Mon 181029 大ワルおやじの一人称/チンクエテッレ(イタリアしみじみ26) 3745回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 181029 大ワルおやじの一人称/チンクエテッレ(イタリアしみじみ26) 3745回

 なにげなく自分撮りをしてみて、「おやおやオレもずいぶん年をとったな」と愕然とすることがある。いや、その前に「一人称として『オレ』を使っていいのかどうか」、そんなことにも悩むのである。

 

 自分で自分のことを考える場合の一人称は、12歳の時からずっと「オレ」で通してきた。中学1年の入学式、体育館に整列した身長順に前から7番目の今井君は、それまでの「ボク」を強烈に反省。カッコ悪いオボッチャマふうの「ボク」から、ちょいワル少年として「オレ」を貫こうと決心した。

 

 いや、むしろ「オラ」で行こうかなとも考えたのだ。たけしは一人称「おいら」で生き抜こうとしていた。村上春樹は「ぼく」で来たし、おそ松くんのイヤミは「シェー」と絶叫しながら、一人称は「ミー」を貫いた。

 

 一人称をどう選択するか。諸君、これは人生最大の問題である。若き今井君はまず「ぼく」を排除。学部生のころは「ワタシ」「ワタクシ」を選択したが、それが同級生たちの違和感を呼んだ。「今井のワタクシ言葉には面食らったぜ」と、今でも同級生に指摘される。

(チンクエテッレの大ワルおやじ、自分撮り。ヒゲの白髪がふえたけれども、相変わらずの大ワルでござるね)

 

 だからこのブログでも一人称にはマコトに気を遣っている。「ワタクシ」という本来の一人称以外に、三人称系の「今井君」「今井」「サトイモ」「クマ蔵」を試したり、10年前にはSMAP番組に先駆けて「カニ蔵」を名乗ったり、苦心惨憺のありさまだ。

 

 いやはや一人称問題にこれほど気をつかう一般人は、今井ぐらいのもんじゃないかいな。小学5年だったか6年だったか、学年1位の座を争っていた医師の娘の作文が評判になった時、彼女が使用した一人称が「玲子」。「うぎゃ、やられた」というショックから、一人称にはマコトに神経質になった。

 

 内心では、というか、気をつかわなくていい場面では、12歳の少年時代以来ずっと「オレ」なのである。「俺」みたいなギュッと勇ましい感じじゃなくて、あくまで気の弱い「オレ」。「オレはこのままでいいのかな?」「オレってダメなヤツだな」という感覚のオレで通してきた。

(夜明け前のミラノ中央駅。リヴォルノ行きのフレッチャ・ビアンカに乗り込んで、チンクエテッレ日帰りの旅に向かう)

 

 しかし諸君、このごろはその「オレ」の使用に軽いためらいを感じるのである。まあ今日の一枚目の写真をじっくり鑑賞してくれたまえ。イタリア・チンクレテッレの観光船で、リヴィエラの絶景を堪能中の今井君だ。

 

 今は昔というか、もう40年も昔の日本で、森進一というハスキーシンガーが「冬のリヴィエラ」を大ヒットさせた。読者諸君のパパやママ、場合によってはジーチャン&バーチャンに尋ねてみたまえ。「リヴィエラ」と聞いただけで「冬の、リヴィーエラー♡」と歌いだすはずだ。

       (チンクエテッレの絶景 1)

 

 朝5時のミラノ中央駅前は、たいへん危険な人々の集団が席巻し、その治安は今井の経験の中でおそらく最も悪化している。何度か「リアル羅生門」と表現したが、決して大げさな話ではないのである。

 

 かつてはニューヨークの135丁目やブロンクスあたりで縮み上がったし、リオデジャネイロの空港からコパカバーナまでの道のりでも身長が10cmも縮むほどの恐怖を味わった。5年前、ギリシャ危機のアテネでは、宿泊していたホテル前で暴動寸前の大混乱があった。

 

 しかしさすがの今井でも、リアル羅生門は恐ろしすぎる。暖かい駅の構内に入り、ジェノヴァ経由リヴォルノゆき特急フレッチャ・ビアンカの指定席に収まった時には、10cm縮んだ身長がニュッと再び15cmほど伸びた気がした。

 

 こうしてワタクシは、孫悟空の如意棒なみに変幻自在に伸び縮みするのである。ギュッと縮んだ時の一人称は「ボク」「ぼく」または「今井君」、ニュッと元に戻った時の一人称は「オレ」または「サトイモ」「クマ蔵」、そういう感覚だと考えていただければ、ほぼ正確だ。

       (チンクエテッレの絶景 2)

 

 夜明け前の真っ暗なミラノの臆病な「ぼく」は、夜が明けた明るいジェノヴァを過ぎ、進行方向右側に夏のリヴィエラを眺めながら、次第にサトイモ化ないしクマ蔵化を遂げていく。狭い一人称の世界で、漸進的にドロっと変身を進めるのだ。

