Sat 180804 コモはいつも雨/またいつかは/ベラッジョ(イタリアすみずみ19)3687回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 180804 コモはいつも雨/またいつかは/ベラッジョ(イタリアすみずみ19)3687回

 コモ湖は、いつでも雨降りだ。少なくともワタクシがコモ湖を旅している時はそうである。もちろんそうは言っても、コモにいたのは10年前の4日間と、今年の5月21日&22日だけだから、「いつも雨降り」とはひどい言い草だが、それが主観的印象なら仕方ないじゃないか。

 

 10年前には、チェルノッビオの港から2度の遠出をした。ベラッジョに1日、メナッジョに1日。ベラッジョとメナッジョはコモ湖の対岸どうしであって、要領のいい人なら1日で済ませるところだが、10年前の今井君はすこぶる要領が悪かったから、わざわざ2日かけて悠然と2つの町を堪能した。

 

 そしてベラッジョもメナッジョも、どちらも雨降りだったのである。特にベラッジョの雨はひどくて、港の近くのお店の前で、長毛種のネコが悲しそうに濡れていた。あれから10年、きっとネコどんはとっくに天国に旅立っただろう。

 

 メナッジョのほうは、我が記憶によれば「初夏の雨上がり」という感覚。初夏の陽光に前日の雨がモワモワ蒸発して、蒸し暑い1日だったように記憶する。

 

 それもすべて「私の記憶が確かならば」ということであって、さすがの今井君の記憶だって、「10年前のメナッジョ」にはそれほど強烈な自信はない。しかしあの日も確か、午後からは激しいにわか雨に遭遇した。

 (コモ湖のベラッジョで、2本目のアマローネを満喫する)

 

 あれから10年、2018年5月22日のコモ湖もまた、初夏の雨に濡れていた。懐かしいヴィラ・デステの朝食には、やっぱり昔と同じシャンペンが出て、いやしい今井君は早速2杯も3杯もオカワリした。ボトル1本空っぽになったところで、もう新しいボトルは開けてくれなくなった。

 

 朝10時、まだ雨は降りだしていなかったから、もう1度庭園に出て、5年後の再会を誓った。今回は10年=3652回達成記念でここに帰ってきた。いわば「盆帰り」ないし「正月の帰省」であるが、オトナになれば盆帰りも5年に1度、ないし10年に1度、頻度はどんどん低くなる。

 

 次回ここへは帰ってくるのは、とりあえず「5000回達成」の日としておこう。毎日欠かさずブログを更新するとして、1350日後、要するに3年半後の予定とする。ハードルを「6000回達成」に上げてしまうと、話はいきなり6年後になってしまう。さすがにそれはハードルの上げすぎだろう。

  (雨模様のチェルノッビオを出発、ベラッジョに向かう)

 

 午前11時、ヴィラ・デステをチェックアウト。まさに「またいつかはと心細し」であって、弥生も末の7日、上野・谷中の花の梢に別れを告げた松尾芭蕉と同じ心境である。

 

 もちろん松尾バセオは、そのたった5ヶ月半後には岐阜の大垣で「旅に病んで夢は枯野を駆けめぐる」と言ふ状況になっているのだが、けふの今井君は「皐月も末の2日、ヴィラ・デステの糸杉の梢、またいつかはと心細し」。次に帰ってこられるのは、3年半後ないし6年後、遥かな遥かな旅路の果てのことである。

 

 荷物は例の黒いドクターズバッグ1個だから、ホテルに預けていくほどのことはない。医者カバン1つぶら下げて、チェルノッビオから船に乗り込んだ。10年前とはすっかり様変わりして、ベラッジョまで高速艇で2時間もかからない。

 

 初夏の雨が降り出したのは、船が動き始めてすぐのことである。アルプス南側の深い山あいだから、「初夏の雨」と言ってもマコトに冷たい水滴が降り注ぐ。地形の関係もあるのだろう。10年前のネコの姿をまざまざと思い出す冷たい雨が2時間、船の窓を濡らし続けた。

  (ベラッジョに到着。10年前と同じ雨模様であった)

 

 ベラッジョに到着、13時半。ランチにはギリギリの時間帯である。これがスペインなら「ランチは14時から」「16時半でもランチOK」、今井君にとって最高の時間設定なのだが、イタリアはフランスと同じでランチの時間帯がスーパー生真面目に早く設定されている。

