Thu 170921 トイレのチップもカード決済/200人にバス1台(晩夏フィヨルド紀行15)
野宿の可能性が出たら、何をおいてもまず絶対にしておかなければならないことが2つある。① メシと水分の確保 ② トイレの確認、以上の2点である。
もちろん、特に話が男子にかぎられれば、②については「どうでもいいじゃん」「何とかなるじゃん」と、イタズラっぽくニヤッ&ニコッとする人も少なくないはずだ。
立ち○便も可能、野グ○も可能。文明人のプライドをポイ捨てして、軽犯罪に眼をつぶってもらおうという姿勢を、むしろ「男らしい」とか「ワイルド♡」と高く評価する勢力も存在するはずだ。
しかし諸君、そんなんじゃ、キチンとした旅人とは言われない。「地元の人々に迷惑をかけておいて、何が旅だ?」の批判は、マコトに当を得ている。今井君も、地元の人々に嫌がられる行動は、すべて自ら厳に戒めている。
だから8月19日、「ベルゲンゆきの列車が運休、このまま深夜まで動きそうにない」という事態になった時、まず最初に探したのはとにかくトイレであった。
(雨のベルゲンに到着。詳細は、明日)
19時半の列車が運休、次の列車は21時半。ただし21時半まで待っても、おそらく列車はギリギリになって「やっぱり運休」と発表されるに決まっている。
ヒースロー空港でリスボン行きのヒコーキを待ったときもそうだった。あの時は、17時、まず掲示板に「Delayed」の表示が出た。18時をすぎ、21時を過ぎ、22時になっても、一向に表示は変わらなかった。
空港から人影がどんどん減って、ついに23時を過ぎ、閑散とした空港で、掲示はもう翌日早朝の便に変わりはじめた頃、待ちわびたリスボン便の掲示が、いきなり「Cancelled」に切り替わった。
リヨン駅でマルセイユ行きの電車を待ったときも同じである。とにかく最初は「Delayed」の表示が出る。「へえ、そうなんだ。遅れが出てるんだ」と素直にそれを信じ、待って&待って、ひたすら待って、3時間も4時間も経過してもうどうしようもなくなってから「Cancelled」に切り替えられる。
アヴィニョン駅でマルセイユ行きを待った時もそうだった。素直に「遅れてるんだ」なんてのは、ナイーブすぎるのである。ギュッと自分を抑え、忍耐して待ち続けても、「正直者はバカを見る」の結果は最初から見えている。
いったん悪い方に進みはじめた事態が、何かのハズミに好転するなんてのは、少なくとも外国を旅している時には考えない方がいい。いったん悪い方に行ったら、自分の責任で最悪を想定して行動するのが常道である。
そこで諸君、19時、もう日暮れも近づいたヴォスの駅で、今井君はまずトイレを探した。ヴォス駅前を見れば、宿泊施設もごく少数に限られている様子。いまグドヴァンゲンから到着したバス3台の乗客は、1台70名として概算200名。全員ホテルに宿泊できるなんて考えない方がいい。
ところが、駅のトイレには頑固そうなカギがかかっている。「意地でも開いてなんかやんねーぞ」という風情である。何故そんなことになっているかというに、「チップくれなきゃ開かねえぞ」ということなのだ。
北欧はパーフェクトなクレジットカード社会であって、トイレのチップもクレジットカードで自動決済される。イタリアやスペインやモロッコのトイレなら、入口にトイレ管理のオバサマがドッカと腰を下ろし、笑顔でチップを徴収するが、北欧の先進社会では、もはやそんな役割も廃止されている。
カードリーダーにカードを通せば、ドアはニッコリ優しく微笑んで「はい、どうぞ」と開くのである。ということは諸君、クレジットカードがないと、トイレも使用できないのだ。インド人の5人家族が、トイレの前でニッチもサッチもいかなくなっていた。
これが、日本のマスメディアが無条件で「福祉充実の国」「夢の国」「幸福の国」であるかのように報道している北欧の実態である。VISAやMasterのクレジットカード審査を通過できない人は、駅のトイレで用を足すこともできない。
「定職のない人はトイレを使うべからず」。この状況、この格差社会、ホントに理想なんですかね。日本のマスメディアって、ホントにちゃんと現地で生活してから報道してるんですかい?
