Wed 171011 豚汁とエリンギの輪切り/絶品ソフティス(晩夏フィヨルド紀行28) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 171011 豚汁とエリンギの輪切り/絶品ソフティス(晩夏フィヨルド紀行28)

 豚汁づくりに自信がある。鍋物づくりも得意であって、鶏ガラでとったスープにたっぷりの鶏肉とキノコと、出来ればキリタンポを入れれば、その辺の料理屋には決してヒケを取らない。ネギとセリはキライだけれども、ゴボウとともにダシのコクを増すためにつかう。

 だから、鍋奉行になる必要は一切ない。出来あがった鍋をテーブルにドンと置けば、人々が勝手に盛り上がってくれる。鍋奉行が必要なのは、そういう人物が存在しないと座が盛り上がらない場合に限定されるのである。
ヒョウ柄
(ノルウェー・フレデリックスタッドでヒョウ柄のネコに出会う)

 さて豚汁であるが、こちらも仕掛けは同じである。思い切り贅沢な豚汁にしたいので、豚は「豚しゃぶ用」と表示のある一番高い豚肉を、1人あたり200グラムを目安に買ってくる。おお、すげー豚汁なのである。

 他に入れるものは、まずゴボウ、ただしゴボウは鍋の時と一緒で、あくまで豚汁のコクを増すためのダシとしての利用である。他にジャガイモ、こんにゃく、ダイコン、ねぎ、油揚げ。ニンジンというものには、幼稚園児の頃からあの色彩に嫌悪感があって、決して入れることはない。

 ジャガイモが煮くずれるぐらいまで煮て、煮くずれたジャガイモのおかげで汁にトロミが出るぐらいがいい。味噌はまだ入れないが、それでも具から思い切りダシが出て、味見がしたくて&したくてたまらない。

「あれれ、キノコは入れないんですか?」であるが、今日の話題の中心は、実はそこなのである。入れるキノコは諸君、何と意外なことに「エリンギ」なのだ。
ねこ
(ノルウェー・フレデリックスタッドでシマシマのネコに出会う)

「オレはシメジだな」「ウチは絶対マイタケ」。そういう派閥が圧倒的に優勢だろうけれども、諸君、一度でいいから是非ともエリンギをお試しあれ。

 しかもここで重要なのは、エリンギの切り方である。エリンギの切り方にも圧倒的優勢の政府与党みたいなのがあって、みんなあの長いヤツを繊維に沿って縦切りに切断する。焼き肉屋なんかでも、エリンギはみんな縦長に切られてテーブルに登場する。

 ところがワタクシは「エリンギの輪切り派」、5mm程度の輪切りにすると、ホタテみたいな丸い可愛いヤツが、マナ板にコロコロ誕生して、切っている本人自身が思わず歓声をあげる。

 豚汁の中に入ってしまうと、「正体不明」の状況になる。「キノコ」というイメージからは甚だ遠いのである。キノコと言えば諸君、やっぱり「キノコの山」の形しか想像しないじゃないか。なめこの形、笠を開いた松茸の形、あれがキノコの本質だ。
街の風景
(フレデリックスタッド。穏やかな町だった)

 ところが今井君の豚汁の中のエリンギは、完全ホタテ形。「エリンギだよ」と打ち明けずに放置すれば、誰もが「ホタテ?」と尋ね、「そうだよホタテだよ♡」とウソをつけば、誰もがホタテと信じて疑わない。

「今井が作った豚汁を食べたら、何とホタテが入ってたぞ!!」
「ホントか? すげーな♨」
「でもそれって邪道なんじゃん?」
「それは豚汁じゃなくてホタテ汁。看板に偽りがある」
その種の賛否両論で喧々囂々ないし侃々諤々、論壇は一気に沸騰しかねない。

 こういうふうでワタクシは、エリンギの輪切りに自信があったのである。自信というよりプライドであり、エリンギ♡コロコロな豚汁について、このブログにも4年前の1月か2月に詳細を記している。

 言わば「勝負豚汁」であって、人生の決定的瞬間が迫っている時には、必ずこの勝負豚汁を作る。日本酒をコップ3杯、思い切って鍋にドバッと注ぎ、ひと煮立ちさせてアルコールをとばす。たっぷりのネギを入れ、最後に味噌をとき、隠し味の醤油を少々、七味唐辛子で仕上げをする。

 こりゃ旨いぜ諸君。七味唐辛子は少なめにして、1人1人の好みにあわせて後から入れてもらう方がいいけれども、おお、七味がキリッときいて、豚汁だけでゴハンがナンボでも食べられる。というか、旨い豚汁の入るスペースを確保したくて、むしろゴハンを遠慮したくなるほどである。
白鳥
(フレデリックスタッド、水辺の風景 1)

