Thu 180104 「テクニック、通じない」のこと/寒波の函館で寿司屋/飯寿司のこと | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 180104 「テクニック、通じない」のこと/寒波の函館で寿司屋/飯寿司のこと

 函館に出発する直前、コーヒーを飲みながら読んでいた朝日新聞「教育」欄に、大きく「大学入試新テスト受けてみた」という見出しがあった。大見出しの脇には、中ぐらいの活字で「テクニック、通じない」とある。

 現役の高校生たちが、「新テスト」の問題を解いてみた感想を語り合っているのである。高校生諸君はマコトに素直にかつ積極的に「難しかった」「思うように解けなかった」という主旨の発言をしている。

 そうした発言の中に混じっていたのが、「センター模試の国語では、私はいつも知識で解ける古文や漢文から解いていますが、そんな受験テクニックは新テストでは使えません」という意見である。

 たいへん素朴な発言であって、彼だったか彼女だったかの感想を素直に表現した言葉であることは間違いない。この発言を読んで、サトイモ君の楕円形の頭脳がコロコロと不規則な回転を始めたのである。

 だって諸君、「国語で古文&漢文を先にやる」のは、ほぼこの世界の常識だ。今井君が受験生だった太古の昔から、国語は古文&漢文から開始する人が圧倒的に多かった。今もおそらく事情は同じだろう。

 数学や算数だって「易しい問題からやりなさい」であって、何もあんなにこんぐらかった現代文から解きますという人は、ググッと少数派なんじゃあるまいか。

 そういう解き方の順番を「受験テクニック」とホントに思っているとすれば、その素直さ・素朴さは賞賛に値する。ワタクシは、こういう純朴な高校生が大好きだ。

 20世紀のPretty塾や佐々木ゼミ(ともに仮名です)で、テクニックまみれになって呻吟していた浪人生たちを知っているワタクシとしては、「易しい問題からやれ!!」「古文漢文が先だ!!」という方針を「受験テクニック」と呼んだ彼(または彼女)こそ、高校生の鑑だと思うのだ。

 受験に毒されていない、塾や予備校に害されていない。昔の予備校で教えていた「佐々木ゼミ方式」「例の方法」、数学の名著「解法のテクニック」、算数の名著「裏ワザシリーズ」みたいなものの影響を、全て排除したクリーンな高校生。こういう高校生を、ワタクシはぜひ教えてみたい。
函館駅1
(最強寒波に襲われた函館駅前)

 しかし諸君、逆に今井君は、この記事を編集した朝日新聞の記者がキライである。4〜5人の出席者が存在した座談会で、「テクニック、通じない」という主旨の発言は、いくら読んでもこの一箇所だけなのだ。

 つまり座談会に同席した朝日新聞の記者が、「テクニック、通じない」という感想を耳にしたのは、この場面1回だけだったことになる。

 30歳代か、40歳代か。20世紀終盤から21世紀初頭に難関の大学受験を通過。朝日新聞社などという超難関の入社試験も見事に突破。そんな優秀な新聞記者が、「古文漢文を先に解く」という行動を、ホントに「受験テクニック」と認識したんだろうか。

 難関を次々と突破してきた大人なら、「それはむしろ常識。『テクニック』などという不潔なものとは違う」と考えるはず。ワタクシの楕円形の脳細胞には、その瞬間の彼(女)のニンマリした表情が、透けて見えるのである。

「しめた、今の発言を見出しに使おう」。もしもそこにメモ帳があったとすれば、彼(女)は嬉しそうに微笑しつつ「テクニック、通じない」とボールペンで書きなぐり、アンダーラインを2本ぐらい引いたはずだ。
路面電車
(夕暮れ、雪の中の函館市電)

 ついでに勘ぐってしまうのが、高校生が発言したことになっている「知識で解ける古文漢文」という表現である。日本中の古文と漢文の先生がこぞって反論するんじゃないか。「古文や漢文はハートと思考力を駆使して解くものである」。

 今井君の意見もそうだ。「知識で解ける」ような軽薄なものだとは思わない。素直で純朴な高校生が、古文漢文の枕詞であるかのように「知識で解ける」などとホントに言ったんだろうか。「これって、記者による後付けなんじゃないか」。ま、ゲスの勘ぐりであるけれども、何だかスッキリしない。

 ワタクシがキライなのは、「意地でも主張したい結論が先にあって、その結論を言い立てるために、言い訳のような証拠や論拠を後付けで並べる」という手法である。それは「思考」の名に値しない。「ホントの思考力が要求される」という記事を書く人が、ニセの思考でゴマかしちゃイケナイんじゃないか。

 彼(女)が書きたかったのは、おそらく「新テストではホンモノの思考力が試される」という結論。だから「テクニック、通じない」という見出しが、どうしても必要だったのだ。「知識で解ける古文漢文」というヒトコトに疑念が浮かんでしまうのも、そういう見出しがくっついた記事だからである。
函館駅2
(大寒波の中の函館駅前。夜景がキレイだった)