(ベルゲンの朝。世界遺産の町並みを散策する 1)
ワタクシはあんまりムカついたので、駅のトイレで用を足すことを拒絶。雨の中を歩いて駅前のケバブ屋に入った。ケバブで今日の晩メシを確保、確保ついでにケバブ屋のトイレも借りれば、トイレのチップをクレジット決済などという血も涙もない制度に、ちっぽけな抗議の姿勢ぐらい示せそうだ。
案の定、運休する列車の乗客を「ベルゲンまでバスで代行輸送いたします」という案内放送があった。いったん列車が運休と決まったからには、何かカンタンには解決できない理由があるので、2〜3時間ジッとガマンすれば事態が解決するなんて、そんな甘いことは期待しない方がいいのだ。
そしてもう1つ、こういう時「バスで代行輸送」というのも、日本ならともかく、海外ではあまり期待してはならない。バスはおそらくギューギュー詰め、たくさんの積み残しが出たとしても、「これ以上は面倒を見きれません」「あとは個人で何とかしてください」ということになるに決まっている。
それでも日本国内みたいに「オマエたちの責任だろ」「何とかしろよ」「見捨てんのかよ」みたいな態度をとれば、世界基準では詰め寄った乗客の側が悪いということになる。シコタマおっかない顔で悪者みたいに排除され、それで全部おしまいだ。
(ベルゲンの朝。世界遺産の町並みを散策する 2)
だから諸君、確保したケバブをかじりながら、代行輸送のバスがやってくる方向をひたすらギュッと見つめていなければならない。バスの姿が見えるやいなや、恥も外聞もなくバスに向かって突進する。それが嫌なら、駅の近くの路上で野宿するしかない。
手に入れたケバブは、お世辞にも「絶品」とは言えないシロモノ。しかしとにかく「困ったときはとにかくメシ」「何かあったらすぐ弁当」、日々旅にして旅を住処とする人間には、どんなケバブだって心から嬉しいものである。
小雨が降り続き、その小雨がいつ豪雨にかわってもおかしくない雲行きの中、バス3台200名のヒトビトは、ひたすら代行バスを待ち受けた。予定の時刻を15分経過、20分経過、30分近くが経過しても、一向にバスの姿は見えない。ケバブなんか、とっくに胃袋に消えた。
(ベルゲンの朝。世界遺産の町並みを散策する 3)
バスが姿を見せたのは、次の瞬間である。バスは、1台。200名が一斉にドアに殺到する。まず前のドアが開き、続いて後ろのドアも開く。状況は、さながらラグビーのモール状態。ホントに恥も外聞もなく「我先に♨」の押し合いへし合いが展開される。
サトイモ君はこう見えてもマコトにすばしこいので、この恐るべき状況の中でも前のドアから何とか座席を確保。もっとも、後ろのドアからなだれ込んできたヒトビトの勢いが強烈で、前方に残っていた座席はほぼ皆無であった。
しかしもう一度確認するが、駅前にはグドヴァンゲンからやってきたバス3台分、200名の乗客がいたのである。200名全員が、列車でベルゲンまで行くはずだった。その代行バスがたった1台。定員70名のバスだから、140名は積み残しということになる。
ごく当たり前のことであるが、乗れなかった140人がバスの発車を許さない。宿泊施設のほとんどないヴォス駅前で、このバスに見捨てられたら、ホントにホントに野宿になる。「バスをもう1台」「いや、もう2台」。そう要求するのは当然である。
会社側は、懸命に電話で連絡をとり続ける。迫る夕闇、次第に強くなる雨、こんな状況でここに置いていかれたら、せっかくのフィヨルドの旅も悪夢の一晩にかわりかねない。
(ベルゲン、雨上がりの朝の黒ネコ)
30分も頑張って連絡をとりつづけた結果、会社側が発表したのは、「タクシー利用」である。バスに乗れなかった乗客は、ヴォスの町にいるタクシーを総動員して、ベルゲンの町まで運ぶ。ベルゲンまでのタクシー代は、会社側の負担とする。
その条件で、乗客はとりあえず納得。ワタクシの乗り込んだたった1台のバスは、何とかベルゲンに向けて発車することができた、安堵のタメイキが流れる中、「他の乗客はタクシーで行きますからご安心を」のアナウンスがあった。
ベルゲンまで1時間半。タクシーの正規料金は2万円ぐらいだが、会社側でそれを負担するということなら、めでたし&めでたしじゃないか。さすが高福祉の国、トイレのクレジットカードはひどいけれども、まずは問題解決だ。よかった&よかった。
以上、緊迫のヴォス事件はひとまず無事に解決した。しかし諸君、今井君が考えるに、どうも問題はここで終わってはいなかったのである。その件に関しては、また明日の記事で詳説しようじゃないか。
