Tue 171010 紅葉が早い/五稜郭の町 Fredrikstadへ(晩夏フィヨルド紀行27) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 171010 紅葉が早い/五稜郭の町 Fredrikstadへ(晩夏フィヨルド紀行27)

 昨日から西日本にいて、しばらく西日本に滞在する。昨日が滋賀県草津で公開授業、そのウチアゲで深夜まで京都にいた。明日は大阪で国立文楽劇場 ☞ 11月文楽公演初日を観る。明後日は広島で公開授業だ。

 もちろん広島に行けば、お好み焼きをワッシワシ、その後で生牡蠣を「痛飲」する予定。今井にとって生牡蠣が食べるというより飲むものであって、太田川に浮かぶ牡蠣舟で40個を飲み干したのは、昨年の出来事である。早いもので、もう1年が経過した。

 今年もまた40個を繰り返すのか、それとも記録の更新を目指して50個にチャレンジするか、そのへんの話はまたあとにして、11月初旬の西日本を大いにエンジョイしたいと思う。

 今年は、ずいぶん紅葉が早い。西日本に限らず東も早いが、昨日の京都では紅葉の早さに茫然&愕然とした。桜の葉っぱなんか、もうとっくに赤く染まって散り始めている。

 一昨年は、紅葉が遅すぎて12月に入り、カエデなんか紅葉しないまま茶色く縮んで枯れてしまった。それに引き換え、昨年の紅葉はマコトに鮮やかで、智積院や天龍寺や化野念仏寺で真っ赤なモミジを満喫したが、おお、やっぱりあれから1年が経過した。ホントに時の経つのは早いものである。
渡船
(オスロ近郊、Fredrikstadにて。新市街からこの船で旧市街にわたる。20分間隔、所要時間3分)

 しかし昨年の京都の紅葉は、11月下旬だったはずだ。今年は秋の深まるのが早すぎはしないか。東京ではもう8月から「寒いですね」「寒いですね」と挨拶を交わし、10月は連日の冷たい雨、中旬にはもう床暖房のスイッチを入れ、10月下旬にはガスの暖房も持ち出した。

「最低気温が10℃を下回る」という新聞の見出しも、それが10月ではさすがに早すぎる。北海道で大雪、北関東で初霜に初氷に初冠雪、例年ならそれは、11月中旬の話ではなかったか。

 昨日の西日本では、人々のコート率にビックリした。100%に近い人々が、分厚い冬のコートにマフラーをグルグル巻きにして、背中を丸めて歩いていた。

 もちろん、まだ平気で夏のスーツで闊歩している今井君が異様なのであるが、でも一昨年の今ごろは、11月に入っても30℃近い暑い日があり、イチョウの葉っぱはいつまでも青々として、神宮外苑のイチョウ並木は、11月下旬になってもちっとも黄金色なんかになってくれなかった。

 文化の日の前日に、すでにイチョウの樹々が黄金色。考えてみれば、理想に近いのかも知れない。昭和の時代には、秋10月中旬の「高山祭」はもう冬のニュースだった。

 そのころNHK「みんなのうた」に、高山祭をテーマにした「高山にカンカコカン」というのがあって、今井君なんかは今でもチャンと最初から最後まで歌えるのであるが、そのサビの部分には厳しい冬の到来を待ち受けるオトナたちの覚悟を歌われていた。

「たーかやまに、カンカコカン♡」
「雪が来るーぅ、冬が来るーぅ」
「たーかやまに、カンカコカン♡」
その歌にのせて、画面にはダイコンやハクサイの漬け物を漬け込むオカーサンたちの笑顔、軒に干し柿をつるすオトーサンやオジーチャンの笑顔が映ったものだった。

 10月初旬のお祭りが冬の接近を知らせるものだったとすれば、11月初旬はすでに冬の始まりであって、イチョウが青々していたり、カエデに紅葉の気配も感じられないようでは、みんな困っちゃうのである。

「高山にカンカコカン」と同時期に、山本リンダという人が「困っちゃうな」と言ふ困った歌をヒットさせていたが、ま、そのへんの話はヤメにして、11月初旬にグイグイ紅葉が進んでいくのは、日本人の心理としては理想に近い、それは間違いのないことのようである。
路線図
(ノルウェー中央駅からの近郊電車路線図。さすが北欧、「Ski」という名の町もある)

 だって諸君、ノルウェーでは8月の段階で、もうすっかり冬支度だった。「夏が終わったな」という物悲しい雰囲気がいつまでも長々と続くのはよろしくない。

 特に今井君は幼児時代から中学時代まで「ぜんそく」という厄介な病気に悩まされた。秋は、多くの喘息患者にとって、厳しい呼吸困難の発作に襲われる季節。「とっとと過ぎ去ってくれるに越したことはない」と思っていた。

