Wed 171220 センター試験前日の思い/今井は熱く燃え上がる(またシドニーの12月 5) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 171220 センター試験前日の思い/今井は熱く燃え上がる(またシドニーの12月 5)

 センター試験の前日や当日朝に、予備校講師のブログを読んでくれる人の人物像を想定すれば、書く側の方針も当然「最後まで諦めるな」「粘り強く」「気を引き締めて」になるのであって、「ネット映え」「アクセス数」なんかも視野に入れれば、それ以外のことを書くのは相当の勇気がいる。

 しかし諸君、ワタクシはこの世界の大ベテランだ。1990年代初期から延々と、センター試験とともに生きてきた。ここまでベテランになって、まさか「がんばれよ」の一言でオシマイにするわけにもいかないだろう。

 実は今井君は、今年と来年と再来年の受験生諸君が可哀そうでならない。マスメディアが盛んにセンター試験批判を展開し、「あんな試験があるから日本人はダメなんだ」「センター試験改革が必要だ」と大合唱してきたまさにその試験で、人生の命運を決められてしまう。

 そのストレスたるや、当事者以外の人には理解できないはずだ。1年で50万人、これからの3年で150万人。日本の全人口の100分の1を超える人々が、メディアによって「ダメな試験」の烙印を押されたセンター試験に将来を賭けるのだ。
カドマンの家
(シドニー、サーキュラーキー脇の「カドマンの家」。シドニーの初期の発展は、この一軒のオウチから始まった)

 そこで今日のワタクシが受験生諸君にしっかりと申し上げておきたいのは、「センター試験は、ホントに素晴らしい試験だった」と言ふことである。iPS細胞の山中伸弥教授だって、センター試験を受けた。世界をリードする最高峰の研究者の皆さんも、やっぱりセンター試験から出発した。

「知識偏重だからダメなんだ」「ホンモノの思考力を育てなきゃいかんのだ」と、新聞は書きまくり、テレビの雛壇芸人も声をそろえる。しかしその結果として出来上がりつつある「新テスト」って、結局は現センターの焼き直しにすぎないじゃないか。

「2020年からは、150字の記述が入ります」と、ずいぶん大騒ぎしているが、150字って、要するにツイッターの文字数にすぎない。それだけのことで「ホンモノの思考力」とは恐れ入る。

 とうとう諸君、「教師は授業をしない」というところまで来ちゃったのである。「教師が一方的に教えてはならない」「生徒が自ら問題を発見し、自ら解決する能力を身につけさせる」「試験問題も生徒が作る」。うぉ、革新的すぎて、ゆとり教育の二の舞になりそうだ。
ロックス
(シドニー、「ロックス」地区の巨岩。海岸を埋め尽くす巨岩をハンマーで打ち砕く努力が、現在のシドニーの繁栄の元になった。大切なのは、そういう基礎基本である)

「知識なんか、ネットでナンボでも手に入る時代。大切なのは、知識よりも思考力なのだ」ということであるらしいが、それって「辞書を調べれば分かるんだから、単語なんか記憶しなくていい」「六法全書を読めば分かるんだから、裁判官も弁護士も条文を知らなくていい」、そういうオハナシなんじゃあーりませんか?

「ネットで調べれば分かるんだから、医学的知識なんかいらないんだ」「大切なのは医学の知識より、医の心、医学的思考力なんだ」。おお、夢みがちな人々がいかにも飛びつきそうな発想だ。

 法学部に入学すると、1年生の4月や5月に教授が熱弁をふるう。「大切なのはリーガルマインド。条文の暗記なんかじゃありません」。同じことは昔から高校の歴史の時間にも繰り返されていて、「暗記じゃなくて思考力が大切だ」。考えてみれば、学校の現場ではちっとも新しい話ではない。

 しかし現実の思考力は、そんなに甘いものではない。医師として弁護士として、あるいはフツーの社会人として、十二分な基礎知識をギュッと身につけた上で、その後10年15年、いや20年でも30年でも、厳しい実社会で様々な試行錯誤を繰り返しながら、長い時間をかけて培うものである。
パブ1
(シドニー最古のホテル。ただし諸君、ホテルといっても単なる居酒屋である。深夜までの営業許可を得るために、かつてシドニーの居酒屋はあえて「ホテル」を名乗ったんだそうな)

 中学や高校の3年や6年、あったかい教室の中で育てられる思考力などというものは、要するに「温室育ち」に過ぎない。外気にちょっと晒されただけで、ションボリしぼんで枯れていく。

 ギュギュッと力強い思考力は、たとえ知識偏重と批判されようとも、英語ならタップリ余裕のある単語力と文法力を主軸に鍛えられるべきだし、国語でも数学でも理科でも社会科でも、話は同じことだろう。

 思考力は、厳しい現実の世界を生き抜きながら、自ら育てるもの。ホンモノの思考力を学校の温室の中で、教師の力で育てられるなどと思い込むのは、教育の奢りであり傲慢である。

