Mon 170904 時間よ止まれ 1978/時間が止まっちゃった秋田県のこと/ババヘラのこと | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 170904 時間よ止まれ 1978/時間が止まっちゃった秋田県のこと/ババヘラのこと

 矢沢永吉「時間よ止まれ」は、1978年3月21日発売のミリオンヒットである。あまりに名曲すぎて、そこいら中で時間が止まっちゃった。ピタリと止まったまま、全然動かなくなっちゃったヒトビトも多い。その代表格が、何を隠そうこの今井君である。

「全然動かなくなっちゃった」場合、一般に「進歩が止まった」「成長が止まっちゃった」という惨事を意味する。ワタクシの惨事がどの程度の惨事だったかと言えば、勉強も常識も精神年齢も、みんな1978年3月のままに固定されてしまったのである。

 だから、今井君は完全にコドモのまま、そこから勉強はちっとも先に進んでいない。精神年齢なんか、下手をすれば小5か小6のところで時間が止まってしまっている。

 21世紀のオトナっぽい小学生から見れば、恥ずかしくなるほど幼稚な精神年齢であって、幼稚園児なみのイタズラをしては、悦に入ってバカバカしい笑みを浮かべている。

 幼児のイタズラは、「鼻」と「消しゴム」に関わることが多い。消しゴムを千切ってイヤなヤツに投げつける。投げつける物は他に「鼻」から出るものぐらいしかないので、いけない園児はいつでも鼻をほじくってばかりいる。

 もちろん今井君はとっくに中年であるから、「鼻をほじくる」などという不潔なことは絶対にしない。しかし諸君、やっぱり1978年の矢沢永吉どんに命じられた通り、今井君の時間は完全に止まってしまった。もうピクリとも動かない。
ババヘラ1
(田沢湖で発見、秋田限定「ババヘラ Milky」)

 だからワタクシの周囲の時間は、完全な「秋田時間」なのである。それを「レトロ」と呼ぶなり「昭和」と呼ぶなり、自由にせせら笑って構わないが、お相撲は北の湖と貴ノ花と輪島、野球は王貞治と長嶋茂雄、アイドルは麻丘めぐみと南沙織とアグネス・チャン、そんなところでピタリと止まっている。

 それをみんな矢沢永吉どんのせいにする気はない。他にも「世良公則とツイスト」「柳ジョージとレイニーウッド」、時間が止まりそうなほど魅力的なミュージシャンは、他にもたくさん存在した。

「○○と△△△△」というタイプの人々は、他にも「鶴岡政義と東京ロマンチカ」「内山田洋とクールファイブ」「黒澤明とロスプリモス」「ペドロ&カプリシャス」など、枚挙にイトマがない。まさか「ペドロ」が「ペドロ梅村」だなんて、滅多な人はご存知ないだろう。

 強烈に「時間よ止まれ」の影響を受けてしまった今井君は、止まった時間の中で生きている。今井君の時間が止まったと同様に、ふるさと秋田の時間も止まってしまった。

 その止まり方の激しさは、想像を絶するほどのものである。ピタリと止まったまま、時間の歯車は真っ赤に錆びついた。赤錆に侵されたボルトとナットは、もう外そうとしても外れない。

 サビ取りと言えば誰が何と言っても「KURE 551」であるが、そんなものが効果を発揮する段階はとっくに過ぎている。歯医者さんがよく口にする「どうしてこんなになるまで放っておいたんですか?」という捨て台詞が、こんなにピッタシ当てはまるケースは滅多に見つからない。
のりば
(時間の止まったバス停。田沢湖畔にて)

 そういう状況が如実に現れるのが、高校野球の世界である。21世紀の高校野球は、すでに十分にセミプロであって、朝日新聞がどんなに美談で丸め込もうとしても、コドモ時代からセミプロとして育てられたエリート以外、この世界に参入するのはほぼ不可能と考えて間違いない。

 ところが秋田県の高校野球だけは、1978年あたりで時間がピタリと止まったのである。あの頃、秋田商に高山、秋田経大付に松本、金足農に小野、本荘高校に工藤。実際にドラフトで上位指名された好投手が4人、県大会で普通に投げあっていた。

 秋田商にはドラフト1位指名を受けた「武藤」というスラッガーもいた。小野と工藤は、1980年代のプロ野球を代表するピッチャーとして、驚異の実績を重ねたのである。

 しかしその段階で、時間が止まった。時間が止まったのは、バスケもラグビーも同じである。花園で15回の優勝を誇る秋田工の快進撃がピタリと止まったのもあの頃。バスケ能代工の時間は2004年まで止まらなかったが、止まっちゃう兆候は1978年ごろにすでに見えていたような気がする。
田沢湖駅1
(時間の止まった田沢湖駅 1)

