Sat 170812 国立大も真剣だ／名古屋大の長文読解が素晴らしい／モト東進生の大活躍
入試問題作成の努力についてワタクシが称賛したいのは、別に早稲田に限らない（スミマセン、昨日の続きです）。北大も大阪大も筑波大も、神戸大も広島大も九州大も、従来型の重厚感たっぷりの長文読解に加え、いろいろ新傾向問題を挿入して、「４技能」の世論に対応しようと懸命に努力を重ねている。
大学は、決して愚かではない。大学で要求される英語力が「圧倒的に読解力」であっても、もしも世論が４技能を要求するなら、読解一辺倒の問題は作らないのである。この10年ずっと解説を担当している名古屋大も熊本大も、４技能重視の姿勢を示すことにヤブサカではないのである。
特にワタクシが「偉いなあ」「やるじゃん」「さすがですな」と舌を巻いているのは、名古屋大学の健闘ぶりである。何と言っても、毎年毎年「問題作成意図」を公表しつづけている事実が大したもんじゃないか。
むかしむかし、もう四半世紀も前のことになるが、まだたいへんな勢いだったかつての駿台予備校で「神」とさえ言われた伊藤和夫先生は、いろんなところで大学入試へ厳しい批判を展開された。
当時の東京大学で出題されつづけていた小説物語文について、「この小説文のこの設問が解ければ、なぜ東京大学で学ぶ資質や能力があると判断されるのか、まさに意味不明である」という趣旨のことを書かれた。「予備校の英語」（研究社）に、今でもその苛烈な文章が残っている。
慶応義塾大学SFCの強烈な長文問題についても、「これほどの難解な超長文を短時間で読みこなし、これほどの難問をスラスラ解いて合格した学生諸君を、教え導けるほどの教員が、果たしてどのぐらい存在するのか？」と喝破された。何とも胸のすく一言じゃないか。
だからこそ、ワタクシみたいに臆病な英語講師も、伊藤先生を師と仰ぐことを厚顔無恥にも許してもらっているのであるが、伊藤先生が常に歯がゆい思いをなさっていたのは、
① 大学の出題意図が明確に示されないこと
② 大学側の採点基準が明示されないこと
の２点であった。
名古屋大学は、極めて早い時期に「問題作成意図」を明確に文書で示すようになったのである。最初がいつだったのかは分からない。少なくともワタクシが在籍予備校で名古屋大学の解説を担当し始めた2005年以来、例年キチンと「どんな意図があって出題しているのか」を示しつづけている。
もちろん、その出題意図が完璧に反映されているとは思えない問題も存在する。2017年の英作文がその例で、その古色蒼然とした和文英訳問題には、とても「４技能!!」という世論に対応できているとは思えない昭和臭が歴然と残っていた。
「小林カツ代」という人物の発言が朝日新聞「折々のことば」にと取り上げられ、それを英作文の問題に採用したのである。
「食育などと肩ヒジ張らずに、おいしい料理を食べさせるほうが子育てにはいいと言う。実際、おいしいものを作って喜ばせてあげようと腕を鳴らす人が輪の中心にいると、その集団は華やぐ」
これを日本語から英語に変換しなさいという出題である。
大学側発表の「出題意図」では、「環境・情報・文化に関する新聞や書籍を題材として用いながら、日本語で述べられた内容を豊富な語彙により、文法的に正確・適切な英語で表現する力を測定する」ということになっている。
もしそれが「意図」だったとするなら、もっとはるかに適切な文章があったんじゃないか。何も無理して新聞＆雑誌から引用しなくても、オリジナルの日本語でもっと優れた日本文を提示できたんじゃないか。
単なる「和文英訳」なら、人工知能でもできる。その種の変換作業より、例え客観的採点に困難が伴うにしても、自由英作文の出題に踏み切るべきだったんじゃないか。
ま、この辺はあくまで愚かな予備校講師の発言として大目に見ていただきたいのであるが、ワタクシが感激したのは2017年の第１問、大学教育のあるべき姿を論じた長文読解問題である。
一般教養や人文科学の旗色は、現在あまりにも悪い。21世紀の日本ではすでに「風前のともしび」にも見える。大学の学部教育は、「職業訓練を優先すべき」という世論が圧倒的に優勢であって、「役にも立たない一般教養なんかやっているから、大学は経営危機に陥るのだ」とさえ言われる。
エラーいお役人たちが、積極的にその種の発言をしちゃうと、ますます若者たちは一般教養なんか遠慮なしにポイッと路傍に投げ捨てる。「ホメロス？ デカルト？ マルクス？ 近松？」「時間の無駄」という世界であって、頭にあるのはひたすら有利な就職しかない。
