Sat 180526 大阪の地震/リモーネとミニョン/マルチェージネ(イタリアすみずみ15)M9 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 180526 大阪の地震/リモーネとミニョン/マルチェージネ(イタリアすみずみ15)M9

 

「大阪で震度6弱」と聞けば、さすがにワールドカップにもモリカケにも関心が全く向かなくなって、朝からテレビにかじりついて、ずっとニュース番組を見続けた。

 

 来週火曜日には、震源地に近い大阪府茨木でお仕事がある。というか、先週はずっと大阪駅前に宿泊して、豊岡に八尾に岸和田に橿原神宮、5連戦の関西シリーズを完了して、東京に帰ってきたばかりである。

 

 4日後には、またまた大阪駅前に宿泊して堺での仕事を予定しているし、誕生日の26日が茨木の公開授業。テレビの画面に次々と映し出される地名が、「先週あそこにいた」「来週あそこにいく」の連続なのである。

 

 犠牲者も3人、被害も多数。大阪周辺でたくさんの仕事をこなすワタクシとしては、何よりもまず犠牲となった方々の冥福を祈るのであるが、決して可能性の低くない同規模の余震にも、十分に注意を払わなければならない。

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(ガルダ湖風景 1) 

 

「こんな時に旅行記?」であって、躊躇に躊躇を重ねたのであるが、今ここで無力な今井なんかがジタバタしても何にもならないだろう。4日後には被災地の大阪に向かうのだ。今は落ち着いて、シルミオーネからガルダ湖の旅について反芻しておこうじゃないか。

 

 ガルダ湖は、イタリア最大の湖である。北イタリアの湖水地方は、西から東に向かって、オルタ湖、マッジョーレ個、コモ湖、ルガーノ湖。一番東側に位置するのがガルダ湖である。

 

 湖の南西の町がブレーシャ、南東の町がロミオとジュリエットの町ヴェローナ。琵琶湖を南北逆さまにしたような形であって、面積370km2。南北が約50km、東西の最も広いところが約20km。琵琶湖の面積が北湖と南湖を合計して700km2弱であるから、ガルダ湖の面積はちょうど琵琶湖の半分ということになる。

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(ガルダ湖風景 2)

 

 湖の南側はまぎれもないイタリアであって、南岸の保養地デセンツァーノやペスキエラの町は完全にイタリア語の世界。デセンツァーノから船で30分、天橋立みたいに湖に突き出した半島の先端シルミオーネでも、やっぱりイタリア語しか聞こえてこない。

 

 しかし湖の北に向かえば向かうほど、風景も人の言葉もドイツ色が強くなっていく。湖の向こうはスイスとアルプスの山々。その点ではマッジョーレやコモ湖と同じである。

 

 シルミオーネの船着場を出た高速船が、数々の有名な保養地に寄港しながら北上すると、船の中のドイツ語率がぐんぐん上がっていく。

20422 ガルダ湖3

(ガルダ湖風景 3)

 

 5月19日、ワタクシはシルミオーネの港から高速艇に乗って、ガルダ湖一周の旅に出た。湖畔には、次から次へと有名であるらしい町が現れる。

 

「イタリア人なら誰でも知っている」「スイス人なら常識」「南ドイツの人間なら知らぬ者はない」。そういうスタンスの保養地に、高速艇は15分に一度の割合で寄港する。

 

 寄港のたびにたくさんの客が下船し、それとほぼ同数の客が乗船して、船は湖をひたすら北上する。船内のドイツ語率の上昇は、まさに加速度的であった。

 

 この日ワタクシが目指したのは、ガルダ湖の北の先端部分に近い「リモーネ」の町である。正式な町の名称は「Limone sul Garda」。イタリア語のリモーネとは、もちろんレモンのことであって、17世紀以降、南向きの温暖な傾斜地がレモンの栽培に用いられてきた。

20423 サロ

(サロ。ガルダ湖畔の代表的な保養地だ)

 

 もちろん南国イタリアとは言っても、ここはもうスイス国境だ。標高も高い。レモンの栽培には少々無理があるが、それでも旅する者としては「レモンの実がタワワに実る町」は魅力的。どうしても湖をギリギリまで北上して、リモーネで数時間ほっこり過ごしたいと思った。

 

