Sun 180805 右往左往/ヴェネツィアへ/ポピー系の花(イタリアすみずみ20)3688回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 180805 右往左往/ヴェネツィアへ/ポピー系の花(イタリアすみずみ20)3688回

 22日にコモ湖にいて、23日にミラノからヴェネツィアに日帰りの旅、24日にはホテルを出て、ミラノで半日のんびりした後に、フランクフルト経由で26日に東京に到着。まるでツアー会社が無理くりに企画したような旅程だが、こういうのもマコトに当たり前にこなすようになっちゃった。

 

 ただし諸君、ツアー会社の企画なら大型バスでビュンビュン行けるだろうけれども、列車が頼りの個人の旅ではなかなか気楽にできる旅ではない。特にイタリアのローカル列車は、一筋縄でいくようなシロモノではないのだ。

 

 イタリアご自慢の新幹線網が、優遇されすぎているのである。新幹線の網から漏れてしまった不遇な場所に旅しようとすれば、列車は昔以上に気ままに遅れ、いったん遅れが生じれば、遅れはどんどん増幅して、30分遅れのはずが50分遅れになり、50分遅れれば当然のように90分遅れに拡大する。

 

 そして諸君、さすがに90分の遅れが「120分遅れ」という非常識な世界に突入すると、いきなり「運休」「運転とりやめ」という決断が下される。ひたすら辛抱強く待っているとロクなことにならないので、遅れが60分を超えたら、そろそろ別の手段に切り替えるなど、自衛手段を講じたほうがいい。

   (翌日は、ヴェネツィアへ。リアルト橋からの絶景)

 

 もちろんそのへんはイタリアに限ったことではない。フランス国鉄だってリヨンやマルセイユあたりでは同じことが頻繁に発生するし、昨年はノルウェーのVoss駅で「いきなり運休」「代替交通機関もナシ」「団体交渉後にやっとバス1台」という憂き目をみた。

 

 しかし特に今回のイタリアはひどかった。ジェノヴァでもボローニャでも列車は大幅に遅れたし、マッジョーレ湖畔ストレーザの町に向かう国際急行は1時間半の遅れ。と思ったらいきなり「5分後に出発」という表示に切り替わり、ところが結局70分遅れてミラノ中央駅を発車した。

 

 乗客は、その度に長いホームを右往左往するのである。大きなスーツケースを3つも4つも引きずった巨大な体躯の欧米男子が、ホーム上の至る所で互いに激突する姿は、さながらボールなしのアメフトであって、そのわずかな間隙を縫って、東洋のサトイモはすばしこく疾走を繰り返した。

 

「すばしこく」「疾走を繰り返す」と入力しても、我が友Mac君は「すば四国」だの「失踪を繰り返す」だの、余計な冗談ばかり返してよこす。

 

 命に関わるスーパー猛暑のなか、こんな冗談で笑えるはずもないが、諸君、コモ湖からミラノ経由でヴェネツィアを目指したサトイモの道のりは、マコトに厳しいものであった。

 (翌日は、ヴェネツィアへ。迷路を散策して1日過ごした)

 

 コモからミラノに戻るには、私鉄ノルド線を利用してもいいが、10年前の記憶が確かならば、この私鉄には各駅停車しか存在しない。気の遠くなるほどたくさんの駅に1つ1つ停車して、ミラノ・カドルナ駅まで1時間。いやはや長かった。新宿から小田急線の各駅停車で海老名とか厚木まで行くような感覚である。

 

 そこで諸君、今井君は国鉄利用。イタリア国鉄は略称FSであり、イタリア語ならこれで「エフェエッセ」と発音する。エフェエッセのコモ・サン・ジョヴァンニ駅からミラノのポルタ・ガリバルディ駅まで急行35分、各駅停車でも40分。おお、なかなかカッケー話じゃないか。

 

 駅併設のバルで生ビールを1杯グビグビやって、「これでまた5年、コモ湖に来ることはないな」と、少しばかりしょんぼりしながら列車の到着を待った。駅の表示では「10分遅れ」。ま、スイスからくるローカル線だ、そのぐらいは致し方ないじゃないか。

 

 しかしそのうち、「15分遅れ」から「20分遅れ」「25分遅れ」に、毎度お馴染み寸刻みに遅れが拡大していく。向こう側のホームには、折り返し運転のミラノ行き各駅停車が入線したけれども、いちおう今ワタクシが待っているのは、途中4つか5つしか停車しない快速電車だ。遅れても、こっちのほうがいい。

(イタリアすみずみの締めくくりは、やっぱりヴェネツィア。リアルト橋たもとのレストランで朝食もいいだろう)

 

 ところが諸君、一向に快速列車はやってこない。表示は「25分遅れ」のままビクともしないが、すでに35分遅れている。アルプスのスイス側で何らかの故障があったらしい。「向こうのホームの各駅停車に乗っちゃった方が無難かな」。今井君の鋭い嗅覚は、その判断に傾きかけた。

 

 しかし今ワタクシの手にあるキップは、1等車用のものである。1等車のチケットがあるのに、2等車のみで運行の各駅停車を選ぶことはないだろう。ここはひたすら我慢して、快速の到着を待とうじゃないか。

