗がほしいな」と考えたのである。

 

 しかし今や、清水坂に清水焼のお店は数軒しか残っていない。むかしなら、姫とお供の一寸法師が真っ赤な鬼に襲われるほどのコワい場所だったが、いまや茶碗も見つからないテーマパークと化している。見つけたお茶碗もマコトに高価であって、1個1万円もする茶碗では、怖くてお茶漬けも食べられない。

 

 しょんぼり諦めて清水の坂を下り、東山安井の交差点をわたると、その先には建仁寺がどっしり待ち受けている。しかし建仁寺もまたレンタル着物集団でいっぱいであるから、今井君は建仁寺周辺の小さなお寺や神社をいくつかノンキに見て回る方が好きだ。

 

 もちろん「六波羅蜜寺」「六道珍皇寺」もあるが、この2つはそれなりに大物だ。時間のない夕暮れの散策なら、「摩利支尊天堂」「京都ゑびす」の2つがオススメだ。

(ゑびす様のすぐお隣は「摩利支尊天堂」。いたるところにイノシシの像がある 1)

 

 マコトにこじんまりしているけれども、「京都ゑびす」は日本3大ゑびすの1つなんだそうな。やたらに高島屋の文字が目立つのはともかくとして、ゑびす様のお肩をトントンたたくお詣りなんてのもある。「優しくドアをノックするように」という貼り紙もまた素晴らしいじゃないか。
 

 1200年ごろの建立。800年以上の歴史がある。1月の十日びすには、「宝恵かご」の社参がある。宝恵と書いて「ホエ」と発音する。東映太秦映画村の女優さんが駕籠に乗っていらっしゃる。時代劇の俳優さんたちが、駕籠を守って祇園の花見小路を進む。おお「びす神社」、諸君もどんどん行ってみたほうがいい。

 

 その目と鼻の先にあるのが建仁寺の塔頭・禅居庵。「摩利支尊天堂」が公開されている。何と言っても可愛いのがイノシシの像。摩利支天はイノシシを眷族として従え、イノシシの車を駆って世界を駆けめぐる。摩利支天はイノシシ年生まれの守護神なのだ。

(ゑびす様のすぐお隣は「摩利支尊天堂」。いたるところにイノシシの像がある 2)

 

 古代インドや西アジアでは、イノシシの素速い動きは知恵と勇敢さの象徴とされる。おお、来年はイノシシ年だ。ここは諸君、びす様のお肩をとんとんやったその足で斜向かいの摩利支天を訪ね、イノシシの知恵と勇敢さにあやかろうではないか。

 

 イノシシの神社としては、京都御所・蛤御門の真向かいに「護王神社」がある。ブライトンホテルから徒歩5分。むかしむかしウェスティンよりブライトンが好きだった時代、京都出張のついでに何度か護王神社のイノシシに挨拶しに行った。猪突猛進のイノシシめぐり、受験生諸君にもシューカツ生諸君にもオススメだ。

 

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