Wed 180328  アルビの昼メシ/ハーリング/豪華チー盛り(フランスすみずみ 6) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 180328  アルビの昼メシ/ハーリング/豪華チー盛り(フランスすみずみ 6)

 あんまり難しいことばかり言っていると、中年オジサマらしくない。難しいことを難しく言ったり書いたりして悦に入るのは、若い人々の特権であって、いったん中年の域に入ったら、どんなに難しいことであっても、誰にでも分かるようにカンタンに書くのが義務である。

 

 というか、その義務をもっと突き詰めれば、難しい微妙な話には立ち入らないこと。「ワタクシはこんなに愚かなんです」と、自らの愚かさを素直にさらけ出して、オジサマギャグ満載の日々を綴る方が礼儀にかなっている。

 

 だって諸君、そうでもしなきゃ、若い世代が萎縮しちゃうじゃないか。40歳代や50歳代のエラーい学者先生が、「オマエたち、そんなことも知らないのか?」とそっくりかえり、難しいことを難しい言葉遣いで書き並べていたら、若い世代につけこむ余地があるはずない。

 

 だからこそ、アナタのお父さまたちは、日々あんなにくだらないダジャレを並べ、家族や部下たちの失笑をあえて引き寄せ、「お父さんヤメてよ」「Tシャツ、インするのやめてね」「部長、もうダジャレは結構です」、そういう冷たいコトバを突きつけられても、ビクともしないのである。

 

 だからワタクシなんかも、「日本のオジサマ代表選手」であることに大きなホコリを感じるのである。カンタンなことはカンタンに、難しいこともカンタンに。意地でも難しいことを難しく書きたくないし、カンタンなことまで難しくするような講師には絶対になりたくない。

19863 ランチ1

(アルビの昼メシは「Le Clos Sainte-Cecile」を選択)

 

 そういうツマラン矜持があるから、例えば南フランス・アルビの町を訪れても、13世紀のアルビジョワ十字軍のことなんか、あえて触れたくはなかったのだ。

 

 そりゃ諸君、かつて学生社の参考書「世界史の完習」で勉強したアルビジョワ十字軍のお話、駿台の浪人生だった時代から数百年が経過しても、一向に我が灰色の脳細胞から離れることはない。いやはやハードな参考書でござった。

 

 しかしやっぱり日本の立派なオジサマなら、そんな知識はオクビにも出さない。「あるビ、アルビの町のある美女は…」とか「そんな行動は講師としてアルビきことではない」とか、まあその類いのダジャレでも言い捨てて、サッサと昼メシでも食べに行くべきなのである。

19864 ランチ2

(アルビの昼メシ、こんなお店であった)

 

 その昼メシにしても、中年のオジサマたるもの、あんまりこだわりを見せるべきではない。オジサマの昼メシは、東京なら吉野家なりすき家なり、むかし大流行した東京チカラめしなり、その種のお店で10分か15分でかきこむのが正しい流儀である。

 

 それが大阪なら、もちろん梅田食道街のカレーとか、難波のコナモンとか、東京のオジサマの「10分か15分」はもっと短縮されて、「5分か10分」の世界になる。

 

 もしも若い部下を連れていれば、昼メシの時間帯にもスマホをネロネロやっている部下を諌め、「いいから早く食え」「いいからかきこめ」と苛立ってみせ、最後に「メシってのは、そういうもんだ」ぐらい言い放ちたいじゃないか。

 

 ついでにちょっとだけ「ちょいワル」なところも見せてやりたい。大急ぎの昼メシでも、「どうだ、ビールぐらい飲むか?」であって、部下がちょっと尻込みして苦笑しても、ジョッキ1杯グイッとやってみせる。

 

 午後のスケジュールに問題がなければ、上司がそのぐらい底が抜けていたって、そんなに目くじらを立てる必要はない。少なくとも昭和の中年はそんなふうだったので、それで社会はうまく回り、部下たちも経済も政治も、マコトにおおらかに成長していった。

19865 ワイン

(アルビの昼メシに、こんなワインを選んだ)

 

 そこでアルビの今井君も、気楽な昼メシを探してそこいら中を右往左往したのである。いかにも「フランスの中年オヤジ代表」というオッサンと目が合って、思わずその店に引き込まれそうになったが、うーん、どうもあまりに普通の店であって、アルビの記憶に残りそうにない。

 

 最終的に選んだのが「Le Clos Sainte-Cecile」。目の前にはサントセシル大聖堂、となると余りにベタな屋号であるが、何となく隠れ家レストラン的な雰囲気と、直前に目の前を駆け抜けたシマシマの大型ネコに誘われた。