何よりもまず「シューカツの役に立ちますか？」であって、その結果として青年がしがみつくのが、英語とＩＴと資格ばかり。それが今の世の中である。
あと15年も過ぎればＡＩに奪われそうな分野にばかり専念して学部時代を送る。あと十数年、彼ら彼女らが35歳から40歳の頃に、対ＡＩで生身の人間が惨敗を喫することが明白なカテゴリーに、今の全力を傾注する。それじゃ悲惨な将来に向かってまっしぐらじゃないか。そんな気がしてならない。
（10日前にオスロで買ったティーカップを愛用中 ２）
名古屋大学が2017年の第１問で提示したのは、そういう若者たちへのメッセージである。詳しくは全文を読んでいただくしかないが、別に今すぐ書店に走って、学習参考書コーナーで「名古屋大学」の赤本を開くだけでいいのだ。このブログを読み次第、直ちに駅前の書店に走りたまえ。
文章の筆者が語るのは、バランスの大切さ。職業訓練も大切、それは間違いない。英語もＩＴも素晴らしい。資格もどんどん取りたまえ。目の前の大きな不安を払拭するのに、職業訓練はマコトに大事である。
しかし、一般教養に人文科学、そういうところにギュッと時間を投資できるのは、この４年が最後のチャンスである。この４年ないし６年が過ぎたら、もうそんなチャンスは２度とやってこない。目前のミクロしか見えないんじゃ、悲しく寂しい人生じゃないか。
英文の筆者は、まあマコトに気楽に以下のようにおっしゃる。
「If you long to become a poet or study Roman history, then, by no means, pursue those passions」
「But be realistic about what will happen when graduate」
受験生諸君が今まさに悩みに悩んでいる話が、ここに出題されている。
解説しながらワタクシは、「よっしゃ、名古屋大学のこの読解問題を、自分の公開授業テキストのラインナップに是非とも加えよう」と決意したのである。
現在テキストに採用している長文問題は、① 北海道大学 ② 筑波大学 ③ 名古屋大学 ④ 大阪大学 ⑤ 九州大学 ⑥ 早稲田大学文学部 ⑦ 京都大学の合計７問であるが、名古屋大が２問かぶっちゃうにしても、どうしてもこの文章は採用したいと思うのである。
（10日前にオスロで買ったティーカップを愛用中 ３）
さて９月１日午後６時、今年もまた過去問解説講座の全ての収録が完了した。河口湖合宿やノルウェーの旅の間隙を縫って、今井君はホントによく頑張った。吉祥寺のスタジオを出ると、外は冷たい夏の雨。最高気温23℃の一日は、もうすっかり秋の気配である。
駅前からタクシーに乗って、「西新宿、京王プラザホテル」と告げた。4000円ほどの道のりだが、こんなにギュッと疲労しているんだ、年に３回か４回の贅沢を許してくれたまえ。脱タクシーも卒タクシーも、今日ばかりはお休みである。
京王プラザホテル１階の「五穀亭」での会合は、10年前の東進生・税所君と、肉を焼きながらの暑気払いである。さすがに10年も経過して、最近は東進生の中にも税所クンの驚くべきストーリーを知らない人が少なくない。
（当日の写真は、キムチの１枚しかない。すみません）
彼は現在、国際教育支援NPO「e-Education」代表。10年前、早稲田大学１年の時にバングラデシュで活動を開始、今やその活動範囲はルワンダ・ヨルダン・ガザ地区・ソマリア・フィリピンのミンダナオ島と、バイタリティは留まるところを知らない。
今ここに彼の活動の軌跡や将来を描けば、またナンボでも長くなってしまうから、詳しくは諸君、ググってくれたまえ。最近の著書は、昨日のブログに写真を２枚掲載した通り。早稲田のラグビー部監督だった中竹竜二氏との共著である。
残念ながら、会話に夢中になっているうちに、インスタ映えする写真を取り損ねた。韓国焼肉のお店だったのに、一番旨かったのはヒツジ。さすがに28歳にもなれば、アブラでデロデロの牛肉より、スカッと爽やかなヒツジ肉のほうが食欲をそそると見えた。
だからマコトに申し訳ないことに、当日の写真はキムチの写真１枚だけなのである。インスタ映えから遠いこと甚だしいが、そのぶん会話に夢中だったことを分かってくれたまえ。
1E(Cd) Gloria Estefan：GREATEST HITS
2E(Cd) J.D.Souther：YOU’RE ONLY LONELY
3E(Cd) IN THE COURT OF THE CRIMSON KING
4E(Cd) Janis Joplin：CHEAP THRILLS
