Sat 180519 モノへの感謝第2弾/革カバンとの20年/20年熟成させた古酒のこと M16 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 180519 モノへの感謝第2弾/革カバンとの20年/20年熟成させた古酒のこと M16

 もしも「モノたちへの感謝」を綴るとしたら、何と言っても「いの一番」に写真を掲載しなきゃいけないのが、「予想の3倍重いカバン」なのである。

 

 1999年秋、Zegnaの渋谷店で全く偶然に発見。一目惚れは強烈だった。当時のワタクシとしては驚きの「16万円」という値段にもめげず、その場で直ちに購入した。

 

「カバンと言ふものは、1年1万円と考えればいいのだ」と、何かの雑誌記事で読んだことがある。1万円のカバンなら1年しかもたないが、5万円を奮発すれば5年はもつだろうというのである。

 

 1999年のあの日、「よっしゃ、それなら16万円出して、16年間付き合ってみよう」と決意したわけである。Zegnaの担当者もたいへん上手に勧めてくれた。

 

「Zegnaとしては、バッグは滅多に作らない。それだけに徹底して品質にこだわった。間違いなく10年は大丈夫でしょう」。そんなに自信をもって進められれば、内気で臆病な今井君でも、スッと胸ポケットからクレジットカードを取り出す気持ちになった。

20368 バッグ1

(大阪のインターコンチネンタルホテルにて。親友のキウィ君とともに 1)

 

 2000年の4月から、このカバンをぶら下げて颯爽と出勤した。当時はそんなに長期の出張というものがなかったから、東京・横浜・池袋、首都圏の仕事なら当然このカバンで大丈夫だったし、1週間に1度の名古屋出張でも、下着セット1日分でいいんだから、やっぱりこのカバンで出かけた。

 

 2000年夏のある夜、四谷の餃子屋でこのカバンを店員さんに預けた。「宇明家」という店で、カウンター席が狭くてカバンを置く場所がなかったのである。

 

 痛恨の一夜であった。カバンの正面、鍵の斜め下15cmほどのところに、ヘコミができた。荷物置き場で何か硬いものに押し付けられていたのである。購入して1年も経たないのに、高価なカバンに傷がついてしまった。

 

 しかし「長く濃密に付き合おう♡」という場合、人でもモノでも何か1つぐらい傷があったほうが、味わいがググッと強まるのである。傷1つないツルッとした優秀なヤツは、付き合いにくい。

 

 今井君自身が傷だらけの人生をやってきたんだから、カバンにしても何にしても、あんまりピカピカ&キラキラ、優秀に光り輝いてもらっても困る。四谷の餃子屋でついてしまったこの傷こそ、あれから19年、長く親しく付き合って来られた第1の理由なのかもしれない。

20369 バッグ2

(大阪のインターコンチネンタルホテルにて。親友のキウィ君とともに 2)

 

 なでしこ&ニャゴロワの誕生日は、2002年12月24日であるから、カバン君との日々の始まりは、なで&ニャゴよりも早かったことになる。カバンに年齢があるとすれば、すでに20歳。さすがにこの頃はくたびれて、鍵の金具が閉まりにくくなっちゃった。

 

 2015年以降、外国を旅する時の「機内持ち込み荷物」として、コイツを使用している。それ以前はちょっと高級なリュックを機内に持ち込んでいたが、フランクフルトみたいな厳しい手荷物検査場を通過するときに、どうもベロベロして手際が悪くなる。

 

 ヨーロッパを旅する場合、ワタクシはだいたいフランクフルトかミュンヘンで乗り継ぐから、いかにもドイツ人の好きそうなこのドクターズバッグこそ、機内持ち込みに最適。マコトに手際よくイタリアやギリシャに向かうことができる。

20370 カシミール

(6月8日昼、銀座「デリー」で極辛カシミールカレーを貪った)

 

 しかし、カバン君にも引退の時が迫っているんじゃないか。さっき「鍵が閉まりにくい」と書いたが、もっと正確に言うと「鍵が自然に開いてしまう」のである。しっかり閉めたはずのものが、いつの間にかパックリ開いて、中身を露出しながら歩いていることがある。

 

 日本国内ならまだいいが、それをミラノやマルセイユやアムステルダムの空港でやってみたまえ。「盗んでください」とメガホンで叫んでいるに等しいじゃないか。ましてやそれがメキシコやブエノスアイレスだったら、恐ろしさに身が縮む思いだ。

 

 だから今ワタクシは、このカバンをお医者さんに連れていくかどうか、悩んでいるのである。お医者さんに連れて行って、鍵を新しいのに付け替えてもらって、傷んだ革もいろいろ張り替えてもらえば、せめてあと5年、国内出張のオトモに連れ歩いたり、海外への機内に持ち込んで重宝することもできるだろう。

