Mon 170710 黒ズンボ断捨離/霧の河口湖/2017合宿最終日/霧に抱かれて静かに眠れ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 170710 黒ズンボ断捨離/霧の河口湖/2017合宿最終日/霧に抱かれて静かに眠れ

 1966年と言うんだから、あまりに遥かな昔のことである。若い諸君のパパやママも、まだ生まれていないかもしれない。昭和日本に極めてカッケー男子シンガーがいた。その名は「布施明」。大ヒット曲「霧の摩周湖」で、作曲した平尾昌晃が第9回レコード大賞を受賞している。

「愛は不死鳥」「積木の部屋」「シクラメンのかほり」など、メガヒットを連発。あんまりカッケーから、映画「ロミオとジュリエット」のヒロイン♡オリビア・ハッセーまで口説き落としちゃった。

「君は薔薇より美しい」などと発言できるのは、超カッケーと自己認識していない限り不可能。今井君には100年経っても1000年経過しても不可能な離れワザだ。「ボクはキウィよりケバケバだ」「あたしゃサトイモよりネットリだ」がせいぜいである。

 一番若い頃の音声を聞くと、おやおや、なかなかハスキーだ。大根おろしのオロシガネで固い声をゴシゴシすっているような感覚。太い声のスリコギを、すり鉢の中でぐるぐる回している感じ。ワタクシにはあまり上手く描写できない、微妙なハスキーボイスなのである。

 布施明どんが年取っていくにつれて、そのハスキーさが消えていく。西城秀樹どんの歌声もそうだったが、「太陽にほえろ」や「野良猫ロック」シリーズの時代、梶芽衣子さまが日本のヒロインだったワイルドな時代、国民は若い男子の声にもワイルドなハスキーさを求めたのかもしれない。
断捨離
(10年にわたって今井の活躍を支えた黒ズンボを、霧の河口湖でついに断捨離。熱い涙が止まらない)

「霧の摩周湖」は、20年も30年も昔のワタクシがカラオケの定番にしていた名曲である。あんまり人前で歌うのは好きではないが、「歌えよ♡」「歌えよ♡」「歌いなよ♡」「出そうで出ないは今井君♨」みたいに囃し立てられれば、さすがにオレも男だ、絶叫調でナンボでも歌い上げた。

 世良公則・西城秀樹・布施明・上条恒彦・アリス・クールファイブとくれば、「なるほど」と頷く人も多いだろうが、要するに朗々と熱っぽく歌い上げるのが大好きなのだ。早稲田大学「紺碧の空」、慶応大学「若き血」、日本やフランスやアメリカの国歌まで、人が迷惑だと言おうが何だろうが、アカペラで絶唱してみせる。

 だって、こんな内気で大人しいサトイモ君に「歌え」「歌え」と強要したのは君たちじゃないか。責任をとって、チャンと最後まで聞いてもらいましょう。ゼスプリ系キウィ君たちみたいにパックリ大きな口を開け、カラオケなのにマイクも使わず、人々の大切な鼓膜をビリビリ&ワラワラさせまくる。

 何でこんなことを書いているかというに、いま目の前にある河口湖が、深く濃密な霧に覆われているからである。7月28日から29日にかけて、富士五湖地方の悪天候は「富士山が見えるかどうか」など問題にもならない。雷が鳴り、豪雨が降り注いで、湖の向こう岸も見えないほどになった。

 そこで思いついたのが「霧の河口湖」であり、「霧の摩周湖」のマシューをカワグチに代えれば、一晩中歌いつづけていられそうな爽快な気分になった。
霧の河口湖1
(霧の河口湖 1)

 どうしてそんなに爽快だったかと言えば、きわめて重い硬直したスタートだった今井クラスが、中盤から後半にかけて絶好調の波に乗り、特に終盤は「このまま続けたらどんな高みにでも行けそうだ」という強い実感があったからである。

 実質的な最終日である4日目は、朝の90分で大阪大学、昼の90分で筑波大学、夜の90分で名古屋大学の長文問題をカンペキに解説した。初日 ☞ 2日と「アクセントテスト」「確認テスト」ですらヒーコラ苦労していた80名は、テキストとも確認テストとも関係ない長文問題に、積極果敢に取り組んだ。

 他クラスの1.5倍の分量を突きつけられて、それでもヒーコラもピーヒャラも一切言わない。「もっとやりたい」「どんどんやりたい」「帰りたくない」「帰らないでこのままナンボでも前に進みたい」。そういう異次元に入り込んでいたのである。

 生徒80名とスタッフ5名の表情は、理想的と言っていいほどアグレッシブなものに変わった。(80+5)×2=170。170の瞳は、3日目に胃袋に収まった85個のハンバーグの熱量で真っ赤に燃え上がっていた。

 4日目はこれにスキヤキの熱が加算される。スキヤキの牛肉は、1人当たり4枚。どういうわけかその4枚がペッタリと1つにくっついて煮えていたのだが、いったん胃袋に収まってしまえば、そんなのどうでもいいことだ。

