Sat 170701 開講式/新旧ハキモノ2種/アゲモノ2種/合宿の昔と今/正しい音読 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 170701 開講式/新旧ハキモノ2種/アゲモノ2種/合宿の昔と今/正しい音読

 7月21日午後1時、いよいよ「合宿・全体開講式」であって、河口湖の今井君は大いに張り切って宿の大広間に向かうことにした。今年はハキモノにも気合いを入れて、最近10年の合宿を支えてきたサンダル君に加え、会津・喜多方ラーメン旅の時に買ってきた下駄クンも持参した。

 古参のサンダル君は、そろそろ壊れかけている。昨年も一昨年も「断捨離候補」として合宿のブログに写真を掲載したはずだ。しかしどうしても捨てるにしのびない。サンダル君に「どうする?」と尋ねてみたら、右と左が声を揃えて、「まだ今年も頑張りたい!!」と答えてくれた。

「頑張りたい」「まだまだ現役で」と顔を紅潮させている者たちに、「もう前線を退くときですよ」「さようなら」と冷酷な宣告ができるほど、今井君の人間は完成されていない。ついつい情にほだされる。

「それなら、一緒についてきたまえ」
「また今年も10日間、しっかりお願いしますよ」
ホントにそう小声で呟きながら、すでにかなりの高齢に達した我がサンダル君を、スーツケースの隅に入れてやった。古参には古参の働き方があるはずなのだ。

 もっとも、そうなればそうなったで新参者が嬉しくない。せっかく喜多方で買ってきた桐の下駄クンだ。下駄のくせに、5000円もした。「オレは高級下駄なんだ」という自負もある。

「なぜオレを使ってくれないんだ?」
「古参なんかサッサと引っ込めて、オレの出番を作ってほしい」
野球でもサッカーでも、ベンチを温めているだけでは、期待の新人であればあるほど、不満やるかたないはずだ。
履物
(ハキモノ2種。古参のサンダル君と、新人の下駄クン)

 そこで諸君、優しい今井君はそれぞれに働くべき場所をキチンと決めてあげることにした。ハレの舞台は新人の高級下駄クン。開講式と閉講式には桐の下駄をつかい、カロンコロンと夏の音を響かせながら会場に向かう。そのぶん、普段の授業では古ぼけたサンダルじいさんに働いてもらおう。

 言わば「棲み分け」であって、おお、さすがにベテラン今井は、老練な人事部長よろしく巧みにハキモノを操る。不満だった下駄クンも、新人なのにハレの舞台を与えられてまんざらでもなさそう。サンダルじいさんは、慣れた職場で働けるだけで十分に嬉しそうである。

 そういうことばかり考えていたせいか、今井君はホントに珍しく失策をおかした。「えっ、今井先生が失策?」と驚嘆の声が上がるといけないからサッサと白状すれば、「全体開講式の写真を撮影するのを失念した」のである。

 せっかく「今日のブログの1枚目は全体開講式の写真♡」とニヤニヤ楽しみにしていたのに、撮影し忘れたんじゃ致し方ない。ここはガマンして、ハキモノ2種の写真で代替することにしたい。
開講式
(クラス開講式。第1期は94名だった)

 下駄クンのためのハレの場は、続けざまにやってくる。全体開講式の後は、1時間後の14時半から「クラス開講式」である。おーい、下駄クン、休んでいるヒマはありませんぜ。キミも新人らしく、シャキッと教室に向かわなきゃいかん。

 1年に2回、それが13年目になれば、クラス開講式はもう25回目である。東進に移籍したばかりの2005年とは、感動&感激の質が全く違う。生徒に負けず劣らず、講師も年々どんどん成長するのである。

 2005年の夏は、ただただ驚きが先に立って、「ええっ?」「は?」「ウソだろ?」と茫然と立ち尽くしていたが、今や「おお、今年もまた始まったな」と、余裕でニコニコするばかりである。

 2005年の頃は、合宿は今より遥かにワイルドだった。宿舎1つに300名、その宿舎が7つも8つもあるわけだから、たいへんな規模の合宿であるのは変わらないが、例えばあの当時の「音読」は、宿舎の300名全員が声を合わせて絶叫したりしていたのである。

 300人の絶叫。宿舎の床も壁もガラスも天井も、ビリビリ音を立てて震えていた。絶叫している英語の例文が「長男が財産を全て相続した」「私は大学で哲学を専攻した」「この食べ物は私に合わない」「酒はしばらく控えた方がいい」の類いだから、そりゃ驚嘆もするわさ。
スタッフ挨拶
(クラス開講式。スタッフが挨拶する)