 

 しかし今やこの日本に、そんなことをチャンとやってくれるカバンのお医者さんは存在するんだろうか。「それぐらいだったら、新しいのを買ったほうがずっと安上がり。同じ値段で、ずっといいカバンが手に入りますよ」と笑われるのがオチなんじゃないか。

20371 蕎麦

(同じ6月8日夕刻、世田谷区代沢「富田屋」で、海老天3本の上天ぷら蕎麦をすすった)

 

 2ヶ月前、パリ滞在中のある日、オペラ座からヴァンドーム広場付近を歩いていたら、ショーウィンドーにヨサゲな黒いドクターズバッグが飾られていた。お値段は、約4000ユーロ、およそ50万円である。

 

 しかし16万円で買ったバッグを20年つかって、今ではすっかり仲良しだ。これ以上のオトモは考えられない。老いたオトモを引退させて、3倍のお値段の高級オトモを新しく購入することについて、やっぱり今井君は2の足を踏み、3の足も踏んだ。要するに、買う気はなかったのである。

 

 6月11日、今日のワタクシはこれから兵庫県を南から北に縦断して、豊岡での公開授業に向かう。昨日も書いた通り、20年ぶりの豊岡であり、20年ぶりに城崎温泉に宿泊するが、20年前のあの時と、同じカバンをブラさげていくのである。これほど誇らしい経験は、他になかなか考えられない。

 

 それと同様に、タンスの中で20年、熟成を重ねてきた日本酒についても書いておかなければならない。代ゼミ名古屋校で、1999年冬に「差し入れ」としてもらったのが、今日の写真5枚目&6枚目の「達磨政宗」である。

20372 古酒1

(熟成20年、日本酒はついに濃厚な赤褐色に染まった 1)

 

 予備校浪人文化の終末期、人気講師に生徒が差し入れをする風習がまだ残っていた。冬期講習の朝、名古屋校の大教室、300名収容の63教室に入ってみると、教卓の上にこの日本酒が置いてあった。「私が育てる熟成古酒」という箱が添えられていた。

 

 何しろ今井君は超人気講師♡であって、当時はまだ生徒数が日本最大だった代々木セミナールの四天王の一角。おそらく差し入れの量も日本一だった時代であるが、この熟成古酒はギュッと本気で大事にしようと思った。

 

 ちょうど「ミレニアム」。いよいよ21世紀を迎えるにあたって、「自分で古酒を育ててください」とは、そりゃなかなか素晴らしい贈り物じゃないか。どんな生徒が差し入れてくれたのか、最後まで分からなかったが、東京に持ち帰り、暗いタンスの中でじっくり熟成させることにした。

 

 瓶に貼られたラベルをみると

① 5年で、淡い黄褐色になります。酸味や糖分の香りが出ます。

② 10年で、赤褐色となり、黒砂糖のような香りが出てきます。バランスのいい酸味と甘味が楽しめます。

③ 15年から20年が経過すると、濃厚な赤褐色となり、果物の香りや紹興酒の香りを呈します。味わいは濃厚になり、ブランデー感覚で楽しめるまでに熟成します。

とある。

20373 古酒2

(熟成20年、日本酒はついに濃厚な赤褐色に染まった 2)

 

 そして実際、その20年の熟成を経たのである。瓶の中身を見るに、うーん、澄んではいるが、何だか熟成しすぎて、飲めるかどうかは定かではない。しかしとにかく、20年の熟成をやり遂げたことだけは間違いない。

 

 いつどこでコイツを開けるか。6月26日の誕生日がいいのは間違いないが、まだ決めかねている。「どこで?」となるとさらに問題は難しいので、「自室でこっそり」「ニャゴとともに」または「どこかの店に持ち込みを許してもらって」など、可能性はいろいろ考えられる。

 

 持ち込むにしても、「どこの店で?」だって決めなきゃいけない。馴染みの店は多いが、まさか「銀座デリー」のカシミールカレーとともにというわけにもいかないし、世田谷区代沢のお蕎麦「富田屋」では、きっとお店に迷惑がかかる。

 

 しかし逆にそれ以上の高級店は、ちょっとムカつくのである。寿司や天ぷら、フレンチだのイタリアンだのにこの酒を持ち込んで、万が一「腐ってますね」「ははは」「はははははは」なんてことになったら、やっぱりお酒が可哀そうじゃないか。

 

1E(Cd) Preston:BACH/ORGELWERKE 2/6

2E(Cd) Preston:BACH/ORGELWERKE 3/6

3E(Cd) Preston:BACH/ORGELWERKE 4/6

4E(Cd) Preston:BACH/ORGELWERKE 5/6

5E(Cd) Preston:BACH/ORGELWERKE 6/6

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