Sun 180429  クレープ/ヴェルチンジェトリクス/セヴェロ(フランスすみずみ37)M36 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 180429  クレープ/ヴェルチンジェトリクス/セヴェロ(フランスすみずみ37)M36

 せっかくの海辺の町なのに、ランチにクレープを食べる。牡蠣でもウニでもイカ・エビ・タコの類いでもない。人は海辺に来ると、変にサカナだサカナだ貝類だと、夢中になって海鮮を探し求めるのであるが、海辺の店でも他に旨いものはナンボでも存在する。

 

 逆に、パリのど真ん中にも海鮮のとびきり旨い店はたくさんあるので、「フランスすみずみ」17日間の旅の終わりに、すでに以下のような計画を立てて、我が胃袋を燃え上がらせていた。

 

① サン・マロで生牡蠣とクレープ

② パリのモンマルトルに戻ってフィレステーキ

③ 最終日、パリ・マレ地区で海鮮の山盛り

 

 サン・マロのクレープは、たいへん有名であるらしい。「海賊の城砦の中のクレープ屋」というと違和感がないでもないが、大っきなオニーサンや立派なオジサマ&オジーサマたちが、マコトに嬉しそうにクレープを食べていらっしゃる。

 

 昭和男♡今井君としては、どうしてもクレープというと「店先で買ってムシャムシャ」という甘いお菓子みたいなものを想像してしまうが、フランスのオジサマたちは、キチンとナイフ&フォークを握り、まるでステーキでも相手にしているような真面目な様子で召し上がる。

20098 ステーキ

(この日の夕食はモンマルトル「Severo」のステーキ。1口サイズに切り分けてから運んでくるスタイル。たいへんおいしゅーございました)

 

 サン・マロで一番人気の有名店の名前は、「Le Tournesol」。フランス語で「ひまわり」である。この約1ヶ月後、今度はイタリア・ガルダ湖畔シルミオーネの町で「ひまわり」という名のに入ることになるが、その話はまた1ヶ月後に書くことにする。

 

 店内はほぼ満員。というか、本来ここは予約なしで訪れる店ではないらしい。最後に残っていたテーブルに今井君がありついたが、その後で訪れたヒトビトは「予約なし」を理由に外で長時間待たされることになった。

 

 つまり諸君、いま店内にいるワタクシ以外のお客は、クレープ屋のランチに全員が「予約」をとってやってきたことになる。おお、スゲーじゃあーりませんか。クレープって、フランスでは日本で想像できないほど地位が高いのである。

20099 セベーロ

(Severoは、モンパルナスから15分。坂道を登った先にある)

 

 18ユーロほどのコースが手ごろと考え、クレープ3枚がセットされたMenuを注文する。1枚目がハムとチーズのクレープ(昨日の写真参照)。2枚目がタマゴとシャケのクレープ。おお、さすがの胃袋君も、この段階で悲鳴を上げ始めた。

 

 ついでにお願いしたのが、シードル1リットル。500mlというのもあったが、その辺は今井君のプライドが許さない。生ビールだって、その店にあれば必ず1リットルをお願いする。「Grande」とウェイターに告げると、どこの店でも確実に「オマエ、ホンキか?」という驚きの表情で迎えられる。

 

 そのシードルもほとんど飲み干した頃、そこへ3枚目、びっくり系のデザートが運ばれてくる。生クリームたっぷり、チョコレートたっぷり(昨日の最後の写真参照)。しかし店内のオジサマたちは、心から嬉しそうな顔でこの超スイートなヤツにナイフを入れている。

 

 正直を申し上げれば、こりゃさすがのワタクシでも音を上げた。酒も好きだが、甘いものも大好き。コドモの頃は、大福も大判焼きも柏餅も酒饅頭も際限なく食べたし、エクレアにシュークリームにチーズケーキ、欧米系も何でもござれ。この胃袋、向かうところ敵はないのだ。

 

 しかし諸君、ハムとチーズのクレープに、タマゴとシャケのクレープ、そこにシードル1リットルを流し込んで、クレープ生地はきっと腹の中で膨らみ放題に膨らんでいらっしゃる、そこにこれだけ生クリームとチョコレートを盛られては、平らげるのに四苦八苦せざるを得ない。

20100 地下鉄

 (Severoまでは地下鉄12号線でも行ける。Mouton-Devernet駅、人影はほとんどない)

 

 サン・マロを出てパリに向かったのは、この日の午後3時半である。何故かTGVは予定の時間より15分早く出発。「えっ、予定より早く出発なんてのがありうるの?」と、我が驚愕に限りはないが、知らないで乗り遅れちゃった人々の驚愕は、ワタクシの数倍の巨大さに達したであろう。

 