 

 ランチは12時スタート、ラストオーダー14時ちょい。船が13時半に港に着いたのでは、目ぼしい店はもう店じまいの準備にかかっている。案の定、港の周辺のお店は「もう終わり」モード。雨の中で列を作って待たなきゃ入れてくれない店もある。

 

 もう一つ「案の定」をやっておけば、例の長毛種のネコとの再会も果たせなかった。あの時ネコどんが濡れながら番をしていたお店も、すでに影も形もなかった。旅先の町を離れる時に「またいつかはと心細し」な気分になるのは、こういう事態がしょっちゅう起こるからである。

 

 雨の中、折りたたみ傘を広げて、急坂を登り、教会の前に出て、今度は岬の先端へのダラダラ坂を降りた。ランチにヨサゲなお店は見つからない。まあそれでも別に構わないので、今井君ほどのベテランになれば、空腹をかかえてディナーの時間帯までガマンするぐらいは簡単なことなのだ。

    (ベラッジョ、岬の先端の高級レストラン)

 

 あきらめかけた頃、岬の先端に高級げなレストランを発見。やっぱりランチはもう終わりモードに入りかけている。しかしダメモトで尋ねてみると、「どうぞ」&「どうぞ」と暖かく迎え入れてもらえた。

 

 こんなに親切にしてもらえれば、お客としてもチョイと奮発したくなるじゃないか。さっそくワインを1本選ぶことにして、メニューの中にアマローネを発見。値段は書かないでおくが、今井は今井なりに「奮発」したレベルのアマローネを指差してみた。

 

 すると諸君、ウェイターのオニーサマがエラく喜んでくれた。いったん奥に引っ込んで、3分ほどして出てくると「もし興味があったら、もうワンランク旨いアマローネがある。50ユーロ高くなるがどうだ?」とおっしゃる。

 

 諸君、素晴らしい提案だ。50ユーロとは、7000円であって、例えば渋谷区から羽田空港まで定額でタクシーに乗るのと同じ値段である。その50ユーロをプラスすれば、ワンランク旨いアマローネが飲めるというなら、清水の舞台から飛び降りるのも悪くない。

  (フィレステーキ。グリーンペッパーソースが旨い)

 

 しかしもちろん「清水の舞台から飛びおりる」なんてのは、考えてみれば何の意味もなくないか? 清水の舞台は、あくまで舞台の上からの眺めががいいのであって、あんなところから飛び降りたって、面白くも何ともないばかりか、飛び降りた後には、きっといろいろメンドーなことが起こるに決まっている。

 

 だから今井君は、清水の舞台から飛び降りるのは躊躇した。懸命に自分を抑制し、「かばかりになりては、飛び降りるとも降りなん」という決断をギュッと押さえつけたのである。昔のCMふうに言えば「オカネは大事だよー」であって、とりあえずリーズナブルなアマローネにとどめることに決めた。

 

 肝腎のランチのほうは、分厚いフィレステーキを注文。グリーンペッパーソースには、驚くほど大量のグリーンペッパーが入って、その歯ごたえだけでも素晴らしく記憶に残るランチになった。

 

 お店を出たのは、すでに15時をとっくに回った時刻。コモの町に帰る最終便のお船まで、もう30分も残っていない。わざわざベラッジョまで遠出して、結局アマローネとフィレステーキとグリーンペッパーを満喫しただけに終わったけれども、まあこの雨じゃ、他にどうしようもないのである。

(コモの駅前で。ここから3日間、思いもかけぬ悪戦苦闘が始まった)

 

 帰りの船は、超満員である。多くの乗客が雨に疲れ果て、もう船内でワインもビールも飲む気力がなく、欧米人も中国の団体も、ひたすら眠りこけている。コモまで2時間、オトナもコドモも雨の湖の絶景を眺めることさえしない。

 

 コモに到着、17時。実はサトイモ君、明日はミラノからヴェネツィアに日帰りの旅を予定している。だから今はできる限りスムーズにミラノのホテルに帰りつきたいのであるが、諸君、ここからまさかの悪戦苦闘が始まるのである。

 

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