Mon 171204 大娘水餃/ビールで落ち着く/水餃子は旨い/天后寺(速攻ホーチミン11) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 171204 大娘水餃/ビールで落ち着く/水餃子は旨い/天后寺(速攻ホーチミン11)

「大娘餃子」とばかり思っていた店の屋号は、正式には「大娘水餃」であって、名物は水餃子。あくまで水餃子に自信の力こぶが入るので、「水餃子が旨いなら、焼き餃子も揚げ餃子も旨いだろう」などと先入観を持つのは、その先入観を持つ方が悪いのである。

 そりゃそうだ。「醤油ラーメンが旨い店なら、味噌ラーメンも旨いだろう」「エクレアが旨い店なら、モンブランも旨いだろう」「数学ができるヤツなら、現代文も得意だろう」。そういうのは全て余計なお世話にすぎない。

 チョロンの今井君は、四方八方から飛んでくるマコトに不機嫌な視線に慌てふためき(スミマセン、昨日の続きです)、鼻から吸い込む空気にまで不機嫌の兆候を感じ、「この街ではちっとも歓迎されていないな」とオロオロしながら、バイクの騒音の中をさまよった。
大娘餃子
(チョロンの大娘水餃)

 東西に走る通りから、北方向に90°左に曲がると、ホンのわずかではあるがバイクの密度が低くなった。チョロンは東西方向に細長く発展した街であって、そうなると人の流れも東西方向が主流になるらしい。

 北に曲がって数十メートル、目指す「大娘水餃」の真っ赤な看板が見つかった。ホッとしたも何も、不機嫌な視線の矢と、「歓迎しません」という意味の音のない舌打ちとから、とにかく早く逃げ出したかったのだから、躊躇なしに店の中に転がり込んだ。

 すでにホーチミンでお馴染みになった、例のアルミニウムのテーブルが5つ。4人がけの四角いテーブルが3つ壁際に並び、残りの2つは大人数用の丸テーブルである。
333
(ベトナムビール「333」。これで「バーバーバー」と読む)

 クーラーはもちろんナシ。「そんな贅沢なものをこの街で要求するなら、最初から来ないでほしい」。そういうスタンスである。その代わり、時代物の大っきな扇風機が天井のあたりに3つ取り付けられて、マコトに生ぬるい空気をブンブンかき混ぜている。

 空気がどのぐらい「生ぬるい」かというに、外の空気が30℃ぐらい。店の中はもう少し蒸し暑くて、おそらく33℃ぐらい。ちょっとやそっと扇風機の風に吹かれても、流れる汗は止まらない。

 しかしとにかくこのままでは脱水症状になるから、真っ先に注文しなければならないのは水分である。今井君は20歳を過ぎた頃に「水分はビールで補給する」と決めた人間だから、今さら人生の方針を変えるのはイヤである。

 ベトナムビール「333」をとにかく1本、不機嫌な視線の集中を忘れるためにも、のどを流れていく爽快なシュワシュワ感はマコトに大切なのである。
焼き餃子
(焼き餃子)

「ビールは缶で出す」というのがこの店の方針であって、それならそれで致し方ない。ワタクシとしては、「缶ビールより、瓶ビールの方が5倍おいしい」という意見なのだが、少なくともチョロンは、今井君の意見なんかが通じる街ではないのである。

 しかし諸君、もしアナタが20歳以上であるなら、同じブランドのビールを、缶と瓶とで味わい比べてみたまえ。「これが同じブランドですか?」と、ビックリするほど味が違う。

 ワタクシの好きな順番に、① Beck’s ② サッポロ・クラシック ③ ハイネケン ④ アサヒスーパードライ ⑤ タイガービールであるが、①から⑤までどれをとっても、瓶が圧倒的に旨い。

 その辺は、是非こだわりをもって生きようじゃないか。ワタクシはレストランや居酒屋で出す「生ビール」と言ふものに、ちょっとした疑いを居抱いている。だってあれは要するに缶ビールだ。

 ちょっと厨房を覗いてみたまえ。30リットルとか、50リットルとか、巨大な缶ビールがドンと置かれていて、ジョッキに注がれるのは要するにその類の「自称・生ビール」なのだ。

