Fri 170728 バルセロナを思う/ハバナのお酒事情(キューバ&メキシコ探険記29) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 170728 バルセロナを思う/ハバナのお酒事情(キューバ&メキシコ探険記29)

 8月17日にバルセロナでテロがあって、「ランブラス通りを車が暴走、判明しただけで死者13名・重軽傷者110名」という悲しいニュースが入ってきた。レストランに土産物屋にカフェが密集、夏の観光客でごった返す状況では、逃げ道を探すことさえままならなかっただろう。

 ランブラス通りに面したホテルに2週間滞在したのは、もう8年も前の9月のことである。ランブラス通りを海岸に向かって毎日散策し、そのままバルセロネータの海岸まで歩いて、ドンブリみたいな入れ物にいっぱいの生ハムをかじりながら、連日のように安いワインを痛飲した。

 近くの広場には「アンボス・ムンドス」という大好きなレストランもあった。「有名か?」と言えば、決して有名でも何でもない平凡な店の奥で、夏の陽光を避けながら昼食を楽しんだ。事件があったのは、まさにあの辺りである。

 CNNで惨劇の直後の映像を見ると、8年前に何度も買い物をしたコルテ・イングレスも映っている。「ああ、あそこだ」「ああ、あそこだ」と絶叫するたびに、悲しくてならない。

 8月中旬のある日、羽田からフランクフルトに向かった今井は、ノルウェーのオスロに滞在中。8月というのに東京の真冬のような寒さに震えつつ、「同じ飛行機でフランクフルトに到着して、バルセロナ便に乗り継いだ人たちもいたんだろうな」と考える。

 こんな事件が起こった直後に、ブログで「キューバ&メキシコ探険記」どころの話ではないのかもしれないが、8月18日現在、まだ事件の詳細は不明。CNNの画面を見つめている以外、どうすることもできない。
母猫
(ハバナのネコたち。奥がお店に案内してくれた母ネコ。尻尾のフサフサぶりが特徴だ)

 そこで諸君、ここはあくまで粛粛と、キューバ旅行記を続けることにする。4月17日、ちょうど4ヶ月前のことであるが、関脇ロブスターとお豆のスープと不思議な前菜で満腹したワタクシは、すっかり夜のトバリのおりたハバナの街に出た。

 店の外で、すぐに例の母ネコに出会った。「La Imprenta」に案内してたネコである(スミマセン、一昨日の続きです)。「店はどうでしたか?」「旨かったですか?」という風情で、人の顔をつくづく見上げるのである。

 さっきはあんなにまとわりついていた子ネコたちの姿が見えない。みんなで安全なネグラに移動して、「また明日騒ごうぜ」と兄弟姉妹で悪だくみを重ねている頃である。母ネコに大いに感謝するとともに、「どこか、ゆっくりお酒の飲める店はありませんかね?」という気分であった。

 ハバナでお酒を楽しむのは、それなりに難しい。ビールか、さもなきゃラム酒か。甘いフローズンダイキリか。選択肢はあんまり多くない。レストランで「ワイン」と言っても、「は?」「それは、いったい何ですか?」という不思議な顔をされる。

「ワインがなければ、ビールでいいじゃないか」であって、そりゃ最初はビールを何杯か繰り返して注文する。キューバには「クリスタル」という旨いビールがあって、バーでもレストランでも「ビール」と言えば、銘柄も尋ねずに黙ってクリスタルが運ばれてくる。

 しかしレストランで最初から最後までずーっとビールというんじゃ、いかにも味気ない。というか、1皿目の料理を平らげる頃から、もうすっかりビール腹になって、お腹はパンパン、メインの料理に入る容積が胃袋の中に残らない。
店内風景
(繁盛している店は超満員、繁盛していない店は完全にカラッポ。ハバナの商売は結構たいへんそうである)

 そこでさすがにビール2杯を片付けた頃、「ワインは?」と尋ねるわけである。普通なら「待ってました」とばかりに、分厚いワインリストを運んできてくれる。

 ローマみたいに、客が「30ユーロぐらいのワイン」と言っても「いやいやアナタにそんなワインは似合わない。ちょうどここに100ユーロちょっとのがありますが、特別に70ユーロにいたします。いかがですか?」なんてのもある。