 こういうふうで、函館でカニを山ほど貪っても、そのカニがどうもスッキリ消化しきれない。脳がモヤモヤしていると、胃袋や小腸もまた働きが鈍るものである。朝の出がけに朝日新聞なんか読むんじゃなかったと、後悔しきりなのであった。

 夕暮れ6時、お相撲を最後までじっくり見てから、「はーるばる来たぜ、函館へ」と半世紀前の流行歌を口ずさみつつ、予約したお寿司屋さんに向かった。

「向かった」と言っても、お寿司屋さんはホテル13階の窓から見えている。ホテルを出て、右に50メートル。そこでトラムの線路を渡り、左折し、さらに50メートル進めば、目指す「鮨一路」に到着する。

 ただし夕暮れの函館は、「最強寒波」の真っただ中。気温マイナス10℃。猛吹雪で目の前も見えないほどであって、市電は何とかゴトゴト動いているが、積雪も相当な深さになっていた。

 普段は人気店のはずなのだが、ワタクシが最初の客であり、結論を言えば、最後まで他の客は来なかった。カウンター10席ほど、お座敷も4階まであって、大規模な宴会も可能な店であるが、「この大寒波のせいで、函館の人はみんなオウチにいるんでしょう」と、大将は面白そうに笑った。
かに
(実は翌日も「はこだて亭」に行き、2日連続でカニランチを楽しんだ。おいしゅーございました)

「寿司屋に入って、寿司を食べない」。悪いクセである。お寿司屋によっては、サトイモ君に皮肉を言ったり、チクリと厳しく指摘したり、不機嫌な難しい顔になる人もいる。確かに「寿司屋なんだから、酒ばかり飲まれても困る」という思いはあるだろう。

 しかし諸君、函館ほど魚の旨い街に来て、魚ではなくコメで腹一杯になっちゃうというのもまた馬鹿馬鹿しい話。サッポロクラシック生ビールを3杯、立て続けに飲み干した後は、日本酒の熱燗にかえてもらって、ひたすら魚を貪り続けた。

 いやはや、大将とずいぶん話が弾んだ。留萌や増毛の話、根室や旭川の話。秋田や函館の話。途中で、ラーメン屋さんと勘違いした中国人カップルが入って来たが、「ラーメンはありませんよ」と大将がニッコリすると、すぐにお隣のラーメン屋さんに行ってしまった。

 再びシーンと静まり返ったカウンターで、「旧正月か何かで、函館の街はたいへんな数の中国人です」とおっしゃる。確かに羽田空港も新宿駅も函館駅前も、ひたすら中国からのお客様。日本語より中国語の方が優勢なぐらいである。

「中国からのお客様があんまり写真を撮りまくるので、最近は一律に『店内での写真撮影は遠慮してください』ということにしちゃいました」とおっしゃる。なかなかキップのいい大将であって、ますますこの店が気に入った。今日の記事に寿司の写真がないのは、そういう理由である。
はこだて亭
(はこだて亭の勇姿。ファミレスみたいな外観だが、店員さんの対応は高級店にもヒケをとらない)

 その大将が遠慮がちに出してくれたのが「シャケの飯寿司」である。飯寿司と書いて「いずし」と読む。「なれずし」ともいう。北陸以北の日本海側に多い。使う魚は、ハタハタ・シャケ・ニシン・カレイなど。乳酸菌で発酵させて作る。コメの風味が染み込んで、味はマコトに濃厚である。

 ワタクシは秋田のハタハタ寿司に慣れているから、大将がオズオズ出して来たシャケの飯寿司の濃厚さもまるっきり平気。「おお、これだこれだ!!」であって、何と3回もお代わりした。

 おなじみ「ばっかり食べ」であるが、飯寿司をこんなムシャムシャ食べる日本人は、今や絶滅危惧種なんじゃあるまいか。写真が1枚もないのが残念だが、まあ諸君、実際を見たい人は是非ともググってくれたまえ。

 なお、寿司屋で盛り上がっている最中に「緊急地震速報」が発令された。まもなく函館も大きく揺れて、震度は「4」。今井君も大将も沈着冷静。「万が一津波警報ということになったら、とりあえず店の4階に逃げましょう」と、確認しあったのであった。

1E(Rc) Rubinstein:THE CHOPIN I LOVE
2E(Rc) Solti & Chicago:DEBUSSY/LA MER・PRÉLUDE A L’APRE MIDI D’UN FAUNE & RAVEL/BOLERO
3E(Rc) Bernstein & New York:/SHOSTAKOVITCH SYMPHONY No.5
4E(Rc) Rozhdestvensky & Moscow Radio:BARTOK/DER WUNDERBARE MANDARIN & TWO RHAPSODIES FOR VIOLIN & ORCHESTRA
5E(Rc) Darati & Detroit:STRAVINSKY/THE RITE OF SPRING
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