Tue 170822 派手な色のお菓子/バーバパパ/リベラの壁画(キューバ&メキシコ探険記49) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 170822 派手な色のお菓子/バーバパパ/リベラの壁画(キューバ&メキシコ探険記49)

 地下鉄駅の売店でもそうだが、メキシコの人々はオモチャと甘い物を買うのが好き。オトナが好きというより、コドモたちに手っ取り早くオモチャやお菓子を持たせて、「少しの時間でいいから静かにさせたい」という欲求が強いのかもしれない。

 遺跡に出かけるたびに、ジャガーの獰猛な声をまねた笛をそこいら中で売っている。ママもパパも大勢のコドモを連れて必死だから、ついつい笛を買い与え、メキシコの遺跡という遺跡がジャガーの声で溢れるという結果を招いている。

 高齢化の進む日本で生活していると、「子だくさん」という光景はなかなか見ることがない。兄夫婦がコドモ5人、弟夫婦がコドモ6人、妹夫婦がコドモ4人、そういう30歳代の兄&弟&妹が、土曜日とか日曜日とかにコドモたち全員を連れて都心に遊びにくる。

 昭和の上野や池袋なら、ナンボでも見かけた光景である。新宿伊勢丹の屋上がまだ遊園地だった頃、あるいは20世紀終盤の埼玉県大宮や千葉県柏は、そういう家族連れで大混雑だったはずだ。

 しかし諸君、21世紀も17年が過ぎ去ろうとしている今、オトナ6人にコドモ総勢15名みたいなホンモノの大家族を目の当たりにすることは、日本ではあまり考えられない。
わたあめ
(メキシコシティ・チャプルテペック公園にて。キレイな色の綿菓子が流行っているようである)

 メキシコシティは、まさに今こそそういう大家族の天下なのである。公園も広場も、遺跡も砂浜も博物館も、大家族の大集団がすっかり占拠して、コドモのケンカ・ママの金切り声・パパの怒鳴り声が渦巻いている。

 そういう時、疲れきった親が手っ取り早い解決策として頼りにするのは、もちろんお菓子とオモチャとぬいぐるみ。砂とホコリにまみれたぬいぐるみを引きずって、泣きながら親に引きずられていく女の子の姿を、何度も見かけたものである。

 お菓子やジュースの方も、ド派手な色彩のものがバラエティ豊かに並んでいる。井村屋や明治屋の氷シロップとか、「ねるねるねるね」とか、その類いの激しい色彩が売店を埋め尽くす。メロン味とかイチゴ味とかブルーハワイとか、口のまわりをあの類いの色彩に染めたコドモが多い。

 メキシコに限らず、「綿菓子」というものが流行中のようである。メキシコの路上でも綿菓子屋をたくさん見かけたし、つい半月前のノルウェーでも、綿菓子屋が並んでいるのを目撃してきたばかりである。

 ただし、そんなに売れている様子はない。「コーラ味」なんてものも存在するが、実際に買ってもらって処置に困り果てている男児を1名見ただけだった。「店だけ増えて、ちっとも需要が増えない」という現象も、この世の中には珍しくないのである。
ハカランダ
(チャレルテペック公園は、サクラに似た薄紫の花が満開。家族連れでごった返していた)

 ホントかどうか分からないが、「関西では綿菓子、東京では綿あめ」という説もあるんだそうな。英語では「cotton candy」。ま、読んで字のごとしでございますな。

 諸君、「あたりまえじゃん」と冷たい顔をしていないで、逆にその「cotton candy」を英和辞典で調べてみたまえ。驚きの和訳 ☞「電気あめ」が登場する。「電気あめ」、脳から脊髄までビリビリ痺れそうなすげー呼び方も、この日本には存在するらしい。

 すると当然のように他の言語にも興味が湧き上がる。メキシコならスペイン語だから「algodón de azúcar」。おお「アルゴドン」、響きは何だか恐竜みたいだけれども、「砂糖のお菓子」。まあこれもまた当たり前だ。

 イタリア語は、zucchero filato「砂糖の糸」。おお、「糸」と来ましたか。さすがにイタリア、表現がググッと絵画的に美しくなりましたな。ドイツ語だと、Zuckerwatte「砂糖+綿」。Watte が「綿」って、偶然の一致ですかね。ドイツの隣のポーランドでも、綿は「wata」なんだそうな。

 しかし何と言っても嬉しくてならないのは、フランス語の「barbe à papa」☞「パパのオヒゲ」。ホンモノのパパのオヒゲはすごくチクチクして、決して綿菓子の繊細さはないけれども、その発音「バルバパパ」から「バーバパパ」を連想するのはカンタンだ。

