Tue 180717 今年も祇園祭/万歳三唱か山椒万歳か/うなぎと山椒鍋でピリピリ 3669回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 180717 今年も祇園祭/万歳三唱か山椒万歳か/うなぎと山椒鍋でピリピリ 3669回

 というわけで(スミマセン、昨日の続きです)、7月15日・16日・17日の3日間、ワタクシは日本列島を覆い尽くした危険な猛暑の中、京都で祇園祭を堪能していた。

 

 祇園祭を初めて見に行ったのは10年ほど前であるが、当時と比べると観光客の数が格段に増えた。10年前には四条通りも河原町も烏丸御池も、人の流れはマコトに穏やかであって、山鉾巡行の真っ最中でも、あんなに警察の人々が緊張感いっぱいで交通規制に乗り出さなくてもよかった。

 

 人の数がグイグイ増え始めたのは、6〜7年前のことであるように記憶する。あの頃は何故かちょうど祇園祭にかかるように京都や滋賀での公開授業があって、公開授業の直後とか、公開授業の翌朝とか、マコトにうまく山鉾巡行を堪能したものである。

 

 しかし諸君、昨年の夏は、あまりの人の多さに唖然とさせられた。仕事はなかったけれども、もちろん自費で京都ホテルに宿泊し、京都ホテルの目の前の河原町御池で勇壮な辻回しを眺めた。

 

 昨年もまた油照りの1日。最初の2つの辻回しが終わったあたりで、人生で初めて熱中症の危機を実感。滝のように流れる汗のあまりの量に怯えて、すぐ近くの地下鉄の駅を経由して、京都ホテルのロビーに避難した。ギュッとクーラーの効いた京都ホテルロビーに、昨年は救われたのである。

 

 だから「今年はどうしようかな」と、6月中頃までは躊躇していたのだ。昨年以上の猛暑が予想される京都で、熱中症で「里芋コロリン」「キウィころりん」なんてことになったら、世間のヒトビトに迷惑をかけるじゃないか。

(京都「とり粋」の山椒なべ。強烈なピリピリでございました)

 

 しかしこんなに熱心に通い詰めている祇園祭に、「今年だけ、遠慮します」などということをするのもまた気に入らない。6月下旬、「ついにブログ10年達成」という日が迫っていたある晩、サトイモ君は思い切って「よっしゃ、今年も出かけよう」と決意したのである。

 

 題して「山椒ざんまい京都3日間」。山椒は大規模な疫病を抑制するために、昔から日本各地で重用されたものである。祇園祭の宵山にだけ東山の店で販売される「行者餅」も、山椒がたっぷり入っているが、これも「行者餅」の発案者が、京都での疫病の流行に心を痛めて考えたものらしい。

 

 祇園祭の起源は「祇園御霊会」である。遥かなむかしの860年代、京都・神泉苑で何度か御霊会が行われた。御霊会は、死者の怨霊を鎮めるためのお祭りである。

 

 864年には富士山が噴火、溶岩流は山麓に到達して多数の犠牲者が出た。869年には貞観の大地震があり、大津波が発生、再び犠牲者多数。平安京でも、社会不安が拡大していただろう。

(京都「とり粋」。御池通りから新町通りを南下すればすぐに見つかる)

 

 そもそも諸君、もともと平安京は内陸に位置し、多数の河川が流れる湿地帯であった。「京都の夏は暑いやろ」であって、多湿に高温が加われば、疫病が流行しやすくなるのは自明の理である。

 

 国の都ともなれば、いきなり人口が集中する。上下水道が完備してるわけでもない古代の都で人口が急増し、高温多湿の夏が続けば、疫病がしばしば流行して社会不安に拍車をかける。

 

 疱瘡・赤痢・マラリアみたいな深刻な疫病が連続し、乾いた泥が空中に舞い上がって「めやみ」も増えた。四条大橋を東に渡って八坂神社に向かう途中、右手に「仲源寺・めやみ地蔵尊」がある。めやみとは「目疾」であり、地蔵尊は眼病に霊験があるとして信仰されている。

 

「めやみ」は「あめやみ」にも通じ、鎌倉時代初期のある年、京都に豪雨が続いて「雨やめ給え」の祈祷を行うと、鴨川の水が収まった。以来、雨やみと目やみの両面から信仰を集めたという。

    (京都「とり粋」で、まずは馬刺しを注文する)

 

 その他、いろんなお話が付随してくるのであるが、真夏の炎熱に覆われた京都で祇園祭が催されるのには、疫病封じの意味合いが強いようである。

 

 疫病封じには、山椒がいい。他の地域の人に比べて京都の人は、今でも山椒を多く召し上がるのだそうだが、さすが京都、単に「山椒をたくさん食べる」という嗜好についても、860年代の貞観年間から、長い長い歴史を積み重ねていらっしゃる。

 

 そこで諸君、今井君は15日・16日・17日の3日間、我が胃袋に山椒を徹底的に送り込むことによって、まず自らの胃袋を浄化し、その胃袋から発するド迫力によって日本や世界に貢献しようと考えた。

 

 3日間の山椒づくしで、胃袋もピリピリ、舌先もピリピリ、流れる汗も山椒のカホリ、吐く息も吸う息も山椒のカホリ、自ら楕円形の山椒入道と化して、もし万歳三唱すれば我がドラ声が「万歳山椒」に聞こえるぐらいに、山椒♡山椒♡ひたすら山椒、そういう祇園祭をテーマに据えた。

