Sat 180331  ルルド到着/若者の政治参加/みんな5ヶ国語(フランスすみずみ 9) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 180331  ルルド到着/若者の政治参加/みんな5ヶ国語(フランスすみずみ 9)

 日本語では「ルルド」と発音しているが、フランス語のスペルは「Lourdes」。その発音はちっとも「ルルド」ではない。途中の「r」の文字一つに対して「ル」の音を割り当てるのは、分不相応というか、与えすぎというか、負担のかけすぎで「r」が可哀そうでアール。

 

 英語国民は、何でもかんでも意地でも英語読みするから、フランスの地名Lourdesは、カタカナで書けば「ルアード」ないし「ラーディス」である。発音記号で示すなら「lúə:rd」「lə:rdis」。マドンナどんの娘さんの名前がこのスペルであるらしくて、「どう読んだらいいの?」で盛り上がっている人々もいらっしゃる。

 

 それにしても日本語の「ルルド」、近いうちにみんなでキチンと検討して、出来るだけフランス語に近い表記を考えた方がいい。昔のボンベイやラングーンやカルカッタだって、21世紀にはムンバイにヤンゴンにコルカタに変わった。フランスの地名もチャンと考えるべきだ。

19885 トレニタリア

(ルルド駅で。列車はストライキで止まっているが、イタリアからの夜行寝台列車は特別扱いだったようだ)

 

 ついでに言えば、日本の英語教育の発音軽視もまた、早く対策を考えた方がいい。「発音なんか悪くていいんだ」「通じればそれでいいんだ」という安易な方向性に流れると、中学生も高校生も途端にやる気をなくす。

 

 2018年のセンター試験で、全国の受験生の成績を分析した結果、一番正答率の低かった問題は、長文読解問題ではなくて、何と第1問の発音問題だった。基礎基本軽視の結果、驚くべき事態になった。

 

 しかも、その問題をちょっと見てくれたまえ。「次の4つ単語の中で、母音部分の発音が他と違うものを1つ選びなさい」というのである。その4つが、① bird  ② hard  ③ journey  ④ work 。えっ、この問題の成績が一番悪いの?

 

 うーん、新聞各社もテレビ局も、ちっともこの実態を伝えていないし、下手をすれば「重箱のスミをつつくような問題だ」と一蹴しかねないが、この問題で「正答率25%」という数字をみると、教育改革にしても入試改革にしても、もう一度じっくり国民的討論をする必要があるんじゃないかと感じる。

19886 ルルド駅2

(静まり返るルルド駅。職員も乗客もだーれもいない)

 

 オトナは「ハードルを下げてやれば、やる気が出るだろう」と考えるかもしれないが、走り高跳びでも棒高跳びでも、目標とすべきバーを下げれば下げるほど、選手のやる気は減退する。

 

「優勝しようぜ」「最低でもベスト4」と励まし合っていたチームに、「1回戦突破が目標」と言ってしまうと、あら不思議、退部者が続出する。若者とはそういう存在であって、ホンキで東大めざして邁進するより、「高望みはしねえ」とうそぶいて日々昼寝を続けるほうが、ずっとツライのである。

 

 せっかく勉強するんだ。女子はみんなアンジェリーナ・ジョリーなみ、男子はみんなブラッド・ピットなみ、そのぐらいの発音で話せるように、思い切り発音の訓練に励めばいいじゃないか。

19887 アレクサンドラ

(ランチは、ルルドの名店「アレクサンドラ」で)

 

 今井君は、昨日書いたような家庭環境の中で育ったから(スミマセン、昨日の続きです)、「ストライキ」というものは昔からキライ。ハチマキをした人々が毎晩のようにオウチに押しかけて遅くまで罵声をあげている状況で、定期テストの勉強に励んでみたまえ。それでストライキが好きになるようじゃ、よっぽど変わってる。

 

 しかし今回のフランスのストライキ、大学生やリセの中高生までがストライキに参加していることについては、それなりに「やるじゃないか」と、内心うらやましく思う部分もある。

 

「大事な教育改革を、政府に勝手に進められちゃ困る。一番影響を受けるのは自分たちなんだから」と、積極的に政治に参加しているのだ。まもなく政治に参加する世代として、最高のアクティブラーニングになるじゃないか。

19888 店内風景

(ルルド・アレクサンドラの店内風景。落ち着いたいい店だった)

 

 一方の日本の中高生はどうか。間近に迫った入試改革や教育改革に、中高生の意見が取り入れられた形跡はない。中高生にインタビューして、「英語で何が一番苦手ですか?」「英語教育はどうあってほしいですか」と、真剣に彼ら&彼女らの意見を聞いた形跡もない。

 

 彼ら&彼女らは、インタビューされる立場にはなくて、あくまで「まだコドモ」「テストによる調査の対象」なのである。ちっともオトナ扱いしてもらえない中高生が、やっぱりワタクシは可哀そうになるのだ。