 85の胃袋の炎は、170の瞳の強烈な輝きに変わり、火をつけられてしまった85人のやる気の激しい燃焼は、もう誰にも止められない。霧に抱かれて静かに眠る河口湖の水も、あっという間に煮えたぎる熱湯となり、一瞬でジュッと蒸発してしまいそうな勢いだ。
霧の河口湖2
(霧の河口湖 2)

 こういう集団を率いていれば、講師はあまりに楽しくて、誰だってそりゃ鼻歌の1つぐらいは歌いたくなるだろう。熱きサトイモ ☞ 今井君の場合は、それが軽い鼻歌で済むわけがない。熱唱は絶唱に昇華し、気がつけば深夜のお風呂でサトイモがいい塩梅に煮えている。

 部屋のお風呂は小さいけれども、7月21日から30日まで、ワタクシは1日に2回ずつ湯舟につかった。ドラッグストアに数多く並んでいる入浴剤の中から、一番高い「メディケイテッド・バブ」を選択。9日×2回分、18個のバブを消費しようと、ホクホクしながら10日前の美富士園を訪れた。

 7月29日から30日へと日付が変わり、いよいよ2017年の夏期合宿は完結が近づいた。今井クラスは「早めに寝て、午前4時起床 ☞ 7時まで超集中個別学習」の方針。「ドロドロになるまで粘って起きている」の類いの行動は、しないことに決めている。

 バブのお風呂で疲労回復をはかりつつ、何とかここまで頑張ってきたが、生徒諸君が眠りについた(であろう)午前1時、さすがの大ベテラン今井君も体力の限界を感じる。合宿最後の授業では、もうロレツが回らなくなっていたし、下駄の両脚ももつれるほどの疲労ぶりである。

 これは諸君、ユンケルのお世話にならなきゃ、明朝マトモに起きられそうにない。いやはや、ここは致し方ない。可能なかぎりユンケルみたいなドリンク剤に近づかないで生きていきたいのだが、1年に5回か6回はあの濃厚な飲み物に頼るしかない場面がある。

 今回の宿舎長を務めている若者が、(おそらく)自腹で高価なユンケルをプレゼントしてくれたのだ。箱には「ユンケル黄帝ロイヤル」とある。うーん、最終日の朝に備えて、今こそコイツをグイッとやろうじゃないか。
ユンケル
(合宿終盤の今井を支えてくれたユンケル2種)

 ついでに、長年にわたって慣れ親しんだ黒ズンボの断捨離式を行なった。購入は、おそらく1997年。しばらくはヨソ行きの扱いで、タンスの奥深くにしまい込んでいた。

 10年近くタンスの奥で眠らせておいて、実際に使用を開始したのは、2005年の夏。夏用の薄手のズンボであって、夏の授業収録には必ずこのズンボを履いて出かけた。

 当時は、濃い色のワイシャツをこの黒ズンボに合わせた。ブルーのシャツ、紫のシャツ、空色のシャツ、黒のシャツ。黒ズンボ君は、どんなシャツとも上手く調子を合わせてくれた。

 2013年頃からは、さすがのズンボ君も疲労のご様子。まず普段着に格下げ、続いて外国旅行に大活躍を始めた。海外旅行には、「普段着にもちょっとムリがある」という服装で出かけることにしている。

 ボルドーの2週間も、ベルリンの2週間も、モロッコやキューバやメキシコの旅も、ひたすらこの黒ズンボ君にお付き合いいただいた。リオもサンパウロもシドニーも、ブエノスアイレスもマルセイユもシチリアも、どこもかしこもコイツだった。
閉講式
(2017年河口湖合宿、第2期も無事に終講式にこぎつけた)

 冬の旅でも、夏用の黒ズンボ。「真冬のベルリンで夏のズンボは寒いだろう」と思うだろうが、もちろんワタクシの世代には「パッチ」という強力な味方がついている。パッチ+夏ズンボでベルリンの街を闊歩すれば、汗ばむぐらいにポッカポカだった。

 さすがに「もうダメか?」と思ったのが昨年の夏。クリーニングを諦めて、お水で手洗いしてみたが、ところどころ色落ちしてしまった。近くで見るとシマシマのアリサマ。それでもよくここまで引っ張って、2017年の霧の河口湖は、ついにコイツで乗り切った。

 しかし諸君、さすがに限度と言ふものをわきまえなきゃいかん。ここまでヨレヨレ&シワクチャになったヤツに「まだまだ働きたまえ♨」とは言われない。6年も7年も頑張った河口湖畔で、霧に抱かれて静かに眠る幸福を、ぜひ黒ズンボ君に味わってもらいたいのである。

1E(Cd) Richter & Borodin Quartet:SCHUBERT/”TROUT” “WANDERER”
2E(Cd) Harnoncourt:BEETHOVEN/OVERTURES
3E(Cd) Bernstein:HAYDN/PAUKENMESSE
4E(Cd) Richter & Münchener:BACH/BRANDENBURGISCHE KONZERTE①
5E(Cd) Richter & Münchener:BACH/BRANDENBURGISCHE KONZERTE②
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