Sat 170708 笛吹けど踊らず/どんどん/副詞と形容詞が大好き/鋭角的急上昇への隘路 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 170708 笛吹けど踊らず/どんどん/副詞と形容詞が大好き/鋭角的急上昇への隘路

 昨日も書いた通り、中盤から後半にかけて鋭角的な急上昇を遂げて「模範的成功事例」となった2017年第2期の今井クラスであったが、うにゃにゃ、合宿が終わってオウチの部屋に戻り、つくづく思い返してみると、第1日の夜、第2日の朝、担当スタッフ5名はまさに暗中模索の状況であった。

「笛吹けど踊らず」。普通なら、笛をピーヒャラ吹き鳴らし&太鼓をドンドコ打ち鳴らせば、それだけで誰でもワラワラ踊り出すのである。「どんどん進むよ」と言う時の「どんどん」も、元はと言えば、太鼓をドンドン景気よく打ち鳴らされて、否応なしに進む人々の様子を描写した擬態語のはずである。

 それに対して、英語の「どんどん」は、甚だ平凡な副詞が多い。
① rapidly
② increasingly
③ steadily
④ 比較級 and 比較級。

 うーん、並べてみると思った以上に平凡だ。その他に
⑤ keep on …ing
⑥ quickly
⑦ fast
など。太鼓をドンドン打ち鳴らされて熱い表情でどんどん進む人々の様子が、英語ではあんまり見えてこない。
音読
(さあ、音読だ。教室にスバラシー貼り紙が出た)

 そんな中で、意外なのが「away」。「好き放題に」「躊躇せずに」のニュアンスである。
Ask away「どんどん質問してください」
Fire away「その調子で、どんどん行けぇ」
Blaze away「いいから、どんどん撃つんだ」
Speak away「グズグズしないで、サッサと言いたまえ」
Work away「怠けるな。どんどん仕事しろぉ」

「drink way」なら「どんどん飲む」「飲み明かす」「ガブガブやる」だし、「smoke away」なら「好き放題にナンボでもタバコを吸う」。今から20年も前の暢気な時代、早稲田大学政経学部で出た小説文に、その「smoke away」が登場したことがある。

 他にも、いろいろ思いつくじゃないか。「flow in」「pour in」という動詞系もあるし、副詞系なら「one after another」「over fist」「on and on」「by the minute」。よく考えてみれば、英語もマコトに感情表現の豊かな言語。日本語に勝るとも劣らない勢いだ。

 おおー、今日は何だか英語のセンセーみたいなブログじゃないか。カッケー。あまりにカッケー。この調子で英語の記事を書き続けたら、きっとアクセス数も飛躍的に伸びるに違いない。

 この2ヶ月、おそらくテレビCMのおかげで、アクセス数は飛躍的に増えた。ブログと言ふもの全体の不人気のせいか、3月4月は1日3000とか4000とかがせいぜいだったのが、6月には1日6000、7月に入ってからは7500ものアクセス数に至ることもあった。

 それこそ「どんどん増える」「flow in」「pour in」な激流&激増のアリサマであって、もう2ヶ月にわたってアメーバ順位は3桁を維持している。タレントさんでも何でもないその辺の普通の一般人としては、マコトに光栄なことである。
シカゴ
(張り切って、シカゴ大学生協で購入のTシャツを着てみた)

 今井君は、幼少時からの副詞大好き人間。ついでに形容詞大好きキウィ。「副詞なんか、読んで字の如く『副えもの』だ。副詞とか形容詞とか、そんな2次的な品詞にこだわってるから速読が出来ないんだ」と豪語する先生方の中で、副詞と形容詞を愛することでは決して人後に落ちない。

 書いたり話したりする時に、人というものはマコトに用心深くなるものである。主語の選択、動詞の選択、目的語の選択、要するにSVOという骨組みの部分に手を抜くことはまず考えられない。

 だからこそ英語の授業でも、メッタヤタラにSVOにこだわるわけである。「構文主義」を唱えて、「SとVとOにしか興味がありません」という方針で授業を進めるセンセも少なくない。
学食
(合宿第1夜を飾る揚げ物類)