 終点モンパルナスに到着、17時半。レンヌまでは徐行運転だが、レンヌからの1時間は320km/hの高速運転が続く。今回の旅を彩った鮮やかな黄色の菜の花畑も、さすがにこの日は4月も下旬だ。「そろそろ色あせてきたかな」の感があった。

 

 TGVがモンマルトルの駅に到着する直前、正確に言えば「ヴェルシンジェトリクス通り」と名付けられた街がある。イタリア語ならヴェルチンジェトリクスは、紀元前52年のアレシア包囲戦でジュリアス・シーザーを窮地に追い込んだガリアの英雄だ。

 

 電車からこの街を見るに、うーん、「やっぱりパリにも治安を心配しなきゃいけない地区がポツポツ残っているな」と思わざるを得ない。激しい落書きが溢れ、マンション群の窓にはすべて金属の柵がつけられ、その中にはあまり清潔とは思えない洗濯物が(おそらく数週間も)雨ざらしになっている。

20101 駅

(Mouton-Duvernet駅。余り観光客が訪ねるような所ではない)

 

 終点の駅名が「モンパルナス・ビアンブニュ」。「ようこそ、モンパルナスへ」みたいな思い切った駅名であるが、直前でそんな光景を見せられては、あんまり「Bienvenue」とか、呑気にニヤニヤしてもいられない。

 

 しかし今晩はこれから、このモンパルナスの坂を登って、ステーキを貪りにいく予定になっている。店の名は「Severo」、モンパルナス駅から徒歩で15分ほどの距離である。地下鉄に乗るほどの距離ではないから、夕暮れのモンパルナスの坂道を急ぎ足で登っていった。

 

 おそらくもう2年も3年も以前のことになるが、この店の東京・西麻布店を訪ねたことがある。西麻布交差点から広尾方面に進むと、進行方向右側、「麻布ラーメン」の黄色い看板の近くである。

 

「赤肉ブーム」とか「肉々しい肉」とか、そういうコトバがテレビに溢れた頃のことであったが、あの日の「麻布Severo」はまだそんなに繁盛していない様子だった。やっぱり日本のヒトは、アブラでデロデロのお肉がお好きなようである。

20102 店内風景

(Severo店内風景。開店1時間後には、立錐の余地もない超満員になった)

 

 一方の今井君は、アルゼンチンの旅で一週間連続して「極端に肉々しい肉」を食べまくった男。「赤身の肉以外は肉ではなくて単なるアブラだろう」と喝破するほどのサトイモである。

 

 200グラムぐらいの肉のカタマリを3つ、「3兄弟」として店のダンナに勧められ、「どれにしますか?」と選択を迫られたのであったが、もちろんそこで躊躇するワタクシではない。「せっかくの3兄弟なんだから、3兄弟を3つとも焼いてください」とお答えした。合計600グラム、相手にするのに不足はないじゃないか。

 

 あの時の思い出があるから、パリに「Severo」の本店があると知った時にも、躊躇なんかあるはずがない。たとえ治安的に評判があまり芳しくない地域であっても、そんなの蹴散らして迷わず前進すればいいのだ。

20103 3D1

(Severoからの帰り、「3D」という名のお菓子を発見)

 

「Severo」は、地下鉄Mouton-Duvernet駅から徒歩5分ほどの一角にある。午後6時開店、すでに男子1名が待ち受けていて、開店と同時に店内に荒々しく闖入。今井君もその後ろにくっついてドヤドヤと侵入。全部で30名も入れば満員の小さな店である。

 

 どのぐらい狭いかと言うに、テーブルとテーブルの間隔が15cmもないのである。そんなに狭いんじゃ、人の出入りにも不自由であって、事実「出入り」をやるには、隣のお客にどいてもらわなきゃいけない。テーブルを大きくずらして、やっと奥から脱出できる、そういう構造である。

20104 3D2

(パリで発見の「3D」。単なる「とんがりコーン」であった)

 

 それでも次々とお客が押し寄せて、午後7時にはパンパンの超満員になった。最初の一人を除けば、マコトに上品そうな人ばかりで、大っきな肉々しいお肉を、穏やかな雰囲気で談笑しながら召し上がっている。

 

「最初の1人」をなぜ除外したかと言うに、彼が黙々と胃袋に送り込んでいるタルタルが、あまりにも生々しい真っ赤なタルタルであって、これほど大量の生々しい生肉をワッシリ&ワッシリしている様子は、まさに勇猛果敢なヴェルチンジェトリクス。これじゃさすがのカエサルだって、窮地に追い込まれて当然だ。

 

1E(Cd) Joe Sample:RAINBOW SEEKER

2E(Cd) Joe Sample & Lalah Hathaway:THE SONG LIVES ON

3E(Cd) Marc Antoine:MADRID

4E(Cd) Ornette Coleman:NEW YORK IS NOW!

5E(Cd) Miles Davis:THE COMPLETE BIRTH OF THE COOL

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