Sat 180707 豪雨がひどすぎる/名古屋でひつまぶし/マクベシの舞台を夢みる 3660回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 180707 豪雨がひどすぎる/名古屋でひつまぶし/マクベシの舞台を夢みる 3660回

 こんな大災害の1日、ブログというものの無力を痛感するのである。これを書いている段階で、死者45人、心肺停止3人、69人が安否不明。朝からずっとNHKニュースを見つめ、激甚災害に対する人間の無力が悲しくて、ずっとシクシク泣いて過ごしていた。

 

 だって、涙が止まらない。ひどいじゃないか。ひどすぎるじゃないか。広島も福岡も、京都も兵庫も岡山も、みんな馴染みの土地ばかりである。

 

 たびたび画面に映し出される「兵庫県豊岡」は、ちょうど1ヶ月前に訪れて、タクシーの運転手さんと30分、「この川はいったん洪水になったら危険なんですよ」「そんな感じですね」と、ずっと語り合っていたのである。

 

 広島の映像には、今井がこの15年ずっとお世話になり続けている加盟校さんの看板が大映しになっていた。京都嵐山の映像では、むかしむかしワタクシが何度も通った料理屋が、桂川の濁流の中にポツンと取り残されていた。

 

 明日の今井は、羽田発12時のヒコーキで大阪に向かう。19時から西宮北口で公開授業が予定されている。その兵庫県南部も、ついさっきまで特別警報の対象になっていた。こんな時に公開授業をやっていいのかどうか、今も悩みに悩んでいる。

 

 悩みはマコトに深いのであるが、テレビのチャンネルを民放に回してみると、マスメディアの人々の冷淡さには凄まじいものがあって、今夜も話題はサッカー・奇跡的な健康食品・街角の安くて旨い店。ヤフーニュースもおんなじで、どこまでポチポチやってみても、話はひたすらサッカーに集中している。

 

 確かに泣いたり悩んだり、今井が一人ここで熱くなっていても、被災地に元気が戻るわけではない。「クマさん元気を出しなさい」と、誰かにアタマをナデナデしてもらわなきゃ、ブログ記事を書く元気も出ないなんてのは、あまりにオトナゲナイないのかもしれない。

(7月3日、名古屋で「ひつまぶし」を食らう。詳細は明日 1)

 

 だってワタクシも、昨夜はサッカーを見て過ごしたのである。神奈川県橋本での公開授業は滞りなく終了、橋本でもやっぱり「懇親会ナシ」「雨ですから、気をつけて帰ってください」というわけで、雨の中を1人寂しく渋谷区のオウチに帰還した。

 

 西日本の豪雨被害はもちろん心配だったが、フランスのエムパベも気になったし、5日前の好敵手ベルギーが、果たしてブラジルに勝てるかどうか、早朝まで見守らざるを得なかった。

 

 思えば7月2日深夜、我々は信じがたい歓喜に酔っていたのである。その歓喜がホンの10数分しか持続しないものだったとしても、天国の入り口「竜宮城」をのぞいちゃった浦島太郎よろしく、「ありゃりゃ、この勢いならブラジルも撃破できるかも♡」と、甘い握りコブシを固めたのである。

 

 守りに徹すればよかった。ポーランド戦と相似形のパス回しに徹すればよかった。何ならディフェンスの選手を2人投入すればよかった。控えには槙野だっていたじゃないか。コーナーキックになっても、あそこで本田はパス回しとキープだけを考えるべきだった。そうも思うのである。

 

 しかしそれは、みんな竜宮城の夢。タイやヒラメの舞い踊り。タイはまだいいとしても、「ヒラメの舞い踊り」となると、うーん、そりゃどうなんだろう。

 

 むしろウナギの舞い踊りのほうがシュールでよくないか。下北沢の小劇場にに出没して30年の演劇ファンとしては、ヒラメの舞い踊りよりも、ウナギとアナゴとハモが不気味に絡まり合った幻想の舞踏会シーンを見たいと思うのだ。

(7月2日深夜、名古屋の駅弁を食べながらベルギー戦に酔う。「びっくりみそかつ」でゲンをかついだ)

 

 どうだい、若い演劇人の皆様、「リチャードアルカリ性」やってみないかね?「何だ、そりゃ?」と失笑&冷笑することなかれ。もちろん、リチャード3世 → リチャード酸性 →リチャードアルカリ性というツマラン発想であるが、史上最大のツマラン発想こそ、演劇の醍醐味じゃないか。

 

 暴君の凶悪にはいろんなタイプがあって、シェイクスピアが描いたマクベスとリチャード3世は、どちらも昔ながらの血まみれ酸性タイプ。血まみれの虐殺の連鎖は、いかにも血液の鉄臭さが満ちている。

 

 しかし諸君、20世紀から21世紀にかけて、暴君の巨悪は酸性からアルカリ性に変化したんじゃあるまいか。ヒトラーまでは、硫酸チックな赤い巨悪。ヒトラー以後は水酸化ナトリウム的な青い暴君。リトマス紙が真っ青に染まる強アルカリな巨悪を、ライター諸君、描いてみないかね。

 

