Mon 180514 勝ちグセと負けグセ/シルミオーネに到着(イタリアすみずみ13)M21 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 180514 勝ちグセと負けグセ/シルミオーネに到着(イタリアすみずみ13)M21

 何か1つうまくいかない時には、なぜか次から次へとうまくいかなくて、「将棋倒し現象」ないし「ドミノ現象」につながってしまう。「負けグセをつけちゃダメだぞ」と、親やコーチやセンセに言われたら、諸君の顔に負けグセの兆候がギュッと如実に現れているのである。

 

 全く逆の世界が「勝ちグセ」であって、いったん勝ち始めたら、もう誰にも止められない。本人にも止められないので、信じがたいぐらい勝って勝って勝ちまくる。

 

「努力が報われた」とか「努力はウソつかない」とか、そんなキチンとした因果関係が感じられないから、勝ちすぎてコワいというのが正直なところである。

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(シルミオーネ風景 1。湖に細長い半島が天橋立みたいに突き出し、その先端がシルミオーネである)

 

 今井君みたいに長く生きていれば、この世の中がそれほど合理的にできていないのは骨身に沁みている。「因果応報」というコトバはあるが、もし常に因果応報なら、誰も苦労なんかしないのだ。

 

「努力したから報われた」「怠けたぶん後から苦労する」「楽は苦のタネ、苦は楽のタネ」。いやはや、そんなものでもないのであって、努力してもちっとも報われない努力もあれば、怠けても怠けても、何故だかナンボでも勝ち続けることもある。

 

 そのへんは辛抱するしかないので、「こんなに努力したのにちっとも成功報酬がない」と言ってムクれてしまうのは、そりゃ精神年齢が低いだけである。「そうかい、キミの努力ってのは、単に成功報酬を求めてのチマチマしたものなのかい?」。しっかりしたオトナなら、そう問いかけるはずである。

20327 シルミオーネ2

(シルミオーネ風景 2)

 

「努力そのものが楽しい」

「努力していないとツラい」

「怠惰こそ、最大の苦痛である」

 

 諸君、そう思わないかね? 完全に努力から解放された夏休み、来る日も来る日も努力を禁じられて、「努力なんか絶対にしちゃいかん」と命じられたら、それがどれほどの苦痛に感じられるか、ぜひ一度やってみたまえ。

 

 逆に、最も楽しいのは「何の報酬も期待しない努力の積み重ね」である。10年前、このブログを始めた時に、ワタクシは何の成功報酬も期待しなかった。

 

 一般人として長文ブログを書き続ければ、例えばどこかの出版社が食指を動かして、「本にしてみませんか?」「たいへんなことになりますよ」「印税生活も夢じゃありませんよ」とか、そんな僥倖もあるんじゃないか。そういう成功報酬を夢見た瞬間、すべてが苦痛に変わる。

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(シルミオーネ風景 3)

 

 書くのは、書くのが楽しいからであって、それ以外の出発点を考えるのは、苦痛の始まりである。読むのも、読むのが楽しいからであって、それ以外の利益誘導は明らかに邪道である。

 

 学ぶのも、学ぶことそれ自体が楽しいからでなくてはおかしいので、「これを学べば、こんな利益が出ます」というんじゃ、サプリメントか青汁か羽毛布団の宣伝みたいじゃないか。

 

 未熟な歴史の教師が「どうして歴史を学ぶのか」を第1講で語り始めた時、思わず自分で自分にタガをかけそこね、「ホンモノの思考力を身につけるんだ」と力説してしまう。それが間違いの始まりなので、歴史を学ぶのは、歴史以上に楽しくエキサイティングな世界は滅多に見つからないからである。

 

 物理を学ぶのも、数学を学ぶのも、天文学や哲学や社会学を学ぶのも、全て「楽しいから」「やめられないから」であって、「これを学ぶとこんな利点があります」「得しますよ」「やらないと損しますよ」みたいなことを、教師や講師や教授が発言するのは、マコトに露骨な利益誘導である。

20329 レストラン

(シルミオーネ到着後、こんなレストランを予約した) 

 

 いやはや、何だかずいぶん興奮してしまったが、6月6日、いま今井君は羽田空港のラウンジにいる。今日から夏シリーズが始まるので、これから兵庫県加古川に向かう。

 

 首都圏も今日からおそらく梅雨入り。昨日も東京はグングン気温が上がって、最高気温は連日30℃に近い。暑くなると心配なのが高齢ネコの健康であって、腎臓を患って8年、16歳のニャゴロワに、たっぷり水分をとらせないといけない。

 

 相手が人間なら、「水分をとりなさい」「こまめに水分を補給しなさい」「水分が命の源ですよ」としつこく言い聞かせれば済むが、ネコ相手にそんなことを言っても始まらない。あんまりしつこいと、プイと横を向いてどこかに姿を消してしまう。

20330 店内風景

(店内風景。30人ほどの大家族パーティーが始まっちゃった)

 

 今週から再来週にかけてずっと関西、来る日も来る日も公開授業のワタクシは、ニャゴのことが心配でならない。昨夜は21時から午前1時まで、ずっとソファで読書しながらニャゴを撫でていたのだが、調子は今ひとつである。

 

 4月&5月と、長い間ニャゴの相手をしてあげなかった。フランスすみずみ17日、イタリアすみずみ16日、合計33日もニャゴを撫でてやらなかった。ニャゴロワは何しろワガママなネコだから、撫でてやらないだけでムカついて病気になるかもしれない。

 

 長年つきあったネコに、負けグセなんかつけさせるわけにはいかない。このブログを10年支えてくれたのも、何と言ってもニャゴロワである。ここはどうしても勝ちグセをつけさせなきゃいけない場面だ。

