Tue 171121 東京ぎらいの人/東京東部を北上する/「戸」のつく地名/金町の大盛況 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 171121 東京ぎらいの人/東京東部を北上する/「戸」のつく地名/金町の大盛況

「首都圏は意地でもイヤ」「東京は決して認めない」「何が何でも東京はキライ」という人が存在する。関西の中高年の人々に多いようである。むかしむかし「大阪で生まれた女やさかい 東京にはよう行かん」という歌が流行したこともあった。

 吉祥寺だったか下北沢だったか、とにかく今井君のオウチの近くのラーメン屋で出会ったオカタも、そういう人物であった。注文したラーメンを2口ほど啜ったところで、店にいた全員に聞こえるような溜め息をつき、「あーあ、東京のラーメン、まずいなあ!!」とおっしゃったのである。

 たった1軒の店のラーメンを2口すすっただけで、「東京のラーメンはマズい」と、ひとくくりに結論づけるその大胆さに一驚を喫したが、満員のお客はみんな下を向いて苦笑いするしかなかった。

 ワタクシみたいに東京—大阪間を年間20回以上も行ったり来たりしていれば、似たような場面にしばしば遭遇する。大阪のお好み焼き屋で「あげだま」と発言したところ、店のオバチャンに立ちどころに訂正された。「ちゃうで、『てんかす』や。『あげだま』ゆうたら、おいしくなさそうやわ」と喝破された。

「豚汁」を「とんじる」と発音すると、叱られる。何が何でも「ぶたじる」であって、「ぶたじるを『とんじる』と呼んでもろたら、とんでもない。困ります。おいしくなさそうやないか」というわけである。

「肉まん」も叱られる対象だ。「ぶたまん」と言わなきゃ、何だかねっとり&ねろねろ濡れた感じで、せっかくのホカホカ感やフワフワ感が損なわれるらしい。

 さすが関西の人々、食べ物の呼び方1つで、味や旨さにまで影響を感じてしまうその繊細さは大好きである。ただし「関西で『肉』いうたら牛肉やけど、関東で『肉』いうたら豚肉や」というのは、うーん、どうなんだろう。首都圏で「肉」が牛じゃなくて豚だというのは、軽々に納得できないものがある。
亀有駅
(羽田空港からバスに乗って、亀有駅に着いた)

 そういう東京ぎらいの関西の人が、厳しくいろいろ指摘しそうなのが、東京都東部の地名である。元の湿地帯を埋め立てた土地、川の氾濫や水害の多かった場所、満潮時に海水が流れ込んでいた土地、そういう歴史を暗示する地名がズラズラと並んでいる。

「東京いうても、元は田舎もんの集まりやろ」
「東京いうても、江戸の歴史はせいぜい500年や。京都1200年、奈良は1300年。めっちゃ歴史が違いますやん」
確かにその通り。「歴史」「優雅」「深み」という話になれば、東京に勝ち目なんかないのである。

 12月12日、午後2時のヒコーキで福岡から羽田空港に飛んだワタクシは、羽田空港からバスに乗って、今日の仕事場 ☞ 葛飾区金町を目指した。金町と書いて「かなまち」と読む。この4〜5年ずっと、12月のちょうどこの時期に金町校を訪れている。

「かなまち」と言っても、東京都東部や千葉県北西部の人でなければ、どこに存在するか全くわからないだろう。「フーテンの寅次郎」で有名なのが葛飾区柴又、金町はそのすぐ隣の町である。

 羽田からの直通バスはないが、金町の隣の亀有までなら、「葛西・一之江経由、亀有ゆき」のバスが1時間に1本の割合で走っている。「こち亀」こと「こちら葛飾区亀有公園前派出所」と言ふ連載マンガで有名な、あの亀有である。

 こりゃいいや、亀有までバスで行って、亀有から常磐線各駅停車で1駅なら、移動は楽チンだ。通勤通学時間帯の満員電車に詰め込まれ、何かのハズミに痴漢と間違われたりしたら、その瞬間に人生が終わっちゃう。予備校講師も中年になったら、満員電車は避けて通った方が無難である。
金町1
(葛飾区金町での大奮闘 1)

 このバスのルートが、マコトに地味なのである。羽田から湾岸の高速道路を北上するところまではいいが、江東区葛西あたりで高速を降りてからは、延々と環状7号線の大渋滞の中を行く。江東区葛西 ☞ 江戸川区一之江 ☞ 葛飾区亀有。真冬の午後5時台、侘しい薄暗闇をバスは走りつづける。

 羽田を16時に出たバスが、ほうほうのていで亀有に到着したのは、17時45分。諸君、九州3県を3日間駆け回ってヘトヘトの中年サトイモは、こうして冬の夕暮れの亀有にたどり着いた。

