Sat 180811 大混雑のヴェネツィアでランチにたどり着く(イタリアすみずみ23)3693回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 180811 大混雑のヴェネツィアでランチにたどり着く(イタリアすみずみ23)3693回

 自由な生活とはマコトに乱れやすいものであって、しかも乱れた生活ほど苦しいものはない。夏休み、苦しくないかい? やっぱり規則正しく学校に通い、学校を卒業したらキチンと就職してマジメな日々を送る。間違いなくそれが最も楽しい人生なのである。

 

 かく言う今井君は、「キチンとした日々」「規則正しい生活」が苦手な人種だ。中学&高校までの中等教育生活は、まだ親とか世間体とかいろいろ難しい環境が周囲にあって、「キチンと」「規則的に」の壁を崩せなかったが、いったん学部に入って自由な日々を手に入れるや、自由な世界を捨てることが出来なくなった。

 

 実際には学部に入る1年前、御茶ノ水の「どうすんだい?」で浪人した時から、そういう日々が始まっていた。あの1年が言わば「助走」であって、予備校の授業を受ける代わりに池袋や高田馬場や飯田橋の映画館で「3本立て300円」の夏休みを過ごしていた。

 

 浪人して肩身が狭いとはいえ、まあお小遣いももらえたのである。それまではマジメに生活していたから、それなりに貯金もあった。1日300円なら、1ヶ月に20日も映画館に入り浸って、なんとか6000円で済んだ計算だ。

  (ヴェネツィアのランチは、豪華フィレステーキを選択)

 

 当時の今井君としては、「今は貯金を取り崩しても構わない」「大学に入ったらナンボでもバイトしてオカネを稼いじゃおう」「カテキョでもいい、塾講師でもいい、月に7万円は稼げるはずだ」、そういうマコトに甘い考えをいだいていた。

 

 それもこれも、「どうすんだい?」の先生方がいだかせてくれた夢である。普通に問題を解説して、ときどきツマラン冗談を交えて、それで200名の生徒が夢中になっていた。

 

「これぐらいのパフォーマンスなら、自分にも十分に可能だ」

「と言うか、自分の方が遥かにウワテかもしれない」

「大学に入ったら、タップリ稼ごうじゃないか」

だからというわけでもないが、浪人中は好き放題に映画を見て過ごした。

 

 そのまま学部1年は映画ざんまい、早稲田松竹に高田馬場パール座、飯田橋ギンレイホールに佳作座、池袋文芸坐に三鷹オスカー、そういう名画座をうまく組み合わせれば、1週間に10本以上の映画を堪能できた。

 

 21世紀の若者たちは、ネットでいくらでも映画が見られるんだから、当時の今井君なんかよりずっと幸せに見える。いくら上手に安い名画座を駆け回っても、1週間に2000円、1ヶ月で10000円近くが映画に消えた。

 

 ただし20世紀には、映画系の引きこもり生活に陥る危険は最初から存在しなかった。映画館さえ回っていれば、池袋に新宿に渋谷に銀座、メシもその辺の安い店を探し歩いて、いつの間にかイッパシのグルメを気取ることもできた。

(フィレステーキだけじゃ物足りないから、豪華チーズ盛り合わせも選択)

 

 学部2年からは、塾講師のバイトでオカネも貯まっていったから、自由な日々はどんどん止めどなく拡大。ありゃりゃ、気がつけば「規則正しく朝ゴハン」どころの話ではなくなった。

 

 就寝は朝5時、起床は正午、大学の授業にはほとんど出席せず、映画館かバイト先か、塾講師でオカネを稼ぎ出してからは芝居小屋に入り浸った。何しろ下宿は千葉県松戸市だ、家賃は1ヶ月1万5千円。そりゃオカネだって貯まっちゃう。

 

 一度はマジメに改心し、キチンと就職もして、規則正しい生活に立ち返ろうとしたのだ。しかし諸君、人間というものは、ひとたび軌道を踏み外せば、滅多なことで元の軌道に戻れるものではない。

 

 自堕落な生活への憧れは消えず、安定した日々も、安定した職場なんかどうでもよくなって、いきなり「作家になる」「自堕落な日々こそ人生の妙味じゃないか」と、愚かなことを言い出した。26歳だったか、27歳だったか、まあそういう時代である。

 

 ただし世間はそこまで甘くないので、結局のところ今井君はたいへん中途半端な「キチンと」「規則正しく」の世界に舞い戻った。Pretty塾時代、どうすんだい時代、佐々木ゼミ時代がそれである。

 

 朝8時出勤、そのまま目いっぱい授業をして、夕暮れ6時7時まで働く。ヘトヘトになってビール、ヨレヨレになって日本酒にワイン、グデングデンになってウィスキー。マコトに情けない日々が続いて、それでも勤勉にマジメな日々を続けた。

(せっかくの山盛りチーズだから、豪華赤ワインも選択。3日連続のアマローネを満喫する)
 