5E(Cd) Janis Joplin：PEARL
total m68 y1554 d21503
大学は、決して愚かではない。大学で要求される英語力が「圧倒的に読解力」であっても、もしも世論が４技能を要求するなら、読解一辺倒の問題は作らないのである。この10年ずっと解説を担当している名古屋大も熊本大も、４技能重視の姿勢を示すことにヤブサカではないのである。
特にワタクシが「偉いなあ」「やるじゃん」「さすがですな」と舌を巻いているのは、名古屋大学の健闘ぶりである。何と言っても、毎年毎年「問題作成意図」を公表しつづけている事実が大したもんじゃないか。
むかしむかし、もう四半世紀も前のことになるが、まだたいへんな勢いだったかつての駿台予備校で「神」とさえ言われた伊藤和夫先生は、いろんなところで大学入試へ厳しい批判を展開された。
当時の東京大学で出題されつづけていた小説物語文について、「この小説文のこの設問が解ければ、なぜ東京大学で学ぶ資質や能力があると判断されるのか、まさに意味不明である」という趣旨のことを書かれた。「予備校の英語」（研究社）に、今でもその苛烈な文章が残っている。
慶応義塾大学SFCの強烈な長文問題についても、「これほどの難解な超長文を短時間で読みこなし、これほどの難問をスラスラ解いて合格した学生諸君を、教え導けるほどの教員が、果たしてどのぐらい存在するのか？」と喝破された。何とも胸のすく一言じゃないか。
だからこそ、ワタクシみたいに臆病な英語講師も、伊藤先生を師と仰ぐことを厚顔無恥にも許してもらっているのであるが、伊藤先生が常に歯がゆい思いをなさっていたのは、
① 大学の出題意図が明確に示されないこと
② 大学側の採点基準が明示されないこと
の２点であった。
（名古屋大学は、出題意図を明確に示しつづけている。最近は出典も明確に示さなければならない）
名古屋大学は、極めて早い時期に「問題作成意図」を明確に文書で示すようになったのである。最初がいつだったのかは分からない。少なくともワタクシが在籍予備校で名古屋大学の解説を担当し始めた2005年以来、例年キチンと「どんな意図があって出題しているのか」を示しつづけている。
もちろん、その出題意図が完璧に反映されているとは思えない問題も存在する。2017年の英作文がその例で、その古色蒼然とした和文英訳問題には、とても「４技能!!」という世論に対応できているとは思えない昭和臭が歴然と残っていた。
「小林カツ代」という人物の発言が朝日新聞「折々のことば」にと取り上げられ、それを英作文の問題に採用したのである。
「食育などと肩ヒジ張らずに、おいしい料理を食べさせるほうが子育てにはいいと言う。実際、おいしいものを作って喜ばせてあげようと腕を鳴らす人が輪の中心にいると、その集団は華やぐ」
これを日本語から英語に変換しなさいという出題である。
大学側発表の「出題意図」では、「環境・情報・文化に関する新聞や書籍を題材として用いながら、日本語で述べられた内容を豊富な語彙により、文法的に正確・適切な英語で表現する力を測定する」ということになっている。
もしそれが「意図」だったとするなら、もっとはるかに適切な文章があったんじゃないか。何も無理して新聞＆雑誌から引用しなくても、オリジナルの日本語でもっと優れた日本文を提示できたんじゃないか。
単なる「和文英訳」なら、人工知能でもできる。その種の変換作業より、例え客観的採点に困難が伴うにしても、自由英作文の出題に踏み切るべきだったんじゃないか。
（授業の準備は、紅茶を飲みながら。（10日前にオスロで買ったティーカップを愛用中。オスロのホテルにて撮影 １）
ま、この辺はあくまで愚かな予備校講師の発言として大目に見ていただきたいのであるが、ワタクシが感激したのは2017年の第１問、大学教育のあるべき姿を論じた長文読解問題である。
一般教養や人文科学の旗色は、現在あまりにも悪い。21世紀の日本ではすでに「風前のともしび」にも見える。大学の学部教育は、「職業訓練を優先すべき」という世論が圧倒的に優勢であって、「役にも立たない一般教養なんかやっているから、大学は経営危機に陥るのだ」とさえ言われる。
エラーいお役人たちが、積極的にその種の発言をしちゃうと、ますます若者たちは一般教養なんか遠慮なしにポイッと路傍に投げ捨てる。「ホメロス？ デカルト？ マルクス？ 近松？」「時間の無駄」という世界であって、頭にあるのはひたすら有利な就職しかない。
何よりもまず「シューカツの役に立ちますか？」であって、その結果として青年がしがみつくのが、英語とＩＴと資格ばかり。それが今の世の中である。