1E(Cd) Solti & Wiener:MOZART/GROßE MESSE
2E(Cd) Rilling:MOZART/REQUIEM
3E(Cd) Jochum & Bavarian Radio:MOZART/THE CORONATION MASS
6D(DMv) ALLIED
total m115 y1761 d21710
もちろん、特に話が男子にかぎられれば、②については「どうでもいいじゃん」「何とかなるじゃん」と、イタズラっぽくニヤッ&ニコッとする人も少なくないはずだ。
立ち○便も可能、野グ○も可能。文明人のプライドをポイ捨てして、軽犯罪に眼をつぶってもらおうという姿勢を、むしろ「男らしい」とか「ワイルド♡」と高く評価する勢力も存在するはずだ。
しかし諸君、そんなんじゃ、キチンとした旅人とは言われない。「地元の人々に迷惑をかけておいて、何が旅だ?」の批判は、マコトに当を得ている。今井君も、地元の人々に嫌がられる行動は、すべて自ら厳に戒めている。
だから8月19日、「ベルゲンゆきの列車が運休、このまま深夜まで動きそうにない」という事態になった時、まず最初に探したのはとにかくトイレであった。
(雨のベルゲンに到着。詳細は、明日)
19時半の列車が運休、次の列車は21時半。ただし21時半まで待っても、おそらく列車はギリギリになって「やっぱり運休」と発表されるに決まっている。
ヒースロー空港でリスボン行きのヒコーキを待ったときもそうだった。あの時は、17時、まず掲示板に「Delayed」の表示が出た。18時をすぎ、21時を過ぎ、22時になっても、一向に表示は変わらなかった。
空港から人影がどんどん減って、ついに23時を過ぎ、閑散とした空港で、掲示はもう翌日早朝の便に変わりはじめた頃、待ちわびたリスボン便の掲示が、いきなり「Cancelled」に切り替わった。
リヨン駅でマルセイユ行きの電車を待ったときも同じである。とにかく最初は「Delayed」の表示が出る。「へえ、そうなんだ。遅れが出てるんだ」と素直にそれを信じ、待って&待って、ひたすら待って、3時間も4時間も経過してもうどうしようもなくなってから「Cancelled」に切り替えられる。
アヴィニョン駅でマルセイユ行きを待った時もそうだった。素直に「遅れてるんだ」なんてのは、ナイーブすぎるのである。ギュッと自分を抑え、忍耐して待ち続けても、「正直者はバカを見る」の結果は最初から見えている。
いったん悪い方に進みはじめた事態が、何かのハズミに好転するなんてのは、少なくとも外国を旅している時には考えない方がいい。いったん悪い方に行ったら、自分の責任で最悪を想定して行動するのが常道である。
(ベルゲンのホテル「ラディソンブルー」にチェックイン。バー「ノース26」で、ビールを痛飲する)
そこで諸君、19時、もう日暮れも近づいたヴォスの駅で、今井君はまずトイレを探した。ヴォス駅前を見れば、宿泊施設もごく少数に限られている様子。いまグドヴァンゲンから到着したバス3台の乗客は、1台70名として概算200名。全員ホテルに宿泊できるなんて考えない方がいい。
ところが、駅のトイレには頑固そうなカギがかかっている。「意地でも開いてなんかやんねーぞ」という風情である。何故そんなことになっているかというに、「チップくれなきゃ開かねえぞ」ということなのだ。
北欧はパーフェクトなクレジットカード社会であって、トイレのチップもクレジットカードで自動決済される。イタリアやスペインやモロッコのトイレなら、入口にトイレ管理のオバサマがドッカと腰を下ろし、笑顔でチップを徴収するが、北欧の先進社会では、もはやそんな役割も廃止されている。
カードリーダーにカードを通せば、ドアはニッコリ優しく微笑んで「はい、どうぞ」と開くのである。ということは諸君、クレジットカードがないと、トイレも使用できないのだ。インド人の5人家族が、トイレの前でニッチもサッチもいかなくなっていた。
これが、日本のマスメディアが無条件で「福祉充実の国」「夢の国」「幸福の国」であるかのように報道している北欧の実態である。VISAやMasterのクレジットカード審査を通過できない人は、駅のトイレで用を足すこともできない。
「定職のない人はトイレを使うべからず」。この状況、この格差社会、ホントに理想なんですかね。日本のマスメディアって、ホントにちゃんと現地で生活してから報道してるんですかい?