 世界で通用するホンモノの語学力を、教室の中だけで養成しようとするのも、やっぱり教育の奢りに見える。若い人々には、どんどんタフに外国を旅させた方がいいじゃないか。

 教育はもっとずっと謙虚に、基礎と基本を鍛えることに徹するべきなのだ。18歳になってセンター試験が終了したら、諸君、さっさと海外や実社会に出て、タフでグローバルな生き方を始めればいい。ホンモノの思考力や生活力は、18歳から先の長い人生でナンボでも身につくのである。

 過去30年のセンター試験は、そのために素晴らしい問題を受験生に提供し続けてきた。残るは、あと3年。知識偏重とどんなに批判されようが、オトナとして生きるための基礎基本を問い続けてきた素晴らしいセンター試験の、いよいよ最後の3年なのだ。
パブ2
(シドニー最古のパブ。打撲した臀部をさすりながら、シドニーの中高年に混じってビアを楽しむことにした)

 だから諸君、1月13日と14日は、大きなプライドをもって試験会場に赴きたまえ。来年の受験生も再来年の受験生も、今年の先輩たちに熱い拍手を送りつつ、「自分たちもいよいよホンキの努力を始めよう」とコブシを固く握りしめてくれたまえ。

 ついでに、現中3生や中2生、その保護者の皆さんも、国家サイドの身勝手な制度変更に、イタズラに大きなストレスを感じないほうがいい。

 教育の制度変更に対応するストレスは、優秀な公務員の方々が理解しているよりも遥かに重く、若い国民メンバーにのしかかっている。教育に関するストレスの中で、制度変更への対応のストレスが最も大きいと思えるぐらいだ。

 要するに、これじゃ勉強に身が入らない。学校の先生も、学習内容より制度への対応が気になって、授業に集中できない。塾や予備校でさえ、生徒に制度を理解させることに懸命で、授業なんか二の次になりかねない。

 しかし制度がどう変わっても、基礎と基本を徹底すれば、決して失敗することはない。「先生は授業をしません」「生徒だけで問題を解決しよう」の類いの授業が増えて不安が多くなるにしても、少なくともこの今井君は基礎基本徹底、最低限の基礎知識を、最も分かりやすい説明で理解させ続ける、そういう授業を継続するつもりである。

 予備校の世界には、そのタイプの先生のほうが遥かに多いはずである。まさか大阪大学の物理の問題を提示して、「ボクは教えません」「自分で問題を発見し、解決しなさい」なんてことはしない。「ボクが問題を発見しました」と、大学側にビシッと言ってくれるはずである。
パブ3
(受験生諸君の将来を祝して、今井はビールでカンパイする。ただし臀部が痛くて、ヒコヒコが止まらない)

 阪大の間違いを発見し、話題になっている駿台予備校の古大工講師とは、1990年代の「どうすんだい?」福岡校で、3年ほど同僚として授業に取り組んだ。

「古大工」と書いて「こだいく」、いかにも物理の講師にふさわしい、奥ゆかしいお名前じゃないか。ホントにマジメないい先生だった。大ブレイクを期待する。

 予備校講師が自ら問題を発見し、自ら解決策を提示しても、それをほぼ無視し続け、全く評価しないとおっしゃるのが、現在の日本の大学。そんな状況を放置し、基礎基本の重要性を説く地道な努力に疲れ、マスメディア受けする方針転換ばかり喧伝する。そんなんじゃ、ダメなんじゃあーりませんか?

 というわけで、これから4年後・5年後・6年後の受験生諸君。ということは、現在の高校生から中学生ぐらいであるが、是非とも今井の教室に集合したまえ♡ いい授業、最高の授業、まだまだこれからも、いくらでも続けまっせ。

 21世紀の世界で、諸君がタフでグローバルに生きていくための基礎と基本を、ギュギュギュッと授業に詰め込んで鍛えてあげようじゃないか。そういう恐るべき炎を高々と上げて、今井の心は今もなお真っ赤に燃え上がっているのである。

 えっ?この文章のどこが「旅行記」「またシドニーの12月」なの? その疑問は、まさにもっともであって、正直な話、今日の旅行記は写真でのみ満喫してくれたまえ。

 だってセンター試験の前日、まさか暢気に「シドニーでカドマンの家を訪ねました」「19世紀から続くパブでビールを楽しみました」「直前に打撲した臀部が痛くて痛くて、パブの座席で全身ヒコヒコしてました」とか、そんな話に熱中するわけにもいかないじゃないか。

1E(Cd) Maggini String Quartet:ELGAR/STRING QUARTET in E MINOR & PIANO QUINTET in A MINOR
2E(Cd) Barbirolli & Hallé:THE BARBIROLLI ELGAR ALBUM 1/2
3E(Cd) Barbirolli & Hallé:THE BARBIROLLI ELGAR ALBUM 2/2
4E(Cd) Elgar & London:ELGAR/SYMPHONY No.2
5E(Cd) Barbirolli & Hallé:THE DREAM OF GERONTIUS 1/2
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