 2015年の甲子園を沸かせ、ベスト8まで勝ち進んだ秋田商の戦いを見てみたまえ。デジタルの世界に迷い込んだアナログプレイヤーの奮闘を、そこに見ないだろうか。スマホ時代の黒電話、インスタ時代の長編小説、4技能時代の伊藤和夫先生。いやはや、ギュッと胸が熱くなる。

 2015年の秋田商、成田投手の奮闘を見てみたまえ。身長170cmちょいのごく普通の高校生が、140kmそこそこの直球とスライダーだけで、相手チームのセミプロをバッタバッタと三振に切ってとった。仲間たちがイージーエラーで足を引っ張っても、全く動じない。

 このチームでベスト8に勝ち進んだのは、甲子園の奇跡というより、むしろ模範と言っていい。同じことは、2011年の能代商にも言える。ストレートの最速130kmと言えば、下手をすればリトルリーグの小学生なみだが、それでもエース保坂クンの好投は、チームをベスト16に導いた。
田沢湖駅2
(時間の止まった田沢湖駅 2)

 諸君、どうだい、我々は一度リセットして、時間の止まってしまった1978年まで戻ったほうがいいんじゃないか。2017年の日本に固執する必要がどこにあるんだ?

 昼間のテレビのニュースショーを見てみたまえ。民放が5チャンネルもあって、やっていることはみんなおんなじだ。「街の人の声」までみんなおんなじで、チャンネルが5つもあることが悲しくなるほどだ。

「景気回復を実感しますか?」
「実感しませんねえ」
「衆議院解散に大義を感じますか?」
「感じませんねえ」
「受け皿になる野党がありますか?」
「ありませんねえ」

 こんなに分かりきった問答を、わざわざ放映する必要がどこにあるんだ? 雛壇に居並んだタレントの皆さんも、あらかじめマスメディアが要請した通りの発言を繰り返すばかり。誰かギュッと反対意見を言ってくれないかという願いは、ハスの葉っぱの水滴みたいに空しく流れ落ちてオシマイだ。
ババヘラ2
(ミルキー、秋田限定のババヘラ味)

 だからこそ、ここで秋田の登場なのだ。1978年で止まった時間を、颯爽と秋田名物「ババヘラ」が切り開く。ババヘラとは、「ババ」が「ヘラ」でコーンに盛りつけてくれるアイスのことである。

「ババヘラ」の愛称で定着したのも、1979年頃のこと。矢沢永吉どんが天に祈った瞬間、秋田のババヘラの時間も、やっぱりマコトに忠実に止まったのであった。

 いかにも「農家のオバサマ」なスタイルのアイスクリーム販売員は、その10年前から夏の定番になっていた。コンビニが日本中を席巻したのは、20世紀の最終盤、1985年ぐらいからのこと。それ以前は、夏の日盛りに水分を求める者は、自動販売機に頼るしかなかった。

 秋田の場合、もちろん自動販売機でも構わなかったけれども、「どうしてもアイス♡」という欲望が高まれば、路上に陣取った農家のオバサマに頼るのが一番の早道であった。
拡大図
(ミルキー・ババヘラ、拡大図)

 イチゴ味がピンク、バナナ味がバナナ色、その2種のアイスを、まるで薔薇の花のようなキレイな形にサーブしてくれる。例え目の前に存在するのが「ババ」に該当するオカタであっても、薔薇の花のアイスは文句なく美しい。

「ババ」という呼称について、上品な今井君は若干のタメライを感じたけれども、夏の日盛りの激しいノドの渇きに対抗しようとすれば、上品さだのタメライだの、そんなものは無慈悲に放擲する以外に道は開けなかった。

 稀に従業員の年齢層がぐっと若くなると、「ギャルヘラ」「アネヘラ」「ネンネヘラ」と名称が変わる。男子販売員の場合は「アニヘラ」「オドヘラ」「ジジヘラ」となるが、それは極めてマコトに稀なケースなのだという。

 そのババヘラアイス、一時はロッテが手を伸ばして全国規模の商品に育てようとしていたが、今度は不二家どんがギュッと前面に出てきたようだ。田沢湖で発見した「秋田限定 ババヘラ Milky」に、日本の国難突破の可能性を見た今井君なのであった。

1E(Cd) Solti & Wiener:MOZART/GROßE MESSE
2E(Cd) Rilling:MOZART/REQUIEM
3E(Cd) Akiko Suwanai:DVOŘÁK, JANÁĈEK, and BRAHMS
6D(DMv) ALL GOOD THINGS
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