Sun 170917 どっちを選ぶ?/フラム鉄道/進行どっち側がいい?(晩夏フィヨルド紀行11) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 170917 どっちを選ぶ?/フラム鉄道/進行どっち側がいい?(晩夏フィヨルド紀行11)

 悩ましい選択に迫られるというのは、マコトに幸福な事態にちがいない。
「東大とオックスフォード、両方とも合格したけど、どっちにしよっかな♡」
「ウチの子は、スター医師にもスター女優にもなれそうけど、どっちの道を進ませよっかな♡」
おお、その異様に贅沢な悩み、今井君とは完全に別世界である。

 人として生まれた以上、そんな2つの選択肢、岐路と言うか、分かれ道と言うか、そんな立ち位置に一度ぐらいは立ってみたい。ところが諸君、人生はたいへん世知がらく出来ているので、せいぜい「自民党と立憲民主党、どっちに入れっかな」が限度である。

「今日のお風呂で読むの、ジードとモーパッサンでどっちがいいかな」
「朝のフルーツ、ネーブルとナシとどっちがいいかな」
「晩メシ、カレーと焼鳥でどっちにすっかな」
「次の旅行、ペルーとクロアチアのどっちを選ぶかな」
いやはや、今井君の日々は、常にその程度の岐路に直面するのである。

 それもまた悩ましいと言えば悩ましいが、悩ましさのレベルが違うじゃないか。「次に収録する講座、難関大向けにしようかな?」「それとも4技能入門編にすっかな?」。せめてそのぐらいの高級な悩みに満たされたいが、残念ながら今井君は「オムスビは、シャケかオカカか」を優先するツマラン人間なのである。
瀑布
(ノルウェー、フラム鉄道からの大瀑布)

 そういう悩みは旅の最中でも同じなので、秋の大阪を旅するのに、晩メシをどうするかについて、悩みに悩んで全く結論に至る気配がない。2者択一ならまだいいが、「大阪で晩メシ」となれば、当然のように選択肢がぐいぐい増えてくる。

「法善寺横丁でおでん」「玉造でクマ鍋」「日本橋でクワ焼」「難波か裏難波で居酒屋」「高麗橋で天ぷら」「梅田でフィレステーキ」「淀屋橋で生牡蠣」。ちょっと選択肢の性質が特殊であるが、何しろ胃袋の容量には限りがある。センター試験の4者択一どころか、6者択一の難題に右往左往する。

 例えば、秋の山形県に鉄道の旅をするとする。たちまちワタクシの中ではたいへんな数の選択肢が渦巻くのである。

① 米沢から「米坂線」に乗って、豪雪地帯の小国町を経由して日本海側の新潟県坂町に出る。
② 奥羽本線の上り列車で、板谷峠を南に進む。途中の「峠」駅で下車、「峠の力餅」を貪り、お蕎麦もたっぷりすすってくる。
③ 長井線や左沢線(これで「あてらざわ」と読む)を乗り継いで寒河江(これで「さがえ」と読む)に向かい、フルーツ王国♡山形の秋を満喫する。
ミュルダール駅
(ミュルダール駅に到着 1)

 こんなありさまであるから、オスロから3時間半、ベルゲン急行がフィン・セからミュルダールに近づいても(スミマセン、昨日の続きです)、またまた厳しい選択肢が今井君をギュギュッと責めたてる。

① このまま列車に乗って、ヴォス ☞ ベルゲンを目指す。車窓には、川やら滝やらフィヨルドやらが次々と姿を現して、世界の鉄道でも1か2かを争う絶景の連続になる。

② ミュルダールで降りて、フラム鉄道に乗り換える。標高870メートルの駅から一気に山を下れば、麓の「フラム」の駅まで約1時間、標高0メートルの船着き場に至る。

 信じがたいけれども、フィヨルドはもちろん海なんだから、間違いなく海抜0メートル。たった1時間で870メートルも駆け下りる絶景のフラム鉄道にも乗ってみたい。
到着
(ミュルダール駅に到着 2)

 その2者択一を、ワタクシは3ヶ月も前、5月下旬に迫られた。この路線の予約が始まるのが、3ヶ月前。ネット予約であるが、見る間に座席がどんどん埋まっていく。

 北欧で随一の人気路線だから不思議はないが、せっかくフィヨルドを見に行くのに、「ベルゲン急行が満席で諦めました」ということにはしたくない。5月の今井君は、大いに焦ったのである。