 ところが11月1日、ワタクシが京都に出かけようと仕度していると、たまたまつけていたNHKテレビ「あさイチ」で、「エリンギの輪切り」を紹介しているじゃないか。

 有名な料理人が自慢げにエリンギの輪切りをやってみせ、雛壇の出演者が「おおー」「発想の転換ですね」「さすがですね」と手を叩いて大喜びしている。グラタンを口にして「ホタテみたいだ♡」「ホント、ホタテだと思っちゃいますね♡」と、大盛り上がりになっている。

 今井君は、悔しいのである。もちろんエリンギの輪切り程度のことは誰でも思いつくだろうけれども、せっかく「発想の転換」と言われるのなら、ワタクシももっともっと大宣伝をしておくんだった。よっしゃ、寒くなってきたし、そろそろ豚汁、いきますかな。
堀
(フレデリックスタッド、水辺の風景 2)

「あれれ、『晩夏フィヨルド紀行28』じゃなかったんですか?」と、首を傾げながら皮肉な微笑を浮かべる諸君、だから、イマイは今、本来の話題を忘れるほどに悔しいのである。本題に入る前にこんなにたくさん書いちゃった言い訳をどんなふうにすればいいか、今や問題はそこなのだ。

 そこで、「晩夏のノルウェーがあんまり寒かったので、ふと豚汁で温まりたくなった」ということにしておく。それなら話の整合性は確保できるじゃないか。おお、寒かった。ホントにノルウェーは寒かった。豚汁が恋しいな。ホントに豚汁が恋しいな。

 それなのに、掲載した写真がソフトクリームじゃ、再び整合性の問題が発生する。しかしそうは言っても8月23日、五稜郭の町・フレデリックスタッドには、メボしい飲食店がほとんど見当たらず、すいたお腹を満たすには、この大っきな「ソフティス」しかなかったのである。
ソフティス
(巨大ソフトクリーム。ノルウェーでは「ソフティス」と呼ぶ)

 飲食店としては、ピザ屋が2軒あるだけだ。日なたに粗末なテーブルを3つ並べた店が1軒。これはテーブルが粗末すぎて遠慮した。もう1軒は、全く日の当たらない寒々とした吹きっさらしにテーブルが並んでいる。これじゃ、豚汁ならともかく、ピザじゃたちまち冷めてしまいそうだ。

 何だかガッカリして歩き回っていると、目の前のパン屋さんから、1人のオジーチャンがマコトに自慢そうな笑顔で出てきた。その手には大っきなソフトクリーム。「どうだい、いいだろう?」という自慢の視線を、そこいら中にビュンビュン飛ばしながら歩み去った。

「これは負けてはいられない」「こっちも絶対ソフトクリームだ!!」。これじゃ園児か小学生の発想であるが、イマイなどというのは、いくつになっても小学3年の精神年齢から脱することができない生き物だ。すぐさまそのパン屋に入って、「ソフティス下さい」をやることになった。
眺望
(フレデリックスタッド、水辺の風景 3)

 その店の女子店員さんが、いきなり日本語を話したのである。大学生のアルバイトに違いないが、「日本に留学したことがある」「上手ではないが、日本語が話せるようになった」と、恥ずかしそうに話すのだった。

 パリとかロンドンとか、大都市で日本語を話すヒトに出会うならともかく、ここは首都オスロでもない。人影もマバラな「フレデリック・スタッド」、ガイドブックにも載っていないミニミニ小京都である。こういう出会いがあるから、旅はホントに面白い。

 ヨーロッパをウロウロしていると、流暢な日本語を話す人に、それなりに頻繁に出会うものである。深夜のミラノからパリ行きの寝台列車に乗り込んだ時は、車掌さんがいきなり日本語で話しかけてきた。

 マルセイユからリヨン行きのTGVに乗った時には、向かいの席の男子が「ブルゴーニュワインの研究をしていて、昨年まで日本に留学していた」と、不思議なことを日本語で話しだした。イスタンブールでも「ボクはジュータン屋ではありません」と、悲しそうな表情の若者が話しかけてきた。

 もちろん、超有名観光地で親しげに利益誘導をほのめかす人物には、それなりの魂胆があることが多いので、気をつけなければいけない。しかし「何でもかんでも疑ってかかりましょう」というんじゃ、悲しいじゃないか。少なくとも、このソフティスは間違いなく絶品であった。

1E(Cd) The Beatles:SGT. PEPPER’S LONELY HEARTS CLUB BAND
2E(Cd) The Beatles:WITH THE BEATLES
3E(Cd) The Beatles:A HARD DAY’S NIGHT
4E(Cd) IN THE COURT OF THE CRIMSON KING
5E(Cd) Janis Joplin:CHEAP THRILLS
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