  (名物・とり粋の「赤鬼串」。おいしゅーございました)

 

 だからまず、東京を出る段階から山椒づくしを始めた。7月の東京で山椒と言ったら、うなぎ屋さん以外に考えられない。京都までは新幹線を選択したので、東京駅前新丸ビル「前川」という名の有名店を初めて訪れることにした。

 

 しかし諸君、うーん、どう言うんだろう。悪口は言いたくないが、お店の対応がイマイチなのだ。窓際のテーブルを選ぼうとすると、「そこは予約のお客様の席です」「こちらでお願いします」と、不機嫌に指差されたテーブルからはせっかくの丸の内の絶景が全く見えない。

 

「肝焼きはありますか?」という質問に、即座に「品切れでーす♡」と来た。正しい礼儀としては、「すみません、品切れとなっております。申し訳ございません」なんじゃないか。「品切れでーす♡」、この一瞬が全てを暗示していた。

 

 ま、それなら致し方ない。6000円もする「特上うな重」を注文。仕事のない日だから、日本酒も3合注文。「予約のお客様」の2倍もオカネをつかったはずだが、うなぎで特に印象に残ったことはない。

 

 思わず山椒をかけすぎて、お口はピリピリ、胃袋もピリピリ、ついでに気持ちもピリピリして、サッサと新幹線に乗り込んだ。山椒はニャゴの大好物。マタタビ以上に山椒で喉をゴロゴロ言わせるのであるが、新幹線の今井君はひたすら心がピリピリして、何だかとってもツラかった。

 

 だって諸君、これが「土用の丑の日のうなぎ」になっちゃったのだ。ホンマモンの丑の日より若干早いけれども、ハレの日のうなぎがこんなんじゃ、今年の夏がつまらない。もっといいうなぎ屋さんにすればよかった。河口湖「こなみ」を楽しみにまつ次第である。

 

 少年時代の今井君は「土曜の牛の日」だと信じて疑わなかった。オカネモチの家に育ったわけではないから、うなぎを初めて食べたのは18歳の時だったが、「土曜の牛の日」に初めて食べたうなぎは、スーパーの安売りうなぎを丼飯にのっけただけの代物。それでも今日の丸の内の高級うなぎよりずっと旨かった気がする。

(京都「とり粋」。2階のテーブルで約2時間ピリピリした)

 

 こういうふうで、舌から喉から食道から胃袋まで、いや何よりも精神と神経と心をピリピリ言わせながら、祇園祭の京都に到着。1泊目は南禅寺前のウェスティン、2泊目は二条城前のクラウンプラザ。なかなか豪華な京都山椒づくしの旅である。

 

 1泊目に関しては、宵々山より何より楽しみにしていたのが「山椒なべ」である。焼き鳥で有名な烏丸御池の「とり粋」で、大量の山椒で出汁をとった山椒なべを1人前2800円から出してくれる。ランチのうなぎでピリピリしちゃったなら、ディナーの山椒でホカホカに機嫌を直したいじゃないか。

 

 ウェスティンは今や「8割が外国人観光客」という状況。ロビーもエレベーターも、飛び交うのは外国語ばかりであって、京都の風情はイマイチというかイマニというかイマサンというか、とにかく祇園祭の風情を楽しむなら、サッサと「とり粋」を目指したほうがいい。

(山椒なべ。ピリピリの出汁を2回もお代わりした後、〆の中華麺を投入する。これでしばらく今井君は無病息災だ)

 

 宵々山の雑踏の中、「とり粋」はすぐに見つかった。ひょうきんな女将に導かれて2階のテーブル席に座ると、さすが「7月の鍋料理」、冷房が効かないぐらい熱気がこもっていて、翌日の新聞に「京都で38.7℃」「今日も猛暑警戒」とあったのも、熱く熱く頷ける状況だった。

 

 では諸君、旅のテーマである「山椒はどうだったか」であるが、店の名物「赤鬼串」や馬刺しのニンニクですでにホッホ燃え上がっていた今井君の肉体は、激しい山椒のピリピリが、やがてビリビリへ、まもなくビンリビリビリへ、全身が痙攣するほどの刺激に、呆然とするばかりだったのである。

 

 いったいどれほどの汗をかいたのだろう。強烈な山椒の出汁に、投入した中華麺がよせばいいのにマコトによく絡んでくれて、中華麺までがビンリビリビリ胃袋を刺激する。その状況で投入した冷たいビールが、さらに刺激を激烈なものにしたのである。

 

 こうして、山椒旅の初日が終わっていく。おやおや、ランチからディナーまで、別の側面から精神も肉体もビンリビリビリ、前途多難なのは、貞観年間の京の都をしのぐアリサマであった。

 

1E(Cd) BarenboimBEETHOVENPIANO SONATAS 9/10

2E(Cd) BarenboimBEETHOVENPIANO SONATAS 10/10

3E(Cd) Carmina QuartetHAYDNTHE SEVEN LAST WORDS OF OUR SAVIOUR ON THE CROSS

4E(Cd) Alban Berg QuartettHAYDNSTREICHQUARTETTE Op. 76, Nr. 2-4

5E(Cd) BernsteinHAYDNPAUKENMESSE

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