Sat 181027 みんな医師を目指す/オーバーツーリズム(イタリアしみじみ25) 3744回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 181027 みんな医師を目指す/オーバーツーリズム(イタリアしみじみ25) 3744回

 いまの今井君みたいにぼんやり&ノホホンと生きていると、きっと厳しくチコちゃんに叱られる。世の中の頭脳明晰な人々は、みんな医師を目指して激しく努力中であるらしい。

 

 かく言うワタクシだって、高2の春から高3の秋まで医学部を志望し、数Ⅲに物理に化学を懸命に勉強していた身である。今もなお内心では忸怩たるものを感じる。

 

 プロ野球のドラフト1位指名が4球団も競合する天才球児であっても、マスメディアの報道は「慶應医学部に現役で進学可能なほどの秀才」という話が先にくる。民放のキャスターが「プロになるより医者になってほしい」と公言したりする。

 

 東大の理科Ⅰ類からあえて経済学部に進学したほどの才媛が、NHKの看板アナになり、ニューヨーク支局で活躍し、将来はNHKの幹部候補と目されながら、スパッと退局して医師を目指す。素晴らしい、全く素晴らしい。

    (ミラノのドゥオモ。3ケ月ぶりの再会である)

 

 ラグビー日本代表の若きエースとして縦横に駆けめぐり、名選手を揃えた世界選抜を相手に見事なトライを決めたかと思えば、身を挺しての奇跡的ディフェンスで相手のトライを防ぐ。それほどの選手が、「W杯が終わったら医師を目指す秀才」とテレビ画面で紹介される。

 

 なお、「身をていする」と書く場合の漢字は「身を挺する」であって「呈する」ではない。「呈する」のは「物をささげる」「金品を捧げ物とする」という意味であって、漢字テストではマルにならない。まあそういうことに注意しながらも、素晴らしい、全く素晴らしい。

 

 大女優への道が拓けつつあるかつての子役タレントさんも、朝ドラのナレーションを最年少で務めながら、「夢は白衣を着る仕事」とメディアが伝える。研究者の白衣である可能もあるが、メディアのイメージはあくまで医師である。

  (ミラノ、スカラ座。これもまた3ヶ月ぶりの再会だ)

 

 こうして、まさに枚挙にイトマがない。イトマを漢字でどう書くか、これもまたちゃんと調べておきたまえよ。今や世の中は漢字テストのオンパレードだ。「遑」、ちゃんと書けないとまたまたチコちゃんに叱られる。

 

 東京でも関西でも、日本中どこへ行っても、競争を勝ち抜いた知的エリート諸君は、中学でも高校でもまずは医学部志望であって、そういうエリート諸君に「いま今井先生の授業に夢中です」などと打ち明けられると、むしろ畏れ多くて身の縮む思いがする。

 

 だって諸君、ワタクシ自身は高3の夏、自らの忍耐力のなさ・持久力不足・注意力散漫に自ら呆れ返り、「万が一このまま運に恵まれて医師になんかなったら、医療ミス連発&医療事故連発であっという間に医師失格の烙印を押されるだろう」と判断、高3の11月に文転した情けないヤカラである。

 

 今になってもそのノホホンぶりたるや、Mac君さえアッカンベーをして「注意力さんまん」の入力に「注意力30000」の変換を返してくるぐらいだ。文系への転向は、どうやら大正解だったようである。

(ミラノの市電。100年走ったトラムが、まだまだたくさん現役で走り続けている)

 

 しかしこの医学部ブーム、少々心配でないことはない。「今は東京大学より医学部医学科が人気です」と伝えるマスコミが、この理由として例外なく伝えるのが、塾&予備校関係者の以下のようなコメントである。

 

「安定した高収入が継続して保証され、世の中の評価も確実に得られる医学部の人気は衰えないでしょう」

うーん、つまり彼らの意見では、結局オカネと安定と世間体。そういう昔ながらの栄光を求めて、優秀な若者がこぞって医師を目指していると公言するのだ。

 

 そこまで若者たちを見くびって、「要するにカネでしょ?」「要するに世間体でしょ?」という目で眺めてニヤニヤしている。「国際貢献」とか「地域医療への貢献」とか「シュバイツァーに憧れて」とか、そういう話をメディアはちっとも伝えようとしない。

 

 そこへまた、まるで昭和の都市伝説みたいな裏口入学や浪人差別や女性差別が渦を巻く。そうかと思えば「無給医」などという言葉がテレビに登場して、「13000円」と印字された1ヶ月の給与明細が画面に示される。

 

「大学病院でやりたい医療を続けるには、無給に耐えるしかありません」と発言する若い医師。こりゃ、ホントなんですかい? 「安定した高収入」どころか、無給の医師がたくさん存在するというのがホントなら、裏口入学よりもさらにはるかに重大な問題なんじゃないんですかい?

