Thu 171109 はえるか、はえないか/生えるから映えるへ/指定席増席を望む/新ラウンジ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 171109 はえるか、はえないか/生えるから映えるへ/指定席増席を望む/新ラウンジ

「はえる?」「はえない?」と言えば、われわれの世代なら何と言っても「毛生え薬」であって、中年に近づいたオトーサンとかオジサマとかが、合わせ鏡を横目でニラみながらペタペタやる姿は、昭和の時代のマコトに物悲しい風物詩であった。

 あんまり情け容赦なく「毛生え薬」と言ってしまうと、さすがに風物詩の奥ゆかしさがなくなるから、優しく「増毛剤」「育毛剤」と言い換えて、昭和の昔には盛んにテレビCMも流れていた。

「薬用 紫電改」なんつーシロモノもあった。発売元は、カネボウ。杉浦直樹といううってつけの頭をもった俳優をメインに、ただ単にペタペタつけるんじゃなくて、「紫電ブラシ」という付属品で頭皮をたたく。たたくことによって頭皮の血流が改善し、奇跡的に髪が戻ってくるというハナシだった。

「つけて、たたく」。自信ありげな杉浦直樹の笑顔に、昭和のオトーサンは熱い信頼を寄せた。もっとも昔はAmazonみたいな強い味方がいない。購入するには、薬局や薬店で店の人と対面の直接交渉が必要だ。その種のものを購入するのが、昔はきっとたいへんだったのだ。

 それでも「紫電改」の「つけて、たたく」は大流行した。当時のコメディアンはこぞってコントに採用。髪の毛に自信のないオトーサン役を演ずるには、「つけて、たたく」を取り入れるのが一番手っ取り早かった。

 ライバルの資生堂は「不老林」で対抗。何しろ「老いない林」というわけだから、老いても老いても頭はフサフサ、間違っても「この○ゲ——っ!!」みたいな悪口雑言は許さない勢い。ただし「つける」だけで「たたく」がないぶん、社会現象に育つほどの勢いはなかった。
大雪山
(新千歳空港ダイアモンドラウンジから、はるかな大雪山を望む)

 今年の流行語の代表格が「はえる」であって「このハ○——っ」でないことについて、今井君は以上のような歴史をたどってみたくなった。「はえる」とは、昭和のむかしなら「生える」であったが、21世紀の卍の時代、「はえる」は「生える」から「映える」に変質したのである。

 つまり諸君、20世紀には「生」が何よりも大きな問題だったのに、21世紀の卍な日本で重視されるのは「映」、つまり生々しい実物よりも、嗅覚も触覚も省略した後に残る、むなしい映像ないし画像にすぎない。

 おじさん臭いナマのニオイ、その頭のツルッとしたナマの手触り、そういうナマナマ&デラデラは、まず最初の全力で排除する。何より大事なのは、無味無臭の画像であることなのだ。

「映える?」「映えない?」ばかり問題にする時、せっかくのレストランのお料理も、味覚や食感やカホリより、とにかく見栄えが最重要。人々はスマホをかざして写真に夢中。サイゼリアなんかで、食べずに出て行くYouTuberもいらっしゃるんだそうな。

 かく言う今井君もまた、それなりに「映える?」「映えない?」を気にしなければならない。一応ブログを9年半も継続して、掲載した写真は19000枚を超えた。来年の6月までに2万枚になる予定だ。

 どうせ掲載するなら、たとえ駅蕎麦の写真でも、映えないより映えたほうがいい。増毛剤だって「生えないより生えたほうがいい」。おんなじことである。
阿寒湖方面
(新千歳空港ダイアモンドラウンジから、十勝山脈方面を望む)

 しかし諸君、人が懸命に写真を撮っている脇から「あれって、映えるのかね?」「そんなに映えないんじゃない?」とか、他人が声もひそめずに批判するのはヨシにしようじゃないか。思わぬトラブルにだってなりかねない。

 26日夜、例のジビエの店で(スミマセン、一昨日の続きです)、酔っ払った今井君はショーケースに並べられたキジやヤマバトの写真を撮らせてもらった。料理される前に、生きていた頃の姿をカメラに収めたかったのである。

「あんまり映えないんじゃない?」という批判の言葉が、あちら側の第3者テーブルから聞こえてきたのは、まさにその瞬間である。いやはや、厳しいでござるね。

 増毛剤を熱心にペタペタやっている時に「あれって、はえるの?」「はえるわけないじゃん」みたいな批判をするのは余りに残酷だが、中年の予備校講師が頑張ってパシャパシャやっている脇で「映えないんじゃない?」とは、酷すぎやしないか。
札幌風景
(11月27日、札幌は快晴に恵まれた)