 ついでに言えば、「ノルウェー国外からのクレジットカードがハジかれる」という、まあネット予約独特の事態も起こっていたようである。VISAやMASTERでもハジかれるんじゃ、他のカードを試したってダメに決まっている。

 5月から焦りに焦って、やっと手に入れたプラチナチケットだ。「意地でも晴れてくれよ」と祈るような気持ちで8月19日を迎えたのであるが、起床5時、ホテルを出たのが5時50分、オスロ中央駅を列車が発車したのは6時25分。残念ながら早朝のオスロは雨模様であった。

 しかし諸君、何しろ今井君は普段の行いが驚異的に良好であるから、お空の神様も「よっしゃ、よかんべえ、日本のサトイモ君に快晴を恵んでやるべさ」と判断してくださった。標高1222m、ベルゲン急行の最高地点に到着する頃には、雨はすっかり上がって、間近な氷河は青味がかった銀色に輝いていた。
フラム鉄道
(ミュルダールで出発を待つフラム鉄道)

 ミュルダール到着、11時34分。ここでワタクシは「下車してフラム鉄道に乗り換え」の選択肢を選んだ。だから、ミュルダールからベルゲンへの絶景の車窓は、いったん「見残し」にする。今回の旅の中でもう1度ここに来てもいいし、2年後や3年後の楽しみにとっておくこともできる。

 乗り換えるフロム行きは、12時13分の発車だから、約40分の待ち合わせである。駅の周辺には、ごく当たり前の人家が4〜5軒並んでいるだけで、土産物屋も食堂も全く見当たらない。マコトに静かな山の駅である。

 ただし「いよいよここから絶景が続くぞ」という期待感が濃厚にホームに漲っている。列車に乗ったままベルゲンに向かう人も、ここで乗り換えて一気に870mを駈け下りる人も、一様に絶景を期待して表情が明るく緊張している。

 アジア人の比率の高さが凄まじい。フラム鉄道に乗り込む乗客は、中国人の団体ツアーが8割。欧米人は十数人しか見当たらないが、日本人や東南アジアからの人々も同じぐらい存在する。
出発進行
(フラム鉄道、いよいよ「出発進行」だ)

 さて諸君、ガイドブック並みに役に立つ情報を、ここで1つ提供しようと思う。普段は「役に立つ情報なんか絶対に書かないぞ」というのがこのブログの基本姿勢なのであるが、ま、何事にも例外はあっていいだろう。

 というか、あえて基本姿勢を崩してまでお役立ち情報を提示しようとするサトイモの態度から、「おお、コイツはずいぶんフィヨルドが気に入ったんだな」「すっかりフィヨルドファンになったんだな」と判断していただきたい。

 要するに諸君、ワタクシはどうしても今
「フィヨルドに来たまえ」
「ヴェネツィアやバルセロナやパリもいいだろうが、一生に1度でいい、ぜひフィヨルドの絶景を目撃したまえ」
「人生観が変わるぐらい感激しますよ」
そんなふうにお伝えしたいのである。
滝
(ハイライトの大瀑布の他に、美しい滝がナンボでも連続する)

 では思い切って、世にも珍しい「今井ブログのお役立ち情報」を開陳しよう。それは諸君、「フラム鉄道に乗る場合、進行方向どっちの座席を選ぶべきか」なのである。耳の穴をかっぽじるなり、お目目をギュッとこするなり、とにかくワタクシの情報を前のめりになって把握したまえ。

① ミュルダールからの山下りなら、進行左側。
② フラムからの山登りなら、進行右側。
フィヨルドを旅する際は、決して間違えずにその側の座席を確保したまえ。

 もちろん「どっちが進行方向?」を誤ると、右と左が正反対になってしまう。進行方向は、ミュルダールなら今まで乗ってきたベルゲン急行の反対側。フラムからなら、食堂がいくつか並んでいるあたりを背にして進めば、進行方向を間違う気遣いはない。

 ただし、例え間違えて反対側の車窓に陣取ってしまったとしても、標高差500メートルを越える美しく豪快な滝が次々と車窓間近に現れる。8月中旬でも、流れているのは万年雪からの雪解け水。あまりに清冽な美しさに絶句、しばしコトバも出ないほどの強烈な感激を味わえる。

1E(Cd) Kirk Whalum:COLORS
2E(Cd) George Benson:IRREPLACEABLE
3E(Cd) Deni Hines:IMAGINATION
6D(DMv) MATCH POINT
total m91 y1737 d21686