Tue 171031 コヌカ雨降る御堂筋/混ぜないと叱られる/混ぜなくても大丈夫/京都に立ち寄る | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 171031 コヌカ雨降る御堂筋/混ぜないと叱られる/混ぜなくても大丈夫/京都に立ち寄る

 むかしむかし昭和の日本に「欧陽菲菲」と言ふ名前のマコトにパワフルなシンガーが存在した。欧陽菲菲と書いて「おうやんふぃふぃ」と読む。

 21世紀の受験生諸君のパパやママなら、まあ「見たことはないが聞いたことはある」というレベルであって、知識としてはむしろジーチャン&バーチャンの世代に属するのかもしれない。

 しかし何しろ諸君、「欧陽菲菲」であり「おうやんふぃふぃ」である。少なくとも国境線の内側に閉じこもったガンコな日本人ではない。台湾・台北市のレストランシアター「中央酒店」でデビュー、一気に日本に進出してきた当時の国際派である。

 最初の大ヒットが、デビュー曲「雨の御堂筋」。1971年、「シングルレコード」と言うマコトにレトロなシロモノであるが、売り上げ140万枚を記録した。1分間で45回転する「ドーナツ盤」が、140万枚も売れたのだ。

 21世紀の諸君、いろいろ当時の事情を調べてみてくれたまえ。もちろん当時は「ネット通販」「iTunes」などという便利なものは、その予感&予測もなく、想像さえしなかった頃だ。ヒトビトは1人ずつ「レコード屋」に足を運んで、140万枚の売り上げに貢献した。
ニシン1
(大阪から富山に向かう途中、ちょいと京都に立ち寄る。「松葉 北店」のニシンの棒煮、相変わらず美味である)

 デビュー曲「雨の御堂筋」で、日本レコード大賞新人賞も受賞。こういう場合は多くのケースにおいて「一発屋」に終わるものであるが、欧陽菲菲どんはさすがにそのパワーが違う。

 翌年の「雨のエアポート」も大ヒット、日本有線大賞を受賞。「そろそろ消えちゃったかな?」とみんなが思った10年後、1982年には「ラヴ・イズ・オーヴァー」で一気に復活する。日本中でオジサマ&オバサマのカラオケ定番になった。「ヴ」の文字が2つも出てくるなんて、おお、さすが国際派だ。

 まあ諸君、世界史の教科書を開いて、1971年当時の世界を眺めてみてくれたまえ。台湾の人が日本でこんな活躍をするなんて、国際情勢から考えてマコトに感動的なのだ。

 当時は、「日中国交正常化」の真っただ中。1972年、テレビには田中角栄と周恩来が出ずっぱり、毛沢東どんのお顔が新聞にもズンズン登場して、国連でもやっぱり中華人民共和国オンパレード。それまで正式の中国だった台湾の「中華民国」は、一気に「単なる小さな孤島」の地位に転落しつつあった。

 幼い今井君は、幼い頃からずっと極端な判官ビイキ。負けそうな方、圧倒的に不利な方を熱烈に応援するおかしな精神性をもって育ったから、ずっと「台湾ガンバレ」「中華民国ガンバレ」の立場であって、紅白歌合戦でも意地でも欧陽菲菲を応援しつづけた。
ニシン2
(京都四条「松葉 北店」のニシンのカラシ漬け。美味である)

 何しろ「雨の御堂筋」である。梅田から難波まで一直線の御堂筋、遥かかなたまでズラリと青信号が並ぶ御堂筋。長い時間が過ぎたが、今でもその流れで、御堂筋が大好きだ。

 歌詞によれば、「コヌカ雨降る御堂筋」「心がわりな夜の雨」。なんと諸君、作詩も作曲もベンチャーズ。作詩のほうには「林春生」と言ふ人物も絡んでいるが「あ・な・たー♡」「あなたはどこよ?」「あなたを尋ねて、南へ歩く」と言ふことになっている。

 主人公の女子は、梅田から難波へ、小糠雨に濡れながら南下する。「本町あたりにあなたはいると」「風の知らせを背中で聞いて」「降る雨に身を寄せて傘もささず」「梅田新道 ☞ 心斎橋と」「あなたの影をしのんで南へ歩く」。諸君、この台湾女子パワー、さすがに圧倒的である。

 同じレベルの女子パワーを、ワタクシは六本木のロシア料理店でも間違いなく感じるのである。「ロシア美女」みたいな看板を上げれば、その「美女」の看板だけで生きていけないこともない。六本木は、すでに20年も30年も前からそういう街としてやってきたはずだ。

 ところが諸君、ロシア料理店「バイカル」の女子従業員諸君は(スミマセン、昨日の続きです)、旨いロシア料理をもっともっと日本人に食べてもらう熱意に燃えて、日本のダラしない中年オジサマたちを厳しく叱責しつづけている。

 料理をしっかり混ぜないと、厳しく叱られる。ボルシチとかボル8とかボル6とか(スミマセン、意地でも昨日の続きです)、そういうスープ料理においては、何度でもテーブルを監視に回ってくる。激烈に混ぜていない日本人がいれば、その場で「混ぜなきゃ、ダメよ♨」と遠慮なく叱責する。
助六そば
(京都四条「松葉 北店」の助六そば。小さなオモチが3つ、これがまたまた美味である)

