Wed 170712 祝杯をあげる/キュコキュコの連続/成田エクスプレス/「にいづ」のうなぎ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 170712 祝杯をあげる/キュコキュコの連続/成田エクスプレス/「にいづ」のうなぎ

 この世の中に「祝杯」ほど手放しで楽しいことが、他に考えられるだろうか。少なくともワタクシにとって、祝杯ほど好きなことは存在しない。というか、祝杯をあげるためにだけ生きている。

 そのへんは、サラリーマンにもビジネスマンにも共通の思いである。サラリーとビジネスの線引きは極めて微妙であって、要するに自分で自分をどっちのカテゴリーに入れるか決めればいいだけのことである。

 むかしむかし今井君が生徒として駿台予備校の夏期講習を受講していた頃、「東洋大学文学部長を兼任している」というマコトに偉い先生がいらっしゃった。その名を奥井潔師。このブログにも何度も登場している。

 その奥井師が、伝説のテキスト「CHOICE」を振りかざしつつ、「仕事の日々をLaborと思って耐え忍んでいるのがサラリーマン、人生を賭けたWorkと考え、自らが設定した成果に向かって邁進していればビジネスマン」みたいな大演説をなさったことがあった。

「だから諸君、諸君はLaborerであってはならないので、ある!! 必ずやWorkerとなって、自ら設定した日々の課題に邁進しなければならないので、ある!!」。まさに伝説、昭和の予備校文化を象徴する名講義であった。

 あんまり感動的だから、その語り口は「奥井ブシ」を名づけられた。センテンスのほとんどが「…で、ある!!」の自信に満ちた断定の調べであって、自信を見事に喪失した当時の浪人生にとって、人生への熱い憧れをかき立てるのに十分だったのである。

 奥井先生が亡くなって、すでに20年が経過。伊藤和夫先生が亡くなったのも、ちょうど20年昔のこと。昭和後半の日本を彩った予備校の浪人生文化は、ものの見事に消滅してしまった。

 あと3年も経過すれば、お2人の後に残されたわれわれ英語講師は、かつてあんなに華々しかった予備校の世界から、一斉に「英検対策の塾の先生」「TOEFL対策の先生」という立場に移動することになりそうだ。

 もしもいま生きていらっしゃったら、伊藤和夫も奥井も(当時の学生の習慣に従って敬称略)、「ボクは、英検の先生なら、やらないよ」「ワタクシは、そういうことは、やりたくいないので、ある!!」と、心から無念そうに呟くんじゃないだろうか。
祝杯
(河口湖駅前「平井売店」の2階で、早速の祝杯をあげる)

 すっかり話題がそれてしまったが、とにかく7月30日昼過ぎの今井君は、一番手っ取り早い場所で「祝杯!!」ということにしたかった。13年目の合宿は、素晴らしい感激の中で無事に幕を閉じた。幕が下りれば、幕の陰で直ちに始めなければならないのは、誰が何と言っても「祝杯」だ。

 店はどこだと思うかね? このブログの読者なら、例え読者歴がまだ1ヶ月に満たないとしても、「おお、あの店だろう!!」と、たちまち見当がつくに違いない。もちろん河口湖駅前「平井売店」の2階である。

 この日もまた、道をはさんで向かい側の「ほうとう不動」は超満員。というか、何しろ日曜日の午後じゃないか。河口湖畔を埋め尽くす外国人観光客の集団に加えて、日本の家族連れもどっと押し寄せていた。

 人気の「ほうとう不動」なんか、とんでもない列が出来ている。前回は静かだった「平井売店」のほうも、疲れきったパパ、息子の一挙一動に金切り声をあげているママ、ママをからかうのに夢中の男子、オニーチャンが大嫌いな妹、そういう微笑ましい人々でいっぱいだった。

 余りのことに、河口湖畔での「祝杯!!」を諦めかけた。しかし諸君、嬉しいじゃないか。1年に2回しか訪れないおかしな常連のワタクシを、店のオバサマたちが一番涼しい広いテーブルに案内してくれた。
わかさぎフライ
(デジャヴな「わかさぎフライ」。5日前とおんなじ風景だ)

 マコトにデジャヴな風景である。5日前とほぼ完全にかぶっている。読者もデジャヴを如実に感じていらっしゃるはずだ。ましてや主人公♡サトイモ法師のデジャヴは、並大抵のことではない。

 中国人の集団約10名、ドイツ人の家族連れ5名、疲れきった家族連れ2組。そういうグローバルな人々に囲まれて、キウィから生まれたキウィ太郎みたいな今井君は、5日前と全く同じデジャヴな注文を、優しいオバサマたちにぶつけたのである。