「春と秋とどっちが好き?」と問われて「秋です」と言った平安時代の高貴な女性を、小児の頃のワタクシは憎んだものである。秋と言えば「息を吸い込もうとしても吸い込めない呼吸困難の季節」。そのイメージは実は今もなくなっていない。

 だから諸君、8月23日、オスロ滞在の最終盤であったが、ホテル2階の部屋から国会議事堂前の広場を見おろして、人々がすっかり晩秋の装いであるのを知った時、ワタクシはふと呼吸困難の日々を思い出す。「病は気から」。それだけで症状が出ることもあるから、要注意&ご用心。秋の空気はマコトに危険だ。
電車
(Fredrikstadに到着)

 こういう時期に暴飲暴食をやると、胃袋が下からせり上がって肺と気管を圧迫し、それが呼吸困難の引き金になることもある。カニや海老や牡蠣やムール貝、そんなものをたらふく食ってる場合ではないのだ。

 そこで諸君、一計を案じた今井君は、暴飲暴食を避けるためにも、8月23日はオスロ郊外の小さな町を訪ねてみることにした。町の名はFredrikstad(フレデリック・スタッド)。函館の五稜郭とそっくりのお城の址が残っているのだという。

 ワタクシは、五稜郭が大好きだ。函館ゆきのヒコーキが高度をグイグイ下げて、「おお、函館の街だ」「まもなく着陸だ」という頃、手に取れるほど間近に、星の形の五稜郭が現れる。あの感激はたまらない。

 あの五稜郭にそっくりの城塞が、オスロ近郊で見られるとあれば、ぽっかり予定の空いた1日、片道1時間の電車の旅を是非とも楽しんできたい。10時すぎにホテルを出て、オスロ中央駅から6両編成の近郊電車に乗り込んだ。
駅舎
(Fredrikstad駅。人影もほとんどなし。マコトに穏やかだ)

 電車は、空いていた。イタリアや南フランスの近郊電車はペンキの汚い落書きで覆い尽くされて見る影もないが、さすが高福祉の北欧の電車には、落書きの「ら」の字も見当たらない。日本の電車と同レベルの清潔さに、やっぱり心は安らぐのである。

 大きな声で話す人もほとんどいない。2人の若者が、ちょっと下卑た言葉遣いで談笑しているが、何となく肩身が狭そうである。車内放送も控えめ、のべつまくなしカラオケ気分でアナウンスを繰り返している日本の鉄道会社は、是非ノルウェーをお手本にしてほしい。

 進行方向右側の車窓は、美しいオスロフィヨルドの風景が続く。オスロに到着した日の夕暮れ、このフィヨルドをクルーズするお船の上で凍えかけたものだが、あれから8日、今ではあれもまた笑い話にすぎない。

 お昼過ぎ、Fredrikstadに到着。一緒に降りた人は10人ぐらい、ワタクシと同じ観光客のようであったが、駅の写真を撮っているうちにみんなどこかに消えてしまった。駅舎にはコンビニも付属しているけれども、昼の駅に人影はほぼ皆無。マコトに穏やかな町である。
チップ
(トイレはカードによるチップ制。この機械にカードを通さないと、ドアが開いてくれない)

 ただし、こんなに好感の持てる町なのに、やっぱりクレジットカード社会は世知がらい。先日Vossの駅のトイレでも慨嘆したばかりであるが、このFredrikstadでも、やっぱりトイレのチップはカード制なのである。

 だから、VISAかMasterをカードリーダーに通さないかぎり、ドアはビクとも動かない。カード審査に落ちちゃう人は、駅でマトモに用を足すこともできない。「理想的な福祉社会」と持ち上げるのは勝手であるが、うーん、どんなもんでしょうかね。

 もちろんその場合でも、きっと人間の交渉力が物を言うので、付属したコンビニの店員さんとツーカーの仲になり、「カード持ってないけど、ドア開けてくれよ」と頼み込めるようになりさえすればいいのだ。

 しかし諸君、「内気な人」というのは常に存在し、今井君は内気の権化みたいに超内気であって、「そんなことをするぐらいならトイレになんか行ってやらない」というスタンスである。

 ついでに言うと、近郊電車の中のトイレでさえ、同様にカードによるチップ制。いったん世知がらくなれば、徹底して世知がらい。それがシステマティックな高福祉社会の本質なのかもしれない。

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