 途中、「戸」のつく地名が連続する。青森県&岩手県にも「戸」のつく地名は多いが、そちらは「へ」であって、一戸・二戸・三戸・五戸・七戸・八戸、ぜーんぶ「へ」である。

 東京東部に続く「戸」は、こっちは「へ」ではなく「と」であって、「亀戸」「奥戸」「青戸」「松戸」「水戸」、そもそも東京だって「江戸」なのである。
金町2
(葛飾区金町での大奮闘 2)

「戸」の由来は諸説あって、「水のある場所に出る、大きく開けた場所」という説もあれば、元々は「谷戸」であって、「谷地」「谷津」と同一語源とする説もある。丘陵や台地が河川に侵食された谷間の土地をさし、水はけが悪く、川の氾濫や大水害にさらされやすい。

 千葉県には「谷津干潟」があるし、京成線に「谷津」という駅もある。鎌倉時代に活躍した関東管領は「扇ケ谷」と書いて「おうぎがやつ」。扇ケ谷定正、里見八犬伝では悪役として登場する。茨城まで行くと「谷田部」という町がある。これも「やつ」「やち」の流れである。

「谷戸 ☞ やと」の2文字のうち、「谷」が残れば渋谷・市ヶ谷・四谷・世田谷・祖師谷・保土ヶ谷・熊谷・越谷。「戸」のほうが残れば、青戸・亀戸・松戸・江戸・奥戸・水戸になる。なるほど理解しやすい説じゃないか。

 青戸については、京成電車の駅名は「青砥」だが、住所表示は青戸。昔はこの文字で「おおと」と発音し、「大戸」と書く場合もあったんだそうな。
パンダ
(12月13日は、練馬区大泉学園に遠征、パンダのケーキをいただいた)

 フーテンの寅次郎の活躍する柴又は、そりゃもちろん「しばまた」であるが、むかしむかしの古文書には「しままた ☞ 島俣」とされ、江戸川・中川・荒川など、関東平野の大河川がくんずほぐれつする真ん中に、島のような形で孤立する土地だったんだそうでござるぞ。

 たどり着いた「金町」も、諸君、確かに「金の町」だから、景気のいい商工業や流通の繁栄を思うけれども、河川の決壊&氾濫が起こりやすい場所として、全国各地に「かなまち」という地名が見られるんだそうな。

 大工さんの使う直角に曲がった「さしがね」を見たことがあれば、河川があんなふうにギュッと流れの方向を変える場所をイメージできるはず。そういう場所なら、確かに氾濫が多そうだ。

「亀」という文字が湿地を意味するのは何となく想像に難くないし、「梅」という文字も元々は「埋め」であって、低湿地を埋め立てたか、土砂崩れで埋まったか、そういう歴史を暗示している。そう言われてみれば、亀有のすぐそば、東武線に梅島という駅があるし、大阪の梅田も元は淀川沿いのそういう土地である。

 こうして諸君、夕暮れの今井君は過去の大規模な氾濫を思わせる地名をたどって、ここまで江戸を北上してきたのである。常磐線各駅停車の電車に乗り換えて、金町到着、17時10分。福岡のホテルから勘定して延々4時間の長旅だった。
大泉学園
(13日、大泉学園の大盛況。詳細は、後日)

 金町での公開授業は、19時半開始。出席者110名。5年連続ですっかりお馴染みになった三角形の教室に、湯気がもうもうと立ちのぼるような大盛況になった。

 諸君、ホントに三角形なのである。3:4:5の直角三角形であって、今井君が立っている教壇部分が3、向かって右の通路側が4、向かって左の窓際が斜辺の5。教室としてはマコトにイビツであって、授業に熱中していても、どうしても落ち着かない。

 教室と言ふものは、やっぱり長方形に限るようである。「円形教室」なんてのもあっていいかもしれないし、天井や床に工夫をすれば「球形教室」だってもちろん可能であるが、そこでどんな授業が展開されるか、はなはだ心もとない。

 しかしもちろんワタクシは超ベテランだ。直角三角形の空間でも、その力をいかんなく発揮する。21時10分、大興奮&大拍手の中で授業は完了。110名中、完全な外部生も60名近く含まれていたが、極めて高い確率で継続 ☞ すぐに我々の仲間になってくれることを確信するのである。

1E(Cd) Karajan & Wiener:BEETHOVEN/MISSA SOLEMNIS 2/2
2E(Cd) Furtwängler & Vienna:BEETHOVEN/SYMPHONY No.7
3E(Cd) LET’S GROOVE ②
6D(DMv) HAIL, CAESAR!
total m122 y2221 d22165