Fri 170804 白い皿とレア系ステーキ/甲殻類を貪った後悔(キューバ&メキシコ探険記34) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 170804 白い皿とレア系ステーキ/甲殻類を貪った後悔(キューバ&メキシコ探険記34)

 甲殻類を貪った後は、貪った後の皿のアリサマを眺めて深い後悔に陥る。後悔というより、嫌悪感に近い。嫌悪は自責の念を生み、こんなものを躊躇もなくワシワシやったオノレの下劣さを、ホンキの嘔吐さえ感じながら呪うのである。

 レア系の牛肉をワシワシやった後にも、同じ性質の嫌悪と自責に悩まされる。問題は、皿に残った血液の色である。レア系の場合、お店の人に是非ともお願いしたいのは、「白いお皿はヤメていただけませんか?」の一事である。

 安いステーキ屋なら、レア系だろうがウェルダンだろうが、黒い鉄板の上でジュージュー唸りながらやってくるから、その種の問題は発生しない。真っ赤な血液も、鉄板の上なら全く目立たない。

 しかし「ちょい高級」でも「マジ高級」でも、「うちは高級でございます」という余計なプライドがあると、レアなモーモーちゃんお肉を、真っ白なお皿に乗っけて提供しようとする。

 昔の日本人は、レア系の牛肉を注文する時、「まだ中心部が冷たいぐらいのレア」を好んだものである。ホントに好んだのか、見栄を張っていただけなのかは知る由もないが、今でもカッケー高級ジーチャンは「中が冷たいぐらいじゃなきゃ、レアとは言わんよ」とニヤリと怪しく微笑むはずだ。
ロブスター
(ハバナ3日目の夕食も、「La Imprenta」のロブスター。大っきなヤツが2尾もお皿に乗っかってきた)

 しかし諸君、そんなレア系を真っ白いお皿で出されてみたまえ。ナイフを入れるごとに、真っ赤な血液がジュルジュルっとお皿に滲み出て、変に敏感な今井君なんかは、外見がキウィやサトイモ的であるにも関わらず、深く重い嫌悪感と嘔吐の欲望に悩まされることになる。

 今年の春、出張の帰りに西麻布の高級ステーキ屋を訪れた。ヒコーキで帰ってきて、「羽田からタクシー」というイケナイ贅沢を敢行、「赤身の熟成肉をズラリと揃えました」という評判の店の2階に上がった。

 店のマスターとも、すぐに親しくなった。マスターが見本に見せてくれたオススメの「赤身3兄弟」を、3枚まとめて注文し、3枚ともミディアムで焼いてもらった。1枚200グラム、3枚なら600グラム。お値段も相当のものだったから、マスターのご機嫌がよくなるのも当然だ。

 しかし諸君、600グラムものモーモーちゃんお肉を、白い1枚のお皿で貪ってみたまえ。お皿の表面はどんどん赤く染まり、視覚的にはどう見ても吸血鬼の状況。吸血サトイモとか、吸血キウィなんてのは、想像するだにおぞましい。

 最後の100グラムを飲み込むのには、かなり骨が折れた。もちろん「すみませーん、お皿を新しいのに代えてくださーい」と、ニッコリ要求すればよかったのだが、諸君、吸血キウィは驚くほど内気で引っ込み思案な性格だ。そこはガマン&ガマン。「エコな食事に励まなきゃ」と自分に言い聞かせた。
カフェパリ
(ハバナ、人気の「カフェ・パリ」に闖入。詳細は明日)

 つい4〜5日前には、ノルウェーの首都オスロで「トナカイのステーキ」と言ふ残酷なものを何度も貪った。サンタクロースのソリを引っ張る赤鼻のトナカイも、もしかすると今井の腹に収まっちゃったかもしれない。

 もしも今年クリスマスプレゼントが届かなかったら、今井の残酷な食生活を指弾するしかないが、何しろトナカイだ。ジビエもいいところ。ステーキからは激しく血液が溢れ出た。

 ワタクシのお皿は、真っ白から一気に真っ赤へ。「たいへんなことになった」と後悔したが、色の濃いソースを肉に絡めて、何とか窮地を乗り切った。
演奏前
(カフェ・パリ。バンド演奏が始まる前は閑散としている)

 諸君、今井君は、こんなに神経質な生き物なのだ。甲殻類を貪った後の嫌悪と後悔とハキケについても、十分に納得していただけると確信する。甲殻類の中でも、特に海老のたぐいについて、その後悔は深い。