 

 中高生にインタビューしてみたまえ。「英語で一番苦手なのは何ですか?」。ほぼ100%の中高生が、即座に「長文読解です!!」と答えるはず。それなのに、新聞やテレビの意見だと「読む力はあるのに...」ということになっちゃう。

 

 そうやって、キチンと彼ら彼女らの意見を聞かずに改革を進めちゃったら、英語だけ妙にズシンと負担が重くなっちゃった。他の科目は負担が変わらないのに、英語だけホントにズシンときて、こんなに英語が重たいと、他の教科に力が回らないんじゃないか。

19889 フォアグラ

(一皿目は、フォアグラ。おいしゅーございました)

 

 ワタクシ自身、4技能の講座「E組」の収録を終えたばかりだ。入試の4技能化にはモロテを上げて大賛成だ。しかし明らかに、受験生の負担はいきなり4倍になった。

 

 本来なら、「4技能化する代わりに、『読む』の部分の負担は減らしましょう」という方向性になるはず。しかしどうやら、「読む」の負担は今まで通り、というか、どうも今までよりもっと長文化しそうな気配である。

 

「読む」の負担はそのままで、しかも他の3技能が本格的に加わってくると、中高生ってどうすりゃいいの? 英語の負担がいきなり4倍にも5倍にもなって、来る日も来る日も英語ばっかり、数学も国語も理科もちっとも勉強できない。読書のヒマもなし、部活も英語でやるしかないぐらいじゃないか。

19890 コンフィ

(2皿目は、鴨のコンフィ。おいしゅーございました)

 

 それなのに、中高生の意見はちっとも聞いてもらえなかったのだ。本当のことを言えば、中高生だけでなく、オトナの意見もちっとも聞いてもらえなかった。

 

 国会はモリカケと審議拒否と「ヤメロ」の怒号ばかり。その中で「自分たちだけいきなり負担4倍増」となれば、少なくともフランスなら、激烈なストライキに大学生も中高生も遠慮なく参加する。好きではないが、正しい政治参加の一環だと考える。

19891 ワイン

(ボルドー・サンテミリオンのワイン。おいしゅーございました)

 

 さて、ワタクシの乗ったバスは定刻通りにルルド駅に到着した(スミマセン、やっぱり昨日の続きです)。ルルド駅はストライキで完璧に無人。いちおうドアは開いていたし、トイレも使えるようだったが、構内の電気は全て消えて、列車が動く気配は皆無である。

 

 ただしイタリアからやってきた夜行寝台列車が、一編成ホームに停車している。カトリックの聖地となった町として、さすがにローマからやってくる団体旅行客は別格というか別扱いというか、ストライキの最中であっても何とか無理して受け入れたようだ。

 

 確かに、ルルドの町にはイタリア語が目立つ。スペイン語も英語もドイツ語もあるが、イタリアからやってくる人々の数が群を抜いているようである。看板にも「イタリア語OK」「イタリアの友人諸君、ようこそ」と大書されたものが多い。

 

 早速ワタクシは、ルルドで評判のレストラン「アレクサンドラ」でランチということにした。ナベやフライバンやお皿を積み上げて看板にしたお店である。12時の開店直後に猪突猛進、一番いいテーブルに案内してもらった。

 

 1皿目が、フォアグラ。2皿目が鴨のコンフィ。デザートが、プロフィットロール。シューアイスクリームのホットチョコレートがけである。もちろんボルドー・サンテミリオンの赤ワインも1本。すべて申しぶんなくおいしゅーございました。

19892 デザート

(プロフィットロール。おいしゅーございました)

 

 この店の店員さんがみんな、驚くべき語学の才能をお持ちなのである。「何ヶ国語話せるんですか?」と尋ねてみると、全く躊躇なしに「5ヶ国語です」とおっしゃる。

 

 フランス語・英語・イタリア語・スペイン語・ドイツ語。客の様子を見て、すぐに「イタリア語にしますか、それともスペイン語?」「英語にしますか。ドイツ語にしますか?」と尋ねていく。

 

 その流暢さに客はみんな感激して「何ヶ国語できるんだい?」と尋ね、「イタリア語、ホントに上手ですね」「素晴らしい英語ですね」「スペイン語、お上手ですね」と言い残して帰っていく。

 

 彼女たちこそ、oJTの最高の実例であり、アクティブラーニングの模範なんじゃないか。実用的な語学などというものは、学校の教室の座学で学ぶもんじゃなくて、実際に職場に出て訓練するものなんじゃないか。今井君はそういうことを思いながら、一路ルルドの聖地を目指したのであった。

 

1E(Cd) Solti & Vienna:WAGNER/DIE WALKÜRE 1/4

2E(Cd) Solti & Vienna:WAGNER/DIE WALKÜRE 2/4

3E(Cd) Akiko Suwanai:SIBERIUS & WALTON/VIOLIN CONCERTOS

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