 だからワタクシは可能な限り瓶ビールを注文したいのであるが、一言スカッと「缶しかありません」と言われれば、缶で我慢するしかない。ホントはタイガービールが良くても、「333だけしか置いてません」と言われれば、そりゃ諸君、333、それでOKとするしかない。
水餃子
(水餃子。コイツは旨い)

 それと一緒に注文したのが、焼き餃子と水餃子。冒頭に書いた「水餃子が旨いなら、焼き餃子も旨いだろう」というワナに、人生のベテラン今井君もマコトに見事にハマってしまった。

 冷えたビールをグイッとやって、やっと落ち着いて周囲を見回すと、「大人数用の丸テーブル」には20歳代序盤の若者が約10名。いかにも「大学のゼミの打ち上げ」という和やかな雰囲気。マコトに微笑ましい。

 厳しいゼミの後、さっきまで苦虫を噛み潰したような表情だった教授に連れられてこういう店を訪れ、いきなり豹変した教授の陽気な態度とダジャレの連続にビックリするのも、学部時代の素晴らしい思い出だ。

 そういう教授と一緒もいいが、教授ヌキの打ち上げで教授の悪口を明るく言いまくるのも悪くない。「大娘水餃」なんかに集まって餃子を食べまくりながら、「見た?先生の鼻毛。白髪が3本混じってたよね」「オマエが抜いてあげろよ、ははは」「イヤだよ、ははは」、そういう午後の思い出は、一生忘れない。

 もう1つの丸テーブルには、ママとコドモが2人で占領していた。ママ30歳代後半、コドモは小学校低学年と思われる。昼過ぎのこんな時間からママと餃子屋にいるとすれば、病気で学校を休んで病院に行き、注射してもらってきた帰りか何かだ。甘え放題に甘えていいシチュエーションである。
ティエンハウ1
(チョロン、ティエンハウ寺)

 そういう2つのテーブルを眺めてホッコリしながら、まず運ばれてきた「焼き餃子」を貪った。「何だ、こりゃ?」と言ふ思いを、是非ワタクシと共有していただきたい。それが今日の写真の3枚目である。「ホッコリ」は立ちどころに消滅し、「こりゃ何だ?」という驚きだけが残った。

 しかし諸君、やっぱりこの店は「大娘水餃」なのであって、あくまで「旨いのは、水餃子」。続いて運ばれてきた水餃子は、さすがに評判になるだけのことはある。焼き餃子がどんなに縮れてしまっていても、水餃子は絶品。コイツなら、まだ2皿というか2丼は平らげられそうだった。

 さて諸君、お腹さえいっぱいになれば、元気もぐんぐん回復するものである。不機嫌な視線の嵐にションボリしていた今井君だって、旨い水餃子のおかげで「よっしゃ、行ってみっかね、ティエンハウ寺」という所までは回復した。
ティエンハウ2
(天后寺のマキマキ&モクモク)

「ティエン」は「天」、「ハウ」は「后」。天のキサキのお寺であって、天后聖母とは、航海と漁業の守護神。中国南部からの華僑を中心に信仰を集める道教の女神であって、そのお寺なら不機嫌な視線の餌食になることもないだろう。

 ガイドブックには「1760年に創建」とある。おやおや、そりゃすげーや。日本は、田沼意次の時代じゃあーりませんか。フランスは、もうすぐフランス革命。アメリカも、まもなく独立戦争。そんな時代からベトナムのこのお寺では、もうもうと線香のケムケムが渦巻いていたのだ。

 今も境内には、巨大な渦巻き線香が煙をあげながら無数にぶら下がっている。いったん火をつければ、1ヶ月もモーモーとケムリを上げ続ける。

 創建以来250年、同じ渦巻きの同じケムリが境内を埋め尽くしてきたと思えば、さすがに感慨が深い。少しぐらいの不機嫌な視線なんか、もう気にならなくなるのである。

1E(Cd) Bobby Caldwell:EVENING SCANDAL
2E(Cd) Bobby Caldwell:HEART OF MINE
3E(Cd) Boz Scaggs:BOZ THE BALLADE
4E(Cd) The Beatles:MAGICAL MYSTERY TOUR
5E(Cd) The Beatles:YELLOW SUBMARINE
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