 だって諸君、ドイツからひたすら南下してイタリアにたどり着き、そこにレモンやオレンジの花が咲きほこる様子を目撃したゲーテどんの感動を、やっぱり追体験したいじゃないか。

 

 ゲーテが「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」を発表したのは、1796年。うぉ、大昔のことであるね。「親和力」を書いた時代のゲーテどんにはちょっと問題を感じないこともないが、「君よ知るや南の国」「薄幸の美少女ミニョン」、彼女の物語は若い諸君もぜひ読んでくれたまえ。

20424 ガルドーネ

(ガルドーネ・リヴィエラ。これも湖畔の代表的な町)

 

 A.トマ作曲、ドイツ語なら「Kennst du das Land」で始まるアリア。マコトに混み入ったストーリーのオペラの中の、代表的なアリアである。日本では、何と言っても森鴎外どんの和訳が有名だ。

 

「君よ知るや 南の国

レモンの木は花咲き 暗き林の中に 
黄金色したる柑子は 枝もたわわに実り
青き晴れたる空より 静やかに風吹き
ミルテの木は静かに ラウレルの木は高く
雲にそびえて立てる国や 
かなたへ 君とともにゆかまし」

20425 港前 

(ガルドーネ、巨大ホテルの風景)

 

 他に「三木澄子」という人の訳が、偕成社「少年少女名作シリーズ」に掲載されている。おお偕成社、コドモの頃にホントにお世話になった。

 

「君よ知るや南の国

レモンの花咲き オレンジの実る国

空は青く 風はさわやか

桂はそびえ ミルテ香る

君よ知るや かの国

はるかにはるかに

恋人よ 君といこうよ」

20426 ガルニャーノ 

(ガルニャーノ。ここでも多くの乗客が降りていった)

 

 うぉ、懐かしい。あまりに懐かしい。今井君は中2の時、ミニョンの物語を英語の教科書で読んだ。今井君が英語の音読に目覚めたのは、まさにあの頃であるから、モトモトの元を正せば「ミニョンの物語に触発されて音読が始まった」と言ってもあながちウソにはならない。

 

 だから2018年5月、すっかり大人になったワタクシが、「イタリアすみずみ」の旅でリモーネの町を目指す気になったのも、ちっとも不思議はないのである。

 

 しかし諸君、そんなふうに「リモーネ♡」「リモーネ♡」「リモーネ♡」と心もカラダもリモーネ一色に染まっていたのに、人間もサトイモも全くに当てにならない存在だ。リモーネより魅力的な町が目の前に出現した瞬間、「こっちのほうがいいんじゃないか?」と、激烈な浮気のムシに苛まれた。

20427 マルチェジネ

(お船がマルチェージネに到着。この町の風景を「接吻」のクリムトが描いている。画像検索してくれたまえ)

 

 その町の名は「マルチェージネ」。アクセントは「チェ」、イタリア語のスペルはMalcesineである。船がマルチェージネの船着場に入ると、乗り合わせたヨーロッパ人がみんな嬉々として船を降り始めた。それまでほぼ満員だった船は、どうやらマルチェージネで一気にカラッポになるようなのである。

 

 この勢い、昨日のお船がシルミオーネに到着した時に勝るとも劣らない。「着いた♨︎」「着いた♨︎」「とうとうマルチェージネだ」「我々はついにマルチェージネにやってきたんだ」。人々はみんな、そんな満面の笑顔である。

 

 マルチェージネなんて、今井君としては完全にハツミミであったが、これほどの勢いでみんなが下船していくんだ。きっとスバラシー町であるに違いない。

 

「リモーネは、後回しにしよう」「マルチェージネを1時間ぐらい散策して、リモーネには次の船でいけばいいや」。そういうウワキの虫が、胃袋から小腸&大腸にかけて長い長い貪欲な身をよじらせれば、だらしない今井君はひとたまりもなく、虫の命令に従うのであった。

 

1E(Cd) Baumann:MOZART/THE4HORN CONCERTOS

2E(Cd) Solti & Wiener:MOZART/GROßE MESSE

3E(Cd) Rilling:MOZART/REQUIEM

4E(Cd) Jochum & Bavarian Radio:MOZART/THE CORONATION MASS

5E(Cd) Kremer:MOZART/VIOLINKONZERTE Nos. 2& 3

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