(ベルゲンの朝。世界遺産の町並みを散策する 1)
ワタクシはあんまりムカついたので、駅のトイレで用を足すことを拒絶。雨の中を歩いて駅前のケバブ屋に入った。ケバブで今日の晩メシを確保、確保ついでにケバブ屋のトイレも借りれば、トイレのチップをクレジット決済などという血も涙もない制度に、ちっぽけな抗議の姿勢ぐらい示せそうだ。
案の定、運休する列車の乗客を「ベルゲンまでバスで代行輸送いたします」という案内放送があった。いったん列車が運休と決まったからには、何かカンタンには解決できない理由があるので、2〜3時間ジッとガマンすれば事態が解決するなんて、そんな甘いことは期待しない方がいいのだ。
そしてもう1つ、こういう時「バスで代行輸送」というのも、日本ならともかく、海外ではあまり期待してはならない。バスはおそらくギューギュー詰め、たくさんの積み残しが出たとしても、「これ以上は面倒を見きれません」「あとは個人で何とかしてください」ということになるに決まっている。
それでも日本国内みたいに「オマエたちの責任だろ」「何とかしろよ」「見捨てんのかよ」みたいな態度をとれば、世界基準では詰め寄った乗客の側が悪いということになる。シコタマおっかない顔で悪者みたいに排除され、それで全部おしまいだ。
(ベルゲンの朝。世界遺産の町並みを散策する 2)
だから諸君、確保したケバブをかじりながら、代行輸送のバスがやってくる方向をひたすらギュッと見つめていなければならない。バスの姿が見えるやいなや、恥も外聞もなくバスに向かって突進する。それが嫌なら、駅の近くの路上で野宿するしかない。
手に入れたケバブは、お世辞にも「絶品」とは言えないシロモノ。しかしとにかく「困ったときはとにかくメシ」「何かあったらすぐ弁当」、日々旅にして旅を住処とする人間には、どんなケバブだって心から嬉しいものである。
小雨が降り続き、その小雨がいつ豪雨にかわってもおかしくない雲行きの中、バス3台200名のヒトビトは、ひたすら代行バスを待ち受けた。予定の時刻を15分経過、20分経過、30分近くが経過しても、一向にバスの姿は見えない。ケバブなんか、とっくに胃袋に消えた。
(ベルゲンの朝。世界遺産の町並みを散策する 3)
バスが姿を見せたのは、次の瞬間である。バスは、1台。200名が一斉にドアに殺到する。まず前のドアが開き、続いて後ろのドアも開く。状況は、さながらラグビーのモール状態。ホントに恥も外聞もなく「我先に♨」の押し合いへし合いが展開される。
サトイモ君はこう見えてもマコトにすばしこいので、この恐るべき状況の中でも前のドアから何とか座席を確保。もっとも、後ろのドアからなだれ込んできたヒトビトの勢いが強烈で、前方に残っていた座席はほぼ皆無であった。
しかしもう一度確認するが、駅前にはグドヴァンゲンからやってきたバス3台分、200名の乗客がいたのである。200名全員が、列車でベルゲンまで行くはずだった。その代行バスがたった1台。定員70名のバスだから、140名は積み残しということになる。
ごく当たり前のことであるが、乗れなかった140人がバスの発車を許さない。宿泊施設のほとんどないヴォス駅前で、このバスに見捨てられたら、ホントにホントに野宿になる。「バスをもう1台」「いや、もう2台」。そう要求するのは当然である。
会社側は、懸命に電話で連絡をとり続ける。迫る夕闇、次第に強くなる雨、こんな状況でここに置いていかれたら、せっかくのフィヨルドの旅も悪夢の一晩にかわりかねない。
(ベルゲン、雨上がりの朝の黒ネコ)
30分も頑張って連絡をとりつづけた結果、会社側が発表したのは、「タクシー利用」である。バスに乗れなかった乗客は、ヴォスの町にいるタクシーを総動員して、ベルゲンの町まで運ぶ。ベルゲンまでのタクシー代は、会社側の負担とする。
その条件で、乗客はとりあえず納得。ワタクシの乗り込んだたった1台のバスは、何とかベルゲンに向けて発車することができた、安堵のタメイキが流れる中、「他の乗客はタクシーで行きますからご安心を」のアナウンスがあった。
ベルゲンまで1時間半。タクシーの正規料金は2万円ぐらいだが、会社側でそれを負担するということなら、めでたし&めでたしじゃないか。さすが高福祉の国、トイレのクレジットカードはひどいけれども、まずは問題解決だ。よかった&よかった。
以上、緊迫のヴォス事件はひとまず無事に解決した。しかし諸君、今井君が考えるに、どうも問題はここで終わってはいなかったのである。その件に関しては、また明日の記事で詳説しようじゃないか。
1E(Cd) Solti & Wiener:MOZART/GROßE MESSE
2E(Cd) Rilling:MOZART/REQUIEM
3E(Cd) Jochum & Bavarian Radio:MOZART/THE CORONATION MASS
6D(DMv) ALLIED
total m115 y1761 d21710