 

 ネコの名前は「フォンフォン」。男子である。フォンフォンなのかファンファンなのか、またはポンポンなのか、フランス男子の発音ではマコトに微妙なところであるが、何もそこまで厳密に判断する必要はない。

 

 ファンファンでもポンポンでも、テーブルの下に潜り込んでモゾモゾしてくれれば、ネコ2匹と暮らして16年、日本のネコ好き代表として、こんなに嬉しいことはない。少しシマの色が薄いが、今は亡きナデシコの記憶がまざまざと蘇る。

19866 ねこ

(ネコのフォンフォンと、店のダンナ)

 

 店は、家族経営である。70歳代前半のママと30歳代の長男がフロアに出て、明るい笑顔で対応してくれる。入るかどうか決めかねて、お店の奥の庭をウロウロしていたら、ママが優しく中に導き入れてくれた。

 

 さすがにフランスもここまで奥に入ってくると、「英語メニュー」は準備していないのである。筆記体の詳細なフランス語におろおろしていると、息子のほうが笑顔で近づいてきて、たいへん流暢な英語で説明してくれた。

 

 選んだのは20ユーロちょいのムニュ。前菜にハーリング、メインにポーク、デザートにチーズの盛り合わせ。おお、見事に炭水化物を排除、「ひたすらタンパク質!!」というランチになった。

 

 ハーリングとは、ニシンの酢漬けのことである。オランダの名産であって、4年前アムステルダムに2週間滞在した時には一度も口にしなかったが、2017年夏のオスロで初めて食べてから、ハーリングが大好きになってしまった。

19867 前菜

(真ん中に盛り上げられたのがハーリング。おいしゅーございました)

 

 ワタクシは、酢が大キライ。3軒隣りで寿司飯を作っている気配を感じただけで機嫌が悪くなる。バルサミコたっぷりのサラダなんか出されたら、せっかくの昼メシが台無し。そのぐらい酢がキライな人間だ。

 

 そのくせ寿司屋には頻繁に出入りする。要するにワガママなのである。寿司屋で一番好きなのがコハダであり、次に好きなのがサバである。酢は大キライだが、青魚を酢で〆たのは大好き。困ったサトイモじゃないか。

 

 どこの寿司屋でも、コハダなら10貫はいける。というか寿司屋サイドさえ構わなければ、寿司屋で胃袋に収める全ての寿司をコハダにしてもらって構わない。

19868 メイン

(メインのポーク料理。たいへんおいしゅーございました)

 

 むかしむかしの学部生時代、高田馬場の駅前に「玄海寿司」という回転寿司屋があって、「早稲田松竹」で2本立ての映画を見た帰り、まさに常連として目いっぱいコハダの寿司を貪りまくった。

 

 100円皿だけだった回転寿司に「200円皿」だの「300円皿」だの、貧乏な学部生から見たらオキテ破りとしかいいようのない高価な皿が登場した頃であるが、若き今井君が選ぶのは、ひたすら100円のコハダ皿。コハダだけで30皿(60貫)食べて、3000円払って帰った。マコトに豪華な一晩である。

 

 青魚の酢漬けが好きなのは、やっぱり「3つ子のタマシイ、百まで」。英語で言えば、What is learned in the cradle is carried to the grave。子供のころ、秋田の冬の定番に「ハタハタ寿司」というのがあって、日々ハタハタの酢漬けを噛みしめて育った。

 

 噛みしめれば噛みしめるほど、青魚のコクが前面に押し出されてくる。これほどのコクは、他の食品で味わえるものではない。今井君の人生に不足しがちな酢であるが、必要な酢の全てを、ワタクシは青魚とともに胃袋に収めているようである。

19869 チーズ

(デザートは、豪華なチーズプレート。おいしゅーございました)

 

 ついでに、デザートの「チーズ盛り合わせ」についても、一言だけ付け加えておく。日本の「チー盛り」、今日の写真の7枚目を見て、少しは見習ってほしいのである。

 

 チー盛りだけで腹一杯になりそうな、チー盛りだけで赤ワイン1本空っぽになりそうな、この豪華チー盛り。目いっぱいのチーズ臭さを放つヤギチーズまで乗っかって、こんな豪華なチー盛りを、諸君、ワタクシは日本でも味わいたいと願うのである。

 

1E(Cd) Knall:BRUNNER/MARKUS PASSION 1/2

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3E(Cd) Kubelik & Berliner:DVOŘÁK/THE 9 SYMPHONIES 1/6

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5E(Cd) Kubelik & Berliner:DVOŘÁK/THE 9 SYMPHONIES 3/6

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