 そして諸君、ようやくここまでたどり着いた。今は朝4時に規則正しく起きるのである。4時から1時間、早朝の渋谷区内を歩き回る。大汗をかいてお部屋に帰り、そのまま6時までゆっくり湯船に浸かり、相変わらず文学全集を読みふけるのである。

 

 仕事があればもちろん仕事に出かけるが、仕事がなければそのまま午後4時まで読書三昧なのである。公開授業の出張は、年に100回。授業収録は年に30回程度。あとは河口湖で10日間。だから仕事がお休みの自由な日々は、年間200日以上。「ようやくたどり着いた」とは、そのような意味である。

 

 午後4時まで読書を続ければ、さすがにもう活字はキライになるから、相変わらず映画を見るのである。芝居に出かけてもいいし、美術館もまだ間に合う時間帯だが、さすがにスーパー猛暑の夏、出かけて汗まみれになるのはイヤじゃないか。

 

 メシにこだわりはないから、テキトーに済ませることも多い。煎茶やほうじ茶のお茶漬けでも構わない。カップ麺にタマゴ2個入れてすするのも大好きだ。

 

 そのぶん外出時には、うなぎに天ぷら、スッポンに山椒、生牡蠣にステーキ、寿司にインドカレー、ムールにヒレカツ、ナンボでもこだわって贅沢をする。ただしその贅沢は「湯水のようにオカネをつかう」というのとは全く違うので、オカネはあくまで商品の価値に応じてしか払わない。

(大混雑のヴェネツィアでランチにたどり着く。魚市場のあたり、名店「BANCOGIRO」である)

 

 自由な日々200日/年のうち、海外で暮らすのは約60日である。昨年はモロッコ・メキシコ・キューバ・ノルウェーと前半からずいぶん飛ばし、後半はちょっと落ち着いてホーチミンとシドニーを訪ねた。

 

 今年は少しペースが落ちていて、4月の「フランスすみずみ」と5月の「イタリアすみずみ」、まだ30日ちょいの海外滞在にとどまっている。そろそろ次の海外を決めなきゃいけないが、いやはや、ますます欲が深くなって、なかなか決めることができない。

 

 実は、ますますハードルを高くしたいのである。テヘラン・アレクサンドリア・リヤド・チュニス。そういう場所に単独で出かけて2週間ほど滞在したい。この10年のブダペストやブエノスアイレスやサンパウロじゃ、なんだか物足りなくなってきた。

 

 しかしまあ諸君、これからのことはともかく、とりあえず「イタリアすみずみ」を書き終えなきゃいけない。5月23日、ミラノからヴェネツィアへの日帰り旅を敢行したワタクシは、サン・マルコ広場のスーパー混雑に辟易し、その辟易のせいで「もっとハードルを上げる」衝動に駆られていた。

 

 ヴァポレットで島の大外をまわり、再び国鉄サンタルチア駅からカナル・グランデに入って、リアルト橋のたもとで降りた。どこもかしこも大混雑で、昼メシにもありつけそうにない。

 

 大混雑で昼メシにありつけないだなんて、むかしむかしの早稲田大学みたいじゃないか。18歳で上京し、早稲田の構内を右往左往していた頃は、まさに早稲田の絶頂期だった。

 

 今では信じがたいことかもしれないが、旧7帝大や一橋大に合格しても、当時の人々はむしろ早稲田を選択した。慶應には大差をつけていて、「もはや慶應はライバルではない」と早大総長が豪語した時代である。

 

 だから諸君、その混雑ぶりは「足の踏み場もない」と言ふ感覚。昼メシ時には学生が街や構内にあふれ、ランチ難民が大量発生した。学食も生協食堂も、安いメシ屋もラーメン屋も全て長蛇の列。5月23日のヴェネツィアは、まさにあの頃の早稲田を思い起こさせた。

  (入り口は大混雑だったが、2階のテーブルが空いていた)

 

 それでも今の今井君は根性が違う。リアルト橋から魚市場の裏を歩き回り、発見したのが今日の写真4枚目の名店「BANCOGIRO」。「大運河を一望できますよ」という意味の屋号と思われるが、確かに大運河に沿った絶好のロケーションであった。

 

 入り口にバーがあって、バーには地元のイタリア人がたくさん集まり、ガヤガヤ楽しそうに昼のお酒を楽しんでいる。だから、一見したところでは「超満員」「立錐の余地もありません」のように見えるのだが、こういう時こそ諸君、店の奥に入り込めば、気持ちのいいテーブルがポッカリ空いていたりする。

 

 お店の2階に案内されて、おお、やっぱり空いてるじゃないか、偶然のように空いていたテーブルを占めた。注文したのは、チーズ盛り合わせ、フィレステーキ、そして大好物のアマローネ。この濃厚な赤ワインを、贅沢にも3日連続で味わうことになった。詳細は、明日の記事で。

 

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