20331 パスタ

(1皿目はエビとチキンのラビオリ。おいしゅーございました)

 

 何より大切なのは、一緒に生活してきた今井君がギュッと歯を食いしばり、オトナの男らしく落ち着いてニャゴを励まし続けることである。こんなところで慌てふためいて、ニャゴにストレスを与えちゃいかん。

 

 そう思いつつも、うーん、ワタクシは未熟であって、ストレスにもプレッシャーにもマコトに弱い。自分のことなら平気の平左、どんなストレスでもフツーの顔で乗り越えるが、ネコに関するプレッシャーには、熱い紅茶に投入した角砂糖のごときモロさを露呈するのである。

 

 5月18日、マッジョーレ湖の今井君なんかは、まさに負けグセの典型のようなアリサマ。ミラノを出発した時から、やることなすこと全てが裏目に出て、列車は50分遅れ、モッタローネ山頂ではピンポイントで雷と雹に襲われ、やっと降りてきた湖畔でも、何だか気分は最悪であった(スミマセン、昨日の続きです)。

20332 肉

(2皿目はシカの肉のステーキ。おいしゅーございました)

 

 こういう時、本来なら一番大事なのは「意地でも明るく振舞うこと」なのだ。何の意味もなしにニコニコ笑うだけでいい。ニコニコが贅沢なら、ニヤニヤでもニタニタでもかまわない。とにかく笑顔を取り戻せば、負けグセ君は逃げていき、無意味に元気な勝ちグセ君を引き寄せられる。

 

 ところが諸君、この日の今井君は、たったそれだけのことが出来ない。どうしても不機嫌、どうしても渋面。ニッコリはおろか、ニヤニヤもニタニタも、そういう気色悪い笑顔さえ浮かんでこない。

 

 おそらく、疲労の極に達していたのだ。考えてもみたまえ。1月下旬から3月下旬まで早春シリーズで出張の嵐。3月26日から4月6日までの2週間は、新講座「E組」収録で緊張の日々。収録終了後はずっとフランス&ずっとイタリア。もはや若くもない今井君の心が、意識しない疲労に蝕まれていたとしても、ちっとも不思議はないじゃないか。

20333 城

(夜のシルミオーネも、マコトにいい雰囲気だ)

 

 マッジョーレ小旅行については、ずっと負けグセの真っただ中で終わるのである。特に列車関係は最悪。何の挨拶もなしに15分遅れてきたミラノ行きは超満員、「帰りも車窓のマッジョーレ湖を満喫しよう」という予定は台無しになった。

 

 単なる地下鉄のチケットを買うのに大汗をかいたのも、負けグセのセットみたいなものである。長い列に並び、やっとのことで順番が回ってきたら、機械が故障していた。

 

 イタリアの自販機には、「コインしか食べません」というヤツも多いから要注意。紙幣は食べません。クレジットカードも食べません。食べられるのはコインだけです。機械のクセに、マコトに好き嫌いの多いヤツらであって、滅多なことでは電車のチケットも買えないのである。

 

 こういうふうで、5月18日の今井君には負けグセが定着。このままでは、旅の後半が思いやられる。思い切り負けグセを吹き飛ばして、勝ちに乗らなきゃいけない。勝って&勝って&勝ちまくらなきゃいけない。本来のワタクシはそういう人間であって、そういうヤツでなきゃ、予備校講師失格だ。

20334 船着場1

(デセンツァーノ風景。ガルダ湖にはここから出発する)

 

 翌5月19日、ミラノからデセンツァーノ経由でシルミオーネに向かった今井君の張り切りようは、半端なものではなかった。前の試合で負けちゃった野球チームは、次の試合は何としても初回から大量点を奪いにいく。ピッチャーなら、3者三振でスタートしなきゃいかん。

 

 だから諸君、デセンツァーノの国鉄駅からガルダ湖の港に向かって坂道を降りていく時、ワタクシの耳元では進軍ラッパが鳴り響き、思わず古い軍歌を歌いそうな勢いであった。

 

 ただし軍歌では悲壮すぎるから、ここはやっぱり「紺碧の空」と「若き血」、早稲田と慶応に続いて、現在すべてにおいて絶好調の明治大学「紫紺の歌」まで口ずさんで、意気揚々とシルミオーネゆきの船に乗り込んだ。

 

 シルミオーネまでは、30分ほどの船旅である。おかげさまで、今日は快晴。風は強いが、まずは勝ちグセの第一歩、マコトに好調なスタートを切った。

20335 船着場2

(船がシルミオーネに到着する)

 

 シルミオーネ到着時の、船内アナウンスも素晴らしい。文字ではなかなか表現できないが、「シルミオーネ♡」「シルミオーネ♨」。とにかく気合がギュギュッとこもっている。

 

 オマエたちは、ついにシルミオーネにきたんだぞ。ついに到着したんだぞ。おおいに楽しんできたまえ。遠慮なんかしなくていい。シルミオーネを満喫したまえ。乗客に挨拶する船員のみなさんの笑顔が、そんなふうに告げているのだった。

 

1E(Cd) Savall:ALFONS V EL MAGNÀNIM/EL CANCIONERO DE MONTECASSINO 1/2

2E(Cd) Savall:ALFONS V EL MAGNÀNIM/EL CANCIONERO DE MONTECASSINO 2/2

3E(Cd) RUSSIAN MEDIEVAL CHANT

4E(Cd) Philip Cave:CONONATION OF THE FIRST ELIZABETH

5E(Cd) Rachel Podger:TELEMANN/12 FANTASIES FOR SOLO VIOLON

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