あと15年も過ぎればＡＩに奪われそうな分野にばかり専念して学部時代を送る。あと十数年、彼ら彼女らが35歳から40歳の頃に、対ＡＩで生身の人間が惨敗を喫することが明白なカテゴリーに、今の全力を傾注する。それじゃ悲惨な将来に向かってまっしぐらじゃないか。そんな気がしてならない。
（10日前にオスロで買ったティーカップを愛用中 ２）
名古屋大学が2017年の第１問で提示したのは、そういう若者たちへのメッセージである。詳しくは全文を読んでいただくしかないが、別に今すぐ書店に走って、学習参考書コーナーで「名古屋大学」の赤本を開くだけでいいのだ。このブログを読み次第、直ちに駅前の書店に走りたまえ。
文章の筆者が語るのは、バランスの大切さ。職業訓練も大切、それは間違いない。英語もＩＴも素晴らしい。資格もどんどん取りたまえ。目の前の大きな不安を払拭するのに、職業訓練はマコトに大事である。
しかし、一般教養に人文科学、そういうところにギュッと時間を投資できるのは、この４年が最後のチャンスである。この４年ないし６年が過ぎたら、もうそんなチャンスは２度とやってこない。目前のミクロしか見えないんじゃ、悲しく寂しい人生じゃないか。
英文の筆者は、まあマコトに気楽に以下のようにおっしゃる。
「If you long to become a poet or study Roman history, then, by no means, pursue those passions」
「But be realistic about what will happen when graduate」
受験生諸君が今まさに悩みに悩んでいる話が、ここに出題されている。
解説しながらワタクシは、「よっしゃ、名古屋大学のこの読解問題を、自分の公開授業テキストのラインナップに是非とも加えよう」と決意したのである。
現在テキストに採用している長文問題は、① 北海道大学 ② 筑波大学 ③ 名古屋大学 ④ 大阪大学 ⑤ 九州大学 ⑥ 早稲田大学文学部 ⑦ 京都大学の合計７問であるが、名古屋大が２問かぶっちゃうにしても、どうしてもこの文章は採用したいと思うのである。
（10日前にオスロで買ったティーカップを愛用中 ３）
さて９月１日午後６時、今年もまた過去問解説講座の全ての収録が完了した。河口湖合宿やノルウェーの旅の間隙を縫って、今井君はホントによく頑張った。吉祥寺のスタジオを出ると、外は冷たい夏の雨。最高気温23℃の一日は、もうすっかり秋の気配である。
駅前からタクシーに乗って、「西新宿、京王プラザホテル」と告げた。4000円ほどの道のりだが、こんなにギュッと疲労しているんだ、年に３回か４回の贅沢を許してくれたまえ。脱タクシーも卒タクシーも、今日ばかりはお休みである。
京王プラザホテル１階の「五穀亭」での会合は、10年前の東進生・税所君と、肉を焼きながらの暑気払いである。さすがに10年も経過して、最近は東進生の中にも税所クンの驚くべきストーリーを知らない人が少なくない。
（当日の写真は、キムチの１枚しかない。すみません）
彼は現在、国際教育支援NPO「e-Education」代表。10年前、早稲田大学１年の時にバングラデシュで活動を開始、今やその活動範囲はルワンダ・ヨルダン・ガザ地区・ソマリア・フィリピンのミンダナオ島と、バイタリティは留まるところを知らない。
今ここに彼の活動の軌跡や将来を描けば、またナンボでも長くなってしまうから、詳しくは諸君、ググってくれたまえ。最近の著書は、昨日のブログに写真を２枚掲載した通り。早稲田のラグビー部監督だった中竹竜二氏との共著である。
残念ながら、会話に夢中になっているうちに、インスタ映えする写真を取り損ねた。韓国焼肉のお店だったのに、一番旨かったのはヒツジ。さすがに28歳にもなれば、アブラでデロデロの牛肉より、スカッと爽やかなヒツジ肉のほうが食欲をそそると見えた。
だからマコトに申し訳ないことに、当日の写真はキムチの写真１枚だけなのである。インスタ映えから遠いこと甚だしいが、そのぶん会話に夢中だったことを分かってくれたまえ。
1E(Cd) Gloria Estefan：GREATEST HITS
2E(Cd) J.D.Souther：YOU’RE ONLY LONELY
3E(Cd) IN THE COURT OF THE CRIMSON KING
4E(Cd) Janis Joplin：CHEAP THRILLS
5E(Cd) Janis Joplin：PEARL
total m68 y1554 d21503