 しかし今井君は、さすが外見がサトイモやキウィを髣髴とさせる不思議な生物だけのことはある。話し手や書き手がふと気を抜いて、ホンネを漏らしてしまう副詞と形容詞に注目するのである。SVOでどんなに緊張して分厚い壁を築いても、気を抜いた副詞と形容詞でホンネの全てが露見する。

 諸君、世の中にはこんな意地悪なヤツがナンボでも存在するのである。話す時も書く時も、副詞と形容詞に細心の注意を払いたまえ。どんなにSVOに気をつけようと、副詞と形容詞で心の底まで見抜かれる。

 もちろん正反対に、副詞と形容詞を徹底的に鍛えれば、表現力は格段に豊かになるわけだ。高校入試まではSVO。大学入試から先は形容詞と副詞にもちょい着目。ホンモノのオトナになったら、徹底的にadjとadvの訓練。いやはや、さすがキウィ君。言うことのレベルが違うじゃないか。
夜の大広間
(夜の「美富士園」。1時間前にメシを食った大広間も、今はすっかり静まり返っている)

 日本には「どんどん節」なんてのもある。江戸時代後半、文化文政期から流行して、明治大正までは日本人共通の文化だった。「忠臣蔵」に関する教養が必須の、なかなか難しいお歌である。

駕籠で行くのは お軽じゃないか
妾に売られていくわいな
ととさまご無事で またかかさんも
お前もご無事でまた折々に
たより聞いたり聞かせたり、どんどん

伊勢は津でもつ 津は伊勢でもつ
尾張名古屋は城でもつ、家のしんしょは嬶でもつ
嬶(かか)の褌(ユモジ)は紐でもつ、
紐のシラミはシワでもつ、どんどん

 こういうふうで、河口湖合宿2017年第2期の今井クラスは、前途多難なスタートを切ったのである。詳細は昨日の記事の通り。その後の「鋭角的急上昇」なんか、まだ気配さえ感じられない第1日、講師もスタッフも、いや他の誰よりも生徒諸君80名が、暗澹たる気持ちで夜を迎えていた。

「こりゃいったいどうなるんだ?」。だってそうじゃないか、いつもの「H1」とは比較にならないほどスローなスタート。「全員で満点をとり続けるぞ」の掛け声に応えて、次々とクラス平均99%をたたきだすのが普段のH1なのに、50点満点の確認テストで、クラス平均43点台しか出ない。

 この状態では、教室に貼り出された「さあ、音読だ」の貼紙も、マコトに空しく見えるばかりだ。焦ったスタッフが「四の五の言うな」の貼紙も出した。おお、恐ろしい。英語なら
without grumbling
without complaining
without arguing
without complaint
without argument
そういう平凡でゴツい表現が並ぶ。

 まあ確かに河口湖合宿とは、「四の五の言わずに、さあ音読だ」の世界であり、「文句があったら、音読の回数と熱さでで勝負しろ」の宇宙なのだが、こうまであからさまにギュッとスタッフの焦りを見せつけられたら、生徒諸君もますます萎縮しちゃうかもしれない。
4の5の
(スタッフも焦りを如実に示す「四の五の言うな」の貼紙)

 お腹の中は、アブラ物&揚げ物でパンパン。はるか昔の学食で貪ったA定食やB定食の記憶が蘇る。3年前にシカゴ大学の生協で購入したTシャツを着込んで、せめてカラ元気だけでも出そうとしたが、それも完全にカラ振りの感がある。

 5月の喜多方で買った下駄も、同様に空振り。途方に暮れながら、静まり返った午後9時の「美富士園」の廊下をトボトボ、我が教室「よいまち草」に向かう。カラン&コロン。カラン&コロン。桐の高級下駄は気持ちいい音を響かせるが、我が心は暗澹とした悩みの真っただ中である。

 それが、7月26日20時45分。昨日書いた強烈な「鋭角的♨急上昇」「感動的♡成功事例」が現実になるのは、ここから20時間ほど後のことである。

1E(Cd) Baumann:MOZART/THE 4 HORN CONCERTOS
2E(Cd) Solti & Wiener:MOZART/GROßE MESSE
3E(Cd) Rilling:MOZART/REQUIEM
4E(Cd) Jochum & Bavarian Radio:MOZART/THE CORONATION MASS
5E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN①
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