 というわけで札幌から新千歳へ、ホンの少しだけ寂しい気持ちで引き返すに至った。駅ですすった海老天蕎麦の写真についても、「映えないかも」「映えないかも」と反省しきり、断捨離した2枚のワイシャツだって、20年選手がもし映えなかったら可哀そうだ(スミマセン、昨日の続きでもあります)。

 それにしても諸君、札幌と新千歳を結ぶ電車「エアポート号」であるが、いくら何でも指定席の数が少なすぎるような気がする。指定席車両はたった1両、座席数は40席ほどしかない。最近では、1時間先の電車まで指定席が全て売り切れていることも多い。

 この問題については、JR北海道の皆さまに是非しっかり考慮していただきたい。何しろ北海道には少ないドル箱路線だ。新千歳空港から札幌まで40分もかかるなら、指定席車両をもう1両つけるとか、グリーン車両も増設するとか、ちょっと工夫をして、増えた収入を地元に還元するぐらいの積極性があっていい。

 もちろんこの路線は地元住民の足でもあって、「普通車両が減らされたら住民の足としてどうよ?」という意見もあるだろう。ならば、増便すればいい。今の「15分に1本」から、10分に1本へ。いや、7本に1本へ。ますます札幌は便利な大都市になっていく。

 指定席はどんどん売れて、2つ先3つ先の電車まで指定席が埋まっていることも少なくないんだから、列車増便、指定席を増設、グリーン車も新設。赤字路線 ☞ 廃止みたいな後ろ向きの経営はこの辺でヤメにして、せめてこの路線だけでも「イケイケ&どんどん」に変えたらいいじゃないか。
ヒコーキ
(はるかな大雪山の上をヒコーキが通過する。新千歳空港にて)

 新千歳空港に到着した今井君は、とりあえず居酒屋に入った。入ったのは、「一灯庵」というお店。「ホッキ貝刺身」「ヒツジ肉のセセリ」を肴に熱燗をグイグイやり始めたが、何と「ウニの刺身はありません」とおっしゃる。いやはや、そりゃ残念。というか、それなら入店前にそう言ってもらわなきゃ困る。

 意地汚い今井君は、すぐに居酒屋を出て、お寿司屋を目指した。決まりかけている2018年の春スケジュールを眺めてみるに、どうやらしばらく北海道に来ることはない。いま北海道のウニを味わっておかないと、次がいつになるか分からない。

 このお寿司屋、実は一昨日訪れたばかりなのであるが、まあいいじゃないか。カウンターに座って、愛想のいいオヤジさんが出してくれるウニのツマミを次から次へと味わううちに、ヒコーキの時間が迫ってきた。
夕暮れの大雪山
(夕暮れが近づくと、大雪山は深い青みを帯びてくる)

 新千歳空港に、新しく豪華ラウンジが完成した。ダイアモンドメンバー以外は入室することのできない贅沢ラウンジであるが、諸君、今井君は5年前からずっとそのダイアモンドステータスを持続している。遠慮なくズイズイその贅沢空間に闖入できる立場である。

 せっかくダイアモンドラウンジが新設されても、ガッカリするケースもある。沖縄の那覇空港は素晴らしいが、羽田と伊丹については、大きな改善の余地を感じる。ワインや温かいスープが味わえること以外、フツーのラウンジとちっとも違わないのである。

 羽田の場合、PCの使えるデスクが少なすぎる。「デスクがたった8人分」って、何かの冗談じゃあーりませんか? 伊丹もおんなじことで、デスクで比較すれば、フツーのラウンジのデスクのほうがはるかに豪華版なのである。

 しかしそれに比較して、新設された新千歳のダイアモンドラウンジは、こりゃすげーや、ここに入るためだけでも、意地でもダイアモンドステータスを維持したくなるぐらいだ。

 天井まで届く大きな窓、豪華なテーブル、明るい空間。滑走路の向こうには、驚くなかれ旭川の大雪山を望むことができる。午後4時の夕陽を浴びて、新雪がオレンジ色に染まっていく。その右側は、あれもまたはるかな十勝山脈の勇姿ではないか。

 その反対側、留萌&増毛のほうに目をやれば、おお、どうやらあれは暑寒別岳。昨年&一昨年と日帰りの旅を繰り返した増毛の町が、あの山の向こうで寂しい夕暮れを迎えているはずだ。

 こうして諸君、話題はキチンと冒頭の「増毛」に戻ってきた。ただし冒頭の増毛は「ぞうもう」、〆の増毛は「ましけ」。いやはやこれぞ文章構成の妙、滅多な人がマネできる文章術ではないと思うのだが、どんなもんでしょうかね。

1E(Cd) Eschenbach:MOZART/DIE KLAVIERSONATEN 4/5
2E(Cd) Eschenbach:MOZART/DIE KLAVIERSONATEN 5/5
3E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 1/10
6D(DMv) THINGS WE LOST IN THE FIRE
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