 ワタクシはふと、東銀座のカレーの名店「ナイルレストラン」を思い浮かべるのである。歌舞伎座から銀座4丁目に向かって大きな交差点をわたった直後、すぐ右側に看板を掲げたインド料理店である。

「インド料理なのに、ナイル?」「ナイルって、エジプトじゃないの?」とニタニタする諸君、「ナイル」は、店主の本名だ。例えば秋田ナニガシという本名の人が、「琉球料理 あきた」をやってたっていいじゃないか。

 その超有名店「ナイル」でも、「混ぜて&混ぜて!!」「どんどん混ぜて下さい♨」「混ぜれば混ぜるほど、おいしくなりますよ♡」「混ぜなきゃダメね」と、ぐちゃぐちゃに混ぜることを何度でも繰り返し勧められる。

 ワタクシは「混ぜない」という選択肢が好きなので、あえて勧めに抵抗する。定番メニュー「ムルギランチ」を、キレイなままにしておきたいのであるが、店の名物オジサマのプレッシャーは、あらがいがたいレベルに達していく。

 どうやら日本料理の一番の特徴は、「混ぜなくていい」「混ぜることを前提としない」「混ぜることを、むしろ拒絶する」ということなのかもしれない。料理人が適度に混ぜたら、それ以上ごちゃごちゃに混ぜなくていいように出来ている。
西ナビ
(北陸新幹線の金沢−富山間は、JR西日本が担当する。座席には「西Navi」の文字がズラリ。これじゃちょっと「西」にこだわりすぎなんじゃないか?)

 前日が岸和田、大阪梅田で宿泊。翌11月17日は北陸・富山で公開授業。このスケジュールで移動する時、マトモな人なら大阪からJRの特急「サンダーバード」で一気に金沢まで移動、金沢からは北陸新幹線に乗り換えて、一気に富山を目指すはずだ。

 しかし諸君、まさかこの今井おじさんが、そんな素直な直線移動をガエンジルと思うかね? 「ガエンジル」は、漢字で書けば「肯んじる」。決して「ガエン汁」などという怪しい鍋物を想像してはならない。「聞き入れる」「承諾する」「肯定する」の意、昔は奥ゆかしく「かえにす」と言った。

「大阪から一気に富山」などという素直な移動を安々と受け入れて、それで生徒諸君に「常に冒険や探険を心がけたまえ」などとイッパシのアドバイスなんかしたら、噴飯ものと言われかねない。インターコンチネンタルホテルをチェックアウトした今井君は、阪急梅田駅から京都河原町ゆきの特急に乗り込んだ。

 何しろ11月中旬、京都は紅葉の真っ盛りだ。いつもなら、高雄/槙尾/栂尾のいわゆる「三尾」、あるいは大原の三千院、鞍馬や貴船あたりまでしか紅葉は降りてきていない時期であるが、まあいいじゃないか、このままでは2017年の紅葉を見ないうちに真冬になってしまう。

 阪急電車で河原町まで一気に行ってしまえば、地下駅から地上に上がって、いきなり四条大橋をわたる。鴨川の流れには、要所要所にアオサギどんやシラサギどんが立ち尽くして、流れの中にエサのお魚を物色している。いやはや、さすがに古都の雰囲気はいいですな。
立山連峰
(新幹線が富山に接近。立山連峰の姿が美しかった)

 時刻は、ちょうど12時ごろである。さっそく今井君はお馴染み「にしんそば 松葉」に闖入する。南座のお隣の「松葉 本店」でもいいが、この10年ワタクシがすっかり馴染みになったのは、北座の隣の「松葉 北店」である。

 自分で「馴染み」と言っているだけではない。お店のオバサマにもすっかり馴染みとして認識してもらっていて、馴染み客にしかしてくれないマコトに温かい挨拶が待っている。例えお蕎麦屋であっても、京都の人に「お馴染みさん」と認めてもらえるのは、ギュッと感激するほど嬉しいものだ。

 注文したのは、まず何と言っても「ニシンの棒煮」。棒煮と一緒に、「ニシンのからし漬け」。ほぐしたニシンの身に、自分の好みでカラシを混ぜるのであるが、ロシア料理やインド料理と違って、混ぜても混ぜなくても叱られないし、混ぜても混ぜなくても文句のない絶品である。

 お蕎麦も、最初からある程度は混ざっているが、混ぜてもいいし混ぜなくてもいい日本料理の代表格。定番 ☞ ニシン蕎麦も、混ぜても混ぜなくてもいい。助六蕎麦は、ネギとオモチと鶏肉がお蕎麦の上に乗っかっている。これも、何も無理してぐちゃぐちゃに混ぜる必要はない。

 こういうふうで、お蕎麦屋だけで十分に京都を満喫できる。いやはや、京都はいいですな。大阪駅からJR西日本の特急「サンダーバード」で富山を目指すにも、諸君、こんなふうに京都で一息だけ息を吸い込めば、「日本人でホントに良かった」と認識し直すに違いない。

1E(Cd) Fischer & Budapest Festival:BRAHMS/HUNGARIAN DANCES
2E(Cd) Hungarian Quartet:BRAHMS/CLARINET QUARTET・PIANO QUINTET
3E(Cd) LET’S GROOVE ②
6D(DMv) BREACH
total m182 y2099 d22045