Thu 180920 富山は教育県/文理のタッグ/富山の大盛況/高校入試のリスニング 3723回
むかしむかしのそのむかしから、北陸・富山は「教育県」として有名だ。何しろ「越中富山の薬うり」以来の伝統がある。中世&近世以降、近現代に至るまで、どんなにツラくともメゲることなく全国を巡って、自慢の薬を売り歩いた。
言わば諸君、理系の人々と文系の人々が見事なタッグを組んで、県勢を保持して来たマレな実例と言っていい。理系の人々は真剣に伝統の薬を作り続け、新薬の開発に取り組み、品質の維持に努めた。文系の人々は藩や県の営業マンとして、理系の人々の努力の質を熟知しながら、その薬の販売にたゆまぬ努力を続けた。
新潟と金沢にはさまれているのである。新潟には上杉謙信に上杉景勝がいたし、金沢には前田利家が存在し、金沢百万石がドンと構えている。「じゃあ真ん中の富山は?」というに、そういうビッグネームは見つからない。
今井君はホンの小さなコドモの頃、NHK大河ドラマ「天と地と」で、富山の戦国武将が「神保」という名前であることを知った。上杉謙信の実父・長尾為景が、神保氏と一向一揆の連合軍に敗れて戦死するシーンを見た記憶が残っている。神保氏に関する記憶はそれだけである。
だからやっぱり越中富山の歴史は、理系は製薬に励み、文系が営業&広報活動に全力を尽くす、一般市民の艱難辛苦の歴史なのである。素晴らしいじゃないか。教育熱心で知られる県民性も、500年単位の歴史に裏付けられているのだ。
(9月17日、富山の大盛況 1)
21世紀に入ってから、学力の旗色が少し悪くなっているかもしれない。別に県と県の学力との優劣を論ずるために行なっているわけではないだろうが、文部科学省が飽きもせずに続けている「全国学力考査」みたいなのがあるじゃないか。
いくら「比較するな」「ランキングをつけるためではない」と言われても、国民の関心がついついそっちに行ってしまうのは致し方ない。そりゃそうだ、各県別の点数が新聞紙上に発表されれば、誰だって「お隣と比べてウチはどうかいな?」という興味でいっぱいになっちゃう。
その種のランキングが最もキライそうな朝日新聞社なんか、週刊朝日もAERAも「ひたすらランキング」だ。高校別ランキング、県別ランキング、1年中ずっと進学ランキングで販売部数を確保するのに夢中のようだ。おやおや、新聞の論調から見て、成績にランキングなんかつけちゃいけないんじゃないの?
秋田県・石川県・福井県。日本海側のこの3県の優秀さには、どんな秘密があるんだろう。もう10年以上、秋田石川福井の3強は他の追随を許さない。富山ももちろん上位にいるが、なかなかお隣さんの石川と福井の牙城を崩せない。
しかし諸君、富山中部高・富山高・高岡高の3校は、かつて揃って東京大学合格者ランキングの最上位に位置していた。今井君が10歳代だったか20歳代前半だったか、同じ県の県立高校が3校ズラリと並んだランキングを眺めて、「富山って、すげえな」と溜め息をついた記憶がある。
(9月17日、富山の大盛況 2)
だから「富山で公開授業」というチャンスがあると、ワタクシは今でも緊張するのである。「チャンスがあると」も何も、2010年以降はほぼ毎年1回の公開授業が富山であって、忘れられないのが2011年3月11日、東日本大震災の夜の富山での仕事である。
東京とも仙台の実家とも電話連絡が全くとれない。メールも送受信ができたのかどうか不明のまま、21時まで富山で大熱演を続けた。大雪の夜だったが、津波警報が日本海側にも出て、宿泊先の金沢に帰る電車は、各駅停車以外の全てがストップした。
それでも頑張って2時間近く、大雪の倶利伽羅峠を喘ぎながら走る普通電車に付き合ったのである。金沢に到着したのは、もう日付も変わる頃だった。その3時間後だったか、すぐ近くの長野県栄村で震度6強の地震があって、金沢のホテルも大きく揺れた。
もう7年も前のことだが、あの夜の富山会場を今でもハッキリ記憶している。ホテルの大宴会場で、出席者130名。あの時17歳だった高2生諸君は、すでに24歳になっている。ほとんどの生徒が学部を卒業して、社会人になった頃である。
(富山駅前「一会」での祝勝会。前菜の「ウニの氷見牛巻」の美味に歓声があがった)