 

 ついにヨレヨレで到着した快速列車は、すでに超満員。考えてみれば通勤通学の時間帯だ。40分も遅れた列車が超満員なのは当たり前だが、何と1等車も超満員。どうやらミラノまで数十分、立っていかなきゃいけないようだ。

 

 ところが今度は、列車が発車する様子がない。そのまま5分が経過、10分が経過。そのとき諸君、運転席からいきなり女性乗務員が客席に顔を出して、「機関車が故障です」「コモの駅で運転を中止します」「向こうのホームの各駅停車に移動してください」と叫んだのである。

 

 周囲のイタリア人も、さっぱり事情が飲み込めない様子。しかし今井君はまさに一瞬で状況を把握し、真っ先に快速列車を降りて地下道を突っ切り、向かいのホームの各駅停車に座席を確保した。

 

 どうやらこれは、最初から既定路線だったようである。要するに「どうせ40分も遅れたんだ、コモで運転を打ち切りましょう」「そうしましょう&そうしましょう」「乗客はどうします?」「各駅停車で行かせましょう」、そういう話に決まっていたようである。

    (日帰りのヴェネツィアで朝食。詳細は、明日)

 

 座席を確保したからよかったが、当然のことながら各駅停車も超満員になった。しかも諸君、空調が故障している。窓も、開く窓と開かない窓があって、スーパー蒸し暑い車内で熱中症になりかけたオジサマもいた。だって各駅停車、行けども行けども一向にミラノに接近する気配がない。

 

 こうしてワタクシがミラノ・ポルタ・ガリバルディの駅に到着したのは、もう8時に近かった。しかも、まだホテルからは遠い。徒歩なら20分もかかる。ホテル至近のレプブリカ駅まで、電車は15分に1本しかない。

 

 ようやく到着したレプブリカ駅で、今度は激しい夕立に襲われた。ホテルまで傘を差して、坂道を疾走するしかないのである。ここまで滞在13日に及んだウェスティンホテルは、急坂の上。ヘトヘトのヘト左衛門にとって、この急坂はまさに「心臓破りの丘」に思えた。

 

 午後9時、ついに我が部屋に帰還。しかし明日のヴェネツィア行きは、ミラノ発6時半の新幹線「イタロ」である。ホテルを朝5時半には出たいじゃないか。それまでに、部屋のミストサウナにも入りたい。何よりブログ記事を書かなきゃいかん。

 

 だって諸君、5月下旬のあの頃は、「10年 = 3652日、1日も休まずに文庫本6ページずつ書き続けるぞ」「あと30日で達成だ」と、異様とも思える意地を張って、自ら「偉業」と名付けたゴールに向かって疾走していた頃である。「不機嫌にも程がある」と、自ら反省するほどの不機嫌な夜になった。

(ミラノからヴェネツィアまで、新幹線イタロで2時間の道のり)

 

 こうして翌朝5時半、まだ暗いミラノの街を、ミストサウナでポカポカに温まったサトイモ君は、遥かなヴェネツィアに向かって出発した。他の乗客のほとんどいない地下鉄に乗って、ミラノ中央駅へ。これまたガラガラの新幹線イタロでヴェネツィまで2時間である。

 

 途中、ブレーシャでもデセンツァーノでも、ヴェローナでもパドヴァでも、鉄道の沿線にポピーのような濃厚なオレンジ色の花が群生している。

(沿線はずっとポピーのような花で埋め尽くされている 1)

 

 この花に気づいたのは、2006年のボローニャ滞在や、2008年のミラノ滞在の時が最初である。むかしむかし大むかしのブログ記事だが「Fri 080627 ポピーのような花 ブレーシャ」を参照していただきたい。

 

 初めの頃は、麦畑の中にポツンポツンと赤い花が点在するに過ぎなかった。しかし繁殖力がよほど強力なのか、どうやら他の植物をグイグイ駆逐して、今ではミラノからヴェネツィアまで2時間、車窓はずっとこの花に占領されている。思えば気味の悪い話である。

(沿線はずっとポピーのような花で埋め尽くされている 2)

 

 鉄道沿線の植物といえば、むかしはススキ、やがてセイタカアワダチソウやニセアカシア、そういう帰化植物でいっぱいになった。黄色い花のセイタカアワダチソウは、根から周囲の植物の成長を阻害する物質が排出し、その縄張りを一気に拡大するのである。

 

 イタリアの赤い花からも、同様の阻害物質が出てるんじゃないか。そういえば、日本でも同じようなポピー系の花が目立つようになった。そう思うと、シロートなりに怖くなって、とてもヴェネツィア満喫どころではなくなってしまうのである。

 

1E(Cd) Kazune ShimizuLISZTPIANO SONATA IN B MINOR & BRAHMSHÄNDEL VARIATIONS

2E(Cd) Barenboim & BerlinerLISZTDANTE SYMPHONYDANTE SONATA

3E(Cd) Perlea & BambergRIMSKY-KORSAKOVSCHEHERAZADE

4E(Cd) Chailly & RSO BerlinORFFCARMINA BURANA

5E(Cd) Pickett & New London ConsortCARMINA BURANA vol.2

total m25 y1396  dd23866