 

 その漸進的変貌をほぼ100%完了した姿が、本日の1枚目。そこでもう1度諸君、この自信たっぷりのオヤジが「オレ」を名乗ることの成否を、じっくり熟議していただきたいのだ。

 

「オレ」という一人称は、漢字の「俺」ほどではないにしても、心身の若々しさを前提として使用するのである。「ボク」や「ぼく」が心身の未成熟を自認して「まだまだ未熟な自分ですが」とオズオズ発言する時に使用されるのと同様、マコトに謙虚な一人称なのだ。

       (チンクエテッレの絶景 3)

 

 しかしチンクエテッレの船上の今井、これ以上ないぐらい自信たっぷりの不敵な笑いを満面に示した今井が、「ぼく」「ボク」「俺」だなんて、おかしくあーりませんか? つかいなれた「オレ」でさえ、自分自身でも気恥ずかしい感覚を伴うのである。

 

 なんなんだ、この大ワルオヤジ? ひとむかし前、オヤジ雑誌のキーワードは「ちょいわるオヤジ」であって、日本のちょいわるオヤジが出没するのは、ミラノかパリかニューヨーク、それが21世紀序盤の定番だった。

 

 しかし諸君、この自分撮り写真を眺める限り、21世紀中盤の流行はむしろ「大悪オヤジ」になるんじゃないか。自信たっぷりの「オオワルおやじ」、ヒゲの白髪はかなり目立つけれども、まだまだ健康な男子として世界中を股にかけ、ズイズイ人生を満喫しているようじゃないか。

 

 まあ諸君、自信がなかったら、ヒゲなんか生やしちゃいけませんぜ。ヒゲには髪の毛よりもずっと早く白髪の季節が訪れ、髪はどんなに黒々していても、ヒゲの白髪でオジサン化がバレちゃうのだ。

 

 今井は根拠のない自信がたっぷりムンムンだから、ヒゲでオジサン化がバレてもちっとも構わない。むしろオジサン化が自慢なぐらいであって、世界の旅で思う存分コヤシを吸収したヒゲの白髪をウリにしちゃおうと、たいへんイヤラシイ欲望に燃えている♡

       (チンクエテッレの絶景 4)

 

「今井君、オマエは心の底からドアホやな」。以上のようなバカバカしい妄想に耽けるうちに、ミラノ発の特急フレッチャ・ビアンカはジェノヴァを過ぎ、夏のリヴィエラをひたすら南下。目指すチンクエテッレに近づいた。

 

 ミラノから、片道3時間。本来のバカンスなら2週間滞在してもおかしくないチンクエテッレに、こうして日帰りの旅を敢行する。ひた走るフレッチャ・ビアンカは、マコトに残念なことに20世紀の在来線特急を申し訳ばかりにリニューアルしただけであるが、まあ贅沢は言いっこなしだ。

 

La Spezia」で下車して、徒歩で約20分の船着場から船に乗る。今や中国の人々のオーバー・ツーリズムはチンクエテッレも席巻。イタリア語のチンクエテッレは中国語に翻訳され、街中に「5漁村」「五漁村」の文字が踊っている。

 

 フィレンツェにもヴェネツィアにも行き飽きたチャイナマネーの行き着いた先は、五漁村。少し前にソレントやアマルフィを席巻したコリアマネーを髣髴とさせる。チンクエテッレの船着場に溢れかえるのは、とにかくひたすら中国語だ。

       (チンクエテッレの絶景 5)

 

 もちろん、ヨーロッパ各国語も負けてはいない。ドイツからの修学旅行生集団が中国語に対抗する。高3と思われるちょい悪ドイツ男子グループは、五漁村の絶景なんかより同級生の女子グループにちょっかいを出すのに夢中。日本の修学旅行と同じお馴染みの光景だ。

 

 女子グループも、やんちゃな男子に負けてはいない。というか、むしろ強烈な女王さまがいらっしゃって、長身&強靭なドイツ男子も彼女の周囲の女子にはちょっかいを出しかねている。美しい女王さまが学年を牛耳る姿は、はるばる日本から来た大悪サトイモおやじでさえ、マコトに恐ろしい迫力に満ちている。

 

 こんなふうに一人称に悩んだ大ワル今井も、チンクエテッレの旅の折り返し地点に到達したわけである。しかし、うーん、今日も長く書き過ぎた。ちびまる子ちゃんよろしく「後半に続く」と言ふことで、今日はここまでにとどめておくことにしたい。

 

1E(Cd) Philip CaveCONONATION OF THE FIRST ELIZABETH

2E(Cd) Rachel PodgerTELEMANN12 FANTASIES FOR SOLO VIOLON

3E(Cd) SirinuSTUART AGE MUSIC

4E(Cd) RampalVIVALDITHE FLUTE CONCERTOS 1/2

5E(Cd) RampalVIVALDITHE FLUTE CONCERTOS 2/2

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