Sun 180701 甘んじて悪役を引き受けると言ふこと/成熟したオトナの雄々しさ 3654回
遅きに失したというか何というか、もうとっくに決勝トーナメントが始まって、「何を今さらポーランド戦のことなんか」なのではあるが、世界をブーイングが覆い尽くしたあの夜、実はワタクシ、感激の熱い涙を止めることが出来なかった。
自分にヒール役が回ってきた時、従容としてその運命を受け入れ、悠然とカタキ役を演じ続けるのは、並大抵のことではない。最後の10分の苦悩と苦痛は、想像するに余りある。選手も監督も、マコトに潔く運命に耐えた。
あの夜のようなシチュエーションが発生する確率は、奇跡的に低いはずである。神が与えた試練と言っていい。悠然とヒール役を受け入れること、飄々と罵声やブーイングに耐えること、批判と嘲笑と自責の念に耐えながら10分、正確なパス回しを続けること。その困難は、滅多な人に理解できることではない。
確かに、カッコ悪いのである。イケナイのである。正しくないのである。教育上よくないのである。サッカー少年のお手本にはしたくないのである。弱虫の他力本願と罵倒される。「ケマリかよ?」である。
(6月26日、大阪府茨木で340名の大盛況。詳細は明日 1)
しかし諸君、正々堂々と戦うだけなら、人間が成熟していなくても可能なのだ。スポーツマンシップにのっとり、最後まで諦めない姿勢を貫き、自分たちの力で堂々と1点を奪いに行く。厳しい運命に激しく抗い、万が一の敗戦にも爽やかに立ち去る。その姿はもちろん美しい。
しかしこの世に生きていれば、運命がカタキ役を命じることもある。神様が意地悪をして「オマエさん、悪役をやってみんしゃい」とニヤッと微笑むことだってあるのだ。
その時、もししっかりと成熟した大人なら、運命の命じるままに悠然とその役割を引き受けることができる。
「ボク、正義の味方しかやりたくないよ」
「ボク、汚れ役なんかイヤだよ」
「ボク、いつも熱い歓声と声援に包まれていたいよ」
と、悪役・ヒール・汚れ役を放棄してカッコつけてるだけでは、まだ精神的に幼いのである。
(6月26日、大阪府茨木で340名の大盛況。詳細は明日 2)
かく言う今井君は、1997年から2005年まで在籍していた代々木ゼミナールで、悪役をやることになった。自ら選択して悪役になったのではないが、駿台から移籍した直後に一気に「四天王」の一人にノシ上がり、まず講師たちの嫌われ役になった。その講師のファンの生徒たちに嫌われるうちに、いつの間にか悪役になっていた。
だから、嘲罵を浴び続ける悪役の厳しさは、熟知しているつもりである。ご自分の授業中に延々と今井を罵倒し続けるセンセまで存在した。それでも飄々と知らん顔でプレーし続けるうちに、罵倒の勢いはますます激しくなり、5年も経過すると、完全にヒール役に徹するしかなくなった。
ワタクシは弱虫だから、そういう状況に耐えられなくなった。それでも今井の教室は常に満員。渦巻く嘲罵にも関わらず、ずっと熱烈なファンでいてくれたあの頃のたくさんの生徒諸君に、熱く熱く感謝する次第である。
それでも2005年、「もう悪役はムリ」「やっぱり正義の味方をやりたい」「正統派を名乗って歓声をあびたい」と、要するに音をあげたワタクシは、今の予備校に移籍してきた。以来「正々堂々と戦う正統派の大ベテラン」として、マコトにラクな人生を選び、今日に至る。
(大阪府茨木の懇親会で、誕生日とブログ10年を祝ってもらう。詳細は明日 1)
この場合、罵声なりブーイングなり非難や批判の声を浴びせる人々も、決して間違ってはいないのである。彼ら彼女らも、神と運命に割りふられた役割を、粛々とこなしているに過ぎない。
スポーツ新聞やサッカー雑誌の記事で「もっと正々堂々と戦うべきだった」と論陣を張ったライターさんたちも、あの夜スタンドで激烈なブーイングを浴びせた観客も、やっぱりキチンと役割を果たしたのだ。
ワタクシが人々に理解してほしいと思うのは、パス回しの10分における日本選手たちの雄々しさである。冷酷な運命の命ずるところに従って、世界のヒール役を受け入れた。
「敬遠のフォアボール」も同じことである。「弱虫」「卑怯者」「逃げるな」「勝負しろ」の罵声が渦を巻く。味方のスタンドからも「正々堂々と戦ってほしい」「キバをむくべきだ」「ファイト!!」「燃えろ!!」の声が飛ぶ。それに耐えて4つのボールを投げ込むピッチャーの雄々しさを、我々は思うべきなのだ。
(大阪府茨木の懇親会で、誕生日とブログ10年を祝ってもらう。詳細は明日 2)
いやはや、ワタクシはサッカーのことなんか何にも分からない。観戦歴はマコトに長いが、今もフォーメーションが目に入らず、ボールばかり見つめていて、選手全員の動きなんか、さっぱり見えていない。
しかしあの10分、激烈なブーイングにさらされて緊張に耐えられず、思わず泣き顔になってキャプテンを見つめる若い選手たちの顔に、まず涙した。ホントによく耐えた。
もしもセネガルが1点取っていたら、「アホちゃうか」「限りなく卑怯な大馬鹿者」「目の前の勝利を捨てて逃げた臆病者」として、歴史に名を残す可能性だってあったのである。
ヒールにして最悪の道化になるのは、誰だってイヤじゃないか。「そんなのイヤだ」「オレは喝采だけを浴びたい」と高く絶叫し、指示と運命に反旗を翻して、果敢に敵陣に突っ込んでいく選択肢もあった。
そういう無謀な衝動を振り払い、泣き顔の後輩たちのハヤる心を冷静に抑えて、見事にヒールを演じきった長谷部どん。愚かな今井君は、すっかり彼のファンになってしまった。
1E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES 6/6
2E(Cd) Kempe & Münchener:BEETHOVEN/SYNPHONIE Nr.6
3E(Cd) Karajan & Wiener:BEETHOVEN/MISSA SOLEMNIS 1/2
6D(DMv) The Fate of the Furious / Fast & Furious 8
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