 そりゃちょっと不気味すぎるから、軽い笑劇かコントにするなら「リチャード、賛成!!」なんてのもいいじゃないか。付和雷同の閣僚たちに囲まれ、「賛成♡」「何でも賛成♡」「何でもいいからとにかく賛成♡」の渦に巻き込まれた暴君の悲劇を描くのだ。

 

 暴君の悲劇は、ガンコな反対よりも軽薄な賛成から生まれる。「反対してほしい」「徹底的なカタキ役がほしい」「反対してくれ」「反対してくれ」。そう熱く願いながらも、得られるのは賛成派の暴走のみ。そういう暴君の悲劇を描いた「リチャード、賛成!!」。こりゃなかなかいい脚本になりそうじゃないか。

(遠い岡崎の生徒から、日本酒を差し入れてもらった。名古屋のホテルで1人寂しく味わった。ホントにおいしゅーございました)

 

「マクベス」からも、今井君のアタマにはいろいろなアイディアが湧き上がってくるのだ。「マクベシ!!」ってのはどうだろう。マクベシとは「巻くべし!!」であって、巻いて巻いて350年、古都で長い伝統を誇る老舗の太巻き屋が舞台である。

 

 幕が上がると、舞台の右半分だけにライトが当たっている。いかにも老舗の雰囲気の門田牛屋。門田牛、もちろん「もんたぎゅう」と読んでくれたまえ。後継ぎの路美夫(ろみお)が、ハムと紅生姜を巻いた新商品「ハムレッド」の開発を巡って、父や兄弟と激しく対立している。

 

「そんなのはヤメとけ、とにかく今日の太巻きを巻くべし!!」。すっぽん巻き、うなぎ巻き、あなご巻きにハモ巻き、古都の人々の元気を養いつつ、家族経営350年、「巻くべし!!」「巻くべし!!」で頑張ってきた。今さらハムレッド巻きなんてのは、厳格な家訓からしても許しがたいのである。

 

 ところが諸君、前半終了間際、お隣に細巻き屋「赤い悪魔コーポレーション」が出現する。舞台左側、ここまで暗黒に包まれていた左半分にスポットライトがあたり、店の看板は「がぶレッド屋」。ガブッといけるレッドな紅生姜の細巻きがウリ、看板娘の樹里恵(じゅりえ)はまだ14歳だ。

(7月3日、名古屋で「ひつまぶし」を食らう。詳細は明日 2)

 

 中盤から後半にかけては、壮絶な太巻き vs 細巻きの戦いに発展する。門田牛側の路美夫は「太巻きはもう時代遅れだ」「細巻きのハムレッド巻きに乗り換えた方がいいんじゃないか」と迷い、「太巻きか、細巻きか、それが問題だ」の名セリフを吐く。

 

 他にも、ナンボでも名文句をアレンジすることは可能だ。

「太いは細い、細いは太い」

「太巻きさん、太巻きさん、どうしてアナタは太巻きさんなの?」

「洗っても、洗っても、どうしても太巻きのニオイがとれないの」

 

 幕間では、なんと観客全員に「太巻き&細巻き2本セット」が配布される。太巻きの方は伝統的な何でも巻きだが、細巻きは、もちろんハムレッド。アンケート用紙まで配られて、観客も「太巻きか細巻きか」の選択を迫られる。

 

 こうして諸君、2時間にわたる芝居は大団円を迎える。観客のアンケートを見ながら、「太巻きがいい!!」「細巻きがいい!!」の2種類の脚本が準備される。

 

 俳優たちは当然、どっちの方向性でも対応できるように、2種類の台本を完全に記憶している。そして諸君、どちらのルートを通っても、最後は同じ大団円に流れ込み、「細巻き3本を1つにまとめて、大きな太巻き1本にして販売しよう」と、両家はついに和平に至る。

 (あんまり寂しいので、ひつまぶしに豪華な肝焼きも追加)

 

 今や固く1つに結束して、「巻くべし!!」「巻くべし!!」のシュプレヒコールに至る両家。がぶレッドも門田牛も、もはや一体なのだ。マクベシ!! マクベシ!! その叫びはついに客席全体を包み込む。

 

 舞台の俳優は四方八方に散り、客席に紛れ込んで「巻くべし!!」とコブシを高く突き上げる。「巻くべし!!」「巻くべし!!」。両家の和平に巻き込まれ、感動した観客は、紛れ込んだサクラ君たちの勢いにつられて「巻くべし!!」の絶叫を始める。

 

 舞台&客席が一体となって「巻くべし!!」の大合唱が10回、いや20回。突如として舞台は暗転する。再び舞台にライトが当たると、2時間激しく争った両家のメンバーが抱擁しあい、観客も隣どうし熱く握手を交わして、やがてニコヤカに感激を語り合いながら、それぞれ家路につくことになる。

 

 どうだい諸君、誰かチャレンジしてみないかね、「マクベシ!!」。今井君はそういう熱い舞台を夢みている。

 

1E(Cd) Kenny WheelerGNU HIGH

2E(Cd) Jan GarbarekIN PRAISE OF DREAMS

3E(Cd) Lee RitenourWES BOUND

6D(DMv) DREAMGIRLS

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