  (ミラノ、ガッレリアの名店でランチを楽しむことにした)

 

 というわけで、凡人代表の今井君は今日も長い旅の途上にある。日々旅にして旅を住処とする人生は、一昨年あたりからさらに状況が激烈になり、かつての1年50日が1年60日になり、やがて1年70日になり、これに出張がらみの国内旅行を合わせれば1年120日も旅の空にある。

 

 しかしいくら凡人でも、旅先で完全にノホホンとしていられるかと言うに、決してそんなことはないのである。心配なのはいわゆる「オーバー・ツーリズム」。和訳すれば「観光公害」であって、行きすぎたインバウンドが静かな町を破壊する。

 

 ヴェネツィアなんか、もう完全に限界を超えている。サン・マルコ広場、「嘆きの橋」のあたり、リアルト橋、もう中国語しか聞こえない。公共交通機関のはずのヴァポレットも、来る船&来る船みんな超満員で、3隻も4隻もやり過ごして、それでもちっとも乗れる気配がない。

(今日もアマローネを1本。滞在15日目で15本目のアマローネである)

 

 そう言ってブツブツ、腹の底からムカついている今井君自身も、観光客としてまさにその観光公害の片棒を担いでいる。ヴェネツィアの静かな住宅街の奥まで入り込んで、「いけないな」と思いながらも写真をパチパチ、おそらくそれなりの顰蹙を買っている。

 

 だから諸君、観光公害が発生していそうな町では、できる限りのマナーを守って行動する。パリやニューヨークやウィーンみたいに、すでに観光客の捌き方に熟達している街ならいいが、フィレンツェ、バルセロナ、イスタンブールあたりは、まだオーバー・ツーリズムに慣れていない。

 

 京都も同様である。京都の真骨頂はやっぱり静けさにあって、ガヤガヤ&ワイワイ、押すな押すなの京都じゃ、「町が観光に破壊される」という市民の恐怖感も当然のことである。

(アマローネに合わせるのは、やっぱりチーズ。ランチはチーズのみで済ませることにした)

 

 何しろ出張で1年に20日近くも関西を訪れる。関西出張なら京都に宿泊したいところだが、今井君はあえて大阪梅田を選択。ちょっとでもヒマな時間があれば、大阪から京都を訪れて、オーバー・ツーリズムの波が訪れていない京都のすみずみを訪ねるのである。

 

 そういう今井なりの「京都すみずみ」ないし「京都しみじみ」を、近いうちにこのブログでたっぷり書きたいと考えているが、いやはや、2018年現在、京都のどこを訪ねてもオーバー・ツーリズムの弊害の典型を見る思いがする。

 

 中でも諸君、清水寺周辺は凄まじい。夕暮れに乗ったタクシーの運転手さんがボソッと一言

「今日はじめて日本語を聞きました」

「大声のペキン語に丸1日、もう限界でした」

とおっしゃったりする。

 

 清水寺・高台寺・円山公園周辺。建仁寺から祇園南側あたりは、異様に増殖したレンタル着物屋でいっぱいだ。レンタル着物が溢れれば、一目で分かる安っぽい着物を着た外国人集団で町が大混雑する。

 

「何であんなに安っぽいのばかりレンタルするんですか?」と運転手さんに質問してみると、「だってあなた、レンタル着物をそのまま着て本国に帰っちゃうんですから、貸す側も自衛手段が必要ですよ」とのことだった。

(部屋のミストサウナから、ミラノのドゥオモを遠望する)

 

 京都の地元紙の第1面に「観光公害」の特集が連載されていたりする。静かな住宅街のど真ん中に「〇〇ハウス」「ヴィラ〇〇」が新しく建設されれば、昔なら低層マンションだったが、今やどこもかしこも観光用の安価宿泊施設。京都の奥の奥まで、スーツケースを引きずった外国人でいっぱいだ。

 

 そういう状況を見ているから、ミラノの今井君もやっぱり徹底的に控えめに過ごすのである。モンテ・ナポレオーネでも、目立つのは高級ブランドの紙袋を1人につき4つも5つもぶら下げた十数人の中国人集団。流行の青いスーツを颯爽と着込んだ「ミラノおやじ」の諸君も、何だかツラそうである。

(部屋のミストサウナから、スフォルツェスコ城を遠望する)

 

 そこで今井君は、ガッレリアのレストランでまずはアマローネの赤ワインを1本注文。これをチーズ盛り合わせだけで飲み干して、静かに店を去った。「アマローネ」の一言だけで店の対応がググッと変わったのだが、そこにつけこんで大きな顔をする趣味は皆無である。

 

 ミラノのドゥオモは、10年前までは誰でも無料で入れたし、何時間も滞在して屋上からアルプスの遠景を満喫することもできたが、今や入場にオカネを払わなければならず、しかも2時間も3時間も長蛇の列に耐えなければならない。

 

 だから諸君、今井君はミラノの絶景をホテルのミストサウナから楽しむのである。部屋のサウナからドゥオモやスフォルツェスコ城の勇姿を見はるかせるなら、何も好き好んで暑苦しいオーバー・ツーリズムの真っただ中に飛び込む必然性はない。

 

1E(Cd) OortmerssenHISTORICAL ORGAN AT THE WAALSE KERK IN AMSTERDAM

2E(Cd) Philip CavePHILIPPE ROGIERMAGNIFICAT

3E(Cd) SavallALFONS V EL MAGNÀNIMEL CANCIONERO DE MONTECASSINO 1/2

4E(Cd) SavallALFONS V EL MAGNÀNIMEL CANCIONERO DE MONTECASSINO 2/2

5E(Cd) RUSSIAN MEDIEVAL CHANT

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