2018年、今回の会場は県民会館、出席者はジャスト200名。ジャストさんとしては、「とうとう富山で200名が集まるようになったか」と、甚だ感慨深い。対象は、中3生とその保護者。高校入試を半年後に控え、4技能系の大学入試改革の影響をモロに受ける諸君である。
そして今井君は、4技能系の話がまた異様なほど巧みなのである。このごろ進境著しい新進YouTuberの皆さまも、4技能系の大学入試の話では、滅多なことでは今井君を凌駕できそうにない。少なくともあと5年は、サトイモ城の落城は夢のまた夢と思われる。
何しろ対象は高校入試に目の色をかえている中3の諸君だから、ワタクシはまずスタッフに「富山県の高校入試の問題、もし手許にあったら見せてください」とお願いする。高校入試の現状を知らないんじゃ、中3とその保護者を相手にマジメな話なんか出来っこないじゃないか。
(祝勝会にて。富山湾の魚介の美味に、再び歓声があがった)
いやはや、ワタクシはその数学の難しさにビックラこいたのである。昨日も書いた通り、今井君は高3まで「東大文Ⅲ志望なのに理系クラスを選択した」という猛者である。国立大医学部に現役で進んだクラスメイトたちに伍して、文学部志望のくせに数学物理化学、最後の最後まで落伍しなかった。
その今井君から見ても、富山県高校入試の数学はスゲー厳しいのだ。50分の制限時間で、大問が8問。それぞれが3問から8問の小問に分割され、小問数は約30。「えっ、それって大問1つ6分前後、小問1問に2分かけられないってことじゃあーりませんか?」であって、ほとんど知能テストの様相だ。
ついでに言えば、問題文の長さも驚嘆に値する。ブログどころかツイッターだって「長すぎる」「長すぎて読めねえ」「読んで損した」と嘆く人が多い今の日本で、数学や理科の問題文がこんなに長いんじゃ、これには読解力テストの要素も多分に含まれてくる。
それに対して諸君、英語のほうは「ちとカンタン過ぎませんかいな?」という感じ。ここまで数学との落差が大きいと、中学生も高校生も近い将来に英語で苦労するんじゃないか。
「特にリスニングに特徴があるんです」
「配点の3割がリスニングなんです」
とおっしゃるのであるが、試しにそのリスニングテストの音声を聞かせてもらうと、諸君、およそ次のような会話が、かなりのゆったりモードで展開されるのだった。
(〆は「氷見うどん」。三たび歓声に包まれた)
ウェイトレス:ABCレストランへようこそ。
客:この店には、どんなフードがありますか?
ウェ:カレーとハンバーガーとピザです。ピザが人気です。
客:じゃ、ピザにします。
(中略)
客:飲み物は何がありますか?
ウェ:Tea and coffee.
客:じゃ、Teaをください。
これに質問がついて、「客は何を注文しましたか?」、そういう設問である。
カレーとピザとハンバーガーしかないレストラン。「ピザが人気」と言われて、たちまち無反省にピザに決めちゃうお客さん。この想定って、ひどすぎないか? この3年後の大学入試で「民間試験で準一級」みたいな強烈な4技能が求められるのに、15歳の段階でホントにこれでいいの? ギャップが大きすぎるんじゃあーりませんか?
生徒諸君も保護者の皆さまも、そのあたりは痛いほど身に沁みて感じている様子。カレーとピザとハンバーガー、TeaとCoffeeしかないお店。その想定をまず200名の大爆笑で確認した後、3年後の民間試験♡準一級のレベルをギュッと体験してもらうのである。
今井の話は、こうして大爆笑の連続の中でグイグイ先に進んでいく。このあと12月まで3ヶ月、松本でも熊本でも、札幌でも大阪でも、沖縄でも青森でも、同じようにヒクヒクするほどの大爆笑が続くはずだ。
爆笑しすぎて息もスーハー絶え絶えになってもらいながら、全員に「少しぐらい苦しくても、サトイモの授業でビシビシ激烈に勉強しなきゃ」の決意を固めてもらう手筈になっている。
1E(Cd) Holly Cole Trio:BLAME IT ON MY YOUTH
2E(Cd) Earl Klugh:FINGER PAINTINGS
3E(Cd) Brian Bromberg:PORTRAIT OF JAKO
4E(Cd) John Coltrane:IMPRESSION
5E(Cd) John Coltrane:SUN SHIP
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