 例え好意でやっているとしても、ワインにはそういう怪しい世界がくっついてくる。それもまた楽しみなわけだ。それがキューバでは、いきなり「は?」なのである。それどころか「そんなものはありません」という風情で肩をすくめられたりする。
スプマンテ
(いろいろあった後で、ついにスパークリングワインをゲット。いやはや、苦労の後だけにいっそう旨かった)

 この日の「La Imprenta」でも、状況は一緒だった。店の入口にはバーカウンターもあるのだが、ワインを楽しんでいるお客は皆無。カウンターでもみんなビール、テーブルのお客もみんなビールで、「ワインリスト」と言ふものの存在は全く感じられない。

 試しに、ベテランらしいウェイトレスのオネーサマに「ワインリスト」と言ってみた。ベテランというよりむしろ「キャリアウーマン」の風情。「この店のことなら何でも聞いてください」という自信を漲らせていらっしゃる。

 すると案の定、「ワインリスト」は存在した。赤が2本、白が2本、スパークリングが2本。画用紙みたいな紙3枚に写真まで印刷して、左端に穴を開け、むかしの日本人で単語カードをまとめておいた丸いクリップで、ゆるーく閉じてある。

 その中からとりあえずスパークリングを1本選択。「これにします」と思い切って注文した。すると即座に「それは、ありません」のお答え。うーん、やっぱりキューバでは、最後までビールで通すしかなさそうだ。あるいは「ラム酒でお食事」「フローズンダイキリでお食事」というアンバランスなことをやってみるか。
ホテル
(滞在中の「ホテル・イベロスター」、夜の勇姿)

 そう考えて諦めていた時、向こうからアフリカ系の男子が1名、颯爽と現れた。「ちょっと待った!!」ということである。35歳前後、自信に満ちあふれたその物腰と、「俺にまかせろ!!」という表情がマコトに頼もしい。

 そして諸君、いったん「ありません」と言われたそのスパークリングワインが、奥の棚から姿を現した。おお、あるじゃないか、あるじゃないか。ギュッと冷やしてもらったコイツのおかげで、関脇ロブスターはなおいっそう旨さを増したのであった。

 こういうふうで、母ネコ君にもキチンと挨拶してから、意気揚々とホテルに引き上げた。ビールとスパークリングワインのアブクで、ハバナの今井はもうお腹がパンパン、いろんなところからいろんなアブクが飛びだしそうで、早くホテルの部屋に帰った方が身のためだ。
バー
(ホテルのメインバーでラム酒のストレートを満喫する)

 オビスポ通りは、夜10時近くなっても人でいっぱいである。流行っている店は物凄く流行っている。バンドの演奏もクライマックスを迎えている。客も全員立ち上がってダンスが始まっちゃった店もある。こりゃとても入り込めそうにない。

 逆に、流行っていない店は、スーパーレベルに閑散としていて、ここまで誰もいないんじゃ、店内の空気も固く濃厚に凍りつき、こっちも逆の意味でとても入り込めそうにない。すごすごホテルに帰るしかなさそうである。

 こうして4月17日、滞在先のホテル「イベロスター・パルケ・セントラル」に帰り着いたのは、午後10時前である。それでも何だか飲み足りないじゃないか。お腹の中がシュワシュワしているだけで、今日の夜はまだ始まったばかりである。

 そこで選択したのが、ホテル本館のバー。ホテルのレストランは味気ないが、バーならホテルのメインバーでちっとも構わない。カウンターに陣取って、ラム酒のストレートをお願いした。

 ラムは、平凡だが「ハバナクラブ 7años」。ストレートで2杯だか3杯だか、おお、ホッとしますな。バーもお酒も、平凡なのが一番いいですな。そういう平凡なことを思いながら、ハバナの第2夜もまた、平凡に穏やかに更けていった。

1E(Cd) Corboz & Lausanne:MONTEVERDI/ORFEO 1/2
2E(Cd) Corboz & Lausanne:MONTEVERDI/ORFEO 2/2
3E(Cd) Festival International de Sofia:PROKOFIEV/IVAN LE TERRIBLE
4E(Cd) Schüchter:ROSSINI/DER BARBIER VON SEVILLA
5E(Cd) Cohen:L’HOMME ARMÉ
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