 カニのほうは、それほどの嫌悪につながらない。「クモの仲間」と言われれば、確かに巨大なクモにはカニを想起させるものも少なくない。しかしクモ→カニという方向性の連想はあっても、カニ→クモという連想はなかなか起こらない。

 問題は、大っきな海老類である。特にロブスターの類いを食べ終わった後、その丸まった固い殻を、お皿の上に放置してみたまえ。「おやおや、オレは大っきな虫を食ったんじゃないか」。赤紫の色彩からも、猜疑心の鎧のようなその形態からも、その連想を排除することは困難だ。

 だから諸君、キューバで「合計10尾のロブスターを平らげた」と言っても、実はたいへんオッカナビックリ、食べ終わったらすぐさまお皿を片付けてもらわないと、強烈で濃厚な自責の念にかられ、嫌悪から解放されるためには、ラム酒を1瓶ストレートで一気飲みでもしないかぎり、生きていく自信さえなくしていただろう。
演奏
(カフェ・パリ。演奏が始まるやいなや、店は超満員にかわる。詳細は明日の記事で)

 4月18日、ハバナ滞在3度目の夕食は、迷ったあげく昨日と同じ「La Imprenta」に決めた。例のモト印刷工場であるが、優雅な中庭を囲む落ち着いた雰囲気は捨てがたかった。

 昨日の夕食にシャンパンを出してくれたアフリカ系ウェイターや、落ち着いて優しく対応してくれたウェイトレスにも、ぜひ挨拶がしたかった。しかし今夜は、2人とも姿が見えない。通されたテーブルも、太い柱の陰に隠れた目立たない位置で、注文しようといろいろ頑張ってみても、ちっとも気づいてもらえない。

「ま、今日もロブスターで行くべ」。これは規定の方針。もし日本なら1尾10000円もとられるロブスターがたった1200円なら、ハバナにいる間に食べられるだけ食べておかなきゃ損だ。「虫」云々に関する後悔の念は ギュッと押さえつけて、オカネの問題に集中したほうがいい。

 しかし諸君、やっと気づいてくれたウェイターに「ワインはありますか?」と尋ねても、茫然と呆気にとられた表情をするばかりである。「それって、何?」であり「知りません」「何のことか分かりません」と、後ずさりするばかりなのである。

 それでも頑張って何度か尋ねつづけたが、ついにシカト作戦が始まった。頷いては立ち去り、立ち去ったが最後、出来るだけワタクシのテーブルに近づかない作戦だ。「ビール以外のお酒は、ラム酒しか知りません」みたいな表情で、さも忙しげに早足で歩き回るのである。
子猫
(夜のオビスポ通りには、生まれて数ヶ月の子ネコが目立つ)

 そのお詫びとでも言うのか、今夜のロブスターはお皿に2尾が登場。確かに昨夜の1尾より小ぶりであるが、日本なら「夢のように大っきな」という形容詞がつきそうなほど大っきなヤツが、お皿の上に2尾しっかり横たわっている。

 スーパー美味であることは、間違いない。ワタクシは夢中で貪ったのである。諸君、繰り返すが、日本では1尾10000円してもおかしくないヤツらである。それが堂々と2尾、お皿の上で「ワタシを食べて下さい」と身をよじっている。夢中にならないヒトが、この世に存在するだろう
か。

 ワインは諦めて、2本目3本目のビールをどんどん追加注文。お腹はジャボ&ジャボになってしまったが、とにかくハバナのロブスターは旨い。「こりゃ明日もまたここに来ようかな」という勢いである。

 ただし、お皿の上に丸まった甲殻類の巨大な殻2つの光景がイケナイ。こりゃどうしても、巨大な虫を連想せざるをえない。

 ホントは、甲殻類2匹の殻が丸まっている写真を、ここに掲載しようと思ったのだ。しかし読者の中には、今井以上に敏感で臆病な人も少なくないはず。そういう人のことを考えて、掲載は遠慮することにした。

1E(Cd) Pink Floyd:ATOM HEART MOTHER
2E(Cd) Pat Benetar:GREATEST HITS
3E(Cd) Gloria Estefan:GREATEST HITS
4E(Cd) J.D.Souther:YOU’RE ONLY LONELY
5E(Cd) IN THE COURT OF THE CRIMSON KING
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