 フランス語にも英語の「cotton candy」とそっくりそのまま、「bonbon du coton」という表現もあるんだそうだが、ある日「バーバパパ」の作者2人がパリのリュクサンブール公園を散歩中、小さな女の子が「barbe à papa」と可愛く発音するのを聞いたのが、バーバパパの物語の始まりなんだそうな。
メトロポリタン
(地下鉄でメトロポリタン大聖堂前へ)

 ド派手な色彩のお菓子が溢れる街を歩きながら、4月23日午後の今井君は「国立宮殿」の長い列に並んだ。ディエゴ・リベラの大壁画「メキシコの歴史」で有名な宮殿である。

 ここでも、ワタクシの直後に並んだコドモが、ド派手なお菓子を口に入れたり出したりしている。口に入れると彼女の口が真っ赤に染まり、そのお菓子を口から出したり、また入れたり、何度でもそれを繰り返す。

 1度など、お菓子を地面に落としちゃった。メキシコにも「3秒ルール」みたいなものがあるのか、コドモはすぐにそれを拾って、誰も気づかないうちにまたお口の中にしまい込んだ。気づいたのは、彼女の怪しい行動に目を配っていた今井君だけである。

 その一瞬、ビシッと視線が合った。向こうもビックリしただろう。自分の悪しき所業を、アジア人っぽいオヒゲのキウィに目撃されたのである。「オヤジ、見ただろ」という突き刺すような視線でワタクシを睨みつけてきた。

 こちらはこちらで、口も手も口の回りも吸血鬼なみに真っ赤に染まっていくプロセスを、油断なく見張っている所だった。彼女のママも、ママの妹と思われる女子も、一向に気にしないようだが、その真っ赤に染まった口や手が、しょっちゅうワタクシのズンボに触れそうになっていたのである。
王宮
(国立宮殿。ディエゴ・リベラの大壁画が有名)

 こういうふうで、列に並ぶこと30分、真っ赤なお手手や口とのせめぎ合いに夢中になっているうちに、ディエゴ・リベラの壁画なんかもうどうでもよくなってきた。

 しかも、「外国人は入口でパスポートを預けてください」とおっしゃるのである。預けたパスポートは「出口で返却いたします」と言うのだが、係員がそんなに厳重に管理してくれている様子でもない。「紛失」なんてことになったらどうしてくれるんだ? ますますリベラはどうでもよくなった。
壁画
(ディエゴ・リベラの巨大壁画「メキシコの歴史」、そのごく一部である)

 宮殿はもともとアステカ帝国の王 ☞ モクテスマ2世の居城。アステカを征服したコルテスが城を破壊して、その跡地にこの宮殿を建てた。コルテス君、ホントにひどいことをやりまくったのだ。

 アステカを滅ぼした後は、現在のホンジュラスとニカラグアにも遠征隊を派遣。先住民を奴隷とし、金と銀の鉱山で強制労働させた。「やりたい放題」の世界であるね。ヨーロッパに戻ってからも、カルロス1世のアルジェ遠征に参加。どこまでも侵攻の好きな男だったと見える。

 リベラの壁画が描くのも、スペイン人の暴虐の数々である。兵士が暴虐の限りを尽くし、カトリックのお坊さんたちも、むしろ兵士以上の陰惨苛烈な暴虐をはたらく。嘆き苦しみ、懸命に救いを乞う人々の姿が、宮殿の壁面にどこまでも綿密に描かれている。
ビア
(XX = ドスエキスで水分補給。辛子色の辛いお豆が旨かった)

 巨大な壁画を仔細に眺めているうちに、さすがのワタクシも強い疲労を感じ始めた。そういえば、この暑いのにコマメな水分補給(略してコマスイ)を忘れていた。最後にコマスイしたのは、おやおや、ホテルの朝食のオレンジジュースであった。

 4時間ぶりのコマスイは、テンプロ・マジョールの向こう側の店で。2階が準高級のヨサゲなレストラン、1階がバーで、いくつかのテーブルも外に並べている。

「メシも食っちゃうかな?」とも考えたが、時計はすでに午後3時だ。中途半端になるし、この後どうしても「国立人類学博物館」を見たい。ここで酔っぱらっちゃうと、博物館を翌日に回すことになる。

 しかも明日の予定は、Must中のMust ☞ テオティワカンだ。バスの往復を含めて、優に丸1日かかるはず。おお、ここはやっぱり、軽くビア1杯にとどめておく方がいい。

1E(Cd) Luther Vandross:LUTHER VANDROSS
2E(Cd) David Sanborn:INSIDE
3E(Cd) David Sanborn:LOVE SONGS
4E(Cd) David Sanborn:HIDEAWAY
5E(Cd) Michael McDonald:SWEET FREEDOM
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