 当時のクラスでは、常に100人全員でそれをやった。やがて夕食の時間が来て、皆で大広間に集まると、今度は300人で声を合わせた。目の前にメシが並んでいる状況で「この食べ物は私に合わない!!!」と300人が叫ぶんだから、たいへんシュールな光景が展開された。

 予備校講師というものは(もちろん例外はナンボでもいらっしゃるだろうが)お酒好きの人が多い。当然のことながら合宿の夕食にお酒なんか出るわけがないから、夕食のたくさんの揚げ物を前にして、内心「ビールがあったらいいのにな」と、何だかモジモジする気分になった。

 そこへ、300人の英語の絶叫が轟きわたった。「酒はしばらく控えた方がいい!!!」。英語でそれを言われると、心の底からションボリして、「まあ仕方がない」「合宿中なんだから、控えなきゃダメですよね」と囁きあうのだった。

 当時は夜もワイルドだった。何しろ「絶叫が楽しみで合宿に参加した」みたいな生徒も多い。というか、あの頃はそっちがむしろ主流だった気がする。夜も寝ないで、絶叫調の音読を続け、スタッフもそれを大いに奨励した。

 そのまま夜明けまで音読を続ける者もいた。夜明けとともにクラス全員で河口湖畔に出る。湖に向かって絶叫したのである。「私は大学で哲学を専攻した!!!」。シュールではあるが哲学的ではない絶叫の声は、湖を越えて早暁の美しい富士にコダマするほどであった。
揚げ物
(夕食のアゲモノ2種)

 あの頃はそれを4泊5日、休まず続けたのである。倒れそうになっても、みんなで「わっしょーい♨」「わっしょーい♨」と声をかけあって、最終日には完全徹夜。いくら若い体力に溢れていても、もうカラ元気しか残っていない。それでもヤメなかった。

 そういうワイルド合宿も、今は昔の物語。2017年の合宿に参加した諸君に、そんな12年前の合宿の様子を話してあげると、ごく素直な驚きの声が上がり、「我々はそんな愚かなことをしにきたのではない」というマコトに冷静かつ賢げな表情で、余裕の笑みを見せるのである。

 今井が担当するのは、昔も今も同じ「H1クラス」。Hとは「ハイレベル」のことであり、ハイレベルクラスが6クラスある中で、最も優秀な生徒が揃ったのが「H1」というわけである。センター試験模試のクラス平均は150点から160点ぐらい。昔も今も変わらない。

 しかし諸君、クラス開講式の反応は、今やホントに賢げであって、昔のようなワイルドさはほとんど見当たらない。4〜5年前までは絶叫調もまだ何とか生き残っていたけれども、もう完全に姿を消した。発音はハッキリと明確に、あくまで常識的なボリュームで、スピーディーな音読に努めるのである。
部屋
(宿舎でのワタクシのお部屋は、今年も411号室)

 今井君なんかは、少し寂しい気もするのだ。当時の合宿に参加していた人々は、すでに30歳。きっと今でも河口湖でのワイルドな5日間のことを記憶していて、少し人生に疲れた時には、思い出の合宿テキストをコッソリ取り出して、懐かしい音読に励んでいたりするんじゃないか。

 だからワタクシは、2015年や2016年の合宿でも、生徒たちにワイルドな絶叫調の音読を1回だけ許した。3日目の夜、4日目の朝、「さぞかし鬱屈しているころだろう」という頃合いを見計らって、「許す」「今こそワイルドに声を張り上げたまえ」「スカッとするぞ」と、ギュッと絶叫に舵を切る。

 2017年の合宿で、いつそれをやるかは分からない。しかしクラス開講式で、そのことを予告する。
「絶叫するみたいな音読は、明らかに間違いだ」
「しかし、ホントにスカッとするぞ」
「どこかで1回だけやろうじゃないか」

 するともう、生徒は夢見るような視線。「今か?」「今か?」とみんなが両眼をカッと見開いて、その瞬間を待ち受けるようになるのである。さてと、1回だけの絶叫調、いつにしましょうかね?

1E(Cd) Tomomi Nishimoto:TCHAIKOVSKY/THE NUTCRACKER(1)
2E(Cd) Tomomi Nishimoto:TCHAIKOVSKY/THE NUTCRACKER(2)
3E(Cd) Pešek & Czech:SCRIABIN/LE POÈME DE L’EXTASE + PIANO CONCERTO
4E(Cd) Ashkenazy(p) Maazel & London:SCRIABIN/PROMETHEUS + PIANO CONCERTO
5E(Cd) Ashkenazy(p) Müller & Berlin:SCRIABIN SYMPHONIES 1/3
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