 生ビール。わかさぎフライ、地元の生酒「開運」。同じ店でこれほど同じ注文を5日のうちに繰り返すキウィが、果たして存在するものだろうか。オバサマたちの反応もマコトに速くなって、注文から15秒で生ビールがきた。キウィ君の姿を見かけた瞬間、もう誰かがビールを注ぎはじめていたに違いない。

 ジョッキまでキンキンに冷えた生ビール。きっとジョッキを冷凍庫で凍らせておいてくれたのだ。氷点下10数℃のジョッキを唇に快く感じながら、一気にビールを胃袋に流し込む。この幸せのために生きている。
成田NEX
(河口湖始発の成田エキスプレスで帰京する)

 流儀としては、決して「ガブガブ」ではない。凍る寸前まで冷えたビールを、口の中であくまで小分けにして、小さな盃1杯分ぐらいずつノドに落としこむ。むしろ「慎重に」「味わいながら」というイメージだ。

 だから「ガブガブ」どころか「グビグビ」でもいけない。むしろ「クピクピ」というか「キュコキュコ」という擬音のほうが相応しい。グビグビでは、食道が驚くだけだし、ガブガブでは胃袋が反発する。

 キュコキュコ、キュコキュコ、両方の耳にそのキュコキュコが聞こえるような感覚で、盃1杯ずつに小分けした冷たいビールをノドに流し込んでいく。ただし、それを一気にジョッキ半分まで続けるのである。

 それにかかる時間は15秒ほど。「半分まで行ったな!!」という自信と満足を感じたら、「フエーッ!!」と絶叫するもよし。ただしあくまで心の中で、カタリ!!と快い音をたててジョッキをテーブルに置いたら、軽く「うめーっ!!」ぐらい呟いてもいい。

 諸君、この快感は、サラリーマンだろうとビジネスマンだろうと変わらない。LaborerもWorkerも、同じ「フエーッ!!」「うめーっ!!」をやるのであって、難しい話はこのさい言いっこなしである。

 その後で、その場のリーダーと自認している者が「この1杯のために、仕事してるんだよな♡」と、仲間たちの相づちを求める。「そうだよな」であり「ホントそうだよな」であって、ここで自己実現がどうとか、もっと自分を追い込まなきゃとか、そんなコワい話を持ち出すのはタブーである。
極重
(帰京後、四谷「にいづ」でさらに祝杯を追加。うなぎ「極重」、こりゅもう絶品と言ってよかった)

 諸君、この日のワタクシは、わかさぎフライ2皿、日本酒300ml×2本を1時間で胃袋に流し込み、河口湖14時17分発の「成田エキスプレス」に乗り込んだ。この時期の週末にしか運転されていないようだが、河口湖から成田空港まで直通の、嬉しい特急列車を発見したのである。

 グリーン車には、他の乗客はほとんど乗っていない。貸し切り状態で新宿まで2時間。ホントならこのまま成田まで行っちゃって、ついでだからリスボンとかマルセイユとかハバナとか、そういう大好きな街まで「ビューン」をやってもいいぐらいだ。

 ただしこの日の今井君は、パスポートを持参していない。もしパスポートがあれば、ホントにナポリかアムステルダムぐらいカンタンに行っちゃう勢いだったのだが、パスポートなしじゃ、空しく新宿で下車するしか道はない。
肝焼き
(肝焼きがたまらない)

 しかしさすが今井君だ、新宿から徒手空拳で我がお部屋に戻るほど、このキウィ太郎は甘くない。バスタ新宿に闖入した後は、素速くタクシーに乗り込み、大好きな「うなぎ」を求めて四谷方面に向かったのである。

 選んだのは、「にいづ」。ホテルニューオータニに古色蒼然とした地下アーケード街があって、その一番奥に位置する店である。焼き鳥の有名店「伊勢広」のお隣、隠れた名店である。

 土用の丑の日から5日遅れたそのうなぎが、ひと仕事終えたばかりのワタクシにとってどれほど旨かったかは、何も長い文章で書き表すひ必要はなさそうだ。

 今日4枚目と5枚目の写真を見てくれたまえ。豪華な肝焼きも、「極重」と名づけられたお重も、こりゃまさに「インスタ映え」の見本みたいな世界。長かった河口湖合宿の疲労も、これで一気に全て吹っ飛んでしまいそうな勢いだった。

1E(Cd) Santana:AS YEARS GO BY
2E(Cd) Gregory Hines:GREGORY HINES
3E(Cd) Holly Cole Trio:BLAME IT ON MY YOUTH
4E(Cd) Earl Klugh:FINGER PAINTINGS
5E(Cd) Brian Bromberg:PORTRAIT OF JAKO
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